中村佳子のレビュー一覧
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ネタバレ「服従」がベストセラーとなっているミシェル・ウェルベックの長編2作目。彼の作品は初めて読む。現代のフランス(を中心とした西欧社会)において、彼の視点はただただ人間の欲望というものの発露の仕方に向けられているようだ。露悪的ともいえる文体で、「普通の」人間の中にある欲望、殊に性欲についての描写がしつこくまとわりつくようで、濃密である。どこかで開高健が「作家の善し悪しは食事とセックスをきちんと書けるかどうかでわかる」というようなことを書いていたが、この作品では(フランスが舞台でありながら!)食事の描写はわりあいさらりとしていて、その分すべての技巧やレトリックをセックスとそれにまつわる哲学に費やされて
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ネタバレストーリーがアドルフの目線で語られるので、アドルフが自分の都合のいいように自分の行動や心の動きを正当化しているのが手に取るようにわかる。女性の読者は、相当不快に思う方もいるのではないかと。はっきり言って男性目線でもアドルフは救い難いやつだなと思う反面、アドルフ程ではないにしろ少なからずそういう人間的弱さが自分にも必ずあることを否定できないし、そういう弱さがあることを常に意識して、間違っても「自分はアドルフのようには決してならない」などと高を括ることはしないようにしなければならないと思う。
【あらすじ】
恋愛をすること自体を目的とする実験の開始 → 籠絡するつもりが気が付けば女性の魅力にハ -
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初ウエルベックなので読み方が手探りだった。
主人公の「僕」と醜男ティスランが主流になり、恋愛という自由主義を求めて彼らの世界が「拡大」していく。
そう信じていたにも関わらず、その拡大の仕方が頑張れば頑張る程に良くない方向へと転落してしまう。
ウエルベックを読むにあたり、登場人物に同情(共感)する事によって読み手の世界も拡大していくとあとがきで分かった。
仕事、恋愛、性生活とテーマが3つあるけど、登場人物全てが日常に潜む人間ばかりでよりリアリティを帯びる。
主人公は観察者であり、観察する事により自分の内部で噛み砕いて分析をするけれど、取り込むことはせず、だけど敏感に感じやすい体質なのかマイナス面 -
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ネタバレ現代フランスの作家ミッシェル・ウエルベック(1958-)の第一作品、1994年。資本主義的な「自由」が到り着いている地点を描く。
資本主義社会では、すべてが同一平面上に並置させられてしまう。すべてがフラット化してしまう。超越的なものが引きずりおろされてしまう。即物的無価値(金、力、快感、効用)へと還元されてしまう。世界がひとつの巨大な商品陳列棚、ランチプレートに成り下がってしまう。則ち、一切のものが貨幣という統一の尺度で比較され計量化される商品と化す。コミュニケーションは互いに商品ラベルと値札を貼り付け合うだけ。外部はありふれた商品として内部に繰り込まれ、消費されるだけ。一切の出口は予め塞が -
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フランスを代表するベストセラー作家であるミシェル・ウエルベックのデビュー作。フランス現代思想のような衒学的なタイトルであるが、その意味するところはシンプルであり、痛切なものだ。
近代の資本主義は、企業やそこで働く個人を市場という絶え間ない闘争領域に追い込んでいく。最初は生産・販売などの経済的活動が闘争領域で繰り広げられたが、止む事のない資本の自己増殖能力は徐々に闘争領域を拡大させていく。その結果、恋愛そしてセックスまでもが闘争領域に飲み込まれていく。
身の回りを見渡してみれば良い。良いセックスができる人間はますますそのチャンスを増大させる一方で、そうした機会が与えらない人間はますますそのチ -
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やっと読み終わったー。がんばった。
最初はSFと思っていたのです。ネオヒューマンがいかな人生を送っているのかという興味から購入したのです。でも実際は、ネオヒューマンに至る新興宗教に肉薄した皮肉を扱うコメディアンの人生記に対して、ネオヒューマンたるが為にその人生記につけた未来人の注釈を読む物語だった。
ゆえにネオヒューマンの生態というより、コメディアンの皮肉、人生や戦争、なにより老いと性生活への皮肉と批評がメイン。この辺は読み手の読み間違いもあるのでなんとも言えない。
ただ主人公は本文中で指摘されてるとおり、感性が特別豊かなわけではない。ただただ正直なんだ。この世の欺瞞に対して。そうしてその欺瞞 -
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往来堂書店「D坂文庫2015冬」から。選んだ理由は選者の「日本にこんな意地悪な小説家は絶対いない!」というコメント。
さして取り柄のない仏人公務員ミシェルは、親の遺産でタイ行きのパッケージ・ツアーに参加し、少女を買う。そして、周囲のひんしゅくを買いつつ、そのツアーで知り合ったヴァレリーと恋に落ちる。帰国後はヴァレリーと一緒に彼女が勤める旅行会社で売春ツアーを企画するが、最後は…。
この小説の中でミシェルとヴァレリーは、もう数えきれないくらいセックスをして、その度にミシェルは西洋の性の退廃を、ひいては西洋文明の没落を嘆く。
少々乱暴なつかみ方ではあるけれど、西洋の高度資本主義への批判・警告を性を -
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これがウェルベックのデビュー作らしい。テーマというか作者の姿勢は本当に一貫していて清々しさすら感じる。これと後の作品を比べると(全部読んではいないが)、変えていっているのは読者層を広く取り込むための工夫の部分だろうか。遡ってデビュー作が文庫化されるくらいなのだから、その努力は上々の成果を上げている。この作品自体は、面白いのだけど、まあウェルベックの作品として一番に薦めることはないかなという感じ。
最後はあの後、自殺したのかな?してないのかな?どちらもあり得ると思うが…。雄大な自然の中にいてもむしろ虚無感を感じるというのは自分にも覚えがある。個人というものの枠組が根源的には「死によって世界から