中村佳子のレビュー一覧

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    他者を避けることが最高の贅沢となった、個人主義が行き着く果てを描いた世界の物語。難解かと思いきや内容は非常に分かりやすく、絶望と諦観に彩られた筆致はリーダビリティが高い。物語性もあり、前半の観光ツアーからの出会いと性、そして欧米市場に第三世界の買春ツアーを持ち込むことで、西側世界の価値観を揺るがそうとした男女がやがて悲劇的な結末へと流れ落ちていくさまは非常に読みやすく面白かった。多くの男が感じている現代女性に対する恐怖感が、はした金で娼婦を買う方向へ流れていき、その部分のニーズや解消されない性欲を第三世界の買春で埋めるというアンサーはかなり過激である。誰しもが倫理観や嫌悪感でブレーキをかける所

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    2019年05月28日
  • アドルフ

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    203年前に出版されたフランスの作家コンスタンによる『アドルフ』

    三島由紀夫が「コンスタンの『アドルフ』こそは、再読三読に堪える小説である」と言った恋愛小説。


    以前、こんなエピソードを何かの本で読んだ気がする。

    もう役目を終えたと思ったそれまでずっと元気だった老婆が「もういいかな」と言い死ぬことを選び、老衰して死んだというもの。
    この小説を読んでも、人は実は死に時というのは自分で選べもするんじゃないだろうかと。

    それほど人間の意志の力は肉体に影響するものなんじゃないかと。

    フィクションだが、
    コンスタンの実体験を織り交ぜ込んであろう物語。
    破局的な恋の行方は痛切だ。

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    2019年01月31日
  • ゴリオ爺さん

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    バルザックは初めて読んだが、この本が後世の作家に大きな影響を与えたことは間違いない。それはディケンズの作品にも感じられるし、ロマンロランの「ジャンクリストフ」にも出ている。

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    2018年11月26日
  • ある島の可能性

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    ネタバレ

    一つの人間が生きて誰かを愛して愛そうと思って、老いてゆくありふれた生の中に、永遠の命を科学的に成立させられる宗教があり、そしてその永遠の命を獲得した1人の人間のコピーが一つの島の中で終わっていく話。
    ウェルベックを読むのは闘争領域の拡大に続いて2冊目。
    人によって好き嫌いが分かれるのはわかる。
    金を手に入れた人間の性への執着がすごい。やたらとセックスセックス、フェラチオフェラチオ、と語彙が並ぶ。多分ここがダメだと絶対中盤でむりだと思う。
    けど、いくらセックスをしても、足りないし満たされない。ウェルベックが話の主軸にしているのは愛なのではないか

    「いくら誰もがある程度の抵抗力を持っているといっ

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    2018年07月30日
  • 2084 世界の終わり

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    この本を読んで進撃の巨人を思い出した。人間を内側と外側から容赦なく捕食する得体の知れない「何か」、あるいは人を疑うしか能のなくなった半狂乱の民衆はあの獰猛な巨人と重なる部分がある。訳者の言う通り、オーウェルの『1984』では現代の説明に齟齬が生じるようになってきた。20世紀まで支配していた目に見える戦争の脅威は目に見えない神聖なもので人を支配する時代に取って代わられた。それが何なのかはテレビや新聞で絶えず情報を取り入れている現代の先進国の人々にとっては明白なことであろう。壁の外にあるものが何なのか、ヨラー、アビ、グカビュルは何者なのか。その疑問は自由が故に生まれる反抗意識の前兆である。トーズは

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    2017年10月19日
  • ある島の可能性

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    読み応えのある、読む価値を感じる作品。
    ウエルベックの作品はすべて読もう。

    著名お笑い芸人ダニエルの人生記と、それを確認し、注釈を加える2000年後の彼のクローンたち(24代目と25代目)の物語。
    ダニエルは辛口で卑猥な芸風で世間の人気を得、二人の女性を真剣に愛するものの、老いには逆らえず、愛に振り回される。カルト宗教団体エロヒム会に入り、遺伝子を残す。
    エロヒム会は独自の研究で遺伝子からクローンを作り出すことに成功し、子供を作らずクローンのみで世代を繋ぐ新しい人間を構想する。新しい人間は口から食べ物を摂取することもなく、排泄もせず、一定の期間を経て肉体が衰えると、次の世代に交代する。感情の

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    2018年11月04日
  • ゴリオ爺さん

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    200年以上昔のフランスの著書なだけあって時代背景や人物を捉えるのに幾分か苦労した(人の呼び名がいくつもあるのもあいまって多少苦労の増幅があった)が、普段よりじっくり読むことで理解が深まったように感じたため、そこは実質的にはプラスに働いたように思う。
    内容としては、愛情(ここでいう愛情は恋愛的な愛情ではなく人間的な愛情)や世間との繋がり方に対する思い、生き方など、広く描きながらもそれぞれ深く描かれており、読後に余韻に浸りたい気持ちになるとても良いものであった。名著といわれるのも納得。
    映画などにしても(既にあるかもしれませんが)趣深い作品に仕上がると思う。

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    2025年12月29日
  • 闘争領域の拡大

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    当時、翻訳されたウエルベック作品を大方読み、
    この処女作を買おうかどうしようか、
    古本屋を探しても見当たらず、
    ネットで買うには割と高めで。

    色々迷っていたところ、
    文庫化されて、喜んだ記憶があります。

    他のウエルベック作品より、
    性描写などは抑え目ですが、
    全ての作品に通ずる根っこはここにあったと、
    得心した記憶。

    細かい内容は忘れてしまいましたが(笑)、
    再読したい本です。

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    2025年11月11日
  • ある島の可能性

    匿名

    購入済み

    我々が中世やさらに言えば原始時代の人類の生き方を本当のところでは想像できないように、進化した未来人(ネオ・ヒューマン)は現代を生きる我々の苦しみを理解することはない。近現代の人間の苦しみは人間の実存に由来する普遍的なものではなくて、歴史的条件に由来するものでその条件さえなくなればその苦しみも無くなる。
    本作から受けた印象をそのようなものだった。

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    2025年09月21日
  • プラットフォーム

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    この手の穏やかながら深い波のある小説を久々に読んだ。
    主人公は徹底的に世の中を俯瞰した風に見て、あらゆる人間を小馬鹿にしているように見えつつ、自身の欲求に素直な、所謂普通のやつ。
    ヴァレリーという20代の女っぷりのいいキャリアウーマンというザ21世紀の女性と一緒にいることで幸せ全開。
    性産業をビジネスチャンスと捉え邁進するところに、金儲けだけではなく、西洋人の欲求追求の姿勢(西洋人は資本主義社会にいて、物質的幸福を追求する一方、彼らだけで性の満足を得られなくなっている。ある意味それは非文明国よりも哀しいことでもある。だからアジアで自身の性を解放する旅行には着実なニーズがある。)を深く見据えてい

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    2025年08月06日
  • ある島の可能性

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    人と感想を話すことって大事だなーと思う

    特に本の入り口が、「人からお勧めされた」時は感想を必須で誰かと話さないと自分の中にモヤモヤが残ってしまう。

    これ面白いね!だけじゃなくて、これ気持ち悪いね、、って時は特にそう。

    ウェルベックはめちゃくちゃハードル上げられた本だった。でも、2005年にこれが出てきたのが凄いことだなって思うだけで、本当に深いことを語っているのか?となってしまった。
    中年男性のセックスに焦点を当てすぎているし、その描写が無理だったとかではないんだけど、シンプルにもっと短くその惨めさを描くことはできたんじゃないかと思う。描きたいことに対して冗長だと思ったんだ。あでも「人生

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    2025年07月19日
  • ゴリオ爺さん

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    ネタバレ

    人の名前に混乱してなかなか読み込むことが難しかった。
    ゴリオ爺さんの子供への愛情の向け方が間違う事でこんな悲劇に繋がってしまったのだと思う。

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    2025年06月21日
  • ある島の可能性

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    闘争領域の拡大に続いて2冊目のウェルベック。 序盤は冗長的で少し読むのが億劫になるが、途中から先の展開が気になって一気に読んでしまった。 人間の老いや愛することなど人間的な営みに対する大きな問いかけなのかなと感じた。近未来のネオヒューマンを通して過去の人間だったときの人生記を見ていく様が後半グッとくる。

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    2025年02月01日
  • 闘争領域の拡大

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    闘争領域で闘う同僚など、身の回りの人物を、主人公のシニカルでありつつも同情に満ちた目線で描く。最後、主人公は鬱になって闘争領域を完全に脱落するのだけれど、何故か清々しい。現代人に向けた、いい小説だ。

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    2024年03月15日
  • 男の子が ひとりでできる「片づけ」

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    声の掛け方は日々工夫してですよね。
    本人とこちら、お互いの気持ちの状態も影響するのでそれを感じながら対応するのが難しい。だけど、うまく行った時は気持ちいい。

    その時に一生懸命褒め合いたい。

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    2024年02月11日
  • ゴリオ爺さん

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    なんという悲劇、いや喜劇か。こんな日常にはとても我慢できないだろうな。金、金、金の生む人間喜劇というか、パリという国が生み出したものなのか…いや、こんなことは世界のどこにだってあるよな。日本で言えば、始まったばかりの大河の時代なんかその最たるものなんだろうな。
    まぁでも、ゴリオ爺さんの奥さんはいつどこでいなくなったんだろう…

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    2024年01月23日
  • 闘争領域の拡大

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    ネタバレ

    現代社会は、経済だけでなく、「性愛」も自由化され、富めるものとそうでないものの格差が拡大している。このような話は、しばしばSNSで話題になっている「弱者男性」問題にもつながっており、ここ数年は熱をもって議論されていることだが、ウェルベックがこの問題を30年も前に小説のテーマにしている点が興味深い。主人公は容姿がよくない同僚のティスランを心の中では散々馬鹿にしており、実際にティスランは性愛に関してひどい目に遭ってしまう。ただ、主人公の心情描写から、自由恋愛の世の中に果敢に立ち向かっていき、最後には不慮の死を遂げる彼を、著者は心の奥底では敬意を払っているのではないかという印象を受けた。愛を得られな

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    2023年12月25日
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    オトラジシリーズ。
    初のウェルベックさん作品。
    過激な描写が多い中、にじみ出るような開放感と自由な雰囲気がとても魅力的だった。
    燃えるような恋、性、そして…

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    2023年10月19日
  • 闘争領域の拡大

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    ネタバレ

    23.3.25〜4.10

    この作品の語り手は、後のウエルベック作品の主人公とはちょっと饒舌さの趣向が違うように感じた。
    自分の中で死にゆくものへの愛が溢れ出てくる最後で感動した。

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    2023年04月27日
  • ある島の可能性

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    22.11.12〜12.19
    快と不快のバランスがゼツミョーだった。ウエルベックの作品はいつもそうかもしれないけど。
    Back2Backな構成だから形式は『素粒子』に似ているけど、この小説は構造として『人生記』があるから、全体的にカッチリしてる印象を受けた。
    アイデアとしての人生記の面白さと、書き手であるダニエル1たちが定義する彼の人生の滑稽さと悲しいまでの正直さ。人生記には書かれなかったダニエル1の顛末、ままならなすぎる。
    ネオヒューマンは自分自身のことが分かりすぎていてやけにサッパリしているから、その孤独な生き方に滑稽さも含まれているような感じがした。
    読んでいてウエルベックは正直な人だな

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    2023年04月27日