粒と棘

粒と棘

2,200円 (税込)

11pt

4.4

ある男は、上海から空輸されたダイヤモンドの行方をめぐって追手から逃げる――飛行士として空を駆けた日々に思いを馳せながら。ある少年は、みずからと似た境遇の浮浪児を集めて地方の農家に身売りする――それが彼らにとっての幸福に違いないと信じながら。ある女は、紙芝居の出版社で働く傍ら許婚とともに義兄の帰りを待ち続ける――父のいなくなったこの国で自由とは何か悩みながら。一九四五年、第二次世界大戦の終結とともに被占領国となった日本の状況は一変した。あらゆるものを失い、時に犯罪に手を染めてもなお、生きるために人々はもがく。惨めにも、時に気高く。占領と復興の十年を駆け抜けた名もなき人々の生を描破する珠玉の六編。/【目次】幽霊とダイヤモンド/少年の街/手紙/軍人の娘/幸運な男/何度でも

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    敗戦しGHQの占領下に置かれた日本。その中心部、東京で暮らす人々を描いた6編の短編集。

    戦後の日本は貧しく、老若男女、誰もが必死で生きるのに精一杯だった。戦時中、物資を運んでいた元飛行士。浮浪児の少年たち。郵便の検閲の仕事をする男性。子どもたちに自由な紙芝居をと願いながら、許嫁の兄の帰りを待つ出版

    0
    2025年09月19日

    Posted by ブクログ

    戦後GHQ占領下の混乱期、上野の浮浪児や没落華族、元飛行士ら市井の生きざまを描く連作短編集。

    それぞれの編は独立しているが、登場人物につながりがあり、全体として1編の小説となっている。

    敗戦により家族、職業、財産といった生活の基盤をすべて失った人々が必死に、しかし矜持を失わずに生きようとする姿。

    0
    2025年10月29日

    Posted by ブクログ

    1945年、終戦後の日本を舞台にした中編集。戦時中の苦労話は良く聞くが、戦後の被占領国となった暮らしについてはなかなか知り得る機会が無かった。単に私の無知のせいではあるけど。
    時に犯罪に手を染めても、最低限生きる為にもがき続ける庶民を描いている。私は「幸運な男」のミステリアスな展開が面白かった。

    0
    2025年09月13日

    Posted by ブクログ

    終戦から八十年。
    この夏は、TVでも戦争関連の番組を多く目にした。
    白黒映像の戦後の荒廃した場面や戦争孤児の多くが逃げている様子までも…。
    今では考えられないが、かつてはなんとか生きようと右往左往していた小さな子どもがそこら辺にいたのだ。

    この物語も戦後の東京で男や女や子どもが、これは罪なのかと考

    0
    2025年09月03日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    戦後80年。
    家族も尊厳も失い、犯罪に手を染め、惨めで理不尽なことが襲いかかかる中、それでも懸命に生きる人々の群像劇。

    戦後の無法地帯となった日本で生き抜くこと、様々な組織が暗躍し、まさに闇。
    想像しただけで恐ろしい。

    しかし、そうやって生き抜いてきた先人達がいたからこそ、今の日本があるのであり

    0
    2025年10月23日

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