西崎憲のレビュー一覧

  • 黄金仮面の王

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    幻想文学好きには知られてるマルセル・シュオッブのまさかの初文庫化。
    正直、ガルシア・マルケスの『百年の孤独』文庫化以上に驚いたかも。アンソロジーなんかでマルセル・シュオッブが組まれてることはあるが、まさか文庫で、まるまるマルセル・シュオッブが読めるとは……!

    収録されてる作品はどれも傑作で、幻想的で、美しく、時にはグロテスクな作品が描かれる。
    マルセル・シュオッブは19世紀末の作家だが、今読んでも古さを感じなくて、驚く。
    それと本書には新訳がいくつかあったりするのも嬉しかった。

    ただこのマルセル・シュオッブの文庫を手に取ってしまい、もしも心を掴まれてしまったら『夢の扉 マルセル・シュオッブ

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    2026年04月21日
  • あの人たちが本を焼いた日 ジーン・リース短篇集

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    「あいつらにはジャズと呼ばせておけ」これは痺れる。

    ジーン・リースについては、英国植民地ドミニカ生まれ育ちの白人に対する、本国イギリス人からの蔑視(こいつらは本物のイングランド人ではない)を抜きにしては語れない。
    生まれ育った故郷であるカリブの島では支配層でありながら、母国であるはずのイギリスでは一段下の存在として扱われる。同時に、育った島は白人プランターへの憎悪を募らせてゆき、支配者としての一族は没落してゆく。
    どこにも居場所がない感覚、帰属先を失った異邦人。

    そしてもう一つは、女性が社会的、経済的に男性の管理下にあった時代への反逆だ。
    コーラスガールやモデル(マヌカン)として働いたジー

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    2026年01月03日
  • ヘディングはおもに頭で

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    フットサルの小説だけど、フットサル以上のものがたくさんあった。

    主人公は、大学受験に二度失敗し、浪人をしながらアルバイトを転々として暮らしている松永おん。おんはかつて双子の弟がいたことから、自分は半分だけの存在だという意識を持って生きている。彼の日常に起こるささやかな出来事と心の動きを解像度高く綴っている。

    ファンタジーノベル大賞を受賞してデビューされた方だけど、本作は純文学に近いと思う。

    何をやっても、どこかどんくさい主人公。自分に自信はない。二浪しているにも関わらず、焦りは少なく、実家から出て弁当屋のアルバイトと仕送りで生計を立てている。

    ある日、おんは高校時代の部活・写真部の集ま

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    2025年04月16日
  • 青と緑 ヴァージニア・ウルフ短篇集

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    代表作「キュー植物園」など20篇を収録した短篇集。


    以前から唱えている〈ヴァージニア・ウルフ=少女漫画説〉が、この短篇集を読んでより自分のなかで強固なものになった。小動物や植物、世間的には取るに足らないとされる小さなものたちにシンパシーを感じ、そこに個人的な象徴や啓示を見いだしていくモチーフの使い方。ディテールに注ぐ偏執的な凝視。言葉になる前の不定形な感情をとらえようとしてあふれだす、言いさしのような未然の文体。
    これらはみな、萩尾望都や大島弓子などの作品にある謎めいたほのめかしや、わかりきれないけど「わかる」と思わされてしまうモノローグの魅力にとても近いのではないか。漫画家が絵と言葉を組

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    2024年03月24日
  • Genesis 白昼夢通信

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    東京創元社のSFアンソロジーの二巻目。二〇一九年十二月刊行。まだコロナ禍やリモートばかりの生活を知る前の作品だけど、「あれ、なんだか今っぽい」と感じられるものもあって、フィクションの奥深さを思った。一巻を読んだときに比べて私のSF受容力も上がったのか、どれもそれぞれ大変楽しめた。

    ■高島雄哉『配信世界のイデアたち』
    昔、かこさとしの『ほしのほん』シリーズを読んで、宇宙には「銀河」というものがたくさんあるということを知ったとき、もしかしたらはるかかなたの銀河のどこかに、私みたいな女の子がいて今同じように宇宙の本を読んでいるかもしれない…という想像をした。そんなことを思い出した。
    ■石川宗生『モ

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    2022年05月13日
  • エドガー・アラン・ポー短篇集

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    カポーティ『遠い声 遠い部屋』が好きで、影響を受けたといわれるポーを手に取りました。
    か、かっこいい……

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    2021年01月18日
  • ヘディングはおもに頭で

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    浪人生の「おん」は、弁当屋でアルバイトしながら、漠然と受験勉強をする毎日。でも4か月前からフットサルのスクールに通いはじめて、目に見えないくらいじわじわと世界が広がりはじめる。

    大きなドラマがある小説ではない。でも、多くの人の人生がそうであるように、日々のほんの小さなできごとの積み重ねで、ほんの少しずつ何かが変わっていく。そのようすが静かな筆致で、でもときにぐふっと笑ってしまうようなユーモアを交えながら描かれているのがとても好きだった。

    おんは、自分は頭もとりたててよくはなく、「自分にしかできないこと」というような才能もない、と劣等感を抱えている。しかも生まれたときは双子だったのに、片割れ

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    2020年11月03日
  • エドガー・アラン・ポー短篇集

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    ちくま文庫のための訳し下ろし、編訳。黄金虫ヴァルドマール氏の死の真相赤き死の仮面告げ口心臓メールシュトレームの大渦アッシャー家の崩壊ウィリアム・ウィルソン以上の7篇。附された「エドガー・アラン・ポー小伝」「熱と虚無――エドガー・アラン・ポーとは何か」が、ありがたい。私は特に、『赤き死の仮面』(赤死病の仮面)を読み直したくなって。でも、ここに選ばれた7篇は、やっぱりどれも傑作ですね。手元にある他の翻訳も読み返してみます。それから、こういう短篇は(「大鴉」もだけれど)どうにも原文と対照させたいような気になってしまいます。ペーパーバックの簡易版でいいから探してみようかな。

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    2011年07月19日
  • エドガー・アラン・ポー短篇集

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    海賊の宝に暗号解読がからむ知的エンターテインメントから、象徴に満ちた幻想・怪奇・狂気まで、描かれるものも雰囲気も文体もさまざまである。あまりに違うので、これらをどれも同じように好む読者が果たしているのだろうかという気もするが、ポーの多彩さをあらわすセレクションではある。
    もし私がポー・ベストを作るなら、ずっと偏ったものになるだろう。まずここに『黒猫』と『盗まれた手紙』、それに『アモンティリャードの樽』を加えたい。いっぽう、ゴシック趣味あふれる『赤き死の仮面』と『アッシャー家の崩壊』は抜いてしまう。単換字暗号の解読が煩雑な『黄金虫』もなくていい。するとほら、実に好みの感じだ!
    …ポー好きの風上に

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    2009年10月04日
  • 青と緑 ヴァージニア・ウルフ短篇集

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    ヴァージニア・ウルフを初めて読む。ヴァージニア・ウルフについては意識の流れ文体とか、精神疾患といわれるとか、最期がどうだったとか、そして映画『めぐりあう時間たち』で描かれていことしか知らずにいた。
    あとがきでは翻訳者西崎憲によるヴァージニア・ウルフの生涯とか、解説が詳しく書かれる。幼少期から成長するまで母の連れ子(父親違いの兄)たちから性的対象にされていたんだとか、もしかしたら有名なのかもしれないけれども初めて知ったので、なんというか…(ー_ー;)
    本文の翻訳では、ちょっと変わった漢字を使ったり(「滑る」ではなくて「辷る」、とか)、カタカナでなくて漢字が使われたり(麝香撫子にカーネーションとル

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    2026年04月12日
  • 黄金仮面の王

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    何よりもビジョンが素晴らしかった。ストーリーではなく、重厚な情景描写で広げていく物語は魔術そのもの。世界的にファンがいることも納得でした。何より翻訳が素晴らしいのだろうと思います。原文のフランス語でも読めたら素敵だなと思う。

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    2026年04月12日
  • 黄金仮面の王

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    世紀の文庫化。シュオッブの先も上も奥もない。文芸ここが果て。精緻で硬質な文体、同時にグロテスクで詩的な表現で綴られる幻想短編は、どれも極限まで研ぎ澄まされている。「ボルヘスや澁澤龍彦への影響」に深く頷く。燃え盛る終末。アイデンティティの崩壊。生と死を司る運命。未来/過去への希望。小舟に乗り、星を読み、年月を抱えて直走る。美しい。

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    2026年03月17日
  • あの人たちが本を焼いた日 ジーン・リース短篇集

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    鈴木いづみを思わせる感じ。強そうで脆い、メチャクチャなのに彼女の中には切実で変えられないものがある、それが文章から伝わってくる。女嫌いなのに女に注目する感じも似ている。
    鈴木いづみは空虚な時代に生まれたと感じていたけどジーンさんは激動の時代と激動の人生を生きた。鈴木いづみはジーン・リースを読んだのだろうか?読んでいたら自分のことのように感じたのではないか。
    危うげで、強かで、嘆いてるけど笑ってる。
    周りを見るときの目が似ているのかな。

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    2022年09月19日
  • あの人たちが本を焼いた日 ジーン・リース短篇集

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    そう言えばジーン・リースって短篇を読んだことなかったなあと思っていたら、それもそのはず、本邦初だそう。

    結構無頼だなと思うんだけれど、時々クスッと笑ってしまうユーモアもあるんだよ。

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    2022年07月05日
  • 青と緑 ヴァージニア・ウルフ短篇集

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    もちろん後からの私たちは、彼女の最期を知っていて読むわけで、つい儚さとか弱さとか繊細さとか脆さとか…をイメージしながら読んでしまうのだけれど、意外にもしっかりとした強さをも感じる。

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    2022年02月14日
  • Genesis 白昼夢通信

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    なんか最近、アンソロジーばっか読んでるような…。
    2019年12月刊行の日本SFアンソロジー。短編7編とエッセイ2編が載っています。

    第1集の『一万年の午後』のレビューで書いたのですが、ちょっと良いレストランで頼む「おまかせコース」がまさにアンソロジーだと思います。
    「おまかせ」とは言え、オードブルからデザートまで全てパイ包み焼きだったらイヤだし、全部がココナッツ風味だったらもっとイヤな訳です(笑 たとえ、どれも単品としては超美味しかったとしても!
    その意味では編集者(本著エッセイで言うところの「アンソロジスト」)の役割は非常に大きく、しかも料理とは違って、「これはケーキだからデザート」的な

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    2021年07月14日
  • エドガー・アラン・ポー短篇集

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    「黄金虫」と「モルグ街の殺人」を小学生のころに読んだ記憶がうっすらとあるのだが、読書を再開してからは初ポー。彼の文体は評価が分かれるようだが、私には合っていた。ほかの作品も是非読んでみたいと思う。

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    2012年11月10日
  • エドガー・アラン・ポー短篇集

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    エドガー・アラン・ポーの短編集。
    なぜかこの人の文には惹きつけられるものがある。

    以下ネタバレ。

    黄金虫 ★★★
    黄金の虫を見つけたことから発展してキャプテンキッドの宝を見つけ出すといったストーリー。冒険心からワクワクさせられる。暗号の解き方や骸骨を利用した宝のありか探しなど描写が面白い。

    ヴァルドマール氏の死の真相 ★★★★
    人の臨床の際に催眠術をかけたらどうなるかという話。最終的に死んでいる体から催眠術を解くと体が腐っていく。なんというか発想と描写に脱帽。

    赤き死の仮面 ★★★
    世の中には悪疫「赤き死」が蔓延していた。そこでプロスペロ公は千人を宮廷の中に住まわせ、宮廷には高い城壁な

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    2010年10月01日
  • 青と緑 ヴァージニア・ウルフ短篇集

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    ヴァージニア・ウルフの本は2冊目。
    ウルフは「意識の流れ」という文学的手法を使ったことで有名。

    調べてみたら、意識の流れとは、人物の思考や感情が、川の流れのように途切れなく変化していく様子を表現する方法。出来事を客観的に書くのではなく、人物の主観的な視点から、思考や感情の動きを直接的に書くことが特徴。

    という説明があったけど、個人的には客観的に感じちゃったな。
    思考や感情が途切れなく変わっていくところがのめり込めなかったのか、フィルターを通して世界を見ているような、夢の中にいるような、そんな感覚がずっと続く。
    話は入ってきにくかったから読み切れるか心配だったけど、読み心地は嫌いじゃない。

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    2025年07月25日
  • Genesis 白昼夢通信

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    創元と関係が深い作者の作品を編んだSFアンソロジー。もっとも気に入った作品は松崎有理さんの「瘦せたくないひとは読まないでください。」だった。肥満の人には人権がないかのように扱われる健康先進国の日本で、デスゲームが行われる。肥満の人が5人選ばれて、食事をしたら殺されるゲームだ。極端なシチュエーションであるが、健康も行きすぎるとデストピアになる警鐘だろうか。エッセイの「アンソロジーの極意」を読んで、アンソロジーの楽しみ方を少し理解できた。

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    2023年05月30日