池田信夫のレビュー一覧
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この本はプロローグにあるとおり、日本を舞台にした近未来物語であるが、中身はミルトン・フリードマンが1962年に創刊した「資本主義と自由」をベースとしたもの。
現在の日本を取り巻く震災復興支援や、増税、不安定な政権運営、継続される不況が今後も続き、日本国の財政は破綻寸前となる。2015年には長期国債が大量に売れ残り長期金利が上昇。メガバンクはじめ各金融機関や外資系ファンドが国債を大量に売り始め、邦銀売却分を日銀が買い取り通貨が市場にあふれ、インフレを引き起こす。
政府の債務不履行を阻止するため日銀が国債を引き受け続けなければならない事態となり、更なる増税を問う内閣総辞職、選挙が行われた。その結果小泉進次郎が総理大臣として就任し、「資本主義と自由」の中から実現されていない10の項目を実現させる政策を掲げて行く。
1 農業補助金の廃止
2 関税の撤廃
3 最低賃金の廃止
4 企業に対する規制の撤廃
5 政府による電波の割当の廃止
6 公的年金の廃止
7 職業免許の廃止
8 教育バウチャー
9 郵政民営化
10 負の所得税
ストーリーについては読んでの通りであるが、マンガで登場人物も実在の人間に限りなく近い表現とすることで、ビギナー経済本としてチョイスした私には非常に理解し易い内容であった。
この本の通り、スーパーから物が消え、銀行で取り付け騒ぎが起こり、ペイオフも発動、公務員がストを起こす、というくだりは個人的にもリアルな問題ではあり、その危機は意外にもすぐそこまで迫っている印象も受けた。
個人的には、複雑化する社会において、全員一致の理解を得られる思想というものは限りなくゼロに近いと思っている。現在の日本が抱える様々な問題を一つの方向に導くためには、圧倒的な人間力でもって舵をとるカリスマが必要であると考えているが、本書では父、小泉純一郎に重ね合わせ進次郎としている点も興味深い。
最後に原作、池田信夫は「この本に書かれた中身がすべて実現する日は永遠に来ないだろう。それは正しくないからではなく、あまりに合理的で政治的な既得権を破壊するから」とし、「資本主義と自由」は永遠に新しい古典と位置付けている。 -
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「イノベーションとは何か」というタイトルでありながら、書かれているのは「イノベーションを阻害するものは何か」である。
かつては日本的な産業的・経営的な構造がイノベーションに有利だったが、現在では行き詰まりを見せている。
本書では、その打開策は与えられていないが、妨げているものは明らかにされる。
その際に用いられるのは、経営学だけではなく、政治学、経済学、心理学といった幅広い手法だ。
本書で取り上げられるのは主にIT企業だけれど、基本的な考え方はあらゆる業界に応用ができ、自分の周りのイノベーションを妨げているものが一体何なのか、多面的に捉えることができるだろう。 -
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ネタバレかつてinnovationという単語は日本で「技術革新」と訳されたため、多くの人が、革新的な変革は新しい技術の発生を伴うと誤解している。しかし、わかりやすい例として、iPodやiPhoneといった製品を見ればわかるように、その製品自体に新しい技術要素がなくても革新的な変革を起こすことができる。
停滞が目立ってきているとはいえ、変革が起こり続けている業界のひとつはIT業界である。ここ数年の日本のIT業界の停滞はひどいものであるが、それを尻目に海外からのinnovationが押し寄せている。クラウド、SaaSの法人企業への導入は確実に進んでいる。IT業界にとっての停滞の原因、これからのinnovationは何かということを考えながら読み進めた。
企業は今現在、得意分野であり、売り上げや利益に貢献する分野にこだわる。目の前にクラウド、SaaSというような、ほぼ100%世に進展するであろう流れが見えているとしても、今まで作り続けてきた製品に固執する。そのほうがわかりやすい結果を出せるからである。
innovationを起こしてきたのは最大規模の企業ではなく、中小企業だったり、新参のベンチャーに近いような企業だったりした。この本の考えによるとクラウド、SaaSを作り、実際に世に送り出すのは世に名の知られていない小さな企業であり、その品質はお世辞にもよいといえないもの、ということになる。この「品質がさほどよくないもの」というところが重要で、最大規模の企業は、(特に日本の場合)はそのようなものを顧客に提供できたものではない、と二の足を踏んでしまう。
このようなことがIT業界だけではなくいろいろなところで確実に展開している。今、提供しているサービスは確かに必要なものではあるけれども、何年後かにはinnovationと呼ばれる流れとともに現れる信じられないほどの低価格のサービスにとってかわられる。
このようなinnovationは不可避なものであるから、労働する側は常に自分が提供できるサービスを柔軟に変えられるようにするしかない。
日本の雇用制度はその点、柔軟性がない。最近はずいぶん怪しくなってきたとはいえ、以前多くの人が前提と考える終身雇用制度が強いからである。
自ら提供する旧来のサービスの必要性を測定し、その一方で新たに起こる流れを見て、提供するサービスを自ら変化させることができること、そういうことが必要なようである。ただその新たなサービスの提供には「必ずしも新技術が必要なわけではない」、そこが重要なようです。 -
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池田さんは、NHK出身の経済学者。
過激な発言、もっともなんだけど、もうちょっと言い方ないのかな、というレベルの発言なので、よく、ツイッターとかブログが炎上するらしい。
自分は、明確な論理展開が気にいっているが、あおきさんのように、マナーが悪いと指摘する人もいる。
評価が分かれている人。
シュムペーターが言っているとおり、イノベーションがないと、新しい段階での経済発展、社会発展が見込めないが、日本人は、均質的な社会体質でイノベーションが不得意と言われている。
この本をよんでも、これが決めてという手法はないが、そもそもイノベーションにそういう常道はないのだろう。
①自閉症的なビル・ゲイツやスティーブ・ジョッブスのような、まったく別のフレーミングを創造できる変人が、最後まで思いこみを実現できる環境をつくることが大事。(p34)
②独創的なイノベーションの価値が高まっている情報産業では、日本企業のようなコンセンサスで意思決定を行うガバナンスが没落し、アップルなグーグルのように創業者が独断で決めて、彼が間違えたらつぶれるという19世紀型のオーナー企業の優位が顕著になっている。(p112)
そういえば、ソフトバンクもユニクロも独裁者的なトップだね。
③進化ゲームを考えると、中途採用のような突然変異の確率が高くなると、雇用が流動化する可能性もある。そのためには集団内の淘汰圧を引き下げたり、集団を細分化したりして、変人が労働市場で生き延びる確率を高める必要がある。(p218)
これは、マネージャーとしても注意したい。自分の言うことを素直にきく部下を集めるのではなく、くってかかってくるような勢いのある変人の部下を集めたい。
というか、毎朝、一冊本を読む自分も十分「変人」か?(苦笑) -
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イノベーションについての体型的な視点をできるだけ理論ベースでアプローチした本です。池田氏も冒頭で述べているように今まで経済学でイノベーションというのは不確実な事象というある種サジが投げられたものであり、他方経営学ではケーススタディの分析にとどまっておりなぜイノベーションが起こったかはわかってもどうやってイノベーションを起こすかはやはりベールに包まれていました。それをできるだけモデル化しようとしたのが本書です。大学の教科書にも使えるように意識して書いたというのだが、アカデミズムの教授が書く本との違いはケーススタディの量でしょう。理論ベースの教科書では実際例というのはこちらで勝手に考えるように課された命題でしたが池田氏は自身の経験と広範な知識を惜しみなく披露しまだまだ不透明なイノベーションのハウツーを描くことにある種成功しています。難点としては、専門用語が多いということです。池田氏の肩書きは経済学者であり、引用や思考もそれによることが多いのですが他にゲーム理論やORや進化論などの用語が使われているのでこれらいずれかを少しでも知らないと調べながらの読解になるので厳しいと思います。また企業の例もIT系がなぜか多くそれに付随するハードウェアやスクリプト言語の名前など出てくるので相応の覚悟が必要です。ドットコム、自然独占、FTTH、これらの意味または示唆することを想像できるかできないかがひとつの指標になります。しかし用語が多すぎてケーススタディが果たしてケーススタディたり得ているのかどうかの読み手の議論ができないのは問題があるでしょう。モデルを知ってケースを知ったとしてもあくまで聞いた情報以上の価値はなく、読み手がそれを咀嚼できるやら。広範な知識を先ほど評価しましたがそれがたたったか。
総評としてはアカデミックな性格を持ちながらも常に実践を意識したスタイルと時折アイロニーを含んだような文章の構成のそれらの全ては読み手を飽きさせず社会人、学生だけでなく近年の脳トレ層にも勧めることのできる思考を促す良書である。経済学はこう使うのか、ゲーム理論はこんな使われかたをしているのかを理解する一助にもなり二度三度読んでも新しい発見がある本だと思われる。 -
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ハイエクの思想をまとめた本。
他者の書評などを見ていると、著者池田信夫のインパクトが強すぎて、良くも悪くも「池田信夫が書いたハイエクの本」という視点で語られることが多いようだ。
が、この際著者のことは脇に置いておくと、80年代以降、英米が自由経済を推し進める際の理論的支柱となったハイエクの思想を、認識論・政治哲学・法哲学・経済学の観点から解説し、最終的にインターネットなど現代の現象に照らしてその是非を問うている。
ハイエクの思想は、要約すれば
「人間社会というものはとかく変数の量が膨大であり、かつ変数間の関係も時と共に変化していくため、予測は不可能。そのため、社会全体の効用を最大化する一連のアクションを、客観的に知ることはできない。
それよりも、個々人が、自身の選好と外部環境の一部に対して持ちうる情報をもとに、効用を最大化するよう自由に行動するほうが、全体の効用を最大化する上で望ましい。
よって、政府や自治体などの共同体が行うべきは、人々が自由に取引を行えるような市場を用意し、守ることだけである。それさえしていれば、あとは個々人が、不完全な知識に基づきながらも、ラフな合意・創作意欲・自身の好みにより、富を効率的に創造・交換する」
、となる。
これは、政府の積極的介入を是とする計画経済やケインズ主義はさることながら、完全情報を持つ合理的経済人を前提とした制度設計を主張する新古典派経済とも異なる。
昨今、社会的に強力なインパクトをもたらしたインターネットとリーマンショックが、ハイエクの思想を見事に体現し、ケインズ主義や新古典派よりも妥当性があることを示した(インターネットは政府の計画で作られたわけでもなく、また将来を正確に予測した上で演繹的に作られたわけでもない。個々人が「こんなのあったらいいな」と、自分の好みを実現するために、ラフな合意のもとにコードを書き、常に不完全な状態で進化してきたものである。またリーマンショックは、市場が完全情報やら合理的経済人やらで動いているわけではないことを証明した)。
上記を、理論発展の歴史的展開や具体的適用例を交えながら、コンパクト
に概観する上で、良い本。 -
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ネタバレ[ 内容 ]
一九三〇年代、ほとんど一人で社会主義・ケインズ主義と対決したハイエクは、サッチャー、レーガン政権が成功したことで、経済学だけではなく、世界のあり方をも変えた。
本書では、市場経済を全面的に信頼したハイエクの思想の今日的意義を明らかにする。
彼の思想は、現在の脳科学、法体系、知的財産権、インターネットを理解する鍵を、私たちに与えてくれるのだ。
現実がハイエクに追いつくには二〇世紀末までかかったが、彼の思想は、新しい社会秩序のあり方を考える羅針盤として、いま不動の位置を占める。
[ 目次 ]
第1章 帝国末期のウィーン
第2章 ハイエク対ケインズ
第3章 社会主義との闘い
第4章 自律分散の思想
第5章 合理主義への反逆
第6章 自由主義の経済政策
第7章 自生的秩序の進化
第8章 自由な社会のルール
第9章 二一世紀のハイエク
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
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<引用など>
・所得分配という意味での格差は、小泉政権では縮小しました。むしろその後の政権で「正社員」と非正規労働者の格差が拡大しました。
・金利上昇はめぐりめぐって、設備投資の際に企業の調達コストを上げることになります。
・「骨太2006」で社会保障の自然増を抑制する議論を正面から取り上げた
・OECDの統計によると、2010年末に政府債務残高GDP比が200パーセントに達する(これはグロス)
・政府保有の金融資産にも着目し、これを相殺消去したネットの政府債務(純債務)で見ると、対GDP比は110パーセント強となります。(グロス債務に将来の年金給付債務が含まれ、金融資産には年金積立金が入っていることに注意)
・国民が将来背負う税負担の総額は「グロスの債務」プラス「年金給付債務と覚しきもの」マイナス「外国債」マイナス「金融資産」となります。
・日本のバランスシートの大きさは、アメリカの約5倍
・歳出削減より先に税を上げたケースは、必ず失敗している(アルバート・アレシナ)
・法人の配当は法人税課税後の利益から支払われるのに、配当を受ける株主にも所得税を課していて、本来は二重課税です。
・国の一般会計の社会保障関係費の大部分は、社会保険に対して国が出している根拠不明な公費です。(たとえば医療保険、後期高齢者医療制度、国保)
・税金を払っていない商店街のおじさんが、安い保育料で優先的に子どもを保育園に入れ、その送り迎えをベンツでしている。
・消費税は逆進的といわれますが、むしろ社会保険料の逆進性のほうが深刻なのに、そこを見誤っているのです。
・「金持ちを貧乏人にしたところで、貧乏人が金持ちになるわけではない」(サッチャー)⇒所得税の最高税率を上げるのは、ほとんど儀式的な意味しかなく、税収も増えない。
・スウェーデンやオランダは何十年もかけて社会保障改革をやりましたが、つねに労働市場改革と教育改革が一体でした。
・正規も非正規も等しく、「同一労働・同一賃金にしろ」というならいいのですが、いまの主張は「全員を正規にしろ」というものです。これでは雇用を減らすだけです。
・貧困の理由
1.働きたいけど、健康上の理由で働けない(→生活保護)
2.働きたいけど職がない(→雇用対策)
3.働いているけど賃金が安い(→最低賃金の問題) -
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最短で日本の余命はあと3年か。
確かに個人資産の総額に国債発行額が近付いていることから、そんな感じはしてた。
粛々と準備をしておかないと。
そうならないことがもちろん良いのだけれど、
そうなってしまったときにでも大丈夫なように。
---気になった言葉---
子ども手当(年間5.6兆円)を諦めれば、現在、実効税率40%の法人税を、香港並みの17%にすることが数字上可能です。(P77)
「圧力団体は一つで頑張ると資源配分によくないことが起こるが、利権グループ同士を競わせると、よい均衡に到達できる」(P196)
社会や国家は、「幸せ」という概念について立ち入らないほうがいいと思うのです。(中略)国民の幸せまで追求すると、先ほどのコレクティビズム(集産主義)になってしまいます。(P215)