中村佳子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ウェルベックはすでに何冊か読んでいるが、この作品でようやくウェルベックの愛に対する執着の凄さが分かってきた。思い返してみると、いままで読んだ作品にも愛への執着は十分あったと思うのだが、それよりもペシミスティックさの方ばかりに注意が行っていた。これを読んだ後では作者の印象が少し変わった。単なる先鋭なペシミストではなく、自由主義的な現代の風潮を否定するその態度の根底には、愛こそが唯一求めるべき価値のあるものであるという熱烈な価値観があるのではないか、というふうに思えてきた。ペシミストが愛を熱烈に肯定する。面白いではないか。しかもその愛は、精神面よりも肉体面を強調した愛である。実に挑発的だ。それでいて、現代人の不幸を冷静に分析して得られた妥当な結論という趣もある。さらにそこから未来予想が大胆に展開されるとなれば、興味を掻き立てられないはずがないという感じである。
さて、その未来予想であるが、最後に複雑な気持ちになってしまった。ネオ・ヒューマンの生活は、私からすればほとんど理想である。歓びを代償にしたにしても、せっかくあらゆる社会的束縛と多くの精神的束縛、肉体的束縛からも解放されたのに、それなのに……。けれども一方で、融合・自己消滅への欲求が人類の最も根源的な欲求なのだろうという想いもある。意識を持ってしまったことの宿命なのかもしれない。その欲求を第一にどうにかしないと結局は幸福になれず、人は、そして種は、自ら滅んでいくということなのだろう。それはそれでとても納得できるのである。
結局のところ、どちらも自己消滅への欲求なのであり、束縛からの解放よりも愛への欲求の方が、人間の根源的欲求としてより高次にあるということなのだと思う。ウェルベックの自由や個人主義への批判は、そういう観点から来ているのかもしれない。以下本文より。
「愛は個人の自由や、自立の中には存在しない。あるとすれば虚構である。思いつくかぎり最も見え透いた虚構のひとつだ。愛は、無への、融合への、自己消滅への欲求の中にしかない。」 -
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ネタバレ人間・ダニエルと、彼をクローニングして生み出され、何十代もクローンとして再生を繰り返したネオヒューマン・ダニエルの手記が交互に語られる変則的な構成。
『素粒子』の続編的な作品と聞いて読みだしたけれど、読み終わってみると、『素粒子』よりドライでハードな物語だった。続編というよりも、訳者あとがきで説明されているように、『素粒子』の本編とエピローグの中間に位置する作品。
数多くの、真実に見えるフレーズが散らばっているけれど、総体として見たときには、やはりこの主題―性欲のみが人間の持てる唯一の欲望かつ喜びであり、若者のみがそれを享受し、それ以外の人間はその欲望の向こうに作り出した愛という概念に引きずり回されている―は無味乾燥すぎて賛成はできない(ヨーロッパ文明自体の衰退が、人間の生物学的な老いに重ね合わせられている、という解説に納得はできるが)。けれど文章は美しく、構成は技巧が凝らされている。 -
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ネタバレ「服従」がベストセラーとなっているミシェル・ウェルベックの長編2作目。彼の作品は初めて読む。現代のフランス(を中心とした西欧社会)において、彼の視点はただただ人間の欲望というものの発露の仕方に向けられているようだ。露悪的ともいえる文体で、「普通の」人間の中にある欲望、殊に性欲についての描写がしつこくまとわりつくようで、濃密である。どこかで開高健が「作家の善し悪しは食事とセックスをきちんと書けるかどうかでわかる」というようなことを書いていたが、この作品では(フランスが舞台でありながら!)食事の描写はわりあいさらりとしていて、その分すべての技巧やレトリックをセックスとそれにまつわる哲学に費やされているようで、その徹底ぶりには執念すら感じさせる。
主人公はパリに住む公務員。ぱっとしない独身の中年男だ。仕事にも恋愛にも熱意はなく、特に趣味と言えるものもなく、日々をただ淡々と過ごしていて、セックスに関してははそうしたサービスを利用してすませている。
父親の遺産を相続した彼は、タイへのツアーに参加してある女性と出会い、人生が大きく変わっていく…。
…と書くとずいぶん陳腐なストーリーのようだが、まったく退屈させることなく読ませてしまうのはさすがの筆力。帰国して彼女と再会した彼は、彼女の仕事である旅行産業に大きな一石を投じることになり、すべてが思いのままに進んでいくが、やがてくる破滅に彼は気づくはずもなく…。
現代社会の欲望とセックス。異文化との衝突と暴力。それらが交錯する瞬間こそが、現代という時代を象徴していることを書きたかったのだろうか。
それが予言していたかのように、今まさにフランスを舞台にそうした悲劇が繰り広げられているのには驚かされる。 -
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ネタバレストーリーがアドルフの目線で語られるので、アドルフが自分の都合のいいように自分の行動や心の動きを正当化しているのが手に取るようにわかる。女性の読者は、相当不快に思う方もいるのではないかと。はっきり言って男性目線でもアドルフは救い難いやつだなと思う反面、アドルフ程ではないにしろ少なからずそういう人間的弱さが自分にも必ずあることを否定できないし、そういう弱さがあることを常に意識して、間違っても「自分はアドルフのようには決してならない」などと高を括ることはしないようにしなければならないと思う。
【あらすじ】
恋愛をすること自体を目的とする実験の開始 → 籠絡するつもりが気が付けば女性の魅力にハマって付き合うまでの悶々とした気持ち爆発 → 付き合って万歳!(ただし、ハッピーなのは最初の数か月) → 女性拘束されて鬱陶しくなる → お互い「自分はこんなに色々犠牲にしてるのに!」モード発動 → 周りから別れろと言われると「お前になにがわかる!」と突っぱねて一時的によりが戻る → 別れる別れると言いながら延々引っ張る(3年くらい) → そして結末。 -
Posted by ブクログ
【感想】
子供向けなので、全体的に文字も大きく、イラストも多く、読みやすかったです。
片付けタイプ診断があり、タイプ別の片付けのコツも載ってて良かったです!
※ちなみに私は「こだわりさん」タイプでしたが、無意識に、この本通りに片付けできていました。改めて「こだわりさん」だと自覚しましたꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)
【要点・まとめ】
《整理整頓のやり方》
①片付いた部屋をイメージ
「将来どうなりたいか」
「どんな部屋で過ごしたいか」
「片付いた部屋でやりたいこと」
②選別する
「要らない物は?」より「大切な物は?」とポジティブな判断で、必要の無いものを手放す。
③しまう
戻しやすさを考える。物の「お家」を作る。
《整理整頓で身に付く力》
①選ぶ力
②判断する力
③続ける力
④思いやる力
⑤責任感
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Posted by ブクログ
ネタバレ闘争領域の拡大
パリに住むシステムエンジニアが徐々に、緩慢に壊れていく作品
特にあらすじを見ずに読んだため、ストーリーのなさに驚きつつも、主人公に共感しながらページを手繰らされた
最初は人々はロールプレイをしているし、社会の機構に定められた行動をこなしているだけで、自由主義を語っておきながら自由意志から来る選択とは毎日選ぶ食事くらいだと悲観的になる
教会で働いている唯一の友人に、主人公は人との関わりの希薄さを忠告される
「合意に向かうように言葉をはいた」
次にペアでエンジニアリングの営業に行くことになった
ペアの男はどうていを拗らせ、醜い容姿にコンプレックスを抱き、常に女性とやる事を考えていた
そんなペアの男がやれるように主人公はクラブにさそったり、タイミングを見計らったり、ささやかながらサポートしていた
ここまでの人間関係で、主人公は表面上仲間思いの人物に見えるが、1度もその関係に対する主人公の感情表明は行われない
主人公は淡々とロールプレイをしているだけなのだ
そしてこのペアの男とクラブに駆り出し、やけくそになりセクハラをしたら10代に嘲笑され、そのまま気になっていた女性とその彼氏を車で追いかけることになった
主人公はナイフを携帯しており、それをペアの男に進める
しかしペアの男は海で性行為をする2人をみながら自慰行為をしただけだった
その日の帰り、泥酔しながら運転したペアの男は死亡する
主人公はそれを連休だったためにしらず、3日後に知る
それが関係したのかどうか、主人公はここから拍車をかけて狂っていく
しかし淡々と分析と独白を行う文体は変わらず、どこからが狂っているのかはわからない
窓ガラスを割って喜んだり、涙が止まらなくなったり、会社の女をビンタしてみたり、いままでは内心留まっていた欲望が表面化してきた描写から、初めてわかる
それから主人公は、ずっと「女を尊大に、自己中心的にさせるだけ」と評していた精神分析医に頼ることにする
鬱病と診断され、精神薬を貰い、それでも治らず結局は入院することになった
その病院内でもう1人の精神分析医と多少親しくなり「あなたに足りていないのは性行為」と言われるが、それ以来別の人物に担当が変わってしまった
退院した主人公は、40キロの山道を自転車で越えようとする
あたたかい村にも行き、「誰も僕に挨拶以上のことをしないでくれ」といいながら、描写と心情と矛盾を見せる
最後によく晴れた、こもれびの多い山で、黄水仙を見ながら、「幸福と感じる幽霊と共に生きてきた」と、締めくくる
つまりこの小説は、客我を演じ続けた現代個人主義者の寂しさによる崩壊の物語
自分の欲望を出さず、自由なようで実際には社会的抑圧により自由ではない社会に生きた主人公の物語だ
その独白では、資本主義においては資本の寡占があり、規制や社会保障が施策されるのに対して、恋愛の自由競争では帝国主義のように上位者による占有が怒るばかりで下位のものは貧困に喘ぐばかりだ
やら
最初のように人々や自分の振る舞いを「ロール」と呼び、その関係の中での感情の起伏を感じないこと
やら
悲観的な分析、観察が綴られる
それがおもしろい
服従で主人公がとある小説家を友人のように感じると言ったように、自分も徐々にウェルベックのこの思弁的な主人公の書き方に親近感を覚え、ハマってきてしまっていることを自覚した
次がたのしみ! -
Posted by ブクログ
コンスタン唯一の作品らしいが、序文で、コンスタン自身、本作品のことを手慰み的作品と自虐的に書いている。本心かは分からないが。三島由紀夫は本作品を絶賛しているよう。
男爵の愛人エレノールを奪った後、アドルフの気持ちが徐々に離れていった後も、煮え切らない態度が続く様は、読んでいて歯痒い。当時の上流階級の子弟は、仕事らしい仕事をせずとも、ダラダラ恋愛ごっこで無為に時間を過ごせてしまうくらい余裕があったのだろうか、とも思ってしまう。
年の差10歳(エレノールが年上)というのは、健康寿命が長い現代でもまあまあ大きい方だが、当時は更に大きく感じる差だろう。19世紀の小説では、ちょっとしたことで体調を崩して亡くなる場面が多いが、本作では、アドルフが別れたがっていることが分かる手紙をエレノールが読んでから、みるみる体調を落とし、結局そのまま亡くなり、結果的に、自分からは何も出来なかったアドルフが自由を得る(が心は晴れない)、というのは、何とも皮肉な展開だ。
最後あたりに、エレノールの死後に読まれる手紙の次の一節は、強烈だった。
「わたしが苦しむのではないかという想像はあなたを苛むのに、実際に苦しむさまは、あなたを制することができないのです!」
結局、アドルフは、自分(だけ)がかわいい、ということだろう。
本作品は、お話全体を描いた手帳を送って、返事の手紙と共に送り返される、という構造だが、作品の価値としては、余り役立ってないように思った。 -
Posted by ブクログ
初ウエルベックなので読み方が手探りだった。
主人公の「僕」と醜男ティスランが主流になり、恋愛という自由主義を求めて彼らの世界が「拡大」していく。
そう信じていたにも関わらず、その拡大の仕方が頑張れば頑張る程に良くない方向へと転落してしまう。
ウエルベックを読むにあたり、登場人物に同情(共感)する事によって読み手の世界も拡大していくとあとがきで分かった。
仕事、恋愛、性生活とテーマが3つあるけど、登場人物全てが日常に潜む人間ばかりでよりリアリティを帯びる。
主人公は観察者であり、観察する事により自分の内部で噛み砕いて分析をするけれど、取り込むことはせず、だけど敏感に感じやすい体質なのかマイナス面ではかなり感化されて苦しそうに感じた。
最初はうっすらとだけど進めていくと、その感情や分析が重く苦しいものに様変わりしてしまう。
哲学的描写なのでもっと色々考えたりしたいけど、あと何冊かウエルベックを読まないとそこら辺はなんとも言えない。
確かに面白かったけど、その先にまだまだ何か色んなものが隠されている感じがした。
時には含みを持っていた書き方だったりしたから、作品をもっと読んでそれが何かを加味していきたい一冊だった。