中村佳子のレビュー一覧

  • エタンプの預言者
    めっちゃ面白かった。1日半で読んでしまった。こんなペースで読んだのは『正欲』ぶりか。

    世の「パラダイムシフト」を完全に見逃し時代の流れから振り落とされ、それでも過去の輝かしい日々にしがみつき続ける哀しき爺。主人公は「文化の盗用」やら「声の奪取」など、語の意味を説明され、それが指すところを理解できて...続きを読む
  • ゴリオ爺さん
    「ああ!なんという!レストーめ…わたしがいるんだ、そうはさせるか!やつの行く手に立ちはだかってやるからな。…そうだ、やつには後継者が必要だ!よかろう、よかろう。わたしがやつの息子をさらってやろう。しまった、それはわたしの孫ではないか。」ココ、読み返すたびにいつも吹いてしまいます。
  • ゴリオ爺さん
    ゴリオ爺さんの愛情深さには感銘を受けたが、娘たちにとっての良い父親であったかどうかには疑問が残った。
  • ゴリオ爺さん
    19世紀パリ社交界を舞台に描かれるフランス文学の傑作。モームの世界十大小説の一つ。光文社古典新訳文庫版。

    人間描写力すごすぎワラタ。いや人間観察力ともいうべきか、細密な心理や行動の描写が逐一的を得ていて圧倒される。段落などの区切りがなく長い文章が延々と続くため、序盤の間、舞台設定をつかむまではやや...続きを読む
  • ゴリオ爺さん
    2019.7.10付け朝日新聞掲載の「マンガ時評」で学習院大学教授の中条省平さんは、あの『闇金ウシジマくん』のことを「社会の諸相を細密で巨大な壁画のように描きだす現代日本のバルザック」と例えている。「ウシジマくん」に関する文章にいきなりバルザックが出てきたので、とても驚いた。

    中条教授はさらに書く...続きを読む
  • 闘争領域の拡大
    -くだらない、下衆の極み、フェミニズムのなれの果て-

    -神が望まれたのは不平等であって、不当ではない-

    -退屈というものは長引くと、退屈のままではいられなくなる。それは遅かれ早かれ、よりはっきりとした痛み、確固たる痛みの感覚に変わる-


    【性的行動はひとつの社会階級システムである】

    ・ウェル...続きを読む
  • ある島の可能性
    3年ぶりに読み返したことによって、より落ち着いて考えられた気がする。

    「仲介」(本ではインターメディエーションとなってる)として人間を捉えることができると思う。ネオ・ヒューマンは確かにダニエル1の時代の人類と、未来人を橋渡しする存在であったかもしれないが、ダニエル1も結局は「遺伝子の乗り物」という...続きを読む
  • 闘争領域の拡大
    ウエルベックの処女小説。批判的な描写が多く、はじめは読みづらかったけど、半ばくらいから面白くなって一気に読んだ。

    内容は、自由競争に疲れた(あるいは敗れつつある)者の独白となっている。ときどき哲学的な思弁が入ってきて面白かった。

    勝手に要約すると、経済、セックスといった自由を求める競争はさらなる...続きを読む
  • ある島の可能性
    傑作。
    ファインアートから先端科学、社会情勢、宗教、地勢学、そして人類の命題?であるところの愛について、余すところなく考えが巡る素晴らしい読書体験だった。未来からの注釈を過去を生きる自分たちが読むことになるスタイルも洒落てたし、何よりフォーカスされてる主人公が喜劇を生業にしていた点、読後に振り返った...続きを読む
  • ある島の可能性
    老いるのが怖くなる小説だった。
    人が不死の技術を手に入れて、肉体が老いてもまた新たな肉体を手に入れることができるようになり、そうした未来の可能性において人類はほとんど解脱に近い静穏な状態なのだけど、そうした描写になぜか息が詰まる。宗教SF。
    その未来のダニエルの視点で現代のダニエルの手記を見通すなか...続きを読む
  • ある島の可能性
    人生の成功者による快楽の追求。その果ての絶望を描いた傑作である。人は誰も老いには勝てない。描写は情け容赦なく、描かれた性への渇望はグロテスクである。主人公のダニエル1の若い女性に対する執着心、特に最後の無様な姿は見苦しく醜悪だが、それは単なる性欲を超えた一人の人間としての絶望の叫びだ。愛と性に対して...続きを読む
  • プラットフォーム
    他者を避けることが最高の贅沢となった、個人主義が行き着く果てを描いた世界の物語。難解かと思いきや内容は非常に分かりやすく、絶望と諦観に彩られた筆致はリーダビリティが高い。物語性もあり、前半の観光ツアーからの出会いと性、そして欧米市場に第三世界の買春ツアーを持ち込むことで、西側世界の価値観を揺るがそう...続きを読む
  • アドルフ
    203年前に出版されたフランスの作家コンスタンによる『アドルフ』

    三島由紀夫が「コンスタンの『アドルフ』こそは、再読三読に堪える小説である」と言った恋愛小説。


    以前、こんなエピソードを何かの本で読んだ気がする。

    もう役目を終えたと思ったそれまでずっと元気だった老婆が「もういいかな」と言い死ぬ...続きを読む
  • ゴリオ爺さん
    バルザックは初めて読んだが、この本が後世の作家に大きな影響を与えたことは間違いない。それはディケンズの作品にも感じられるし、ロマンロランの「ジャンクリストフ」にも出ている。
  • ある島の可能性
    一つの人間が生きて誰かを愛して愛そうと思って、老いてゆくありふれた生の中に、永遠の命を科学的に成立させられる宗教があり、そしてその永遠の命を獲得した1人の人間のコピーが一つの島の中で終わっていく話。
    ウェルベックを読むのは闘争領域の拡大に続いて2冊目。
    人によって好き嫌いが分かれるのはわかる。
    金を...続きを読む
  • 2084 世界の終わり
    この本を読んで進撃の巨人を思い出した。人間を内側と外側から容赦なく捕食する得体の知れない「何か」、あるいは人を疑うしか能のなくなった半狂乱の民衆はあの獰猛な巨人と重なる部分がある。訳者の言う通り、オーウェルの『1984』では現代の説明に齟齬が生じるようになってきた。20世紀まで支配していた目に見える...続きを読む
  • ある島の可能性
    読み応えのある、読む価値を感じる作品。
    ウエルベックの作品はすべて読もう。

    著名お笑い芸人ダニエルの人生記と、それを確認し、注釈を加える2000年後の彼のクローンたち(24代目と25代目)の物語。
    ダニエルは辛口で卑猥な芸風で世間の人気を得、二人の女性を真剣に愛するものの、老いには逆らえず、愛に振...続きを読む
  • 闘争領域の拡大
    闘争領域で闘う同僚など、身の回りの人物を、主人公のシニカルでありつつも同情に満ちた目線で描く。最後、主人公は鬱になって闘争領域を完全に脱落するのだけれど、何故か清々しい。現代人に向けた、いい小説だ。
  • 男の子が ひとりでできる「片づけ」
    声の掛け方は日々工夫してですよね。
    本人とこちら、お互いの気持ちの状態も影響するのでそれを感じながら対応するのが難しい。だけど、うまく行った時は気持ちいい。

    その時に一生懸命褒め合いたい。
  • ゴリオ爺さん
    なんという悲劇、いや喜劇か。こんな日常にはとても我慢できないだろうな。金、金、金の生む人間喜劇というか、パリという国が生み出したものなのか…いや、こんなことは世界のどこにだってあるよな。日本で言えば、始まったばかりの大河の時代なんかその最たるものなんだろうな。
    まぁでも、ゴリオ爺さんの奥さんはいつど...続きを読む