池田信夫のレビュー一覧
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ネタバレ池田信夫さんの新著。
いわゆる「戦後リベラル」なるものの影響力の低下について論評している。池田さん自身、学生時代は左翼系の団体に所属していた。仲間4人が殺されたとかなり衝撃の事実も書かれている。就職でも朝日新聞から内定をもらっていることからも池田さん自身もある程度は左寄りであったということも言えるだろう。
まず第一章は、慰安婦報道や福島原発の吉田証言報道の問題で地盤沈下も激しい朝日新聞から始める。朝日新聞の主張こそが、戦後リベラルをある意味で代表するものでもあるからだ。慰安婦問題については池田さんもNHK時代に初めに持ち込みネタとして取材を行ったということで曰くつきでもあり、その分相変わらず -
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ハイエクは「自生的秩序」を重んじ、起源や根拠がよくわからなくても、大昔から淘汰されずに残ってきた伝統や習慣を尊重すべしと主張した。社会構造を一気に変革できると考えた合理主義には反対の立場だったという。
「自生的秩序」の考え方は、国家が上から押し付けるルールよりも、ローカルな人々に根付く「善」を重視するコミュニタリアニズムとの親和性も高いように思われる。
もともとはハイエクの経済思想について知りたくて本書を読んだわけだけど、経済思想そのものについては、実はそんなに詳しく書かれていない。むしろ、進化生物学やコンピュータ科学、言語哲学など、経済学や法哲学以外の分野とのアナロジーが多く、結局何が -
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対談に名作なし、は読書家の定評(?)だが、池田信夫ということで手に取ってみた。
対談のもう一方の相手の與那覇潤は、『中国化する日本』という本を書いた気鋭の歴史学者らしい。池田信夫も学者といえば学者なので、学者系の対談にあるようにやたらと文献が出てきて、あの本の中ではこう言われていた。あれはこう解釈することができる、といったような対談にありがちな流れになる。丸山眞男とかドゥルーズ、マックス・ウェーバー、サンデルも出てくるし、『失敗の本質』も出てくる。この辺りはある程度知識はあるので付いていけている気がするが、そもそも『中国化する日本』を読んでおくべきなのかもしれん。
副題に、「変わる世界、変 -
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福島の事故以降、法律的根拠も科学的根拠もなく原発が止められ、再開もできない状況から本書は書き始められる。著者は、閉塞感といら立ちとともに、その原因が日本人の「空気」によって動くことだと批判する。
先行する研究事例である山本七平(『「空気」の研究』という著作もある)や丸山眞男、『失敗の本質』などを通して、いかに日本が特殊であり、それが日本の現状につながっていると主張している。原発の問題も、農業問題も、環境問題も、雇用問題も、すべからくなかなか前に進まないのは、日本において物事が「空気」によってしか動かないからだと説明する。
丸山の「古層」の概念を時に拡張し、その原因が島国であることを含む歴史的 -
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アベノミクスに対する徹底的な批判の書。
ブログで書かれていることを背景含めて著者の主張をまとめている。
確かになぜデフレから脱却するとよいのか分からない。実際にはまともに説明もされていない。円安も輸出産業にとってはよいことだが、一般にはよいことだけではない。インフレは、資産の目減りにつながる。
特に日銀の異次元緩和には批判的だ。ノーゲインでテールリスクを取りすぎていると。テールリスクは、実際には確率的にほとんど起りえないということではなく、リーマンショックを始めバブルがはじけるときのことを考えると必然であるように思う。
いずれにせよ、大きなリスクを抱えていると考えるのは正しいのだろうと思 -
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池田信夫・與那覇 潤共著。
2人の趣味で書いたでしょって感じの本。
多分1回じゃわからん。
日本史を西洋基準でなく、中国基準で見直しましょう。
それはシステム1(本能的な感情)とシステム2(抑制する機構)の存在で、システム1は全世界が持ってて、システム2は戦争しまくった西洋しかもっていないっていう考え方。
メモ
・約350年間(薬師の変から保元の乱)、「国家の首都で政治的理由による死刑が執行されなかった」期間としては世界最長。
・五十代十国の状態が宋という王朝によって統一されず、中国大陸が分裂したままだったとしたら、ヨーロッパと同じになったかもしれない。
・日本の実際の有罪率は世界平均だ -
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ネタバレ【ハイエク 知識社会の自由主義】
「はじめに」
●社会主義と新古典派経済学に共通する「合理主義」と「完全な知識」という前提に反対し続け、それらは死後15年以上経ち行動経済学の多くの実験で反証された。
●「不完全な知識にもとづいて生まれ、つねに進化を続ける秩序が、あらゆる合理的な計画をしのぐ」という予言を、インターネットは証明した。社会主義の不可能性を証明し、ケインズ政策や福祉国家も含めて、経済を「計画的」に運営する事は不可能であり有害である事を示した。
●21世紀が「知識社会」になるとすれば、不完全で不合理だということを明らかにしたハイエクの理論は、情報ネットワーク社会の秩序のあり方を考える基 -
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ネタバレ日本人の特質を、山本七平や丸山真男の論を活用しながら、歴史学・考古学・哲学などの知識を駆使して、解説した著作。
結論を言えば、日本人だけにしかない特質を、中国大陸から適度に離れた日本列島の距離感によって、民族の危機に陥るレベルの戦争を経験しなかったために「空気」に支配される日本人(日本列島に定住している人間という意味での)にしかない独特の特質を持つに至ったということ。「銃・病原菌・鉄」のジャレド・ダイヤモンドの文明論同様、地理的要因が日本人の特質を決定したということでしょう。
確かにこの理屈に則れば、信念・宗教的同一性・中央集権よりも関係性に重点をおく調和型社会などの日本ならではの特徴が説 -
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著者は元NHK職員で経済評論家。本書はこれからの日本企業がGoogleやfacebookのようなグローバルレベルのイノベーションを起こすための課題を提起している。アメリカ発の経済学・経営学の本とは違い、本書は日本の経営活動にフォーカスした内容であり納得感がある。「イノベーションとは”技術”よりも”ビジネスモデル”が本質である。日本は技術大国と言われるが、技術は手段に過ぎない。戦略たるすぐれたビジネスモデルがなければ世界的な成功はないよ。」と著者は言う。現在日本の社会人、これから社会にでる学生さんにおすすめ。日本は悲観することはないと思う。保有する高度先端技術、古き良き伝統工芸・文化、誇るべきサ
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丸山眞男、山本七平などを紐解き日本人を間を漂う「空気」について鋭く分析し、日本の政治や企業経営にバッサリと切り込む厳しい考察、ほとんどが既知の話ですが、池田氏の手に掛かるとその切れ味は名刀いや妖刀の如しです。
『あなたたちはいつまで下請けをやろうとするんですか。うちの社員があれも作ってくれ、これも作ってくれと言っているかもしれない。でも、なぜ「こちらには標準的なこのマイコンしかないから。このマイコンでお宅の製品を作ってくれ」と言えないんですか。』
これは、発注元の大手機械メーカーのトップがルネサスの経営陣にいったとされる言葉とのことで、池田氏は日本の下請けメーカーは外部との交渉で普遍的なプ -
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ネタバレイノベーションが必要だといわれることが多いが、イノーベーションとは何かを教科書的に解説した良書。
内容は、8側面(+終章)からイノベーションを解説して、その具体例として様々な引用から後から考えると必然だったことが、実は当時はそうではなかったことを感じさせることが多い。技術が必ずしもイノーベーションを引き起こしていないことがよくわかる。
どうしてもIT関係の具体例が多くなるが、著者の博識からも経済学や経済理論、歴史的な事実等の引用も多く、単なる技術論、経営論だけではないと思う。しかし、同じような話が続くために、途中であきる人がいることもわかる。
イノベーションに関しての横断的な書籍は少ない -
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ネタバレ最初マンガで「もしドラ(読んでいないけど)」パクッったのかと思ったが、友人に勧められて読んでみた。
良い意味で裏切られた、素晴らしい本
日本が直面している危機的な状況を多面的に捉えている
-膨張し続ける国債
-それを横並び意識で買い支えている銀行
-しかも半分以上あまり価値が無い
-ペイオフに関する無知により、ペイオフ時いかにも暴動起こしそうな市民
-マーケット主導のインフレ(主婦の無知)
-マスコミの先導的な役割
-無能な政治家、及び意思決定の遅さ
それらに加え、マクロ経済の勉強や金融の初期的知識の勉強になった
マンガで冗談のようにおきていることだけど、まんざら笑えないのがまた恐ろし