【感想・ネタバレ】粒と棘のレビュー

あらすじ

ある男は、上海から空輸されたダイヤモンドの行方をめぐって追手から逃げる――飛行士として空を駆けた日々に思いを馳せながら。ある少年は、みずからと似た境遇の浮浪児を集めて地方の農家に身売りする――それが彼らにとっての幸福に違いないと信じながら。ある女は、紙芝居の出版社で働く傍ら許婚とともに義兄の帰りを待ち続ける――父のいなくなったこの国で自由とは何か悩みながら。一九四五年、第二次世界大戦の終結とともに被占領国となった日本の状況は一変した。あらゆるものを失い、時に犯罪に手を染めてもなお、生きるために人々はもがく。惨めにも、時に気高く。占領と復興の十年を駆け抜けた名もなき人々の生を描破する珠玉の六編。/【目次】幽霊とダイヤモンド/少年の街/手紙/軍人の娘/幸運な男/何度でも

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Posted by ブクログ

ネタバレ

戦後80年。
家族も尊厳も失い、犯罪に手を染め、惨めで理不尽なことが襲いかかかる中、それでも懸命に生きる人々の群像劇。

戦後の無法地帯となった日本で生き抜くこと、様々な組織が暗躍し、まさに闇。
想像しただけで恐ろしい。

しかし、そうやって生き抜いてきた先人達がいたからこそ、今の日本があるのであり、過去から現代と、まさに地続きになっていることを忘れてはならない。


最後のストーリーは、あの人とあの人がモデルなのかな?



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2025年10月23日

Posted by ブクログ

敗戦しGHQの占領下に置かれた日本。その中心部、東京で暮らす人々を描いた6編の短編集。

戦後の日本は貧しく、老若男女、誰もが必死で生きるのに精一杯だった。戦時中、物資を運んでいた元飛行士。浮浪児の少年たち。郵便の検閲の仕事をする男性。子どもたちに自由な紙芝居をと願いながら、許嫁の兄の帰りを待つ出版社勤務の女性。GHQの下で働く料理人。ある別邸で元伯爵令嬢の女性と若い女性のお世話をする若い女中。

みんな先の見えない暗い時代を必死に生きていた。彼らが必死に生きて来たからこそ、今の日本があるのだと思う。

特に浮浪児の少年たち。好きで1人になったわけじゃないのに、世の中に嫌われ、邪険に扱われ辛い描写が多かった。

今年は戦後80年。多くの戦争関連の本が出版されたが、『エレガンス』で東京大空襲の前後を読み、この『粒と棘』で戦後の日本を読んだ。戦争の恐ろしさを理解したつもりでも実際に体験していないから、その怖さは想像だけ。それでも、もう2度とあってはならないものと強く感じる。

予約している『13月のカレンダー』も心して読みたい。

しかし、最後の「何度でも」に出てくるあの人はあの人がモデルで、あの人はあの人がモデルなのかなーと。(ネタバレになるから、全部あの人)

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2025年09月19日

Posted by ブクログ

戦後GHQ占領下の混乱期、上野の浮浪児や没落華族、元飛行士ら市井の生きざまを描く連作短編集。

それぞれの編は独立しているが、登場人物につながりがあり、全体として1編の小説となっている。

敗戦により家族、職業、財産といった生活の基盤をすべて失った人々が必死に、しかし矜持を失わずに生きようとする姿。

どの編も将来への渇望、生きる意欲に満ちながら、決してハッピーエンドとはならない。
最終編の最後も悲劇を示唆するもので、本書のトーンを象徴している。

児玉誉士夫、笹川良一など戦後右翼の大物と思しい人物も登場する。

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2025年10月29日

Posted by ブクログ

1945年、終戦後の日本を舞台にした中編集。戦時中の苦労話は良く聞くが、戦後の被占領国となった暮らしについてはなかなか知り得る機会が無かった。単に私の無知のせいではあるけど。
時に犯罪に手を染めても、最低限生きる為にもがき続ける庶民を描いている。私は「幸運な男」のミステリアスな展開が面白かった。

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2025年09月13日

Posted by ブクログ

終戦から八十年。
この夏は、TVでも戦争関連の番組を多く目にした。
白黒映像の戦後の荒廃した場面や戦争孤児の多くが逃げている様子までも…。
今では考えられないが、かつてはなんとか生きようと右往左往していた小さな子どもがそこら辺にいたのだ。

この物語も戦後の東京で男や女や子どもが、これは罪なのかと考えるよりも今を生きようとしているのがわかる六篇の短編集である。

「幽霊とダイヤモンド」ダイヤモンドをめぐって追ってから逃げる飛行士。

「少年の町」浮浪児を集めて地方の農家に売り歩く少年。

「手紙」GHQの下で手紙を検閲する元士族。

「軍人の娘」紙芝居の出版社で働きながら許婚とともに義兄の帰りを待ち続ける女。

「幸福な男」連合国軍が接収した洋館で働く料理人。

「何度でも」元伯爵家でかつての浮浪児が見たもの。




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2025年09月03日

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