長谷川町子のレビュー一覧
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ネタバレ当時としてはただの漫画であるが、今としては戦後の様子や文化がよく描かれた資料である。…という話を聞いて読んでみたが、なるほど、面白い。
まず、戦後の貧困の代名詞である、闇市・闇取引や配給の様子がたびたび描かれている。サザエは着物を出して米を買ったり、節米料理を作ったりしている。
世間では引き揚げ者や戦災孤児が憐れまれており、コレラが恐れられている。
また、アメリカ文化や英語、アメリカ人への憧れがところどころで窺える。街にはしばしばアメリカ人が登場し、MP (米国陸軍の憲兵) にも触れられている。
政治的な流行りも描かれている。戦時利得者が批判されたり、「男女同權とうろん大會」(男女同権討 -
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本巻も面白かった。
いくつか取り上げたいコマがあるが、まずはサンガー夫人に対するサザエの反応からだろう。
サンガー夫人とはアメリカで「産児制限=女性の産む権利」を推進した事で有名な運動家だが、おそらく彼女の来日に合わせてネタにしたのだろう。
サザエと主婦友達が井戸端会議をしており、友達はサンガー夫人賛成!と声を上げており、一方サザエは反対!と言っている。
これをもってサザエの保守性を指摘するつもりはないが、1巻からウーマンリブにノレないサザエを見ていると、まぁサザエは急進的な主張には慎重になる女性であることがわかる。それは本巻でも一貫してサザエの思想として現れていて興味深い。
おそらくサザエは -
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本巻はカツオとワカメが静岡の親戚(?)の家に旅行に行く回が中心。いつもは4コマで終わるところ、今回は何ページかに渡ってストーリーが展開する。田舎の生活はあまりカツオとワカメには合わなかったようだ。また周辺にいる子供たちもカツオとワカメを都会の子として見物に来たりしている。のちにサザエが迎えに来るが、さすがはサザエでおじさん家でも堂々としており色々な田舎料理のレシピを仕入れたりしている。頼もしいことこの上ない。
また本巻終盤では、サンフランシスコ講和条約締結以降初めての衆議院選挙があり、その注目度の高さが話題になっている。第4次吉田茂内閣発足当時だが、鳩山一郎も国政復帰して喧々諤々の議論が交わさ -
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本巻も最高だった。ぼくは原作を読み始めてからずっと波平さんのファンなわけだが、本巻の波平さんも最高である。
本巻所収の波平さん主役の4コマで好きな作品は2つ。
一つは喧嘩しているサザエとカツオに波平さんが割って入り、サザエさんに「お前はいくつになる!」と問いただす。サザエは首をすくめ怒られていると勘違いするが、実は住民票登録のため聞かれただけだったというオチ。波平さんのおおらかな性格がよくわかる秀作である。
もう一つは、波平さんは外出するフネに手のひらを見せ「ここまでだな!」と念を押している。フネが外出するので米を研ぐため水の量を確認にしていたのだ。4コマ目で波平さんはちゃんと割烹着を着て米 -
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「サザエさん」をついに11巻まで読んでしまったが、しかしなぜ飽きないのだろう。むしろ早く次巻が読みたくて禁じていた数巻合わせての大人買いまで始めてしまった。これはどういうわけだろうか。
「サザエさん」のストーリーの構造は、基本的にワンパターンである。しかも4コマなので早いテンポでバンバン場面が展開していく。
不思議なのは、読んでいても爆笑したり落涙したりは一切しないでも、まったく読者を離さないという魅力である。こればかりはいくら分析しても、いまだに腑に落ちない。
せっかく本作を読んでいるのだから、少しはその謎に触れられたらと思う。
また同時に長谷川町子についても勉強していきたい。彼女の背後には -
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本巻でサンフランシスコ講和条約が結ばれたらしく、事あるごとに「わしがぜんけんたいしだったら」と波平がのたまったり、サザエが新聞に読みふけったりして面白い。
当時の人々がこの「主権回復の日」をどのように受け止めていたかがなんとなく想像できる。
同時にコメの配給制が停止になるらしく、人々の食生活もこれを機に変わっていくのかもしれない。
他方、まだまだ電力は不安定らしく、停電がしょっちゅう起こっている。また計画停電のようなものもあったらしい。
しかし本巻はマスオが結構登場していて、できれば波平をもうちょい出してあげてほしい。とにかく波平が面白いから。 -
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サザエは終戦時に10代後半と思われるので、ぼくの祖母が同年代だと思うが、彼女たちの時代はなかなか複雑である。
戦前の封建的良妻賢母が女性の理想像としてあった時代に教育を受け、他方家庭を持ったときは女性地位向上運動の真っ只中。それは第一巻から読むとよくわかる。
またサザエの服装は始終洋装だが、母フネはほとんど和装である。
ではサザエは進歩的かといえば、彼女の一回り下の世代はより「民主的」な風潮を色濃く持った世代になり、サザエはそのジェネレーションギャップに戸惑うことになる。
サザエの世代はつまり「どっちつかず」の世代なのだ。封建的良妻賢母を否定するでもなく、「民主的」な女性地位向上にも理解がある -
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波平さんを前近代的な父権の象徴だと主張する向きが今も昔もあるが、それは全くの間違いである。著者は、波平を「愛すべきお父さん」として、それはそれは愛情を傾けて描いている。こんなに娘に愛情を注がれて、これほど幸せな父親はおるまいと思う。マスオさんなど相手にならないくらい、愛されているのだから。
5巻は特にそれが顕著に見える素晴らしい巻であった。
戦後、アメリカ的な価値が流入するとともに絶対的な権力であった父権に大きな揺らぎが生まれた。だが大勢はまだ父権が維持されていた時代。
波平さんの持つ父権は、彼の人柄によって換骨奪胎されている。父権の悪癖はユーモラスな女性陣によって打ち消され、良いところが前面