村上陽一郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
令和元年に出版された本であるが、現代医療の発展が、死ねない時代を生み、日本人の死に方を考える上で、ぜひとも読んでおきたい本である。
父君がお医者さんであり、息子である村上氏に継いで欲しい気持ちだったが、人の命を預かる医者としての覚悟を父から問われたとき、その覚悟が出来なかった著者が、今後日本人が死に際し、どう覚悟を決めなければならないのか、その方法をさりげなく示唆してくれている。
科学哲学者という肩書きは流石でした。
それでも、著者が後書きで書いているが、この本が世に出る時、適切に支援してくれた佐久間文子さんへの感謝の念である。
最後に、死の判定を法的に任されたお医者さんが心置きなくク -
Posted by ブクログ
科学哲学者、科学史家として著名な村上陽一郎先生が、自身の信仰も披瀝しながら、宗教について書いた本である。
大変勉強になった。
宗教というと科学よりも以前からあったもので、原始的なものという、なんとなくのイメージで見ていると思うが、村上先生の語る宗教の姿は、人間という動物に欠損している欲望の抑制機能を補完する装置、だそうである。
宗教とは裸のままの人間が素朴に持っている信仰ではなく、合理的な目的のために存在している、という理解は意外だった。
惟神の道とカトリシズムを似ていなくもないもの、と称するまで自分には宗教に対する寛容な理解はないのだけれど、人類愛や博愛といった理想を描くのは、90歳近い -
Posted by ブクログ
科学とは何かを考える本。科学のこれまでの歴史と、今のあり方について書かれている。著者は科学哲学・科学史の分野では著名な村上陽一郎氏。
前半では一般的に信じられている科学像を紹介し、後半でその科学像を打ち破る。「データは与えられるもの」「人が持っている偏見などがそのデータを歪める」「科学技術は時代が進むにつれ蓄積されていく」というような従来の科学の見方を否定し、新しい科学を論じる。
「専門的な書物を読んだことのない読者の方がた(例えば中学生諸君)にもわかっていただけるように、なるべく問題や術語をときほぐして説明することを心がけました」とはじめに書かれてある通り、難しい専門用語はいっさい -
Posted by ブクログ
日本人を中心とした24人の著名人の方の、新型コロナウイルスについての世界や国の在り方を各執筆者の仕事の専門性、住んでいる地域性などからの意見が述べられています。
本書の発売は2020年7月17日ですが、執筆時期は5月前後のものが多くやや古い情報もありました。
日本の安倍政権は近いうちに解散総選挙するだろうという意見もありました。
安部首相退陣の理由は、述べられていたことと違い健康上の理由でしたが、私は政治のことは全く無知ではありますが、大事な時期なので、安易に次期首相が決まってしまうのは納得がいかない気がします。
以下、読んで自分が個人的に重要と思った文章をランダムにメモしました。
-
Posted by ブクログ
2025年刊。クリスチャンで科学史家、村上陽一郎先生の宗教をめぐる断想。
「まえがき」はドストエフスキーで始まっている。『カラマーゾフの兄弟』にしても、『罪と罰』にしても、ローマ・カトリシズムやプロテスタンティズムでは読み解けず、ロシア正教を理解していないと、読み解けない場面があるという。そう言えば、Orthodoxyなのだから、あちらのほうがキリスト教の正統・本家。そう考えると、キリスト教をみる見方もかなり違ってくる。
宗教と科学に始まり、スピリチュアルとオカルト、欲望と禁忌、聖書、無神論・反神論、科学的合理性と宗教といったテーマが続く。うしろのほうでは、ケストラー、パウリ、ユング、カレルと -
Posted by ブクログ
この本、目次を読まずに読み進めて行きましたが、終章で解ったことですが、著者はカトリックの信者だったのです。
改めて目次ですが、
まえがき
序章 教養としての宗教
第1章 宗教と科学
第2章 宗教の起源
第3章 スピリチュアルとオカルティズム
第3章 欲望と禁忌をめぐって
第5章 聖書とは何か
第6章 アジア大陸の聖典
第7章 国家と宗教
第8章 無神論・反神論
第9章 科学的合理性と宗教
終 章 信仰と私
碩学な著者による「宗教」なるものの説明、大変よく理解出来ました。
そして、所謂「科学的」アプローチで人間界の現象を分析される著者が、所謂「カトリック」であったということ。
でも、日本人で、 -
Posted by ブクログ
村上陽一郎氏の歯に絹着せぬ物言いが好きだ。
『あらためて教養とは』は語り下ろしであった。本書は書き下ろしである。文章の端々からも氏の教養が滲み出ている。例えば、「雅味」(がみ/雅な味わい)という言葉を私は知らなかった。
氏の広範な知識を老害と捉える読者もいるだろう。よく分からないことを長々と語られたら嫌気がさすのも当然だ。しかし、若者にさえ大人が媚びる今の時代に、読者に媚びずに持論を展開する物書きも珍しい。その意味で本書は村上氏の持論に触れたい人だけが読めば良いだろう。
自分の至らなさを誰からも指摘してもらえない年齢になってしまった。もはや自分で自分を教養するしかあるまい。
ちなみに、村上氏は