村上陽一郎のレビュー一覧

  • 科学者とは何か(新潮選書)

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    もはや古典と言っても良いほど、多くのところで引用され、大学入試問題にも取り上げられている本。遅ればせながら全文を読んだ。
    科学者のヨーロッパでの発生から始まって、専門的であるからこその閉鎖的問題を浮き彫りにしてある。
    環境問題に顕著な、学問間の分断では済まされない現代の問題から、科学者のこれからの責任と学ぶことのあり方に目を向けさせる。
    この短さに、隙のない濃密な内容が盛り込まれている。
    時代を超えて読み継がれて欲しい。

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    2025年07月01日
  • 死ねない時代の哲学

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    令和元年に出版された本であるが、現代医療の発展が、死ねない時代を生み、日本人の死に方を考える上で、ぜひとも読んでおきたい本である。
     父君がお医者さんであり、息子である村上氏に継いで欲しい気持ちだったが、人の命を預かる医者としての覚悟を父から問われたとき、その覚悟が出来なかった著者が、今後日本人が死に際し、どう覚悟を決めなければならないのか、その方法をさりげなく示唆してくれている。
     科学哲学者という肩書きは流石でした。
     それでも、著者が後書きで書いているが、この本が世に出る時、適切に支援してくれた佐久間文子さんへの感謝の念である。
     最後に、死の判定を法的に任されたお医者さんが心置きなくク

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    2025年05月17日
  • 科学史家の宗教論ノート

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    科学哲学者、科学史家として著名な村上陽一郎先生が、自身の信仰も披瀝しながら、宗教について書いた本である。

    大変勉強になった。
    宗教というと科学よりも以前からあったもので、原始的なものという、なんとなくのイメージで見ていると思うが、村上先生の語る宗教の姿は、人間という動物に欠損している欲望の抑制機能を補完する装置、だそうである。
    宗教とは裸のままの人間が素朴に持っている信仰ではなく、合理的な目的のために存在している、という理解は意外だった。

    惟神の道とカトリシズムを似ていなくもないもの、と称するまで自分には宗教に対する寛容な理解はないのだけれど、人類愛や博愛といった理想を描くのは、90歳近い

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    2025年03月26日
  • 新しい科学論 「事実」は理論をたおせるか

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     科学とは何かを考える本。科学のこれまでの歴史と、今のあり方について書かれている。著者は科学哲学・科学史の分野では著名な村上陽一郎氏。

     前半では一般的に信じられている科学像を紹介し、後半でその科学像を打ち破る。「データは与えられるもの」「人が持っている偏見などがそのデータを歪める」「科学技術は時代が進むにつれ蓄積されていく」というような従来の科学の見方を否定し、新しい科学を論じる。

     「専門的な書物を読んだことのない読者の方がた(例えば中学生諸君)にもわかっていただけるように、なるべく問題や術語をときほぐして説明することを心がけました」とはじめに書かれてある通り、難しい専門用語はいっさい

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    2023年11月17日
  • エリートと教養 ポストコロナの日本考

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    多数の文献に溺れることで、自分で考える力を失った無教養人を模すことに人生を捧げた最高の教養人の姿がここに!

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    2022年08月31日
  • コロナ後の世界を生きる 私たちの提言

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    2020年の5月頃の論考だが、1年たってもワクチン導入くらいの違いだけで当時と状況は変化していないことに驚いた.24本の論考集だがベスト3を挙げると藤原辰史、隅研吾、藻谷浩介だ.感染症との闘いで将来何が残っていくかを鋭い目で識者が考察していることに、安心感と希望を見出したというとやや大袈裟かもしれないが、いろんな視点があることを権力者は見ておいてほしいと願うばかりだ.気になった語句が多々あったが「利他的生き残り(Altruistic Survival)」が一番だった.

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    2021年05月15日
  • コロナ後の世界を生きる 私たちの提言

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    様々な専門家がコロナの現状とこれからの未来について展望。立場や専門は違えども、これまであった問題がコロナで炙り出されただけという論考は共通している。これまでの問題をどのように整理して変えていけばよいかでおのずと答は見えてくる。

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    2020年09月12日
  • コロナ後の世界を生きる 私たちの提言

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    外人の持論中心だった中公新書のコロナ本に比べ、真摯にコロナと向き合う日本人学者などのエッセイ集。コロナについて解釈が分かれるところ(ステイホームの実効性)もそのまま乗せている。結局日本人(もしくはアジア人)の死者が少なかった理由はよくわからないんだな。

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    2020年09月07日
  • コロナ後の世界を生きる 私たちの提言

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    日本人を中心とした24人の著名人の方の、新型コロナウイルスについての世界や国の在り方を各執筆者の仕事の専門性、住んでいる地域性などからの意見が述べられています。

    本書の発売は2020年7月17日ですが、執筆時期は5月前後のものが多くやや古い情報もありました。

    日本の安倍政権は近いうちに解散総選挙するだろうという意見もありました。
    安部首相退陣の理由は、述べられていたことと違い健康上の理由でしたが、私は政治のことは全く無知ではありますが、大事な時期なので、安易に次期首相が決まってしまうのは納得がいかない気がします。


    以下、読んで自分が個人的に重要と思った文章をランダムにメモしました。

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    2020年09月05日
  • 人間にとって科学とは何か(新潮選書)

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    博士課程の方に村上先生の本を紹介頂いたが、
    非常に勉強になったと感じていますし、他の方にも
    お勧めしたいです。

    村上先生の他の書籍も読んでみたいと思います。

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    2011年11月30日
  • 人間にとって科学とは何か(新潮選書)

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    今現在、「科学者」「科学」の置かれている立場を、もう一度、考えるのに、非常に重要な本。
    10年6月刊行。

    巷では、寺田寅彦が持ち上げられているようであるが、『沈黙の春』を挙げるまでもなく、科学を告発する者の多くは、れっきとした科学者である。

    科学技術に裏付けられた物質文明の享受は、再考の余地が十分あると僕自身、考えるが、科学を全否定するような輩は、例えどこかの偉い学者先生であっても、全く与しない。

    読書案内、参考図書がないのが非常に残念。

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    2011年11月29日
  • 科学者とは何か(新潮選書)

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    近代科学と科学者の成り立ち、現在の科学者の仕事について、つかず離れず、非常にわかりやすく解説された一冊。
    僕はこの本を読んで、自分が漠然と「かくありたい」と思っていることが、「科学」の枠内にとどまれないことを知りました。進路を悩んでいた2000年頃のことでした。

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    2011年07月05日
  • 新しい科学論 「事実」は理論をたおせるか

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    「データ―帰納―法則―演繹―検証(反証)―理論の改良というサイクル」がなされてこそ科学だと思っている人は,根底からその考え方が覆されます。モデルという観点が入っていないという意味でこの本はやや不十分であると思いますが,「30年も前の古い本だ」と片付けてしまうのは勿体ないぐらい,この本の副題の指し示す事柄は非常に重要です。特に,データが「判決を言い渡す裁判官」のような役割を担うと考えているならば是非読むべきです。

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    2011年12月10日
  • 新しい科学論 「事実」は理論をたおせるか

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    「事実は理論をたおせるか?」これで大学生の時にガーンとヤられました。科学論の草分け村上陽一郎さんの古い古い新書なんですが、科学論の入門書として古くから最適の一冊。大学の一般教養のレポート課題で指定された人だけでなく、科学と名のつく所にいる人もいない人も「真理を探求する営みとしての科学」という認識の人には読んでほしい。

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    2009年10月04日
  • 科学史家の宗教論ノート

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    2025年刊。クリスチャンで科学史家、村上陽一郎先生の宗教をめぐる断想。
    「まえがき」はドストエフスキーで始まっている。『カラマーゾフの兄弟』にしても、『罪と罰』にしても、ローマ・カトリシズムやプロテスタンティズムでは読み解けず、ロシア正教を理解していないと、読み解けない場面があるという。そう言えば、Orthodoxyなのだから、あちらのほうがキリスト教の正統・本家。そう考えると、キリスト教をみる見方もかなり違ってくる。
    宗教と科学に始まり、スピリチュアルとオカルト、欲望と禁忌、聖書、無神論・反神論、科学的合理性と宗教といったテーマが続く。うしろのほうでは、ケストラー、パウリ、ユング、カレルと

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    2025年12月01日
  • 科学史・科学哲学入門

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    ガリレオの天文対話やコペルニクスの天球の回転についてを読んで納得の行かなかった点が、やっと腑に落ちました。
    何を正しいとするか、その論理学とも哲学とも言える部分が、数学の公理のように定まっていないのですね。

    またあとがきの学生質問の話はとても面白いですね。信じるも何も、「神はいる」というわけですね。

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    2025年10月05日
  • 科学史家の宗教論ノート

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    この本、目次を読まずに読み進めて行きましたが、終章で解ったことですが、著者はカトリックの信者だったのです。
    改めて目次ですが、
    まえがき
    序章 教養としての宗教
    第1章 宗教と科学
    第2章 宗教の起源
    第3章 スピリチュアルとオカルティズム
    第3章 欲望と禁忌をめぐって
    第5章 聖書とは何か
    第6章 アジア大陸の聖典
    第7章 国家と宗教
    第8章 無神論・反神論
    第9章 科学的合理性と宗教
    終 章 信仰と私

    碩学な著者による「宗教」なるものの説明、大変よく理解出来ました。
    そして、所謂「科学的」アプローチで人間界の現象を分析される著者が、所謂「カトリック」であったということ。
    でも、日本人で、

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    2025年05月16日
  • エリートと教養 ポストコロナの日本考

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    以前、科学技術政策の集中講義で扱われた内容とも重なり、とても懐かしく読んだ。またこの間の10年で世に現れた事象や事実を組み入れて、著者の教養論がアップデートされたものといえる。圧倒的な知識・経験を題材にして、意図的な余談を以って記述しないと、教養は説明できないことも思い出した。あえて保守と革新の二項を設けて、コロナと生命の二つの章を読むと、比較的保守寄りにふれているような印象を持った。保守であることが、エリートの持つ教養の条件となり得るか、次回にお目にかかったときに質問してみたい。

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    2024年08月24日
  • エリートと教養 ポストコロナの日本考

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    村上陽一郎氏の歯に絹着せぬ物言いが好きだ。
    『あらためて教養とは』は語り下ろしであった。本書は書き下ろしである。文章の端々からも氏の教養が滲み出ている。例えば、「雅味」(がみ/雅な味わい)という言葉を私は知らなかった。
    氏の広範な知識を老害と捉える読者もいるだろう。よく分からないことを長々と語られたら嫌気がさすのも当然だ。しかし、若者にさえ大人が媚びる今の時代に、読者に媚びずに持論を展開する物書きも珍しい。その意味で本書は村上氏の持論に触れたい人だけが読めば良いだろう。
    自分の至らなさを誰からも指摘してもらえない年齢になってしまった。もはや自分で自分を教養するしかあるまい。
    ちなみに、村上氏は

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    2023年05月25日
  • エリートと教養 ポストコロナの日本考

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    政治家の教養不足
    日本の政治における「教養不足」、今の政治家は国民の不満を満たす言葉を巧みに使うがそこに教養溢れる新たな社会システムを生み出す仕組み作りをしていない、ということだろうか。現実、日本のエリート=教養ある専門家を活用した政策で推し進める社会システム構築は他国と比べて相当遅れている。それは、日本がいつまでも古風な習慣と利権で固定化させていることでデジタル社会の出遅れを一層深めているのだ。小手先の給付金、補助金などは源は国民の税金で回しているだけで結局国民の税負担はその後に回るだけだ。

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    2022年09月13日