ダニエル・デフォーのレビュー一覧
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リアリティーはカミュよりある
同名の小説ではカミュの方が有名で新しいのであるが,カミュの作は,フィクションの印象と彼一流の哲学的思考の反映が強い.これに対し本作は17世紀ロンドンを舞台にしているがカミュに比べて極めて現実感が大きい.デフォーの体験記ではないらしいが,まるでルポのような迫力ある描写が印象的でいかにもと感じられる.この時代らしい挿絵も訴える力がある.ここに描かれている家屋閉鎖は,現代なら都市封鎖に対応するものであり,人々の感情は現代も17世紀もあまり大差ない事が分かる.話者がキリスト教に頼って災難を乗り越えようとする姿も印象的である.昨今のコロナ禍に対する世の反応を反省するには絶好の書ではないか.
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子供の頃、ロビンソン漂流記を読んだことがあった。難破したロビンソンが孤島で孤独な生活を送るという粗筋くらいしか覚えていなかったが、文庫本の新訳が出ていたので、改めて読んでみた。
井上靖の「おろしや国粋夢譚」を読んで以来、漂流ものには興味があって、いろいろな漂流記や探検記を読んだけれど、原点はやはりロビンソンクルーソーだと思う。実話を基にした小説で、作者の空想がかなり入っているが物語としてはとても面白い。特にロビンソンの孤独感の心理描写、事件が起きた時の気持ちの変化など、おそらく自分自身が同じ状況になったら、こんな事を考えるだろうと思うことが、そのまま書かれていて、物語に没頭することができた。ま -
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18世紀イギリスの文筆家ダニエル・デフォー(1660?-1731)による漂流冒険譚、1719年。子ども向けの冒険物語として知られるが、孤島に漂着して自活していくロビンソン・クルーソーは近代的な経済合理性に基づいて行動するホモ・エコノミクスの原型であり「資本主義の精神」を先取りするものであるとして、経済学者(マルクス、ヴェーバー、大塚久雄など)からも注目されてきた。以下、精神史上の観点から気になった点をいくつか挙げる。
□「中間の身分」
物語の冒頭、外国への冒険旅行を望む息子に対して、実直な商人である父親は「中間の身分」という興味深い概念を持ち出して、青年の向こう見ずな企てを思いとどまらせよ -
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ネタバレ
子供の時に読んだことがあるくらいだが、
当時もロビンソンの無人島生活を
わくわくしながら読んだ。
特に自分の住処を作るあたりが子供心に
非常に面白く読んでいた覚えがある。
今回この完訳本を読んでみたが、
当時読んでいた少年向けのものが
どれだけ省略されていたのかがよくわかる。
特に大きく違うのは、
ロビンソンの宗教観というものが、
要所で記述されていることだろう。
確かに少年向けにする際にはこの部分を省くよなぁとは思う。
また、序盤が大きく付加されており、
こんな話だったっけと戸惑う。
一度奴隷にされた箇所とか無かったような記憶がある。
また、解説を読み、当時の世俗と合わせて
そ -
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ようやく読んだ古典中の古典。アダム・スミスからマルクス、大塚久雄まで古今の経済学者が引用するだけあって経済学的な要素にあふれている。遭難前の行動は商取引・国際貿易の典型例だし、遭難後の生活は生産様式の発展そのもの。そして主人公ロビンソン・クルーソーの行動原理がまさに合理的経済人を示している。環境の分析から計画、実行、新たな事象の発生とそれに応じた計画の修正。合理性の限りを尽くして身体の保護、富の蓄積に邁進する。経済学の文脈で引用されるよもむべなるかな(良いことと悪いこととを貸方・借方で列挙するあたりは半分冗談にしか思えない)。
それからなんと言ってもキリスト教信仰という観点からもこれはすごく興 -
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1665年のペストについて書かれたデフォーの本。
デフォーといえば、ロビンソン・クローソーだが、コロナ体験をした今の我々にはこっちの方が名作に映るかもしれない。
ペストが蔓延したロンドンのドキュメンタリーで、1660年生まれのデフォーは彼の叔父の日記や当時の記録をもとに書いたそうだ。
驚くべきことに、私たちがコロナで体験したことと瓜二つのことが書かれている。
例えば、「変な呪いが流行った」とかはアマビエを想起するし、「コロナに効く薬がある」とかはイベルメクチンの騒動を思い出すであろう。
疾病者の隔離政策も我々に馴染みのある話だし、その効果に疑問が投げられかけているところも我々と同じで -
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友達から薦められて読みました。
冒険小説として、大航海時代の物語という歴史小説として、信仰が如何なるものかを示す読み物としてなどいろんな読み方ができるようのかもしれない。
災難を免れるより罪から免れることの方がはるかにありがたい、恐れている災いより、恐れそのものの方が重荷になるなど究極の状態にならないと気づけないようなことを読者に気づかせてくれる。
人間が一人で一から始めるとシンプルなことが実は複雑であり、どれだけの人類の叡智が集められていることなのかと驚くことになるんだろうな。
私は主人公が未開の人を召使として扱う描写が人種差別につながることをイメージしてしまい、居心地の悪さのようなも