中村佳子のレビュー一覧

  • 2084 世界の終わり
    オーウェルの1984へのアンサー作品とも言うべきディストピア小説。唯一の一神教が全ての世界を描いている。作者はアルジェリア人であり現在の体制から睨まれている。描かれている宗教はイスラームを想起されるが、この前にトッドのシャルリとは誰かを読んだせいか、いわゆる自由主義陣営に身を置く我らとて、深く考えず...続きを読む
  • ゴリオ爺さん
    ゴリオ爺さん、娘たちのことを愛しすぎてて、、、。

    ラスティニャックの出世欲と真心とのせめぎ合い、分かる気がする。

    あと、娘たちがゴリオに懐いたり、見捨てたりを繰り返してるあたりが残酷なくらいリアル。

    娘たちは父親の財産のことしか頭にないって最初から分かっててるゴリオ、虚しすぎ。
  • ある島の可能性
    人間・ダニエルと、彼をクローニングして生み出され、何十代もクローンとして再生を繰り返したネオヒューマン・ダニエルの手記が交互に語られる変則的な構成。
    『素粒子』の続編的な作品と聞いて読みだしたけれど、読み終わってみると、『素粒子』よりドライでハードな物語だった。続編というよりも、訳者あとがきで説明さ...続きを読む
  • プラットフォーム
    衝撃から未だ覚めない。終盤まで延々つづく叙述。ときおりその主体は主人公から脇役に譲られる。しかしそれは補足のように存在していて物語への効果は大きくない。読み終わってから2週間、未だ混沌のなかにいる。
  • プラットフォーム
    「服従」がベストセラーとなっているミシェル・ウェルベックの長編2作目。彼の作品は初めて読む。現代のフランス(を中心とした西欧社会)において、彼の視点はただただ人間の欲望というものの発露の仕方に向けられているようだ。露悪的ともいえる文体で、「普通の」人間の中にある欲望、殊に性欲についての描写がしつこく...続きを読む
  • プラットフォーム
    旅行会社に勤めている?ウエルベック『プラットフォーム』だね。え、なにそれ。という新しい出会いのスタイルを提案する本として私の中では記憶されたこの書籍は、ウエルベック特有の高度に発展した資本主義社会への呪詛に溢れていて、悪意という意味では最も楽しめました。
  • アドルフ
    ストーリーがアドルフの目線で語られるので、アドルフが自分の都合のいいように自分の行動や心の動きを正当化しているのが手に取るようにわかる。女性の読者は、相当不快に思う方もいるのではないかと。はっきり言って男性目線でもアドルフは救い難いやつだなと思う反面、アドルフ程ではないにしろ少なからずそういう人間的...続きを読む
  • ベラミ
    ざ・俗。ばかばかしすぎて楽しいです。さsyがにスピード感とか、展開の面白さ表現の良さは古典だけあります。
  • 闘争領域の拡大
    初ウエルベックなので読み方が手探りだった。
    主人公の「僕」と醜男ティスランが主流になり、恋愛という自由主義を求めて彼らの世界が「拡大」していく。
    そう信じていたにも関わらず、その拡大の仕方が頑張れば頑張る程に良くない方向へと転落してしまう。
    ウエルベックを読むにあたり、登場人物に同情(共感)する事に...続きを読む
  • エタンプの預言者
    面白かった
    社会についていけないおっちゃんのあれやこれや
    私も30年後これになってるかもと恐れ慄きました
  • ゴリオ爺さん
     19世紀パリの貴族社会と経済的下層社会の様子がつぶさに窺えた。主人公の学生ラスティニャックは、社交界デビューを果たしつつも同じアパートに住むゴリオ爺さんの二人の娘への献身的な愛に心を動かされていく。ゴリオ爺さんの行動は自身も行き過ぎが娘たちを駄目にしたと反省もしているが、他の生き方もできなかったよ...続きを読む
  • 闘争領域の拡大
    服従を読んでコイツとは全く理解し合えない、と突き放しかけたんだけどちょっぴりそうなのねって寄り添えた
  • 闘争領域の拡大
    現代フランスの作家ミッシェル・ウエルベック(1958-)の第一作品、1994年。資本主義的な「自由」が到り着いている地点を描く。

    資本主義社会では、すべてが同一平面上に並置させられてしまう。すべてがフラット化してしまう。超越的なものが引きずりおろされてしまう。即物的無価値(金、力、快感、効用)へと...続きを読む
  • ある島の可能性
    期せずして最近の読書傾向をなぞった形に。老いと性の話。老いに抗わず、否、抵抗した結果の選択?人間の究極の目的は、、
  • 闘争領域の拡大
    フランスを代表するベストセラー作家であるミシェル・ウエルベックのデビュー作。フランス現代思想のような衒学的なタイトルであるが、その意味するところはシンプルであり、痛切なものだ。

    近代の資本主義は、企業やそこで働く個人を市場という絶え間ない闘争領域に追い込んでいく。最初は生産・販売などの経済的活動が...続きを読む
  • ある島の可能性
    やっと読み終わったー。がんばった。
    最初はSFと思っていたのです。ネオヒューマンがいかな人生を送っているのかという興味から購入したのです。でも実際は、ネオヒューマンに至る新興宗教に肉薄した皮肉を扱うコメディアンの人生記に対して、ネオヒューマンたるが為にその人生記につけた未来人の注釈を読む物語だった。...続きを読む
  • ゴリオ爺さん
    フランス文学を読んだのは30年程前に高校生の時にレ ミゼラブルを読んで以来だろうか。
    内容は、お昼のメロドラマ的な印象。ゴリオ爺さんが可哀想過ぎて見てられない。私も娘のことを爺さんと同じようにかわいがってるけれど、こんな仕打ちを受けたらさすがに怒るだろうな。。
  • プラットフォーム
    往来堂書店「D坂文庫2015冬」から。選んだ理由は選者の「日本にこんな意地悪な小説家は絶対いない!」というコメント。
    さして取り柄のない仏人公務員ミシェルは、親の遺産でタイ行きのパッケージ・ツアーに参加し、少女を買う。そして、周囲のひんしゅくを買いつつ、そのツアーで知り合ったヴァレリーと恋に落ちる。...続きを読む
  • 闘争領域の拡大
    ウェルベック先生的要約は

    「自由が進むと、経済的な落伍者が出るように性的落伍者がでるよ。」

    「それってとっても苦しいことで、メンタルもやられちゃうよね。」

    うん、つらい。
  • 闘争領域の拡大
    これがウェルベックのデビュー作らしい。テーマというか作者の姿勢は本当に一貫していて清々しさすら感じる。これと後の作品を比べると(全部読んではいないが)、変えていっているのは読者層を広く取り込むための工夫の部分だろうか。遡ってデビュー作が文庫化されるくらいなのだから、その努力は上々の成果を上げている。...続きを読む