中村佳子のレビュー一覧
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読書会に参加しました。みなさまありがとうございました(^o^)!
ゴリオ爺さんは高校の時に課題で無理矢理読んで全く理解できずに目で追っただけでした(-_-;)
その後私も読書も積み重ね、年齢も積み重ねたからか、光文社の新訳のおかげか、読み返したらとてもわかりやすく面白く楽しく読めました。
時代はナポレオン1世がワーテルローで敗北し(1815年)王政復古したころ。そこで、王政の元の貴族、元々のブルジョワ、産業革命に乗っかった資産家(ゴリオ爺さんとか)たちが時代を読みながら上昇したり破産したりしている。
冒頭で1819年のパリ下町の安っぽい下宿屋ヴォケール館と、その住人が紹介される。
ここ -
Posted by ブクログ
ネタバレ光合成によるエネルギー自己生成が可能となったクローンと、そのオリジナルの生き様の物語。
オリジナルは成功者だけど、愛を知らない。
シニカルに人を魅力する才能の裏返しで、自分は冷めている。その虚しさを紛らわすためか、極めて廃退的な生活を送る(性描写が多く疲れる)。
そのなか、新興宗教にのめり込み、重要な立ち位置を占める。
殺人事件を教祖転生に仕立てて逃れ、奇跡があるわけではないが、それが世間に受け入れられる。信じてDNAを保存すれば入信。代わりに死後の財産は教団に寄付となり、豊かな財源でクローン技術開発を行う。
フィクションだが、なぜかリアリティーを感じた。
長いし重いし疲れるし、でも読んでしま -
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この作品、主な登場人物に幸福な者は一人もいない。そして不幸の原因は全員が全員、カネのためである。
19世紀初頭のフランス、大革命、恐怖政治、ナポレオンの没落を経て王政が復古し、貴族とブルジョワが支配するパリで貧乏青年ラスティニャックが出世するためには社交界に入り込むしかなかった。
社交界とは、能力ではなくカネとコネがなければ参加できない世界。社交界に入るカネもコネもないラスティニャックの貧しい隣人たちは、その時点ですでに不幸だが、父の献身によって社交界にデビューしたゴリオ爺さんの娘夫婦たちもまた、虚飾と裏切りと噂話に翻弄され、見栄のために多額の借金をしてでもカネを使い続けなければならぬ点におい -
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「今度はおれが相手だ!」
物語の最後、主人公のラスティニャックがパリの街へ向かって放ったセリフです
ラスティニャックとパリの間に何があったのか?めっちゃ気になるよね
ならない?いやなってよ!(懇願)
はい、というわけでユッキーのリクエストに応えて19世紀のフランスを代表する作家のひとりバルザックの『ゴリオ爺さん』を読みました
いやーすげーわバルザック
こんな悲劇いや喜劇を読まされるかね
『ゴリオ爺さん』はバルザックが書いた〈人間喜劇〉という小説群の1作なんよね
〈人間喜劇〉というのはひとつの世界観の中でたくさんの小説が書かれていて、それぞれが当時のフランスを分析して描いているんだけど、 -
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めっちゃ面白かった。1日半で読んでしまった。こんなペースで読んだのは『正欲』ぶりか。
世の「パラダイムシフト」を完全に見逃し時代の流れから振り落とされ、それでも過去の輝かしい日々にしがみつき続ける哀しき爺。主人公は「文化の盗用」やら「声の奪取」など、語の意味を説明され、それが指すところを理解できても、本当の意味では自らの行為の重大性がわからない。その理由は、彼が白人ヘテロ男性であり、その属性に自動的に付与される特権に対して完璧に無自覚である点に集約されている。自身がもはや時代に取り残された人間であると悟るタイミング、彼自身が変われたかもしれないタイミング、炎上を抑えられたタイミング…等々、複 -
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19世紀パリ社交界を舞台に描かれるフランス文学の傑作。モームの世界十大小説の一つ。光文社古典新訳文庫版。
人間描写力すごすぎワラタ。いや人間観察力ともいうべきか、細密な心理や行動の描写が逐一的を得ていて圧倒される。段落などの区切りがなく長い文章が延々と続くため、序盤の間、舞台設定をつかむまではやや読みにくい。しかし謎解きのようになっているゴリオ爺さんの実像が見えてくる第一章の後半ごろには、込み入った人間関係の興味深さに引き込まれていた。その後物語は加速に加速を重ね、第四章あたりには、もう読みきらなければ本を閉じられないというほど夢中にさせてくれた。
しかし壮絶で切ない話だ。社交界という華や -
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2019.7.10付け朝日新聞掲載の「マンガ時評」で学習院大学教授の中条省平さんは、あの『闇金ウシジマくん』のことを「社会の諸相を細密で巨大な壁画のように描きだす現代日本のバルザック」と例えている。「ウシジマくん」に関する文章にいきなりバルザックが出てきたので、とても驚いた。
中条教授はさらに書く-「ウシジマくんは、そうした人々の運命を震えがくるほどのスリルで描きだしながら、彼らを生みだす時代の残酷な力、権力関係のメカニズム、そして金と金融社会の病理を抉りだします」と。
私は冒頭の「ウシジマくん」を「ゴリオ爺さん」へと置き換えてみた。すると違和感がまったくないではないか。
もちろん時代背景 -
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ネタバレ-くだらない、下衆の極み、フェミニズムのなれの果て-
-神が望まれたのは不平等であって、不当ではない-
-退屈というものは長引くと、退屈のままではいられなくなる。それは遅かれ早かれ、よりはっきりとした痛み、確固たる痛みの感覚に変わる-
【性的行動はひとつの社会階級システムである】
・ウェルベック作品の主題は「自らとその周囲の解明」
・第三者目線からの観察的な記述が多い
・傍観者的な主人公。でも対象化には失敗している
・ショーペンハウアーに毒されただけの事はある
(感想)
現代日本に非常によく当てはまる。
オフパコYouTuberを批判している人も多いが、彼らはこの自由主義社会のヒ -
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ネタバレ3年ぶりに読み返したことによって、より落ち着いて考えられた気がする。
「仲介」(本ではインターメディエーションとなってる)として人間を捉えることができると思う。ネオ・ヒューマンは確かにダニエル1の時代の人類と、未来人を橋渡しする存在であったかもしれないが、ダニエル1も結局は「遺伝子の乗り物」という意味で、各世代を繋ぐ存在にすぎなかった。
ダニエル1が自覚しつつも直視できない老いは、自身が「遺伝子の乗り物」としての役割を果たせなくなりつつあることを意味する。子供を捨てた経験のある彼は、生殖としての性に入れ込んでいたわけでもないが、愛と結びつく性の意味でも、機会を逸してしまった。イサベルとは愛 -
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ネタバレウエルベックの処女小説。批判的な描写が多く、はじめは読みづらかったけど、半ばくらいから面白くなって一気に読んだ。
内容は、自由競争に疲れた(あるいは敗れつつある)者の独白となっている。ときどき哲学的な思弁が入ってきて面白かった。
勝手に要約すると、経済、セックスといった自由を求める競争はさらなる戦いを生み、戦線は日々拡大している。そして、その戦いから押しやられ落ちこぼれた者たちはどこへ向かうのか――といった感じだろうか。
つまらない街並み、退屈な仕事、派手派手しい広告、頻発するデモやテロ、実りのない異性へのアプローチ、主人公はもうなにもかもがうんざりといった様子だ。うだつの上がらない男女 -
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老いるのが怖くなる小説だった。
人が不死の技術を手に入れて、肉体が老いてもまた新たな肉体を手に入れることができるようになり、そうした未来の可能性において人類はほとんど解脱に近い静穏な状態なのだけど、そうした描写になぜか息が詰まる。宗教SF。
その未来のダニエルの視点で現代のダニエルの手記を見通すなかでそこに何かしらの郷愁の念があって、手記を読むという行為そのものにやはり「感情」に対する執着が描きこまれているように思う。
そうした構造も面白いし、さらに現代ダニエルは皮肉屋のコメディアンかつ映画監督として栄華をものにし、快楽主義をつらぬいてセックス三昧。またこの性描写がたまらないのだけど、やはり -
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人生の成功者による快楽の追求。その果ての絶望を描いた傑作である。人は誰も老いには勝てない。描写は情け容赦なく、描かれた性への渇望はグロテスクである。主人公のダニエル1の若い女性に対する執着心、特に最後の無様な姿は見苦しく醜悪だが、それは単なる性欲を超えた一人の人間としての絶望の叫びだ。愛と性に対して彼はとにかく誠実で、故に、彼の絶望は痛いほどに理解できる。若者と老人は対等ではない。未来に対する絶対量が違う。性的な意味での需要の無さや性的不能がそのまま人間としての価値に直結し、それはカネではどうにもならない。若さの価値を理解していればいるほどに、この物語は悲しく映る。だからこそある島に可能性を求
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他者を避けることが最高の贅沢となった、個人主義が行き着く果てを描いた世界の物語。難解かと思いきや内容は非常に分かりやすく、絶望と諦観に彩られた筆致はリーダビリティが高い。物語性もあり、前半の観光ツアーからの出会いと性、そして欧米市場に第三世界の買春ツアーを持ち込むことで、西側世界の価値観を揺るがそうとした男女がやがて悲劇的な結末へと流れ落ちていくさまは非常に読みやすく面白かった。多くの男が感じている現代女性に対する恐怖感が、はした金で娼婦を買う方向へ流れていき、その部分のニーズや解消されない性欲を第三世界の買春で埋めるというアンサーはかなり過激である。誰しもが倫理観や嫌悪感でブレーキをかける所
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203年前に出版されたフランスの作家コンスタンによる『アドルフ』
三島由紀夫が「コンスタンの『アドルフ』こそは、再読三読に堪える小説である」と言った恋愛小説。
以前、こんなエピソードを何かの本で読んだ気がする。
もう役目を終えたと思ったそれまでずっと元気だった老婆が「もういいかな」と言い死ぬことを選び、老衰して死んだというもの。
この小説を読んでも、人は実は死に時というのは自分で選べもするんじゃないだろうかと。
それほど人間の意志の力は肉体に影響するものなんじゃないかと。
フィクションだが、
コンスタンの実体験を織り交ぜ込んであろう物語。
破局的な恋の行方は痛切だ。