福原美穂子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレデンマークの作家、ユッシ・エーズラ・オールソンの特捜部Qシリーズ第三弾。
特捜部Qにボトルメッセージが届けられる。相当な年月が経っており、虫食い状態の中、かろうじて助けを求める手紙だとわかる。子供の悪戯だと判断して乗り気ではないカールだったが、アサドとローセの姉のユアサが少しずつ復元していくと…
間違いなく過去二作を大きく上回る面白さ。個人的にも、警察小説としてはかなり上位にくる作品となった。
主にカールの視点と犯人の視点が交互に描かれ、追うもの、追われるものの緊迫感が凄い。
特に上巻のラスト、そう来るのかと。非常に珍しい反撃で、ここだけでも読む価値がある。
犯人も非常に強敵。あらゆる危機をそっと回避するのだが、ちょっとしたことで少しずつ追い詰められていく。犯人視点の緊迫感も相当なもの。非道で全く同情の余地なしなのだが、後少しで完全犯罪なのにというところが多すぎる笑。
アサドの秘密、ローセの秘密も少しずつ解禁。メインはカールの事件だが、二人の動向も気になる。
シリーズものとしてハードルを上げる作品となったが、次作以降も非常に楽しみ。
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今回は特に事件が猟奇的、残酷、人の醜さをこれでもかと見せ付ける。あわや読むのもここまでかと思ったが、2作目になると、お馴染みはいい、やはり応援をするべきでしょう。か。
2011年11月発行。それでもポケミス490ページは長いので、話は相当多岐に亘る、登場人物も多いのかと思ったが、まったく見当はずれで読みやすかった。
読みにくい名前に慣れたということもある。
ミレーデ・ルンゴー事件を解決して、特捜部Qのカール警部補は名前を知られるようになっている。
ノルウェーから視察団がくるということで、地下の部屋を整えるのに大童、そこに新人のパンク頭の女性ロースが配属されてくる。一癖ある彼女もカールにとって悩みの種になりそうだった。が、なぜかアサドとは気が合い、カールの課題も軽くこなす。なかなか有能なところがあった。
今回の特捜部Qは、富裕な家庭の師弟が通う寄宿学校で20年前に起きた事件を調べる。
犯人は10年前に自首して収監されている。しかしカールの机の上にはどこからか来たのか分厚い事件関連ファイルがあり、犯人にもいささか疑問がある。
この事件は根が深いように感じられた。
20年前に兄妹が殺され、家庭は崩壊した。妹のボーイフレンドは警察官になっていた。
当時の家を訪れたカールは廃屋を調べ、事件から手を引こうとした。犯人は自首しているのだ、アサドは言った「理解できません」「だって被害者のために何か出来るのはわたしたちだけではありませんか」
寄宿学校の卒業生たちは、それぞれ事業で成功し、親から譲られた以上の名声を得、社会の上層部に大きな影響力を持つようになっていた。
現在でも、当時の事件に関わった5人が集まって、余暇は広大な土地に建つ別荘で過ごし、株取引で成功したウルレクが、世界規模で集めた猛獣や鳥などを放して狩り、そこでさまざまな犯罪隠匿の相談をしていた。
彼らは寄宿生時代から、弱者を見つけて殴打し死に切れないものには大金を渡して口を封じ、死んだものは密かに処分していた。
寄宿生仲間にキミーという女性がいた。彼女はグループの中でおとりになって被害者をおびき寄せ、罪の意識なく最後には死ぬほどの暴行を加える役だった。
しかし、仲間に犯され妊娠する、子供に愛情が芽生え始めたころに、妊娠を封じたい仲間に暴行を受け流産する。その後、その恨みから身を隠し、仲間を狙い始める。
使いきれない財産を犯罪に使い、異常な性癖を満足させてきたグループをカールたちは追う。
キミーも狙っている。
カールは類似の事件から手がかりをつかむ。
邪魔者は仲間でも殺す犯人たち。犯罪捜査は徐々に絞られ、「Q]とキミーは命の危険を感じつつ最後の戦いに臨む。
文中に交互に現れる犯罪者たちの現在と、カールたち特捜部の捜査。
社会では学閥になっている寄宿生たちのかばいあう関係は、警察の中まで及んでいて妨害に会い、捜査は難航する。
彼らの猟奇的なおぞましい話が延々と続き、このシリーズを読み始めたのは選択ミスではないかと思うほどだった。
実はこの点で少し私的な評価が下がる。容赦ない殺しやスプラッターは嫌いではないが、現実に醜い報道などが続いているとフィクションと割り切ってもお腹いっぱいの時がある。でも2作読んででつい馴染んでしまった。「Q」を見つけたら読んでしまいそうな予感がする。
檻の中の女
キジ殺し -
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何年も海の底で待ち引き上げられてからさらに放置されていた瓶入りのメッセージ。
手紙の1行目には「助けて」の文字。
気乗りしないカールを横目にアサドとローセは解読を開始するが……
冒頭から自らの血でメッセージを残す少年が出てきてもうツライ。でも、カールたちの場面に変わると途端にコミカルで思わず笑ってしまうやり取りが続く……オールスン、上手い。文章構成が抜群に上手い。グイグイ読ませる。
犯人×被害者家族×特捜部Qで息つく暇もない展開。これは面白い。→
カールの周りの人間関係も濃いし、アサドは何者?みたいな流れからのえ?ローセ?みたいな。主要メンバーのキャラが濃いから読んでいて楽しい。
ラストは今回はサラッと読むとハピエンだが、深読みすると……怖い。
あ、堂場瞬一氏の解説が良い。警察小説のカテゴライズの話、面白かったー!!
以下、Twitterでの実況感想
「特捜部Q Pのメッセージ」は上巻ラストあたり。
今作も犯人側の痛い描写とカール側のコミカルな描写の振れ幅に翻弄されながらグイグイ引き込まれてます。
やばいー。癖になるー。楽しい〜!
上巻読んだ〜!
ハラハラシーンで下巻やん!てか、ヤバイヤバイヤバイ!ここでこの2人が出会うとか思わなかったー!
今作、ストーリーに厚みがあってマジで面白い!
あと、アサドの秘密よ……これ多分だいぶん先でわかるんよね。気になる……
下巻後半戦に突入!
カールたちが犯人にジリジリと近づいていく過程が読んでいてハラハラワクワクする!
そしてローセぇぇ?!え??えええ?みたいな(笑)
わぁわぁわぁわぁー!!!ニアミスぅぅー!!カールニアミスぅぅぅ!!
あとアサドつっよ!(真顔)毎回思うけどアサド、何者なんだ……
読み終わった……今作はとても良かった……北欧らしさを残しつつのラスト。てかあのラストは……?いやいや、きっとハピエンだと信じたい。
解説がまた好き。特捜部Qシリーズ、解説豪華だよね。 -
Posted by ブクログ
「ユッシ・エーズラ・オールスン」の長篇ミステリー作品『特捜部Q ―キジ殺し― (原題:Fasandraberne)』を読みました。
「ユッシ・エーズラ・オールスン」の作品は、今年の2月に読んだ「特捜部Q」シリーズの第1作『特捜部Q ―檻の中の女―』以来ですね。
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【人気シリーズ第2弾、文庫化! 解説:恩田陸】
いったいこの書類はどこから送られてきたんだ?
いつのまにか特捜部Qのデスクに置かれていた20年も前の事件の書類。
18歳と17歳の兄妹が惨殺された事件だが、その後犯人は自首して服役中。
つまり未解決ではない。
なのになぜ未解決事件を調査する特捜部Qに?
興味を抱いた「カール」と「アサド」、それに新メンバーの「ローセ」は再調査に取り組むが、当時の容疑者たちはいまや有力者になっていた。
度重なる妨害に耐えながらも事件のカギを握る女を追うが…
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ここのところ、スウェーデン作家の作品が続いていましたが、久しぶりにデンマーク作家の作品… 北欧ミステリが続いています。
未解決の重大事件を専門に扱うコペンハーゲン警察「特捜部Q」シリーズの第2作、、、
前作が面白かったので期待して読んだのですが、本作品は期待を超える面白さ… 「特捜部Q」に新たな仲間(助手)「ローセ・クヌスン」が加わり、面白さがパワーアップ!600ページを超えるボリュームでしたが、テンポが良くて愉しく読めたので、長いなんて感じなかったですね。
責任者の「カール・マーク警部補」(正規な警察官は彼だけ)、助手の「ハーフェズ・エル・アサド」と「ローセ」の三人が、強烈な個性を活かしつつ、協力して過去の未解決事件を解決に導く展開が愉しめました… 署内で厄介者の三人、ちょっとヘンで職場にうまく適応できない「アサド」と「ローセ」が意外な活躍を見せるところがイイんですよね、、、
虐待や暴力、惨殺のシーンは目を覆うほどの残忍さなのですが、物語全体に醸し出されるコミカルな雰囲気… 現実離れした雰囲気が、それを中和して和らげている感じがします。
前作で「ミレーデ・ルンゴー」事件を解決し、一躍知名度をあげた「特捜部Q」が、今回扱うのは何故か事件ファイルに紛れ込んでいた20年前に無残に殺害された10代の兄妹の事件… でも、この事件は、既に犯人「ビャーネ・トゥーヤスン」が自首しており解決済みの事件のはず、、、
「特捜部Q」が扱う未解決事件のファイルに何で解決済みの事件のファイルが紛れ込んでいたのか… 「カール」たちは資料を調べるだけでなく、当時の関係者を訪ねたり、現場となった廃屋に出向いて調査を進めるうちに、兄妹の殺人が一人ではなく複数人による犯罪であったことや、その犯人と思われる人物たちがエリート階級の子弟で、現在は、それぞれ事業で成功し、親から譲られた以上の名声を得て、社会の上層部に大きな影響力を持つような存在になっている事が判明。
しかし、さらに事件捜査を進めようとしたところ、上層部から捜査を取りやめるように圧力がかかる… 「カール」は、ノルウェーから視察団が「特捜部Q」を訪ねてきた際に機転を利かせ、この事件に取り組んでいることを公にして、既成事実を作り、後に引けない状況を作り出す、、、
当時の事件に関わったメンバで現在も付き合いが続いている「ディトリウ・プラム」、「トーステン・フローリン」、「ウルレク・デュブル・イェンスン」を追う「カール」と「アサド」… そして、当時の事件に関わったメンバだが、仲間に犯されて妊娠し、その後、仲間に暴行を受け流産した恨みから、ホームレスとなり身を隠し、仲間を狙っている「キアステン・マリーイ・ラスン(キミー)」の、それぞれの視点から物語が展開し、終盤で世界規模で集めた猛獣や鳥などを放して狩りを行う「ウルレク」の屋敷に集結し、クライマックスを迎えます。
本昨も、前作に続き終盤はドキドキハラハラが続き、テンポの良い展開で一気読みになりましたね… 「カール」と「アサド」は危機一髪の状況でしたが、「ディトリウ」、「トーステン」、「ウルレク」への復讐を実行した「キミー」に助けられた感じですね、、、
まさか、冒頭のシーンで追手から逃げていた人物が「カール」だったとは… 衝撃でしたね。
エンディングは切ないけど、過去の「キミー」の悪事のことを考えると妥当な結末かな。
やはり、このシリーズの魅力のひとつは、個性的な脇役たちですねぇ、、、
新たに「ローセ」が加わりパワーアップした感じです… 早く次作以降も読みたいな。
以下、主な登場人物です。
「カール・マーク」
コペンハーゲン警察殺人捜査課警部補。特捜部Qの責任者
「ハーフェズ・エル・アサド」
カールのアシスタント
「ヴィガ」
カールの妻
「イェスパ」
カールの義理の息子
「モーデン・ホラン」
カールの同居人
「ローセ・クヌスン」
カールの新人アシスタント
「ハーディ・ヘニングスン」
カールの元部下
「アンカー・ホイア」
カールの元部下
「マークス・ヤコプスン」
コペンハーゲン警察殺人捜査課課長
「ラース・ビャアン」
コペンハーゲン警察殺人捜査課副課長
「モーナ・イプスン」
心理学者
「ヨハン・ヤコブスン」
カールの同僚
「キアステン・マリーイ・ラスン(キミー)」
ホームレスの女性。寄宿学校の元生徒
「ディトリウ・プラム」
病院経営者。寄宿学校の元生徒
「トーステン・フローリン」
人気ファッション・デザイナー。寄宿学校の元生徒
「ウルレク・デュブル・イェンスン」
株取引会社の経営者。寄宿学校の元生徒
「クレスチャン・ヴォルフ」
船舶会社の元経営者。寄宿学校の元生徒
「ビャーネ・トゥーヤスン」
「ラアヴィー殺人事件」犯人。服役中。寄宿学校の元生徒
「フィン・オールベク」
私立探偵
「ティーネ・カールスン」
麻薬中毒者。キミーの友人
「カサンドラ・ラスン」
キミーの継母
「コーオ・ブルーノ」
寄宿学校の元生徒。キミーの元ボーイフレンド
「カイル・バセット」
寄宿学校の元生徒
「クラウス・イェスベン」
寄宿学校の元教師 -
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ネタバレカール、いい加減犯人のところに乗り込む時は拳銃持ってくれ。
序盤は犯人の方が一歩先を行っていたが、それを覆すのがチームワークだった。犯人の策略が次々と、一つずつ崩されるところはページをめくる手が止まらなくなるほど。
全て偽名で何もかも準備し、更に別名義で二重の足跡消しをしていた犯人は流石。全てを変えたが「普通が一番目立たない」ことを徹底したところなんかも連続誘拐殺人犯としては称賛されるところかもしれない。ただ、その偽名を身近な人から取ったところは浅はか。余裕がないはずなのに逃げずに後始末を優先したところなんかは、自らの能力の過信と今まで見つからなかった傲慢さのツケを考えていない。
浅はかさを突き崩し、ツケを支払わせるのが警察、いや特捜部Qの仕事だった。
神を憎んだ男は神が作りし人の愛情によりその身を滅ぼし、神の元で光を失った女はひとときの無垢な温もりにしがみつかずあるべきところへ帰した。
ユアサとローセが同じ人物なのかも?というところをあえて突っ込まずにやり過ごすのもQらしい。
アサドの過去が若干でもわかるのかと思いきやそうでもなかった。
やっぱり面白すぎて読み終わるのが惜しい作品でした。
次作も読まないと。 -
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[リークスをリーク]アフガン及びイラク戦争に関する記録や米国の国務省の外交機密を公開して世界的な注目を集めたウィキリークス。創設者であるジュリアン・アサンジの足跡をたどりながら、公開がどのようにして行われたか、影響はどのように広がったか、そして今後ウィキリークスはどのような道を歩んで行くことになるのかについて思索を重ねた一冊です。著者は、いくつかの文書の公開時にパートナーとしてウィキリークスと協力した独『シュピーゲル』紙の記者であるマルセル・ローゼンバッハとホルガー・シュタルク。訳者は赤坂桃子、猪俣和夫、福原美穂子の3名。
著者が極めて近くでウィキリークスを見てきただけあり、知られざる内幕が事細かに描かれています。綺羅星の如く颯爽と現れた感のあるウィキリークスですが、発足当初から次第に活動の軸足が揺れ動いていった様子や、理念とは少し遠ざかる方向に寄り道をしたりする様子が見て取れます。アサンジ氏の良い意味でも悪い意味でも変人的(?)な側面もしっかりと描写されており、大変に読み応えのある作品でした。
秘密をなくしていくという使命とは裏腹に、ウィキリークス自身がその存在のために秘密を必要としていること、また、遠大な理想に向けての技術的及び時間的制約が莫大すぎて、1つ1つのステップが逆に理想からウィキリークスを遠ざけていることという2点がウィキリークスが抱える大きな問題点、ないしは矛盾点のように思います。筆者による今後のウィキリークスに関する論考も非常に説得力がありましたので、ジャーナリズムに携わる方にはその部分だけでもぜひオススメです。
〜ウィキリークスが問題にしているのは、情報の主権を握るのは誰なのかということだ。〜
次はアサンジ氏の手記に手を出してみようかな☆5つ -
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ここからは、日常的にBLを嗜んでいる人間が読むと、決して「匂い系」作品ではないのだが、脳内がガチムチ系女子にはそこはかとなく香ってくるそれっぽさが「やっぱりだったか」と言う部分を書いておく。
カール・マークは(四十路)睨んだ通り男にモテる、と言う事実が裏付けられた描写有り。1作目から狙ってた精神科医モーナとイイ仲になったんだけど、彼女がカールに紹介した男性精神科医がゲイで、モーナと出来てるんじゃと疑ったカールに放った一言が直球でエロい!!とは言え、何度も言うようだが、別に精神的ホモをあからさまに書いている作品では全然ない。寝たきりの同僚ハーディが病院よりお前の家に行きたい、と言う場面も、もしかしたらカールの罪悪感につけ込んでるのかもしれんが、そう言う湿っぽい描写を排除しているのがこの作品の爽快なところ。心理描写を省いていると言うのではなく、頭の中で逡巡している事も、行動となった時には、色々考えた事とは全く逆に思える行動を人は取っている事さえある、と言う書き方が絶妙なんである。
深読みは幾らでも出来るが、カールは根っからのノンケである。これは間違いない。ただ、絶対に男にモテる(笑) -
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特捜部Qはこじんまりとした部署である。責任者兼唯一の捜査官(つまり警官)であるカール・マーク警部補。警部への昇進セミナーに断固として出席しないと上司に交換条件を持ちかけて意地を通したので、警部補のままである。その唯一の捜査官であるカール、助手のアサドはシリア人らしく、警察官ではなくあくまでも秘書と言うかお手伝いと言うか、なかなかに説明の難しい役どころだ。そしてもう一人ユアサと言うオペレーター的な、秘書的なアシスタントもいて、実質3人で回している「未解決事件」を取り扱う部署だ。
海から流れて来たボトルの中に入っている血文字で書かれたメッセージを解読する事で事件が発覚する、と言う、こうやって書くと如何にもフィクション的で現実味のないように感じるのだが、このメッセージが数年間放置されており、最初は誰も何も気づいていないと言う呑気さ、そこから流れ流れて特捜班Qにやってくるのだが、この辺りの時間の流れはもしかしたらお国柄・国民性に付随しているのかもしれない。この、見えない文字を読み解く、と言う辺りの、二人のアシスタントの独創性、カールが職業柄として持ち得る科学捜査的知識に対して、鑑識課を辞めた人間にお手伝いを頼むと言う、なんとも警察組織でない動き、正にカールの人脈頼りと言う、真面目なんだか不真面目なんだか分からない辺りがこのシリーズの魅力の一つで、会社の中で仕事をしている人間なら判るが、人脈で自分の仕事がやり易くなったりやりにくくなったり(上司や部下も然り)、この辺りが実にリアルなんである。
第1作目の『檻の中の女』読後からすっかり主人公であるカール・マークが大好きになったのだが、本作からアシスタントの二人の個性がちらほら噴出して来て、決してチームとしてまとまっているとは思えないのだが(助手にあまり敬って貰ってないマーク)少しずつ距離感が詰まっていくのが感じられる3作目。
犯人の視点から見た犯人の行動描写と、カールたちの日常が交互に描かれる。犯人は牧師の息子として生まれたが、聖職者でありながらも感情のままに自分に暴力をふるった父親への憎しみを、宗教的な家庭の子供を二人誘拐し身代金をせしめ、一人は殺害、一人は脅しのメッセージを託して家に返す、と言う手口で収入を得て、幾つもの偽名を使い、宗教に傾いていない女性を探し結婚し、子供を得て、何食わぬ顔で一つの家庭を築いている。その裏で、金を稼ぐ手段として誘拐を続けている。
子供の頃の育ち方で他者に一切の感情移入が出来ない鬼畜な犯人にカールたちは辿り着けるのか、と言うのが本作。
事件とは別に、カールは一目見た時から好みだ、寝たいと思い続けている精神科医のモーナと色っぽい関係を結ぶことに成功したり、元妻が戻って来たいと言っているのを義理の息子に金を握らせて阻止したり、自宅介護を引き受ける事になった元同僚で、寝たきりのハーディの具合が悪くなってまた病院に戻さなくてはならなくなったりと、決して平穏なプライベートとは言い難いと思うのだが、カールは疲れたとか絶望したとかしんどいとか、愚痴を言わないのだ。疲労はしているが、殊更に頑張ろうともしないし、落ち込んだりもしない。なんと言うか、全部をキャパ越えちゃうんじゃないかくらいに受け入れる訳ではないのだが(元妻に対しては直接的にNOは通じないと分かっているから策を練ったりする)目の前から消そうとしたり見なかったことにしたりせず、自分に可能であれば相手の要求に応えようとする。事件に対しても、そんな何年も前に未解決となった事件など今さら調べても、とチラッとは思うのだが(現実的に)やってみようとする。この「等身大」なバランスがやっぱりカール・マークの魅力の最たるところだ。