あらすじ
もしも借金が返せないのならば、約束通り貴方のその体から1ポンドの肉を切りとらせろ――。ユダヤ人の金貸しシャイロックがアントーニオに要求した証文が現実となった。それに対してヴェニスの法廷が下した驚くべき判決とは? そして裁判官の正体は? 商業都市ヴェニスとロマンティックな愛の町ベルモントを舞台に、お金とセックスの隠喩をちりばめて繰り広げられる、世界で一番有名な喜劇を鮮やかな最新訳でどうぞ。
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Posted by ブクログ
ちくま文庫版シェイクスピア全集第10巻。商業都市ヴェニスと架空の都市ベルモントを舞台に金と愛の取引を描く。
短いにも関わらず、いくつもの要素が混みいった構成になっていて、非常に密度が高い。商人のアントーニオが窮地に陥る「人肉裁判」がメインに思えるが、シャイロックを通してユダヤ教徒とキリスト教徒の関係性の問題が描かれていたり、「金銀銅の箱選び」や指輪のやり取りで結婚や夫婦関係の問題を扱っていたりなど、奥が深くて一読では消化不良となった。裁判の痛快さと喜劇の余韻を味わったあとは、何度も読み込んだり、他の解説や考察などに触れて思索を必要とする作品だと思う。しかしこの奥さんはちょっと恐いかもなぁ(汗)。
Posted by ブクログ
「体からきっかり一ポンド」「好きな部分を切り取る」裁判以外のことはあまり知らずに読んだ。
シャイロックに娘がいたことや、
箱選びの話が挿入されていること等、
知らないことがたくさんあった。
アントーニオの尽くしっぷりが浮いている感じがしたけど、
元ネタではアントーニオ的な人はバサーニオ的な人の養父なのね。
シャイロックがひたすら可哀想。
リアルで周りにいたら絶対敬遠するであろう
バサーニオをどうも憎めないのが不思議。
Posted by ブクログ
ハムレット、ロミオとジュリエットに続いてシェイクスピアちゃんと読み3冊目。これが今のところ1番おもしろくて読みごたえがあった。
契約・法・金の怖さ、友情のありがたさ、ユダヤ人の気の毒さ、等々、普遍的テーマだからこそ、400年も前に作られた物語が今も読み継がれているのだとおもう。
また時々、読みかえしてみたい。
Posted by ブクログ
さすがにシェイクスピア作品だけあって、非常におもしろかった。とくに「人肉裁判」の場面は白眉で、こういうロジックがあるのかと関心すらさせられた。しかし、いっぽうでたんなる喜劇としてみれない部分があることも事実である。シャイロックが一転窮地に追い込まれるシーンは、たしかに快哉を叫びたくなるし、実際舞台で観たら痛快このうえないと思う。しかし、人種差別的な要素も含まれており、シャイロックに対する同情の余地もすくなくない。たんなる喜劇とは違った深みがあり、そこもまたやはりシェイクスピアが書いた作品なのだと感じさせられる。喜劇をたんなる喜劇にしないところが、文学の文学たる所以なのだろう。
Posted by ブクログ
肉を担保に金を貸りた人間と、貸したユダヤ人の金貸しの物語。金貸しシャイロックの訴えは、現代の世においては人種差別という問題を呼び覚ます。ハッピーエンドのように見えて、その裏には何か釈然としない問題をはらんでいる素晴らしい作品。
Posted by ブクログ
シェイクスピアの描く人間模様は 時代を超えてドキッとさせられるところばかりですが、このお話はユダヤ人差別、白人至上主義がいやらしいほど!
ですが、そこは目をつぶってまずはお話の面白さを楽しみました
ヴェニスの商人アントーニオは、財産の全てをいくつもの商船に投資中。
そこへ親友パサーニオがベルモントのポーシャという美しく素晴らしい女性に求婚するため、金を貸してほしいとやってくる。ポーシャは父親からの遺産を相続し、あまたの権力者たちが求婚にやってくる。彼らと渡り合うには財がいるというのだ。
とにかく友情にかけて愛情深いアントーニオは、今は財産は船の上、ひとまず自分の信用のもと、ユダヤ人金貸しのシャイロックから金を借りることにする。保障人がアントーニオと聞いたシャイロックは、これまで受けてきた屈辱を今こそ晴らそうと、違約金代わりにアントーニオの肉1ポンドを切り取ることを条件に貸すという。
ベルモントではポーシャが 亡き父の遺言により金、銀、鉛の箱を求婚者達に選ばせていた。見事正しい箱を選んだパサーニオがポーシャと結ばれる!
ところがヴェニスでは、アントーニオの船がのこらず難破したという噂が流れ、シャイロックはアントーニオの肉1ポンドのために裁判を起こす。
ここにやってくるのがなんと男装し、若き法学者に扮したポーシャ!
と、こんな感じでいろいろ詰め込まれたストーリーなのですが、これが舞台となるときっと観客をひと時たりとも飽きさせないのでしょう
ユダヤ人の祖先は卑しい商売と言われる金貸ししかできなかったという歴史も垣間見ることができる、今となっては文学的な側面が大きい作品でもあるのです。
それもドタバタコメディですからね!すごいな
Posted by ブクログ
これを読むとユダヤ人がなぜどのように欧州で差別されるようになったのかを少しわかる。中世における欧州ですでにこうだったのか、という視点が得られる。
Posted by ブクログ
シャイロックを悪役とするなら勧善懲悪ど真ん中の作品だが、ユダヤ人をはじめとする非キリスト教徒に対する差別的な表現や、メランコリー(中野氏の解説によれば本作が上演されていた当時のイングランドは史上稀に見る不況で、登場人物と同じように鬱になる人が多かったかもしれないらしい)等、痛快な逆転劇ではない面があり、考察しがいがある。
聖書の引用や逸話を用いたウィットに富んだやりとりが多いが、当時の人はどのくらい理解できてたのかが気になった。博識な人はより楽しめるが、聖書の知識がなくとも、ワクワクできる展開だった。
Posted by ブクログ
最後、どうしようもなくごちゃごちゃで笑ってしまった(爆笑、とかでなく、鼻で笑ってしまうというのかなんかそういう感じの…)。あらすじ読んだ時に「喜劇なの!?」となったけれど、読み終わった今、「喜劇ってこういうこと……?!」となったりした。
シャイロックがもっとこうなんかするのかと思っていたよ。
「いっそ大酒くらって肝臓をほてらせたい、
命を削る溜め息で心臓を凍らすのはまっぴらだ」
グラシアーノのこの台詞はなんか好き。
Posted by ブクログ
シェイクスピア全集 (10) ヴェニスの商人
(和書)2009年04月16日 19:11
2002 筑摩書房 W. シェイクスピア, William Shakespeare, 松岡 和子
学者としての翻訳、原文の性的表現の指摘などいろいろ註があって参考にはなります。詩的霊感としての表現についてもうちょっと追求したら面白いのになと思った。
一切の諸関係をくつがえそうとする姿勢がここにもみられる。シェイクスピアの世界性・普遍性・世界市民という認識がここにも良く現れている。ここがなければ元になった作品と同じ道を歩むだろう。
彼の作品が今でも読まれるのはこの為かもしれない。
岩井克人の「ベニスの商人の資本論」を読んだ。拓大で机の下に本を置き忘れたら学生課に届けられていた。いい奴もいる。