あらすじ
科学技術の進歩で、人間は幸福になったのか。「科学と技術の発展によって、国と国民が豊かになる」時代は、終焉しつつあるか。情報化、医療と倫理、宇宙開発など、日本の諸問題を多角度から論じる注目の書。(講談社現代新書)
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Posted by ブクログ
『科学の現在を問う』(村上陽一郎、2000年、講談社現代新書)
本書は、科学発展の簡単な歴史から、現代の科学技術にかかわる論点(たとえば、科学技術と医療、科学技術と倫理、科学技術と教育)を解説しています。
独特な切り口から論じているのでなかなか面白かったです。
(2009年10月31日)
(2010年12月10日 大学院生)
Posted by ブクログ
研究者やその支援者は、多くの場合、グラントの獲得と交付の維持に日夜関心を持ち続けている。「国家が科学研究の成果を、国家目的のために収奪」(p.26)していることの裏返しなのだが、当然それによるメリット・デメリットの双方を我々は享受している。この意味で科学研究は、社会の一部を構成するシステムともいえよう。
また意外に、研究を行う場である大学における教員に対する注文が厳しい。この点が他の科学史家、科学社会学者より目立つと思った。
Posted by ブクログ
東海村での核燃料製造会社JCOの臨界事故や、クローン羊ドリーの誕生、日本初の脳死者からの臓器移植など、出版当時に話題になったニュースを取り上げながら、社会の中での科学・技術のあり方について論じた本です。幅広い題材を扱っているために、個々の問題点についての掘り下げは足りないようにも思えますが、それぞれの問題について考えるための入口の役割は果たしているのではないでしょうか。
科学は元来、自然を探求したいという研究者の純粋な知的関心を追及する活動として生まれたと著者は言います。それはいわば、クライアントを前提としない活動であり、そのような科学の性格は、内部倫理だけを考慮すればよいような科学の世界を作ってきました。
しかし、第一次大戦のころからこうした科学の自己閉鎖性・自己充足性は変質し始めたと著者は言います。とくに第二次大戦注にアメリカは軍事利用のための科学研究を強力にバックアップし、原子爆弾を作り出すマンハッタン計画の発足に至ります。こうした国家と科学との関係は、戦後も維持されました。ルーズヴェルト大統領の諮問に対する科学者の報告書『科学―この終わりなきフロンティア』では、限りなくフロンティアを拡大しつつ前進する科学研究の成果を最大限に活用することで、国家・社会が抱えている問題を解決し、国家と社会も限りなく進歩・発展できると声高に語られています。
いまや科学は、かつてとは異なる大きな社会的役割を担うようになっています。科学の専門家は、社会から隔絶された環境で研究に従事するだけでなく、社会について理解することが求められます。また非専門家の方も、現代の科学がはたしている役割について考察することが求められます。著者はこのような立場に立って、現代の科学教育のあり方について考察をおこなっています。
Posted by ブクログ
書中でも触れられていたが、「科学者の集団にはクライアントが不在(だった)」。この言葉に全てが集約されている気がする。思えば不思議な特別扱いだが、責任を曖昧にされては困る。
現在の科学には公的なお金が降りていたり、あるいはその影響がこれまでにない広く大きな範囲に渡ってしまうためにクライアントとしての市民の存在が重要になってくる…というのは至極真っ当な流れだと思うのだが、どこから手をつけるのか、というのが問題になってくると思う。その点でどうにも浅い分析しかなされていないのが残念。
現在でも「サイエンスカフェ」のような市民と専門家の垣根を取り払う試みは行われている。「知っている」という意味での知識の値打ちが暴落した時、果たして「素人と専門家」という二分法は通用するのだろうか。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
科学と技術の発展は人間を幸福にしたか?
原発・医療・情報化など様々な角度から問い直す。
[ 目次 ]
第1章 科学研究の変質
第2章 技術と安全
第3章 医療と現代科学技術
第4章 情報と科学・技術
第5章 科学・技術と倫理
第6章 科学・技術と教育
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
村上陽一郎さんの著作はこれで二冊目。同じ著者の本をいくつか読むと理解が深くなるというが本当かも。それに加えて、必要に迫られて科学者倫理の勉強をしたことがここで役立ったと言えるかもしれない。
と言っても、この本はべつに学術的に難しい本でも何でもなくて、科学史・科学哲学を専門としてきた著者がややこしい詳細は省いて分かりやすく説明してくれているといった内容だ。サクサクと読める。科学・技術を「安全」「医療」「情報」「倫理」「教育」をテーマとして語られる。