倉本一宏のレビュー一覧

  • 平安貴族とは何か 三つの日記で読む実像

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    1000年以上も前とは信じられないほど高レベルの文化を保った平安時代、それを支えた平安貴族に興味を持ち、本書を手に取った。

    本題は道長、行成、実資の3名が各々記述した日記を読み解くことにあるが、古記録に疎いため序章の日記(にき、と読むそう)に書かれる事柄、日本で日記が多く書かれた理由などもとても興味深かった。

    一通り平安時代の政上の事件を知っている読者に対して、「日記を通してその裏側を伝える」ことが本書の主な狙いだと感じたので、日本史を復習後に再読したい。

    本書はラジオ収録を文字起こししたものということで、何度か既出の説明が見られることがある。人名や記録名がわからなくなってしまうことがあ

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    2024年04月07日
  • 内戦の日本古代史 邪馬台国から武士の誕生まで

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    ネタバレ

    倉本一宏先生は帝国主義がアジア諸国を侵略した歴史を嘆く、平安貴族を怠惰で情けなく思う心が武力に囚われた日本人となった事をおかしいと感じたのだろう「日本は戦争をしない国である(小規模な内戦のみ)」「外国で起きた民族同士の戦争のような徹底的な殲滅戦はなかった」武士の出現で儒教的で和平や懐柔による解決を・敵にも穏便に対応していた筈が前九年・後三年の役の様になった事に衝撃を受けた著者は国内の主だった戦いが内戦で小規模で犠牲者も少なかったことを古代史の内戦全般を詳らかに描く・・・月並みだが「中国大陸や朝鮮半島から離れた島国であったために海外勢力からの侵略を想定せずにすみ、強力な中央集権国家建設の必要性を

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    2024年03月16日
  • 紫式部と藤原道長

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    紫式部と藤原道長がこんなにも互いの力を必要とする関係にあったというのは、初めて知った。他の方の感想を読むと、「だいたい知っていることが多い」と書かれているので、この時代にくわしい方にはほぼ常識なんだろう。自分はなんも知らないのねとあらためて思った(^_^;)
    大弐三位が紫式部の娘だということも知らなかったし。

    こまかいことは読むそばから忘れていってしまったけど、三男の道長が思いがけず藤原家の筆頭になる過程や、そのあともろもろの駆け引きでのぼりつめていく過程など、淡々と描かれているにもかかわらず生々しかった。

    あ、あと、病気をするたびに「調伏」して、だれかの怨霊が出たことになっていて、そうい

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    2024年02月10日
  • 紫式部と藤原道長

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    紫式部と道長の生涯が確実な一次資料のみによって書かれている。著者の別の本で既に読んでいた内容も含まれるが、二人に絞っているので分かりやすい。
    ところどころ、これまでの国文学の世界での学説を「どうしたらこのような発想になるのかまったく理解できない」などと否定しているのも新鮮。

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    2024年02月04日
  • 紫式部と藤原道長

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    本書は同著者の『増補版 藤原道長の権力と欲望 「御堂関白記」を読む』(文春新書、2023)と内容もかぶっている部分が多いのだが、より紫式部と道長の関係性に焦点を当てたものである。

    帯の惹句には『源氏物語』なくして道長の栄華もなかったとあるが、逆もまた然りであり、道長のサポートがなけらば『源氏物語』もなかった。

    たとえば本書で述べられているように『源氏物語』に必要と思われる紙の量を確保できたのは最高権力者であった道長あってこそのことであった。こうした著者の歴史実証主義にこだわったアプローチは実に面白い。逆にところどころで国文学系の先生たちの説を「理解しがたい」と退けているが、この新書でも歌の

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    2024年02月01日
  • 紫式部と藤原道長

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    先日読んだ同著者の『増補版 藤原道長の権力と欲望 紫式部の時代』に続き、今年の大河ドラマの「副読本」として読んだ。『御堂関白記』『小右記』などの古記録や『紫式部日記』をもとに、事実関係を年代順に解説している。不明な点の多い紫式部の生涯や『源氏物語』の成立についても、説得力のある主張を展開している。
    余談だが、著者の独特な言い回し(〜であるが。)を見るにつけ、クスッと笑ってしまう。

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    2024年01月19日
  • 平安貴族とは何か 三つの日記で読む実像

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    平安時代の古記録であり、一次史料とも言える『御堂関白記』、
    『権記』、『小右記』から解き明かす、平安貴族の実像とは。
    ・はじめに  序章 古記録とは何か
    第一部 道長は常に未来を見ていた
               ――藤原道長『御堂関白記』を読む
     第一章 「自筆本」の価値
     第二章 「一帝二后」成立の裏側
     第三章 書き方や消し方からわかること
     第四章 女の懐妊祈願に決死の参詣
     第五章 権力を恐れない者・伊周
     第六章 常に未来を見据えて
    第二部 子孫繁栄のための苦悩――藤原行成『権記』を読む
     第七章 赤裸々な記録の意図
     第八章 次期東宮をめぐる苦悩と策謀
     第九章 平安貴族は何の夢を見

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    2024年01月16日
  • 藤原氏―権力中枢の一族

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    藤原鎌足から藤原頼道まで詳細に記載し、中世以降も要所要所述べており、一冊読むと藤原氏の流れがよくわかります。読んでいて思うのは、藤原氏がどれだけ日本の歴史に影響及ぼしている一族だったかということ。絶頂期には外祖父、摂政として天皇をも凌ぐ影響力を持っていました。ただそれでも天皇の代わりにはなれませんでした。それを物語るのが藤原仲麻呂の乱(恵美押勝の乱)です。天皇に対し反乱を起こすも呆気なく負けます。その当時貴族としては圧倒的な権力を持っていた藤原仲麻呂が、天皇を前にするとどうしようもなく南家が衰退するまで後世に影響を与えた出来事は、その後の藤原氏に多大な影響を与え、天皇に逆らうのではなく外戚関係

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    2024年01月10日
  • 平安京の下級官人

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    平安時代の摂関期での、平安京での下級官人について、
    古記録から拾い上げ、その仕事や生活等を紐解く。
    ・初めに
    序章 摂関期の平安京
    第一章 下級官人の仕事 第二章 生活のあれこれ
    第三章 恐怖の対象   第四章 平安京の人びと
    ・おわりに 平安京の日々
    略年譜、関係地図(平安京内)、関係地図(平安京外)、
    平安宮大内裏地図、平安宮内裏地図、参考文献有り。

    『本朝文粋』『池亭記』『権記』『小右記』等の古記録に、
    僅かながら残る摂関期、平安京での下級官人の姿。
    五位以上の貴族と、六位以下の下級官位や無位の人々との
    大きな格差。更に、下級官人の家に生まれたら、
    ほぼ下級官人にしか任じられない現実が

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    2024年01月05日
  • 藤原道長「御堂関白記」を読む

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    皇位を巡る泥々した権力闘争の姿が、本人の日記を通して垣間見え、解説と併せて読むと、中々スリリングな内容。

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    2023年12月30日
  • 増補版 藤原道長の権力と欲望 紫式部の時代

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    御堂関白記、小右記、権記を基に藤原道長の人物像を炙り出した作品。著者は御堂関白記が世界記憶遺産に推薦されることが決まった際に、推薦に関わる仕事をしていた方。なので御堂関白記や小右記などを丁寧に読み解いてくれているため、その時その時の道長の行動、感情などがよく分かります。道長のような絶対的な権力を持っていたとしても、いや持っているからこそ、その権力を維持できるか、後世に残せるかに不安がり、怯えている様子が伝わってきます。逆に娘が中宮になった時の絶頂感や喜びも伝わってきます。著者も言ってましたが、絶対的な権力を持ち客観的な成功を収めていることと、本人自身の幸福はイコールとは限らないこと。幸福な人生

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    2023年12月15日
  • 平安貴族とは何か 三つの日記で読む実像

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    <目次>
    序章   古記録とは何か
    第1部  道長は常に未来を見ていた~藤原道長『御堂関白記』を読む
     第1章  「自筆本」の価値
     第2章  「一帝二后」成立の裏側
     第3章  書き方や消し方からわかること
     第4章  女の懐妊祈願に決死の参詣
     第5章  権力を恐れない者・伊周
     第6章  常に未来を見据えて
    第2部  子孫繁栄のための苦悩~藤原行成『権記』を読む
     第7章  赤裸々な記録の意図
     第8章  次期東宮をめぐる苦悩と策謀
     第9章  平安貴族は何の夢を見たか
    第3部  共有財産としての日記~藤原実資『小右記』を読む
     第10章  日記に見る実資の大望
     第11章  出世レース

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    2023年12月04日
  • 増補版 藤原道長の権力と欲望 紫式部の時代

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    2024年大河ドラマの予習に。古記録をベースに道長政権期の歴史を時系列で説明している。淡々とした記述だが、著者の感想がところどころに挿入されていて、読みやすい。

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    2023年10月09日
  • 権記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典

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    摂政藤原伊尹を祖父とし、母方を四代さかのぼれば醍醐天皇に至る。
    父義孝が早世しなければ…ときっと思っていたに違いない。
    それが藤原道長と同時代に生きたばかりに、官吏としては不本意なポジションしか得られなかったのが行成。

    とはいえ、能力の高い人である。
    早いうちに道長に尽くすことで、自分の生きる道を切り開く。

    権記は彼の残した日記であり、日次の記録である。
    それほど彼の内面を克明に記すものではない。
    歴史家にとっては、一級の史料だが、自分など一般人は、それこそ『蜻蛉日記』のように、彼の内面を読もうとしてしまう。
    それは間違っている、とは思うけれど…。
    やはり一条天皇に、敦成親王の立太子を決断

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    2023年08月27日
  • 藤原氏―権力中枢の一族

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    副題は「権力中枢の一族」。
    藤原家が日本の権力の中枢にいたことは疑いがない。
    藤原家の始祖、鎌足と天智天皇の二人三脚から、鎌足の息子 不比等と持統天皇の二人三脚へ。
    梅原猛と上山春平が注目するまで、不比等の存在はそれほど大きなものとは思われていなかった。
    しかし、二人の業績により、現在、藤原家1300年の礎を築いたのが、素性もあまり明らかではない不比等であることが明らかとなった。
    徳川幕府が260年だから、日本史上、天皇家に次ぐ長期繁栄を誇った一族だと言える。
    そして、不比等が「日本書紀」と「大宝律令」の主導者だとすると、日本と言う国家の礎を築いたのも不比等だと言うことになる。
    そして、日本書

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    2023年08月16日
  • 藤原氏―権力中枢の一族

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    鎌足から概ね、院政期あたりまでを詳細に書かれている。
    古代では、後発組として豪族との覇権争い、朝廷の首班に近づくと皇族や他氏、そして以降は同族間で政権争いを繰り返す。

    藤原氏の一族が広がると共に、一族の中での争いがよく分かった。

    ただ、よく似た名前が多くてルビが多ければ、もっと読みやすかった。

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    2023年07月22日
  • 平氏―公家の盛衰、武家の興亡

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    源氏を理解するには、平氏を理解するべき。

    政治機構を作った一族は、本来なら滅びる必要は無いはず。

    時代の流れは怖いものだ。

    中世を勉強しよう。

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    2023年05月27日
  • 藤原氏―権力中枢の一族

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    鎌足の創始から武家の時代まで、日本の政権の中枢に関わり続けた藤原氏。
    時間の広がりと、空間的な広がりの中で一族の盛衰を追うのは大変なことだろう、と素人でも想像がつく。
    とはいえ…正直、自分はこの本の真価があまりよく理解できていないに違いない。

    膨大な人の羅列。
    簡潔な説明が添えてあるのだが、あまりにも人が多すぎて、今何が問題なのか、だから何か、見失ってしまうことがしばしばあった。
    この調子なので、読み終わるまでかなり時間がかかったし、率直に言えば苦痛でもあった。
    あのベストセラーになった『応仁の乱』でもかなり苦しんだことを思い合わせると、自分には歴史学者の方の地道な文章を読みこなす力がないよ

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    2023年05月21日
  • 藤原氏―権力中枢の一族

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    藤原氏がどのように誕生し、貴族の中で揉まれ、他のライバルを蹴落とし、天皇家と密接に結びつく過程を描く。権謀術数の歴史。

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    2023年04月15日
  • 平氏―公家の盛衰、武家の興亡

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    ネタバレ

    タイトル通り「平氏」の本。
    いわゆる清盛の一族の「おごれる平家は久しからず」といった一般常識の範囲ではなく、あらゆる平家の系統を網羅した決定版という感じ。

    825年(天長2年)に賜姓された桓武平氏は、都で実務官人(いわゆる朝廷の官僚ですね)を輩出した高棟流平氏と、坂東で武家となった高望流平氏に分かれ、それぞれ別々の道を歩んできて、王家として君臨した清盛一派の平家滅亡後も明治維新までつながっている平家もあり、単純な「源平合戦」などと割り切れないことが良くわかりました。

    直前に読んだ南朝の研究もそうでしたが、物語やイメージによる単純化には、一長一短があるな、ということを再認識した本でした。

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    2023年01月02日