川上弘美のレビュー一覧
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読みながら、何度も「これ川上さんだったよな」と表紙を見直しました。
確かに川上さんらしい、フワフワした感じはあります。でもそれも所々です。それ以上に「何でこういうストーリーなの?」という感じのほうが強いのです。
ある人の感想に「物語世界から現実世界へ」というキーワードが有りました。これまでも「センセイの鞄」や「古道具 中野商店」のように現実社会を描いたものもありますが、それでもどこか霞がかかったような、浮世離れした感じがしました。それに対して、この作品は単にウソばなしや良い意味での現実感の無さが消えて、何だか生臭い程の現実感があるのです。
川上さんはこういう方向に向かうんですかね。私はやっぱりウソばなしを期待したいのですが。 -
Posted by ブクログ
「最近、川上さんにはまっとるん?」
夏休みに帰省した娘に言われました。大分、私の本棚に溜まってきましたからね「椰子・椰子が良かったよ」という勧めで読んでみたのですが。
半分くらいまでは、クスクス笑いながら気分よく読んでいました。でも、途中からちょっと・・・。
何となく、夢で見そうなストーリーだなと思って、あとがき(対談)を読んだら「半分くらいかな、実際に見た夢をもとにしたのは。」という言葉がありました。それを読むと、なんだか興味が一気に半減した感じです。「こんな不思議なウソ話を良く思いつくなぁ」という驚嘆が私の興味の多くを占めていたのかもしれません。それが夢の話なら不思議なのは当然なので。。。 -
Posted by ブクログ
短編4話。
男の雛形を拾った女性の話である「物語が、始まる」は母子愛から始まり恋愛につながる源氏物語のような話。そこに川上さん独特の性描写がなされている。それでいてプラトニック。
「とかげ」は団地のような舞台に3世帯の主婦が織り成す物語。語り手がそれぞれの子どもを「〜家次男」などというのが面白い。最後は一種宗教的な場面で終わる。体内に入れて排出するというのはイオマンテなどを連想させた。
「婆」はある婆の家にある謎の穴の物語。異空間の表現はまさに非現実的。だけどその前後にある食事などの飲み食いの場面、猫などの動物が妙に現実染みている。そのせいか、異空間の場面もあまり異様ではない。
「墓を探す」は中年の姉妹が先祖の墓を探す物語。姉が霊媒体質になり、複数の先祖に憑かれる。その姉を山の中で獣にも見えるという表現が同作者の『神様』の熊を思い出した。アイヌ信仰を感じた。 -
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ニシノユキヒコ。
この一人の男。
魅力的なのかどうか「?」マークが浮かんでしまう
頼りない、でも優しい、なのにドライ、結局何故だか放っておけない、
そんな男の恋愛連作集。
彼が人生で出逢って通り過ぎてきた女性10人の視点から
様々な年代の西野くん、様々な顔の幸彦君が描かれています。
ニシノユキヒコに出会ったことによって10人の女性は
傷ついたり悩んだりしながらも最終的には前へと進んでいくための
小さな光を見い出しているように感じられます。
そしてそれとは対極に、こんなに多くの魅力的な女性に愛され、
本当なら幸せなはずのニシノユキヒコなのに、
寂しさにいつも囲まれて、そこからどうやったら逃げ出せるかと
彼は死ぬまでもがき続けたのかな、と心がちくっと痛みました。
本当に西野さんっていたのかな?ユキヒコって実は幻?
すべて読み終わった後、残りのなくなったページとともに
ニシノユキヒコも遠くへ消えてしまうような、
身体の向こう側が透けてみえるような、
そんな儚い彼の残像だけが残りました。