【感想・ネタバレ】オセロー ――シェイクスピア全集(13)のレビュー

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ネタバレ

シェイクスピア四大悲劇のひとつ。日本人にも馴染みの深いゲーム、リバーシの商品名の由来元。黒と白は肌の色。

テーマは「嫉妬」。シェイクスピアの他作品に比べると物語の構造は比較的単純で、わかりやすい話ではある。あらすじだけ見ても面白くないかもしれない。しかし実際の会話文に触れていくと読者にもドズ黒い感情が喚起され、嫉妬からくる苦悩という恐ろしい体験に巻き込まれてゆくところが、シェイクスピアのすごいところなのだろう。クライマックスに到るまでの盛り上がりが激しく、結末自体はおおよそ予想がつくものの、ラストのセリフでは予期しなかった感動を目の当たりにすることになる。

天才的な悪知恵であるイアゴーへの怒りと、あまりに純真すぎるオセロへのもどかしい気持ちで、終始感情を揺さぶられながら、壮絶な結末に絶句しつつ、ラストのオセロの想いに感動する。嫉妬という人間普遍の感情にフォーカスした物語はシンプルながら強烈なものを心に残してくれたと思う。

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2022年09月15日

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ネタバレ

シェイクスピアおなじみの「思い込みによる悲劇」の上、
登場人物が少なく企みの中心には
常にイアゴーがいるのでとても読みやすかった。

イアゴーが自身を積極的に悪役としている姿勢はリチャード三世を思い出させる。
誰が見ても立派な軍人であるイアゴーが
鬱屈したものを抱え込んでいるというのが熱い。
四大悲劇の中では『オセロー』が一番好きかな。

ハンカチを盗むのに関与していなければ、
エミリアを純粋にデズデモーナの忠臣として見ることができたのだが……
自分のした事が主人の災いになるというのが
悲劇性を増すのだろうか?

ともかく、オセローはじめ主要な登場人物が顛末を把握した上で終幕となる展開は好み。
そういう意味ではすっきりと読み終えることができた。

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2022年02月17日

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ネタバレ

「4大悲劇」にも分類される、シェイクスピアの有名な戯曲。わたしは過去にもシェイクスピア作品をいくつか読んでいるが、本作はバツグンにおもしろく、ひょっとしたらベストかもしれない。内容はイアゴーの謀略によってオセローの人生が狂ってゆく話で、現代の感覚からしてもぜんぜん古びていない。だからこそいまだに世界各地で上演され続けているのだろう。一般的に本作のキイワードとしては「嫉妬」が挙げられるが、しかし登場人物たちの心情は、単なる「嫉妬」のひとことでは片付けられないところがあり、それこそがキモではないかと思う。オセローは被害者とはいえ、キャシオーの言葉を単純に受け容れてしまい最愛の人を信じてやれなかったという点で同情しがたいし、キャシオーも大悪人かといえば、夫婦仲が悪化していることなど人間臭い部分もあって、ひとつの像には単純には当てはめられない。作品じたいはさほど長くないが、会話のひとつひとつごとにその何倍も厚い感情が込められていて、やっぱりシェイクスピアは世界一の戯曲家であると思った。

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2019年06月04日

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この訳本は恐ろしく有能です。
原文とこれを対照しながら読んでくだけでも、かなりの作者の実力が伺われます。

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2009年10月07日

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読書会課題本。改めて読んでも面白い。今まで別訳に親しんでいたが、この松岡訳も悪くない。原文がどうなっているのか気になる箇所に、漏れなく注をつけている親切設計なのもとても良い。

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2021年10月27日

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大嫌いなシェイクスピア悲劇を読み返そう第二弾!
やっぱりムカツク、オセロー。お前が一番バカモノだ。は20年経っても変わらなかった。
が、イアゴーの悪っぷりがステキすぎる。舞台で観たいなぁ。演じる役者、演出でいろいろなイアゴーが観られそうだ。

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2009年10月04日

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四大悲劇のうち、これだけが未読でした。
これはご存知将軍オセローが部下のイアーゴによって妻を疑い殺害する悲劇です。しかし、こんな簡単に騙されるものだろうか…と素朴な疑問。

そもそも事の起こりオセローが副官にイアーゴではなくてイケメン青年を抜擢したこと。それで嫉妬したイアーゴが画策して事件に至る。イアーゴはシェークスピア作品中最も腹黒い人物なのに他の登場人物はこぞって彼を「正直だ」と言う。一見正直で人当たりのいい人ほど腹の中はわからない…という事なんだけど…いい人って実は軽く見られてしまう。

オセローもイアーゴを都合よく使っておきながら、彼の中の野望や出世欲に気付けなかった。いい人だから野望なんか持ち合わせていないと勝手に思い込んでいたのだろう。そういう点ではオセローの上司としての甘さと奢りが招いた悲劇とも言える。

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2023年09月29日

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「嫉妬」の物語と解説されているが、その嫉妬を生み出した各自の劣等感(人種差別、階級差別など)を深掘りしたい。

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2022年07月14日

Posted by ブクログ

よく引用もされ筋もよく知られている戯曲で、ハムレットとかよりずっとわかりやすいと思っていたのだが、逆に面白さが理解しづらかった。
読者に見えるイアーゴーは最初から裏表のある男、ずるい男、なのに、作中人物誰もが終盤まで「彼は善良だ、彼は信頼できる」と言う。これで戯曲でなかったら、作中で「うわあ、これは裏の顔を知らなかったらだまされるわ」と読者に思わせないとだめだと思うし、むしろ最初は善良な役柄として出しておいて話の途中で読者の度肝を抜くべきだと思うが、戯曲なので舞台ではそれを演技で見せられる、ということなのだと思う。
イアーゴーがどうしてそんなにもオセローを陥れたいのかはっきりは語られないが、黒人であり自分より下だと思う相手なのに、身分が高く尊敬されていて美しい貴婦人までめとったことが許せない、というのが現代ではわかりやすい解釈な気はする。
オセローにも意外と感情移入できるシーンが少ない(彼を取り巻くレイシズムに義憤は感じるけど)のだけれど、それも役者の魅力で変わってくるのかもしれない。
舞台で観てこそ、の戯曲なのだろうか。

追記
ナショナル・シアター・ライブで公演の映像を見たところで追記。いくつものプロダクションを見てこそわかることもあるのだろうが、とりあえず。
松岡先生も書いているが、ロドリーゴーやキャシオー、オセローなど名前のある役ほとんどが上流階級なのに対して、イアーゴーは召使などと同じくらいの、一段下の階級だということが大事なのかなと思った。みんなが彼を「正直者」というのもあなどっていることの裏返しなのかもしれないし、イアーゴーがあんなにオセローを憎むのも「自分は貴族じゃないから昇進は難しいかもしれないけど、オセローは黒人だから、他の貴族とは違うから、自分を取り立ててくれるんじゃないか」という期待を裏切られて、「黒人のくせに!」と憎さ百倍なのだとすれば腑に落ちる。
オセローがあんなに簡単にだまされるのは、ずっと軍隊の人間関係しか知らずに生きてきてきたことや、internalized racismのために自分が醜いと思っていること、デズデモーナとすごく年の差があって自分に不安があることが要因なんだろうなとは思うけど、でもやっぱり納得はしづらい。今の感覚で言えばDV夫だし、デズデモーナのことを「真珠」「宝」とは思っても、対等に人生を分かち合う伴侶としては見ていないから、彼女の愛情よりイアーゴー(軍隊の仲間)を信じるんじゃないのか。役者さんは軍人的魅力をよく出していたけどそれでも感情移入は微妙だったので、すごく難しい役だなと思います。

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2014年12月19日

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