前田司郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『「あたしは、前に、あんたがやったあの、クラス合宿の、あれとか面白かったな」
「あ、ほんとに」
太陽は嬉しかったので、嬉しくなさそうに言った。』
『判った、よい戯曲は一回読んだくらいでは理解できないのだ。悪い戯曲は説明的なセリフが多いから、一回読んだだけで簡単に理解できちゃうのだ。
俺の戯曲は、ただ読んだだけじゃあ判らないのだ。よい戯曲だから。』
『太陽がマリを天才かも知れないと思ったのは、もちろん、クラス合宿での出し物のこともあるけど、それよりも一緒に芝居をしてみての感想だった。
その駄目出しに対する反応のよさ、掛け合いでの反射神経のよさ、反射の正確さ、間に対する感性、芝居の空気を支配する力。そういったものに対してだ。
ただ、そういう事は今の太陽には正確に分析できないから「すげえ」と思うのみだけど。』
『駄目出しの途中で笑い取るのは簡単で「あのシーンの渡井面白かったね」とか笑いながら言えば、大抵みんな釣られて笑ってくれるのだ。
笑いといっても面白いから笑うのではなく、お互い「信頼してますよ」とか「大丈夫だよ」とか言うメッセージを伝えるための笑いだ。
太陽はそれを多用した。
結果、稽古場には笑いが多く、いい雰囲気になっていると思う。』
『信じるためには疑わないといけないが、疑うのが目的になってはいけない。疑った結果がどうであろうと、最終的には信じるのではなくては駄目だ。』
『皆の芝居も精彩を欠いて見える。
セリフに含みがない。ただ言葉の意味内容しか伝わってこない。
セリフは言葉の意味内容のみを伝えるためのものじゃないと太陽は直感している。意味内容は実は二の次なのだ。セリフが意味内容を伝えるためだけにあるのであれば演劇は要らない。紙にセリフを書いて配ればいいのだ。
意味内容とは別の次元のコミュニケーションがあるから芝居は面白いのだ。』
「それが、なんか、考えてても自転車には乗れない、って言うの。有名なセリフなんだけど」
「あ、知らないですけど」
「そうだから、あのさ、考えてさ、どの筋肉をどうやって動かして、なんか、どういうあれで、どこをどう動かせば、ペダルが漕げるとか、頭で考えてもできないでしょ?」
「ああ、はいはい」
「芝居もそうなんじゃない?」
「でも、じゃあ、なんで自転車に乗れるんですかね?」
「え?」
「考えもしないで、どうやって乗るんですかね?」
「もちろん考えるのも大事だと思うけどね」
「そうですね。でも、やっぱ、考えは端に置いといて、後はもっと考えとは違う体とか感情とかそういうのでやらないと駄目なのかなあ」
「うん、そう思う」
「、、、、でも、まず最初に自転車に乗りたいって思わないと乗れないんだよな」
『不安は去らなかったが、不安を取り除こうとしてくれているという意思は通じたので鈴は少し安心した。』
『「なんか、、、オッパイあるじゃん」
「は?」
「オッパイ」
「あるよ、そんなの、なんだよ」
「超見せてって言った」
「、、、」
「超見せてってなに?」
「、、、だから、、、、しつこく、見せてって言ったら、、、、泣いた」
「おまえ、、ふざけんなよ」
太陽は泣きそうだった。』
『ふざけるな。太陽は自分の目に涙がたまって来たことに気付き、すぐに拭うとばれるので頭を抱えるような仕草をして拭った。
俺だって見たいのに。俺の方が見たいのに。』
『随分いろんなことがあったような気がするけど、楽しかったことしか思い出せない。
泣けと言われれば泣けるけど、泣かない。
泣くのはまた今度にしよう、今は楽しみたい。』
『「そうよあなたなら、あなた服のセンス最悪な上にルックスもあまり良くないけど、脳味噌もツルツルじゃない。もし、運が良ければモテるかも知れないわ」
マリは励ますような語調で、悪口を言う。』
「でも、僕は、ちょっと、多分、本当のことを、本当のことが判りました。結局、自分を評価できるのは自分だけなんだと思います ー 僕は、今回の芝居を最高に評価します」 -
Posted by ブクログ
『太陽は早くも孤独を感じていて、どこか自分の孤独を演出できる場所を校内に探していた。できたらその場所で孤独に浸っているところを女子に見つけられ、密やかな好意を寄せられたい。
ということは、本当に孤独の場所はまずいな。ある程度オープンなスペースで、それでいて孤独感があり、欲を言えば近くにトイレがあって、夏涼しく、冬暖かい場所がいい。』
『鈴たちの年頃はまだ、様々な形の欲望を、誰もが持っているって事を確信できずにいることが多いから、もしかしたらこんな欲望抱くなんて自分だけかもしれないという悩みに陥りやすいと思う。』
「渋谷から十分くらいのとこ」
「ええ凄い」
「凄くねえよ」
「でも相原くん全然オシャレじゃないね」
「東京生まれの奴は逆にオシャレとかしないんだよ」
「牛乳は?」
「飲んじゃった」
「なんで? いつも飲まないのに」
「ちょっと飲みたくなった」
「なんでよ」
「あんだよ、そういう日も」
『「渡井、安藤、海老名さん。ヤバイよこれ、多分。このままじゃ超俺たちの学生生活破滅だよ」
「超」は「破滅」にかかっている。超破滅だよ。』
『勝てばその瞬間は気持ちいいかもしれないが、必ず遺恨を残すのだ。ギャラリーの過半数が勝ちを確信したくらいで、刀を納めるべきなのだ。』
「大抵の人がウンコするから、ウンコを介して皆が内輪なんだよ、ウンコに関してはみんなある程度知識と経験があるから。だからシモネタっていうのは世界共通で笑いがとれるの」
「あ、桃太郎」
「なに?」
「あ、桃太郎です」
「何それ名前?」
「あ、今自分で、考えました、あの、桃なんで、桃からあれしたんで、桃のあれの方が良いかなあと思って、あ、あれっていうのはなんか、桃の、桃にちなんだあれの方が良いかなっていうか」
『妙子の恋心はもしかすると若さゆえのただの思い違いだったのかも知れない。
でも、恋心なんて全部思い違いみたいなものじゃないのだろうか。』
『他の大人に話したら「みんな通る道よ」とか言われて笑われるか、「恋に憬れてるだけよ」とか言って呆れられるかも知れない。でも本当はそんな見解どうでもいい。悲しいものは悲しいのだ。』
『今の太陽は生まれたてのヒヨコみたいな状態で、自分に話しかけてくれる女子全部好きになっちゃう勢いがあったのだ。』
『なんとなく、上手く行きそうな気がする。
全く根拠のない自信に満ちている。
これは俺が四月生まれだからだろうか?』
『気持ちは言葉にすると、何か、きっぱりと割りきれたものみたいに思えるけど、実際は、なんだかぐちゃぐちゃで、判別が難しく、自分でもなんだか判らないものなんじゃないのか。
小説はその判別難しいモヤモヤ、ぐちゃぐちゃしたものを言葉でかっきりと整理していくものだと、思っていたけど、多分、そうじゃないんだ。
モヤモヤしたものを整理できるの言葉だけど、だから、小説は言葉ではないのかも知れない。言葉を使ってはいるけど、言葉とはもっと違うものなのかも知れない。
ああ、俺はなんて頭がいいんだ。天才かも知れない。』
『えっと、そうだ、だから、言葉を並べようと思っちゃいけないんだ、言葉を使うんだけど、言葉で整理しちゃいけないんだ。だから、言葉を沢山知っている必要はないんだ。言葉をたくさん知っていても作家にはなれないんだ。だから、俺みたいに言葉を沢山知らなくても大丈夫なんだ。きっと。』
『その、気持ちだったり、なんか、言葉にできないような微妙なことを、言葉にしちゃったら、違っちゃうから駄目で、それをそのまま小説にすればいいんだ!
小説だったら、モヤモヤしたあやふやなあれをそのまま描くことができるんだ。だから小説は凄いんだ。そうか、だから、例えば言葉なら「愛」とか一言で言えてしまうものを、一冊かけて書いたりするのだ。一冊では書ききれなかったりして、一生をかけたりするのだ。
そして、それはもっと、モヤモヤしていて、結論みたいな感じじゃなくて、なんだろう、結論て言うか、カチッとしてなくて、もっと自由なまま、そのまま、表現できるんだ。
そうか、そういう風に書けばいいんだ。
よし書こう。
どうやって?』
『それでなんとなく、これが重要なのだけど、なんとなく言えたってことが。なんとなく信二は「付き合うよ」と言ったのだった。
考えていたら絶対そんなことは言えないのだ。たまたま、本当にたまたま出会い頭にいい言葉が出たんだ。
「え、ありがとう」
だから、恵美もなんとなく、信二が忘れ物を一緒に取りに行くことを承諾したのに違いなかった。
意識してたら無理ですよ、そんなの。「付き合うよ」なんて。』
『「野尻くん、そういうの向いてると思う」
「マジで? なんで?」
「なんか、判んないけど、そう思う」
「そうか」
信二は、何か、よく判らないけど、嬉しかった。』
『女子と話すとき、守りに入ってしまう。
守りに入るといっても、消極的な態度をとるとかそういう単純なことだけではなくて、もちろん消極的にもなるけど、自分が傷つかないように行動するということだ。
だから、簡単に言うと、嫌われる前に嫌ってやれ、みたいな行動とることがある。
相手にされなくなる前に、こちらから相手にしないでやるのだ。
女子なんて、みたいな態度で女子と話す。だからなおさら、女子に嫌われる。』
『いくつかの種類の事柄を経験していると、初めての事柄に出会ったとき、過去の経験から類推し、未経験のことに関しても経験済みのように対応することができるようになる。大人なんてその程度のものなんじゃないだろうか?』
「多分、あなたが思っているよりも、みんなはあなたのこと好きだよ」
『鈴は、自分の気持ちを説明しようとしたけど、自分でもいまいちよく判らない自分の気持ちを他人にうまく説明できるわけもなく、それでも、なんとか、判って欲しくて言葉を重ねてみた。』
「恥ずかしい?」
「あ、まあ、恥ずかしい? はい」
「でも、喜怒哀楽の練習をしないと、舞台上で喜怒哀楽を表現できないから」
「でも、練習をしないと表現できないってことは、普段からそんな風に喜怒哀楽を表現していないってことじゃないですか?」
「喜怒哀楽なんて伝えて何になるんですか?」
「それが伝わった方が、感情移入できるでしょう? 登場人物に感情移入できるでしょ」
「そんな喜怒哀楽を判りやすく表に出すような、現実味のない人間に感情移入できません」
「だって先輩はさっき舞台と日常では表現が違うって言ったでしょ? 舞台の方が表現が大きいって。それは、日常の人物と舞台上の人物が違うってことじゃないですか? そしたら、日常に住んでいるお客さんに、舞台上の人物に感情移入させるの難しいじゃないですか?」
「難しいよ、だから」
「なんでわざわざ難しい方法とるの? 舞台上では大きな表現をしないといけないって誰が決めたんですか?」
『会話だけ見ると全く面白くないが、要はタイミングとそのときの雰囲気だ。
今ここで何か言えば、内容に関係なく、笑いが取れると言うタイミングがあることを太陽は小学生くらいの頃に気付いていた。
そう、タイミングなのだ。』
『腐らないか心配だったが、笠岳は下よりも涼しいし、大丈夫だろうということになった。
今井先生は一番びびっていたが、腹をくくった。
食中毒が出てもどうにか揉み消そう。』
「どこ行ってたの?」
「神社の方に行ってました」
「なんかあった?」
「あ、神社が」
「そうか」 -
Posted by ブクログ
『咲には信念みたいなものがあった。ご飯さえ炊ければどうにかやれる。いつでもそう思って生きてきたのだ。』
『信義が出張などで居ない夜は自分の炊飯ジャーでお米を炊いたりした。それは咲にまるで浮気のような罪悪感と、罪悪感からくるスリリングな快さをもたらした。』
『それでオシンコとシャケと味噌汁とご飯とか、朝ご飯みたいなものが食卓に上り、信義が渋い顔をし、咲だってこんな朝ご飯みたいなものを夜に食べると蛇が来るよ、とおばあちゃんに言われたことはないけど、どうも、なんか文化的な何かに反抗しているみたいで気持が悪いのだった。』
『何か、そういうビジネスが出来ないだろうか? 時間とエネルギーが余っていて筋肉をつけたい人を安価に雇って筋肉がつくような単純な仕事に従事させる。つまりそれは給与をお金で払うのではなく、筋肉で払うということなのか。』
『信義は今日もスーツを着ていった。夏用に薄い生地のスーツを新調したのだけど、全く意味が分からない。そんなことならスーツの模様の刺青をしろ、と思っていた。』
『近づいて見ると仕切りに直接店の広告が書かれており「占いの館 手相、星座、顔相、占い出来ます」とあった。占いの館なんだから「占い出来ます」は特筆するべきことじゃないんじゃないかと思う。』
『咲はとりあえず両手を広げてゆっくりクルクル回ってみた。しかしこの行動は咲本来の欲望の希求ではなく、26年の社会生活から学んだ「気持ちの良い広い場所に出たとき取る行動の中で割と好感度の高い行動」のひとつを実践したに過ぎなかった。』
『しかし、今日のご飯は咲にとってどうでも良い一食に過ぎない、今日のご飯を捨石にすることになんらためらいはなかった。これが旅行の途中とか、友達との会食なんかであれば負けは許されないものであったが、今日のご飯はいつもの何でもないご飯のうちの一回だ。やがて完全に忘れ去られる類のものだろう。だったら、負けても思い出に残る試合がしたい。』
『草津とかは?』
『意外と遠いよ。箱根は?』
『ああ、いいね、どこでもいいや温泉あってのんびり出来れば』
『でも、超混んでんじゃない?』
『うーん、DVDで温泉のやつでも見るか?』
『「あなた悩んでるわね」と言った。「悩んでます」とだけ言ってみて、出方を窺うことにした。「何に?」占い師はもう訊いちゃった。訊いちゃ駄目だろ。そこを当てて私の信頼を得ないと。咲はそう思うのだが、少し、意地悪をしてみるかという気になった。「当ててみてください」
「うん。うん、」老婆は二度うんと言うのだが、咲にその意図は測れない。老婆はそのまま咲の顔を見る「色々悩んでるわね」と言うのだった。
当たってる。』
『地獄甘エビ?』
『地獄の名産です』
『へー良いですね』
『ええ、甘くて身がプリッとしてて美味しいんですよ、エビじゃないんですけど』
『え?』
『生物学的にはエビじゃないんですけど』
『言葉がどうしても剥き出しになってしまう。単純な言葉を選んで使うとそういうことになるのだった。気遣いや、微妙なニュアンスなんかは、音の大きさや調子、表情といったものに託さないといけない。ヨシコと話していると自分が表情豊かになっているのに気付く。表情を会話の道具として使うのなんていつ振りだろう。咲は信義としかほとんど話さないけど、お互い大抵言葉でどうにかしようとする。案外そういうところに原因があるんじゃないか? などと考えて、原因て何の? と思い返す。私たちって上手くいってなかったんだっけ。私、ちょっとそう思ってたのかもな。』
『結婚するときも、付き合ってるという状況に慣れすぎてそれをぶち壊すような気持があった気がするし、だけど、今度は結婚生活に慣れてしまったら私たちは、離婚するしかないのかなんて考えたこともあったけど、子供を産むとかもまあぶち壊しの一種だな、面倒だから嫌だけど。そうなるとやっぱり比較的簡単に起こせるぶち壊しはやっぱり旅行なのかもしれない。凄いところに来てしまった。日常に比べたらどこでも凄いところだよね。』
『そしてお湯はビーフシチューのような色をしている。だんだん冷静さを取り戻してきてよくよく見ればもうビーフシチューにしか見えない。なにせ具のようなものも浮いている。「これはビーフシチューじゃないか」信義はそんな人生で初めて言うようなセリフを発していた。』
『これから二人で過ごす時間を考えるとうんざりするほど長い。結婚ていうものはそういうものだと割り切った。だけど、何も今からうんざりする必要はないんだよな。本当にうんざりするまでは、うんざりしないよう努力してみるべきなのかもしれない。確かに少しサボっているのかもしれない。たまにはこうして体力と気力と時間とお金を使ってみるのも良いのかもしれない。うんざりしないのには努力が必要なんだ。その努力はそう悪いものではない。そう思う。』
『二人は荷物を持ち替えて片手を空けると、手を繋いで歩いた。ずっと繋いでいるわけにはいかないから、きっとなんかの拍子に離さなくてはいけないのだけど。まあとりあえず手を繋いでいたい気持だったので、二人は手を繋いで真っ暗な階段を一歩一歩下りていった。』 -
生きてるものはいないのか
- カート
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試し読み
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『もっと真剣に考えてよ』
『俺だって真剣に考えてるよ』
『二人でそんなお祭りみたいなもの飲んで、全然真剣じゃないじゃない、もっと真剣に考えてよ』
『でも後で保障とかしてもらうとき、お金もらえないかもよ』
『どうせ、もらえないよ、何人も死んだでしょ、あっちの遺族に払わないといけないもん、俺らみたいにそばにいただけで気持ち悪くなっただけじゃ、お金もらえないよ』
『なんで? 踊りたいの?』
『踊りたくないよ ー 踊りたくないけど、踊らないといけない時だってあるじゃん』
『知らないけど、カツフミ君のこと愛してるから』
『知らないのにどうしてそんなこと言えるのよ』
『知らないから愛せるんでしょ』
『知らない、踊ってたら死んだ』
『踊り? なんで踊るの?』
『え?、え?、踊らないといけないときがあるから?』
『うん、あ、俺そろそろちょっと死にそうなんで、すいません、ほんと見守ってもらって良いですか』
『いやだから急いでるから』
『すぐ、すぐ』
『ほんとにすぐ?』
『はい』
『、でも、ホント急いでね、俺ホント急いでるから』
『いや、あの、だから妹がさ、この近くにいるはずなんだよ、だから会いたくて』
『会ってどうするんですか』
『どうするって、どうもこうもないけど、だって会いたいじゃん』
『つうかまだ? あの、あれだったらちょっと悪いんだけど、そろそろ』
『待って待って待って待ってください、す、すぐですから』
『あのー、ちょっと、これあのーなんだろ? いいことかもしれないんだけど ー なんか回復してない?』
『いやいやいや、全然、虫の息ですから』
『みんな死んでるんだよ ー 俺たちも死ぬかも知れないんだよ』
『だって、そんなの当たり前でしょ、みんな死ぬのなんて』
『そうだけど、何にもしてないのに』
『何かしても、何にもしなくても、死ぬんじゃないの?』
『もうすぐ警察とか、自衛隊とかが助けに来るだろ』
『なんで、今来ないの』
『え? なんか、まだ準備してんじゃない?』
『なんの?』
『、え、でも、最悪アメリカ人が助けに来てくれるから』
『アメリカ人もみんな死んだんだよ』
『アメリカ人何人いると思ってんだよ』
『知らないけど、みんな死ぬんだよ』
『ありがとう、世界』
『あ、それ、僕も言おうと思ってたのに、なんだよ』
『あ、残念』
『あ、じゃあ、すいません、自分、逝かせてもらっていいすか?』
『、う、うう、ありが、サンキュウ、世界、』
『みんなが死ぬんなら寂しくない気がする』
『、あ、そう?』
『だって、私が死んだら、世界がなくなっちゃうのと一緒でしょ、だから、世界が死んで私が生き残っても、一緒でしょ』 -
生きてるものはいないのか
- カート
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試し読み
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ここに出てくる宇宙人のフェイクですらない存在感。一周して逆にヒリヒリするとか、そういうことでもない。
ただそこにいることで、確実にその背景を支配してしまう存在でありながら、自覚もないし、主体性もない。登場シーンの段取りの悪さは、むしろ信頼に足るほど。
僕は、作品と現実を対応させて読むという旧来の読書スタイルやリアリティに、読み手として、もうすでに無理を感じているところが大きい。
スカした言い方をすれば、それはつまり、「ポストモダン以降の文学の前提」であり、この作品では、「宇宙人の記者会見」がその役割を担っていたと思う。
そしてとにかく主人公の思考が些末。ここに共感を覚えずにはおれない。
併録の、『ウンコに代わる次世代排泄物ファナモ』では、女性目線で語られる自意識の現代バージョンに、細部でたくさん笑わせてもらった。
八つ当たり的に、「転べ!」と念じるところなんて、もうなんかその気持ちが分かりすぎてカタルシスを得た。
大災害のあったその日に株価の話をしている人間がたくさんいるような世界で、唯一の救いとなるリアリティとは、こういうものだ。 -
Posted by ブクログ
猫集会をテーマにした文とコラボの写真集。
・猫のカラー写真 沖昌之
・エッセイと物語 「毛玉」前田司郎
「化身」池澤春菜 「猫をやめたい」いしいしんじ
・解説「猫集会の科学」今泉忠明
猫たちは何処へ行くの?何故集まっているの?
なんだか不思議な猫集会をテーマにした写真とエッセイ、物語。
そろそろかな・・・行こう!・・・一緒に・・・挨拶して・・・集まる。
三々五々集まって・・・猫集会・・・時が経ち・・・解散・・・またね!
そんな感じの猫たちの写真が並ぶ合間に、猫集会をテーマにした
エッセイ、物語が顔を出します。最後に猫集会の研究の話。
集会?な場面の猫たちの様子は、等間隔だったり、触れ合ったり、
寛いだりと違うけど、人の視線に対しての拒否を思わせる視線は、
猫たちだけの不思議な集まりなんだなぁと感じます。
ともあれ、猫好きには楽しい写真集です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ不妊の原因は夫の俊介にあることがわかったけれど、俊介は子どもを諦められないでいた。
俊介が考えたのは、学生時代の友人だった水口と妻の京子で、子どもを作るということだった。
よみがえる学生時代の水口との思い出。
行きつけだった喫茶店でバイトしていた京子との出逢い。
演劇の才能はあるのにくすぶっている水口。
そんな水口に惹かれている京子と、京子のことが好きな俊介。
俊介の京子への自分の思いを、水口は知っていながらも邪魔をするような態度を取っていた理由。
愛しているんだ、と言った水口。
愛の形って、なんだろう。
とんでもない三角関係で、人間くさくて、喜劇みたいで、面白かった。
水口と京子が俊介に内緒で会っていることを知った俊介の家で、京子のあとについて裸足でペタペタ歩きながら言い募る様子がおもしろい。
昔のように3人で過ごした夜。
3人の思いがつまった3人の子ども。