松岡和子のレビュー一覧
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ネタバレジュリエットちゃん好きだーーーーッ!!!
『ロミオとジュリエット』、ファム・ファタール発言いただきました。
「結婚」という言葉を先に出すのもジュリエットちゃんなところも好きなんよ。翻弄しようというつもりもないのにそうしちゃう。ピュアな残酷さを持っている。ってか現時点でもファム・ファタールと言ってもいいのでは? でも自分で偽毒を飲む根性があるから、健気系ファム・ファタール(とは?)
会って間もない年上ロミオにthou=「お前」(※古典的な単語)と呼びかける点もファム・ファタールの片鱗と言えるかもしれない。す……好きだ……。
『オセロー』若く純真なデズデモーナさん、という指摘もハッとなる。たしかに辻褄があう。彼女の「全身で生に向かうその姿勢」という評価にも興味を覚えた。
どこで見た記述かは失念したが、ハムレットについて「一直線に死に向かう人物」と指摘している文があった。
評価だけを見るとハムレットとデズデモーナさんは対象的だ。しかし何故か同じ匂いを感じる。一直線に生に向かうことと死に向かうことは、案外同じ意味なのかもしれない。不思議だ。
『ハムレット』に関するこの本での指摘で一番印象深いのはハムレットの独白の数。異例の多さ、と言われている。
たぶんこの量って減らすことは簡単だったと思う。常にホレイショーが隣にいて、彼に語り聞かせるとか。あるいは『リア王』のように道化を登場させ、話し相手にするとか。シェイクスピアもそれは考えたんじゃなかろうか。
でもやらなかった。そこがいいんだと思う。視線を強く意識する劇であることが強調される。そしてハムレットの孤独が浮き彫りになる。素晴らしい演出だ。
この独白の多さと、ハムレットの最期のセリフが『いまは、沈黙』であることは、呼応しているような気がするが……。どうなんだろう。このセリフが最期なのって、何か気になるんだよね。
絶対意味あるよね。何だろう。沈黙とは何だろう。沈黙と対極にあるのは何だろう……それが問題だ。 -
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ネタバレ別の方の訳でハムレットを読んだ1年後、本作を松岡和子さんの訳で拝読しました。
ローゼンクランツとギルデンスターンは初見時にあんま注目してなかったけど、今見るとハムレットがすごく辛いな。旧友だったのに敵側に……。最後に処刑ってなって『良心はちくりとも痛まない』ってハムレットが言うシーンは悲しかった。
ふたりのことあんまし友だちだと思ってないからこんなこと言ったのかなって思ってたけど、逆な気がする。ハムレットは彼らのことを好きだったんじゃないかな。ハムレットは愛する人に裏切られ続けるよね。旧友ふたりもだし、ガートルードさんもだし、オフィーリアちゃんもだし。もしかしたら叔父も。
(この雰囲気、意外とアテネのタイモンに似ている?)
ハムレット自身も言ってたけど、ハムレットも被害者なんだと今は思う。「関節の外れた世界」が生んだ「狂人ハムレット」の被害者。
なお、クローディアスひとりが悪いというのもちょっと違うと思っている。何だかもっと大きなものが後ろにありそう。権威への欲望という概念、演技という人類が覚えてしまった悪しきシステム、……。
弱き者、汝の名は人間。 -
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ネタバレ堂々とデズデモーナさんに「悪口だけが私の取り柄」と言うイアーゴー。騙す側の彼が「特技は悪口だ」と公言してるのは意外だ。オセローもデズデモーナさんも身分のある人だから、誠実なフリをして近づく悪党には慣れているのかな。だからむしろ悪口が得意なんて言うイアーゴーが正直に見えるのかも。もしくは道化みたいで接するときに警戒心が薄くなるのかも。
しかし「正直」という言葉がしょっちゅう出るね。オセローはイアーゴーを正直と言いすぎ。だから心の内では彼を疑ってるのかなとも思う。後戻りできないから正直だと信じようとしてる、みたいな。
面白いくらい鮮やかに騙されていくので、ラストを見るまでは悲劇か喜劇か分からない感じがした。これは興味深い発見だ。
読みながら私は何度もシェイクスピアの喜劇『ウィンザーの陽気な女房たち』を思いだしていた。(イアーゴーがロダリーゴーを刺した後、芝居がかった喋り方するのも、実はちょっと面白かった)
もし誰も死ななければ悲喜劇カテゴリになった作品かもしれない。
シェイクスピア作品はジャンルに縛られない魅力がある。
松岡和子さんの「デズデモーナさんは若い女の子」説はかなり濃厚だと私も思う。第二幕第一場のイアーゴーのセリフに、オセローとデズデモーナさんは年齢の釣りあいが取れていないと明示されているし。(角川版の訳も年齢差へ言及した訳だった)
若いのに狡猾、というセリフもあるね。
年の差の悲劇と言えるかもしれない。 -
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ハムレット観劇のために。ハムレットはちゃんと読んだことがなかった。オフィーリアには憧れてきたけれど。
「いまの世のなかは関節がはずれている」
「ことば ことば ことば」
「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ」←生きるべきか死ぬべきかが有名ですが
これらのセリフもグッときますが、
ハムレットの魅力のすべてを表現したような…
「何を言う、俺は胡桃の殻に閉じ込められても、無限の宇宙を支配する王者だとおもっていられる」
とくに、母である王妃に対しての思いを独白する悩めるハムレットの何気ないひと言、
「すぐに(と言うだけなら簡単だ。)」
この短い台詞、舞台で確かめてまた胸にぐぐっと迫る。
「…言葉の刃は用いても、本物の剣は抜くまい。
舌と心があざむき合ってくれればいいのだが。
言葉でどんなに責め苛もうと、
それを行為に移すのは、この心が許しませんように。」
父が亡くなり2ヶ月足らずて、現王のクローディアスの妃となってしまった母をどうしても許せない息子の葛藤を言葉の中で苦悩するハムレットの姿につい、つい彼のことを庇護したくなってしまう。
オフィーリアにあんな酷いこと言った弱い男とわかっても…
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この本の最初のテーマは『ハムレット』なのですが、そこで語られる松たか子さんのエピソードはいきなり私の度肝を抜くものでした。著者の松岡さん自身も「血が逆流するって、あるのね。あれは私の翻訳家人生における最大の衝撃のうちのひとつだったと同時に、役者に対する敬意が頂点に達した瞬間です」と本書で述べていました。
この他にも山﨑努さん、蒼井優さん、唐沢寿明さんのエピソードが出てくるのですがどのお話もとにかく格好良すぎます。超一流の役者さんのすごさにただただ驚くしかありません。
2023年早々にものすごいショックを受けた作品でした。これはぜひぜひおすすめしたい名著中の名著です -
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アーデンの森で喜劇的なイベントが起こるこの感じは「夏の夜の夢」と似ているし、女性が男装をして思い人(パートナー)をだますという仕組みは「ヴェニスの商人」に似ている。
これらはすべて私が大好きな作品だ。そして本書「お気に召すまま」もその中に加えられた。シェイクスピアの戯曲なら悲劇より断然喜劇。二人の男女の恋愛がうまくいく過程が幸せすぎて顔がにやけてしまうのだ。
「ハッピーエンドよりもバッドエンドが好き」という人は死ぬほど見かけるが、本当か?もちろん私も余韻があったり、考察の余地が多いモヤモヤさせる作品は好きだが、この発言毎回気になってしまう。確かにバッドエンドものは劇的展開が多く、ストーリー構成が美しかったり、緻密な芸術性があり、「伏線回収がある美しい漫才」を好む人なんかは例外なく好きなジャンルであろう。
しかし、ハッピーエンドものを軽視するのは、単にあなたの読書量がまだまだ足りていなくて、質のいいハッピーエンドものにまだ触れていないだけではないのか?と思わずにはいられない。感性は人それぞれであるから、否定しようとしているわけではないのだが、「シェイクスピアの喜劇を読んでも同じことが言えるのか?一回読んでみろ!」と言いたくなる(笑)
つまり私は「ハッピーエンドもバッドエンドもどっちも好き。序列はつけられない」と答えるということだ。
また、pp.83-84にかけて、「この世界すべてが一つの世界、人はみな男も女も役者にすぎない」という一説があった。個人的にこの一節いいなと思ってフレーズ追加したところ、読み終わってネットの情報を漁ると、このフレーズ、つまり “All the world’s a stage. All men and women merely players”は有名な一説であることがわかって嬉しかった。
「お気に召すまま」が何を指しているのかは是非実際に読んで感じてほしい。よい読書体験だった。 -
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ちくま文庫版シェイクスピア全集第15巻。それぞれ事情のある男女たちがアーデンの森の中で繰り広げる恋愛喜劇。
シリアスな事情でアーデンの森に逃げ込んでくる若い貴族の男女と、もともと森に住むカップル未満の男女。男装するヒロインが彼らを煙に巻き、冒頭のシリアスさはどこへやら、スラップスティック・コメディ的な楽しさを提供してくれる。会話劇の面白さや、名言・名文句などの魅力が大きく、シェイクスピア作品の中でも原文で読むか舞台で楽しむということの意味合いがより強いタイトルに感じた。とはいえ、本訳はわかりやすい訳注もあるので楽しんで読めた。「この世界すべてが一つの舞台、人はみな男も女も役者にすぎない。……」というジェイクイズの有名な台詞を読むためだけでも手に取る価値がある一冊。 -
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ちくま文庫版シェイクスピア全集第10巻。商業都市ヴェニスと架空の都市ベルモントを舞台に金と愛の取引を描く。
短いにも関わらず、いくつもの要素が混みいった構成になっていて、非常に密度が高い。商人のアントーニオが窮地に陥る「人肉裁判」がメインに思えるが、シャイロックを通してユダヤ教徒とキリスト教徒の関係性の問題が描かれていたり、「金銀銅の箱選び」や指輪のやり取りで結婚や夫婦関係の問題を扱っていたりなど、奥が深くて一読では消化不良となった。裁判の痛快さと喜劇の余韻を味わったあとは、何度も読み込んだり、他の解説や考察などに触れて思索を必要とする作品だと思う。しかしこの奥さんはちょっと恐いかもなぁ(汗)。 -
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ネタバレシェイクスピア四大悲劇のひとつ。日本人にも馴染みの深いゲーム、リバーシの商品名の由来元。黒と白は肌の色。
テーマは「嫉妬」。シェイクスピアの他作品に比べると物語の構造は比較的単純で、わかりやすい話ではある。あらすじだけ見ても面白くないかもしれない。しかし実際の会話文に触れていくと読者にもドズ黒い感情が喚起され、嫉妬からくる苦悩という恐ろしい体験に巻き込まれてゆくところが、シェイクスピアのすごいところなのだろう。クライマックスに到るまでの盛り上がりが激しく、結末自体はおおよそ予想がつくものの、ラストのセリフでは予期しなかった感動を目の当たりにすることになる。
天才的な悪知恵であるイアゴーへの怒りと、あまりに純真すぎるオセロへのもどかしい気持ちで、終始感情を揺さぶられながら、壮絶な結末に絶句しつつ、ラストのオセロの想いに感動する。嫉妬という人間普遍の感情にフォーカスした物語はシンプルながら強烈なものを心に残してくれたと思う。 -
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ネタバレシェイクスピア四大悲劇の一つ。リア王と三人の娘たちの話、グロスター伯爵とその二人の息子たちの話が交差する。
冒頭、ちょっと言葉が足りないだけで、いきなり激高するリア王には面食らった。甘言の心地よさに惑わされ、最も愛ある娘の真意を読み取れぬ浅はかさ。切り捨てられても愛と忠誠を貫く娘と家臣の気高さ。親を裏切る息子、勘違いを受けて好機を待つ息子。そういった様々な人間の思惑、言動が胸にしみる重厚な物語だ。単に悲劇的なだけではなく、人間の愚かさと高潔さが、彩り濃く描かれていることが非常に印象深い。全滅エンドではなく、これだけの悲劇がありながら、わずかに希望を感じさせる終わり方をするのがすごく良かった。ケントさんは尊敬できるし、何よりもエドガーさんがカッコ良すぎる。まだ全作品を読んではいないが、個人的に本作はシェイクスピアで一番のお気に入り作品になるかも。 -
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ネタバレ2021年に個人での完訳を達成した松岡和子による『ちくま文庫版シェイクスピア全集』第1巻。1996年刊行。
あまりにも有名なタイトルなので、以下ネタバレあり。
王子が復讐を誓うところから物語は始まるが単純な復讐譚とはならず、陰謀や不運が重なってまさかの全滅エンド。そこに至るまでの経緯の複雑さと謎の多さ、結末の絶望感のインパクトが深く心に残る。格言めいたセリフが多く、それらを単発で抜き出しても味わい深い。日本語訳ではどうやってもわかりづらい言葉遊びなどもこの翻訳では注釈が詳しいので助かる。
1600年頃に書かれて以後繰り返し上演され続け、日本での翻訳も多数である文学史上の傑作『ハムレット』。シェイクスピアのなかでも最も研究されている作品ということで、自分などではまだまだ読み解けないが、触れる人ごとに汲み取れるものがあるだろうと思う。 -
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ネタバレ複雑なジェンダーの仕掛け、
有名な台詞、密度の濃くなっていく反復や掛け合い等、
ポイントが多く読み応えがある作品。
訳者あとがきに挙げられた反復や掛け合いの台詞読後全て確認。
ほとんどが読めば思い出せるもので、
舞台映えしそうだと感じた。
この部分だけでも他の訳や原文が読みたいと思った。
追放された兄弟、男装するヒロイン等
おなじみのモチーフの数々は実家のような安心感。
シーリアのお相手は誰になるのだろう?と読み進めていたら
まさかの人物で笑ってしまう。これはずるい(笑)
男装する前からジェンダーの垣根を越えるように
生き生きとしているロザリンドが大好き。 -
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ネタバレシェイクスピアおなじみの「思い込みによる悲劇」の上、
登場人物が少なく企みの中心には
常にイアゴーがいるのでとても読みやすかった。
イアゴーが自身を積極的に悪役としている姿勢はリチャード三世を思い出させる。
誰が見ても立派な軍人であるイアゴーが
鬱屈したものを抱え込んでいるというのが熱い。
四大悲劇の中では『オセロー』が一番好きかな。
ハンカチを盗むのに関与していなければ、
エミリアを純粋にデズデモーナの忠臣として見ることができたのだが……
自分のした事が主人の災いになるというのが
悲劇性を増すのだろうか?
ともかく、オセローはじめ主要な登場人物が顛末を把握した上で終幕となる展開は好み。
そういう意味ではすっきりと読み終えることができた。