関根光宏のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2017年に『ヒルビリー・エレジー』の邦訳が発売されて以降、非常に話題になった本作だが、まさか著者が副大統領にまで上り詰めるとは予想だにしていなかった。
現在の副大統領であるJ・D・ヴァンスは、白人という、一見するとアメリカでは特権階級にいると思われがちな人種ではあるが、中西部オハイオ州に位置する白人の労働者階級の出身であった。
白人労働者階級というのは、我々外国からすると、なかなか想像しがたい部分ではある。かつて工業が盛んであった時に地方都市から移住してきて一世を風靡したものの、アメリカ国内の工業の衰退とともに地元に戻ることも、新たな土地に移ることもできなくなった貧困層がその場にとどまり、貧困ゆえのドラッグの問題や家庭内暴力の問題、そうしたものに直面している姿が赤裸々に語られている。
白人労働者階級というのは、都市部の黒人貧困層と人種は違えど、同じような生活傾向が見られることで知られている。
母親の薬物中毒、また繰り返される結婚と離婚の中で、落ち着いた家庭環境を得られなかった作者自身も、幼少期は非常に苦しい生活を送った。だが、幸いなことに祖父母が安定した生活を与えてくれたおかげで生活を立て直し、海兵隊での兵役を挟みながら大学、そしてイェール大学のロースクールというアイビーリーグまで上り詰めることになった。
こうした貧困層の実態というものは、今もこの世界のどこかで誰かが苦しんでいると思うものの、世の中の無関心とその状況に置かれている人たちの発信能力が限定されているからだと思う。唯一の解は、そうしたループを抜け出すことができた存在が何かしらを示すことである。そういう意味でも、本作の意義というのは非常に大きい。
この本は、副大統領になるまでの一角の人物が書いたからすごいというものではなく、J.D.バンスという苦境をバネにしてのし上がった人、彼だからこそ書けた作品であり、かつそのパワーを持って彼が副大統領まで上り詰めたのだと思う。
最後はややだれる部分もなくはなかったが、全体として非常に価値のある、また自分の知らない世界を見せてくれる素晴らしい本であった。 -
Posted by ブクログ
トランプ政権がなぜ誕生したのか、少し理解できた。自分たちはシリコンバレーやLA、NYのアメリカのキラキラした側面しか知らないのだなと感じた。アメリカの貧困層は白人のアメリカ人の割合が最も高いというのも自分たちが持っている先入観を覆すものだった。ラストベルトでかつて栄えアメリカを支えた地域がいまや見捨てられ、アルコールと薬物が充満し、その子供たちもアメリカンドリームなんていうのはまさに夢のまた夢になってしまった現実がある。よく考えれば日本でも地方に行った時の過疎化は惨憺たるものでより国土が広いアメリカがさらに酷いのは当然と言えば当然なのかも知れなかった。次期大統領のNo. 1候補のこの人が、次の大統領となったらアメリカは一体どうなるのだろうか。
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Posted by ブクログ
トランプに投票する人たちの気持ちを知りたくて読んだのだけれど、貧困層の生活の闇をありありと見せつけられて、ノックアウトされた。ほぼ同世代の私は、彼が海兵隊に行っていた頃、親のお金で留学していた。錆びついた工業地帯に含まれているペンシルバニアやデトロイトへは旅行で訪れたことがある。街自体は死んでいて、たまに人を見かけると明らかに薬物でキマっている人やホームレス、恐ろしく太った女性など、それはそれは恐ろしかった。今思えば、有色人種ではなく白人が多かった。私はその状況を「怖っ」と眺め、みてはいけないものとして目をそらし、別世界として線を引いた。
これまで、ニューヨークやカリフォルニア、ポートランドなど、リベラルで民主的なアメリカに憧れを持ってきた私は、トランプ政権でとても裏切られたような気がしていた。だけど、リベラル層がトランプに負けた理由は、彼らの存在を見ないふりしていたことにあるのだろう。
環境保護や気候正義、LGBTQ +、ジェンダー、人種など、誰一人取り残さない社会と謳いながら、ごっそり抜け落ちている自国の人たちがいる。貧困が進む日本でも全く同じだ。上から目線で正義や綺麗事を語る前に、この状況をお前こそ自分ごととして考えろよと、突きつけられた気がする。特権的立場から物事を見ている自分を恥ずかしくも感じた。
ただ、敵をつくることで自国を守ってるふりをするのは、愚かだ。 -
Posted by ブクログ
紛争地帯や難民など、世界で最も不幸な地域や人々を取材してきたアメリカ人のジャーナリストが、一番幸せな場所を探して世界を巡る滞在記。ドラッグも性もオープンで自由なオランダ、真面目でなんでも正確なスイス、金が有り余っているカタール、国是として幸せを追求するブータン、世界でもっとも不平の少ない国タイ、そして世界最強国アメリカ、などなど。どの国も幸せを感じる独自の一面があり、それは確かに幸せそう。外貨が稼げて福祉が充実し、自然と一体で勤務時間も短く、小さな国だからほとんどの人が近所付き合いのように信頼できる国アイスランドと言われると、ほう、と思うが、厳しく長い冬、退屈さ、美味しいものがあまりない、と指摘されると、そんなことはなんでもないことだと反発する。これはどの国でも同じ傾向が見られる。つまり、誰もが、自分自身が幸せに思うことがあること重要で、他者から見たときに異なるポイントを指摘されるとそれを低く評価するというバイアスを持っている。結局青い鳥は自分の手にあるということだが、他の世界を知ってくことは盲目的(もっというと迷信)にならないために大切なことと思った。
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Posted by ブクログ
【一言触発】大統領選挙における「まさか」の勝利を手にし,前例にない状態でホワイトハウス入りを果たしたトランプ米大統領。内部の独占情報などを踏まえながら,ケリー首席補佐官が就任するまでの政権初期の内幕を暴き描いたとされる作品です。著者は,本作で一気に米メディア界の寵児となったマイケル・ウルフ。原題は,『Fire and Fury: Inside the Trump White House』。
著者に関しては多くの毀誉褒貶が寄せられていますが,この本そのものが社会現象になったということで,取りあえず米国政治に興味がある人は手にとってみても良いかと。どこまでが本当でどこまでがフェイクなのかはわかりませんが,「何を」語るかという点と同様(もしくはそれ以上)に「どう」語るかが重要という,現在の政治状況を体現したような作品だと感じました。
〜ようやくトランプ政権第一章の幕が下りたのは,七月の終わりに退役海兵隊大将のジョン・ケリーが首席補佐官に任命され,その三週間後に首席戦略官のスティーヴ・K・バノンが退任したときだった。〜
著者も一気に時の人☆5つ -
Posted by ブクログ
「21世紀の精神異常者」こと、ドナルド・トランプの暴露本であり、アメリカでの発売から1.5ヶ月というスピードで出版された翻訳版。よくここまで微に入った取材ができたと思わせるくらい、本書で書かれているトランプ政権の実態はばかばかしく、500ページというボリュームを感じさせずに一気に読めてしまう。
本書では、トランプ政権の内部を、
・スティーブバノンに代表されるオルタナ右翼の一座
・トランプ実娘のイヴァンカ&婿養子のジャレッド・クシュナーの一座(2人の名前を組み合わせたジャーヴァンカと呼称される)
の両者によるトランプ本人からの信頼をどちらが勝ち取るかという下劣なゲームと、そこから距離を置いて少しでも政策を前に進めようとする
・官僚的/ホワイトカラー的な一座
のダイナミックな権力闘争として描く。
さながら「21世紀の精神異常者たち」がホワイトハウスで繰り広げる乱痴気騒ぎとも取れるトランプ政権の歴史は、まさに空虚な権力闘争であり、恐らく何も生み出さなかったし、今後も生み出さないということを、諦念と共に理解できる。