【感想・ネタバレ】新しい科学論 「事実」は理論をたおせるかのレビュー

あらすじ

人間にとって科学とは何なのかを考える……自然科学は、けっして人間や人間社会から切り離された、中立の道具などではないのです。良かれ悪しかれ、その時代その社会の基本的なものの考え方、底流となっている前提と結ばれているものなのです。……現代の科学は、その長所も欠点も、わたくしども自身のもっている価値観やものの考え方の関数として存在していることを自覚することから、わたくしどもは出発すべきではないでしょうか※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。

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Posted by ブクログ

 科学とは何かを考える本。科学のこれまでの歴史と、今のあり方について書かれている。著者は科学哲学・科学史の分野では著名な村上陽一郎氏。

 前半では一般的に信じられている科学像を紹介し、後半でその科学像を打ち破る。「データは与えられるもの」「人が持っている偏見などがそのデータを歪める」「科学技術は時代が進むにつれ蓄積されていく」というような従来の科学の見方を否定し、新しい科学を論じる。

 「専門的な書物を読んだことのない読者の方がた(例えば中学生諸君)にもわかっていただけるように、なるべく問題や術語をときほぐして説明することを心がけました」とはじめに書かれてある通り、難しい専門用語はいっさい使われておらず読みやすい。科学哲学について少し考える、そして科学史に触れる良い入門書であると思います。

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2023年11月17日

Posted by ブクログ

「データ―帰納―法則―演繹―検証(反証)―理論の改良というサイクル」がなされてこそ科学だと思っている人は,根底からその考え方が覆されます。モデルという観点が入っていないという意味でこの本はやや不十分であると思いますが,「30年も前の古い本だ」と片付けてしまうのは勿体ないぐらい,この本の副題の指し示す事柄は非常に重要です。特に,データが「判決を言い渡す裁判官」のような役割を担うと考えているならば是非読むべきです。

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2011年12月10日

Posted by ブクログ

「事実は理論をたおせるか?」これで大学生の時にガーンとヤられました。科学論の草分け村上陽一郎さんの古い古い新書なんですが、科学論の入門書として古くから最適の一冊。大学の一般教養のレポート課題で指定された人だけでなく、科学と名のつく所にいる人もいない人も「真理を探求する営みとしての科学」という認識の人には読んでほしい。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 人間にとっての「科学とは何か」という命題を問い直した本。

 戦後、科学者をお茶の水博士のような「白衣の聖職者」という具合に人間社会の発展という崇高な理念だけを掲げている人々と見なす風潮があった。しかし著者は、科学は人間的な営みだと主張する。

 スピノザが「神すなわち自然」、ガリレオが「自然は神が書かれた書物」と表現したように、神が作った自然=世界を説明するツールとして科学が発展した。コペルニクスの地動説も、ニュートンの万有引力の法則も元々はキリスト教の信仰から出発したものだった。厳密に言うと、近代科学はキリスト教の他、古代ギリシアやアラビアの自然学(代数、幾何学、錬金術)の影響を受けているが。

 科学の世界においてはデータの集積が重要である。データというのはギリシア語の”dare(与える)”が語源であり、「与えられたもの」を意味する。

 集積されたデータから理論を導き、理論から事実(fact)を作り出す行為は人為的である。そしてfactとfictionは語源("造り出す"の意)が同じというのにも驚き。

 たまには、こういう科学もいいな、と思った。

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2011年06月06日

Posted by ブクログ

序章 科学的なもの、人間的なもの
1 科学についての常識的な考え方
  1.帰納
  2.常識的科学観の特性
2 新しい科学観のあらまし
  1.文化史的観点から
  2.認識論的観点から

科学理論の本というよりも、哲学の本のような気がした。
第一章で相対性理論やマルクシズムと小難しい展開でしたが
第二章でのひっくり返し方は見事にやられてしまいました。
このひっくり返し方は、「食い逃げされてもバイトは雇うな」と『食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い』のような感じで面白かったです。第一章で後でひっくり返すと何度もおっしゃっておられましたが。
科学も所詮は人のなせる業なのですね。

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2011年01月07日

Posted by ブクログ

[ 内容 ]
人間にとって科学とは何なのかを考える。

[ 目次 ]
序章 科学的なもの、人間的なもの
1 科学についての常識的な考え方
  1.帰納
  2.常識的科学観の特性
2 新しい科学観のあらまし
  1.文化史的観点から
  2.認識論的観点から

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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2010年05月21日

Posted by ブクログ

知らなくてもいいけど、知ると少し見方が変わる、そんな一冊。

ブルーバックスなのでさらっと読めるのがGOOD!

長年、理系からも、文系からも「うちの分野じゃない」と思われてきた不遇な科目「科学哲学」に不覚にも興味を持ってしまうかもしれません。

自分はこの本をきっかけに、不覚にも、大学の科学哲学、科学史の授業をとってしまいました。

哲学系だとクーンやアベントの導入編としても、よいかもしれません。

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2010年01月08日

Posted by ブクログ

この本を読んでいると、理解できてなるほどと思う箇所と、なんのこっちゃって箇所があった。
サブタイトルの「事実は理論をたおせるか 」に関することも自分の読解力・理解力不足から述べられない。
そして要点をまとめて感想を書け、と言われても自分の頭では無理なので、
とりあえず、自分がなるほどと理解できた箇所・そういう考え方もあるのかと意表をつかれた箇所を記録するに
留めたい。

●人間が五感を使って感じている(感じ取れている)ものは自然の中のごく限られた範囲である。
 →つまり人間がいまの人間の姿・特徴であるからこそ感じる世界であって、犬やコウモリや細菌には
  また違った世界がある。人間が知覚(色を認識したり、臭いをかいだり)できる世界は世界全体から見ると、
  本当に限られた範囲なのである。
2009-03-21

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2009年10月04日

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20年くらい前、大学生のときに読んだ本を読み返した。演繹と帰納、科学の進歩とはなにかという根源的な問いに、人間の認知という側面を取り入れて論じている。科学をやる人は読んでみるとよい。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

クーンの「パラダイム論」に代表される「新しい科学論」の内容を、中高生向けに解説ている本です。

著者は、わが国に新科学哲学を紹介することに長く力を注いできた研究者です。本書は二つの章に分かれており、第一章では常識的な科学観にひそむ前提がとりだしされています。第ニ章は、前半で示された科学観をひっくり返す新科学哲学の見かたがわかりやすく解説されています。著者は、現代の啓蒙主義的科学観の来歴を訪ね、キリスト教的世界観に根ざしつつ、そこから脱却する努力のなかで形成されてきたという文化史的な考察がおこなわれています。つづいて、ハンソンが主張した「観察の理論負荷性」にかかわる認識論的考察が展開されます。

本書の主題になっている「新しい科学論」は、いわゆる社会的構成主義の理論的な基礎を提供してきたことで知られています。ただし、科学の社会学的な観点からの分析が認識論における相対主義にまで拡張されることに対しては批判も多く、この点にかんしては他の科学哲学の入門書などで補うことが必要であるように思います。

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2020年11月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

新しい科学論についての本。著者である村上の主張が示されている。
常識的な科学論の説明も丁寧で、かなり読みやすいと思う。

著者自身は中高生にと言っているが、読めなくはないが難しいんじゃないかと思う。

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2014年12月19日

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