あらすじ
「五反田団」主宰、前田司郎の最新小説! 愚痴ばかりの"神"の声が聞こえるという牧田家の次女ナオ。ナオの言動から浮かび上がる牧田家の綻び。シニカルにユーモラスに、そして温かに描く家族再生物語。
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Posted by ブクログ
よかった!!前田司郎の小説で一番好きかも
いろんな人の視点で、考えていることがぬるっと境目なく入れ替わっていったりする。
神様っていうのが本当に気取りなくさり気なく手を握ってくるようにそばにいる存在ぽくて優しくてたまらんくなる
Posted by ブクログ
『下界を覗く。一応雰囲気を盛り上げる為に、私は湖畔のような所に赴き、鏡のような湖面をひと撫でして、あくまでも演出にすぎないが、湖面から下界を覗く。』
『なんかだからもう一枚、レンズを入れてやってうまく補正すればこうスパンと真っ直ぐ届きそうな気がする。と、こんな喩えを使ってしまうのはわたしの消し去りたい過去ナンバーワン、1年生の時しばらく写真部に居たおいう事実のなせるわざでしょう。』
『名前は言葉だ。全くの暗闇、全くの無、それを言葉が照らし出す、それが世界なんだって、意味わかる?』
『恋っていうのは私が考えたんだけど、これは上手く出来ていえ色々なことが忘れられる。忘れられるというか物凄く視野を狭めてくれる。そして適度な絶望と希望を与えてくれる。この状態にいると人たちは幸福と不幸とをお互いに上手い具合に感じる事が出来る。この「お互いに」っていうのが凄く良く出来ている点なのだ。これが一人で出来ちゃうようだと途端につまらなくなる。ところが私は一人で出来ちゃうのだ。』
『最近の記憶を置いておく台があって、あ、脳の中に、最近だと思える記憶をそこに置いておく。私の最近の記憶を置いておく台は台というよりもテーブルくらいの大きさがあって何でもかんでもそこに置いてあるから大抵の記憶が最近に思える。古い記憶を引っ張り出して来ては仕舞わずにポイと最近のテーブルに置いてしまうから、どんどん古い記憶が最近のテーブルの上にたような溜まってしまう。だから本当に最近の記憶を置く場所に困って古い記憶用の棚の奥に仕舞ったりしちゃうから私の夫への気持ちはもう過去の記憶の様になってしまったんだろうか?』
『私は帰らないといけない。もうとっくに混乱は収まったはずでしょ。いつも通りの混乱に戻ってるはずでしょ。』
『理科の石田先生は言葉と言葉の間にほぼ必ず「ええ」を入れるそれが「いええ」に聞こえて、それを頭の中で分解していると「イエー」に聞こえてきて、それは一昔前のコンサートとかで一昔前の若者がのってるときに発する「イエー」や「イェー」に聞こえてきて、「この法則はイエー!」「現在の最新の研究ではイエー!」どうでも良い。ほんと、どうでも良い。』
『私は快楽に弱い女で、そのことに開き直って生きてきたつもりだったけど、本当はいつもそのことに後ろめたさを感じていた。私はそれを裏庭の奥の方の、あ心の裏庭ね、木の下の奥深くに埋めて土を被せて忘れようとしていた。』
『アルコールは弱い毒のようなものだ。人はいつでも少し死にたいと思っているから、その欲望を適度に満たす程度の毒だ。』
『もし私に名前がなかったら、誰からも名前を呼ばれなくなったら、私はなくなってしまうわけでもない。じゃぁ、この不安はなんだろう。それともこれは不安じゃないのかしら。私が不安と名付けたこれはなんなんだろう。教室の扉のガラスに額を押し付け校庭を見ながらこんな事を考えているなんて。いや、お恥ずかしい。本当に心が体の中にあって外から見えなくて良かった。こんな心を外から見られたら恥ずかしくてやっていけません。』
Posted by ブクログ
でんぐりがえしで光速に達しようとする神様がすてき。
異常なまでになだらかな放物線を描いて、とんだボールがはねてゆくようなリズムを感じた。
どうにかこうにか、とにかく前に進まなきゃと頭をフル回転させて、なおかつマイペースに思考する人々のリズム感だろうか。
人物の切れ間がない。
わたしたちは時間や空間を言葉的なもので区切ってどうにか生活しているけれど、本当はひとつの存在かもしれない?
Posted by ブクログ
気づいたら話し手が変わってるけど、それすらたのしくて読み進めるうちに、そのスピード感にもだんだん慣れる。
ナオの言葉が少ない気がする。
結局ナオの言うように、お父さんは瀕死状態で、病院かどこかのベッドで寝てて、この話はお父さんが創ったお父さんが神の世界なのかな。続きそうな終わり方
Posted by ブクログ
自分と他人と世界の境目が曖昧になる。スライドしてゆく思考。もはや神が誰なのかわからない。めくるめく、閉じた世界。いつまでも読んでいたい。
「私は言葉に囚われた時点で、すでにもう神ではないのではないか。」
言葉の限界。
Posted by ブクログ
サクサクとテンポよく読める文体だが、その作品内世界は不条理である。それなのに描かれているのは平凡な日常なのだから何をやろうとしているのか、全く分からない。結末まで読んでみたもののよくわからない人々が喋っているだけで何やら変な世界に放り込まれたような気分である。