弟と兄の間の複雑な心情という視点で描いたゴッホ伝。賢者は愚者(=世間がそう評しているだけで実はほんものの天才)に追いつけない、というが、結局は最後までその思いから抜け切れない主人公の弟の悲哀が伝わってくる。欲を言えば、同じく画家を志したという弟から見て、兄が「才能の無駄使い」を犯すその残酷なまでの天然さと、超越したその才能に対する激しい嫉妬の感情が揺れ動くところ、兄の絵に感動し喜びに打ち震え、激しく嫉妬し、憤り、自分の才のなさを見せつけられ絶望し、というその何度となく繰り返す様を紙幅をとって描いてほしかった。