前田司郎のレビュー一覧
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『「あたしは、前に、あんたがやったあの、クラス合宿の、あれとか面白かったな」
「あ、ほんとに」
太陽は嬉しかったので、嬉しくなさそうに言った。』
『判った、よい戯曲は一回読んだくらいでは理解できないのだ。悪い戯曲は説明的なセリフが多いから、一回読んだだけで簡単に理解できちゃうのだ。
俺の戯曲は、ただ読んだだけじゃあ判らないのだ。よい戯曲だから。』
『太陽がマリを天才かも知れないと思ったのは、もちろん、クラス合宿での出し物のこともあるけど、それよりも一緒に芝居をしてみての感想だった。
その駄目出しに対する反応のよさ、掛け合いでの反射神経のよさ、反射の正確さ、間に対する感性、芝居の空気を支配す -
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『太陽は早くも孤独を感じていて、どこか自分の孤独を演出できる場所を校内に探していた。できたらその場所で孤独に浸っているところを女子に見つけられ、密やかな好意を寄せられたい。
ということは、本当に孤独の場所はまずいな。ある程度オープンなスペースで、それでいて孤独感があり、欲を言えば近くにトイレがあって、夏涼しく、冬暖かい場所がいい。』
『鈴たちの年頃はまだ、様々な形の欲望を、誰もが持っているって事を確信できずにいることが多いから、もしかしたらこんな欲望抱くなんて自分だけかもしれないという悩みに陥りやすいと思う。』
「渋谷から十分くらいのとこ」
「ええ凄い」
「凄くねえよ」
「でも相原くん全然 -
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『咲には信念みたいなものがあった。ご飯さえ炊ければどうにかやれる。いつでもそう思って生きてきたのだ。』
『信義が出張などで居ない夜は自分の炊飯ジャーでお米を炊いたりした。それは咲にまるで浮気のような罪悪感と、罪悪感からくるスリリングな快さをもたらした。』
『それでオシンコとシャケと味噌汁とご飯とか、朝ご飯みたいなものが食卓に上り、信義が渋い顔をし、咲だってこんな朝ご飯みたいなものを夜に食べると蛇が来るよ、とおばあちゃんに言われたことはないけど、どうも、なんか文化的な何かに反抗しているみたいで気持が悪いのだった。』
『何か、そういうビジネスが出来ないだろうか? 時間とエネルギーが余っていて -
- カート
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試し読み
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『もっと真剣に考えてよ』
『俺だって真剣に考えてるよ』
『二人でそんなお祭りみたいなもの飲んで、全然真剣じゃないじゃない、もっと真剣に考えてよ』
『でも後で保障とかしてもらうとき、お金もらえないかもよ』
『どうせ、もらえないよ、何人も死んだでしょ、あっちの遺族に払わないといけないもん、俺らみたいにそばにいただけで気持ち悪くなっただけじゃ、お金もらえないよ』
『なんで? 踊りたいの?』
『踊りたくないよ ー 踊りたくないけど、踊らないといけない時だってあるじゃん』
『知らないけど、カツフミ君のこと愛してるから』
『知らないのにどうしてそんなこと言えるのよ』
『知らないから愛せるんでしょ』
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- カート
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試し読み
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ここに出てくる宇宙人のフェイクですらない存在感。一周して逆にヒリヒリするとか、そういうことでもない。
ただそこにいることで、確実にその背景を支配してしまう存在でありながら、自覚もないし、主体性もない。登場シーンの段取りの悪さは、むしろ信頼に足るほど。
僕は、作品と現実を対応させて読むという旧来の読書スタイルやリアリティに、読み手として、もうすでに無理を感じているところが大きい。
スカした言い方をすれば、それはつまり、「ポストモダン以降の文学の前提」であり、この作品では、「宇宙人の記者会見」がその役割を担っていたと思う。
そしてとにかく主人公の思考が些末。ここに共感を覚えずにはおれない。 -
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猫集会をテーマにした文とコラボの写真集。
・猫のカラー写真 沖昌之
・エッセイと物語 「毛玉」前田司郎
「化身」池澤春菜 「猫をやめたい」いしいしんじ
・解説「猫集会の科学」今泉忠明
猫たちは何処へ行くの?何故集まっているの?
なんだか不思議な猫集会をテーマにした写真とエッセイ、物語。
そろそろかな・・・行こう!・・・一緒に・・・挨拶して・・・集まる。
三々五々集まって・・・猫集会・・・時が経ち・・・解散・・・またね!
そんな感じの猫たちの写真が並ぶ合間に、猫集会をテーマにした
エッセイ、物語が顔を出します。最後に猫集会の研究の話。
集会?な場面の猫たちの様子は、等間隔だっ -
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ネタバレ不妊の原因は夫の俊介にあることがわかったけれど、俊介は子どもを諦められないでいた。
俊介が考えたのは、学生時代の友人だった水口と妻の京子で、子どもを作るということだった。
よみがえる学生時代の水口との思い出。
行きつけだった喫茶店でバイトしていた京子との出逢い。
演劇の才能はあるのにくすぶっている水口。
そんな水口に惹かれている京子と、京子のことが好きな俊介。
俊介の京子への自分の思いを、水口は知っていながらも邪魔をするような態度を取っていた理由。
愛しているんだ、と言った水口。
愛の形って、なんだろう。
とんでもない三角関係で、人間くさくて、喜劇みたいで、面白かった。
水口と京子