【感想・ネタバレ】エタンプの預言者のレビュー

あらすじ

65歳、元大学教師。リベラルで、しがらみのないインテリのつもりだった。まちがえた選択をし続けて65年。どうやら私は、社会から取り残されたらしい。

フロール賞受賞のほか、ゴンクール賞、フェミナ賞、ルノードー賞、アカデミー・フランセーズ小説賞、ジャン・ジオノ賞の6賞候補! 現代社会への痛烈な批判を込めた超弩級の注目作!

かつてタレント歴史学者を夢見たロスコフは、落ち目だった。95年に「冷戦下米国のソ連スパイ事件」を巡る書籍を刊行したが、翌日CIAが機密解除、本は一夜にして紙くずに。妻とは離婚し大学を退職、酒浸りだったロスコフは、同性愛者の娘のフェミニストの恋人に刺激され、研究を再開、サルトルやボリス・ヴィアンと親交があったアメリカの詩人・ウィローについての書籍を刊行する。客わずか5人の出版記念トークショーの席上、ロスコフはウィローが黒人であることを記述しなかった理由を問われる。翌朝掲載された匿名のブログ記事が炎上し、ロスコフはレイシストだという非難にさらされる。さらに自分を擁護するツイートに返信したロスコフは、炎上を煽ってしまう。ツイートした知人は、極右政党に入党していたのだ――。

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Posted by ブクログ

めっちゃ面白かった。1日半で読んでしまった。こんなペースで読んだのは『正欲』ぶりか。

世の「パラダイムシフト」を完全に見逃し時代の流れから振り落とされ、それでも過去の輝かしい日々にしがみつき続ける哀しき爺。主人公は「文化の盗用」やら「声の奪取」など、語の意味を説明され、それが指すところを理解できても、本当の意味では自らの行為の重大性がわからない。その理由は、彼が白人ヘテロ男性であり、その属性に自動的に付与される特権に対して完璧に無自覚である点に集約されている。自身がもはや時代に取り残された人間であると悟るタイミング、彼自身が変われたかもしれないタイミング、炎上を抑えられたタイミング…等々、複数回の救済チャンスも悉く無に帰してしまう愚かさに溜息が出た。

と、同時にこの手の中年〜初老の人間は変わることが恐ろしく難しいのだろうとも思った。息をするように失言をする老政治家や、SNSで知ったように物申す中年男性(らしきアカウント)の像がジョンと重なりあう。何遍言われても、何遍痛い目を見ても変われない。

とは言いながらも、ジョンや現実世界のジジイらを激しく軽蔑しきれない自分もいる。だって皆等しく老いていく。社会が変わるときに、果たして私も変われるのか?価値観をアップデートできるのか?イエスと言い切れないから、こいつらを哀れな化石だと一蹴することができない。現在、「社会で今起きていることに対してアンテナを張った」、「薄っすらと左寄り」の、「学生」、として、ジョンの悲喜劇的数年は、なんだか完全な他人事には思えなかった。

コンマリ論(白人男性からまなざされるものとしての)はだいぶ興味深かった。あと掲示板のネット民の書き込みの役が非常に現代的だったのも印象に残った。

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2025年03月31日

Posted by ブクログ

面白かった
社会についていけないおっちゃんのあれやこれや
私も30年後これになってるかもと恐れ慄きました

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2024年02月09日

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