新野剛志のレビュー一覧
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敗戦しGHQの占領下に置かれた日本。その中心部、東京で暮らす人々を描いた6編の短編集。
戦後の日本は貧しく、老若男女、誰もが必死で生きるのに精一杯だった。戦時中、物資を運んでいた元飛行士。浮浪児の少年たち。郵便の検閲の仕事をする男性。子どもたちに自由な紙芝居をと願いながら、許嫁の兄の帰りを待つ出版社勤務の女性。GHQの下で働く料理人。ある別邸で元伯爵令嬢の女性と若い女性のお世話をする若い女中。
みんな先の見えない暗い時代を必死に生きていた。彼らが必死に生きて来たからこそ、今の日本があるのだと思う。
特に浮浪児の少年たち。好きで1人になったわけじゃないのに、世の中に嫌われ、邪険に扱われ辛い -
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新野剛志『ヘブン』幻冬舎文庫。
『キングダム』の続編。前作の『キングダム』は消化不良というか嫌悪感と喪失感だけが残る物語だったが、この続編はどうだろうか。600ページ超えの長編ノワール小説である。
前作を遥かに凌ぐ、馳星周か新堂冬樹かというくらいの真っ黒で絶望的なノワール小説。前作の主要人物を巧く絡めながら、見事なノワールの新たな世界を描いている。
かつて、半グレ集団『武蔵野連合』の頂点に君臨し、東京の裏社会に自らの王国を築いた真嶋貴士は前作での事件後にタイに逃れ、麻薬王の元で新たな非合法ビジネスに手を染めながら、組織内で頭角を現す。
数年後に麻薬の販路を求め、再び日本の地を踏んだ真嶋 -
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ネタバレ新野剛志による旅行会社の空港係員の活躍を描くシリーズ一作目。
タイトルの「あぽやん」が一体何を意味するのか、それが気になって読み始める。しばらくは明かされないが、明かされてみるとなるほど、そういうことかと納得する。そのあぽやんたちが巻き込まれる騒動と、それによって成長していく主人公がストーリーの軸だ。
空港係員といっても、本作の係員は航空会社の子会社の旅行会社で働く人たちなので、他の旅行会社では持っていない特権も持っている。また、旅行会社のカウンター業務についても解説され、普段何気なく対応してもらっている空港の人たちの仕事が垣間見れて面白い。
ストーリーも空港ならではであるが、登場人物も癖のあ -
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おもしろい。
ただの旅行会社の一社員が、成田空港で奮闘する話。これだけでは、小説としてのネタないだろと思うけど、ほんと小さなエピソード大きなエピソードを、これでもかというぐらい出してくる。
すごいわ、新野(作者)。
主人公の遠藤は、大したやつじゃない。どこにでもいる平社員。
だからこそ、共感できる。
まっすぐで憎めない。自分をもってる人。
もともと空港の仕事を何とも思ってない遠藤が、少しずつお客と接しているうちに、やりがいを見出し、能力を発揮する。
もともと有能で容姿もいい遠藤だから、あまりいない人物のようにも思うが、四苦八苦してる様を見てると微笑ましい。
感情移入できやすい小説、次はど -
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終戦から八十年。
この夏は、TVでも戦争関連の番組を多く目にした。
白黒映像の戦後の荒廃した場面や戦争孤児の多くが逃げている様子までも…。
今では考えられないが、かつてはなんとか生きようと右往左往していた小さな子どもがそこら辺にいたのだ。
この物語も戦後の東京で男や女や子どもが、これは罪なのかと考えるよりも今を生きようとしているのがわかる六篇の短編集である。
「幽霊とダイヤモンド」ダイヤモンドをめぐって追ってから逃げる飛行士。
「少年の町」浮浪児を集めて地方の農家に売り歩く少年。
「手紙」GHQの下で手紙を検閲する元士族。
「軍人の娘」紙芝居の出版社で働きながら許婚とともに義兄の帰り -
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空港内を走っている男の姿が表紙。APOとは空港をあらわす業界用語らしい。で…あぽやん——それは空港で旅客を送りだす仕事をしている人とのことだ。
旅行会社の企画課から 成田空港の現場へと左遷されてしまった主人公。
ヤル気の出ない仕事のはずが、パスポートがない、発券ミスが起きた…そんな空港のカウンターで起こるトラブルに立ち向かい、だんだんと成長して仕事の達成感を見出してゆく。お仕事小説は結構好きな分野だなあ。
本社と空港支店勤務、カウンター職、正社員と契約社員…様々な状況を含め、いやに空港業務に精通しているような内容だったので、新野剛志さんという作家を調べたら、元JALパックの社員で空港で実際