佐藤さくらのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレゼクスという少年は、セルディア人であること、そして魔導師であることによって、周囲から疎まれ、蔑まれていた。
彼は、自分を見下した者たちを見返したいという強い思いから、魔導師の最高機関「鉄の砦」を目指し、それを見事に成し遂げる。
セルディア人というだけで偏見の目を向けられながらも、命を預け合う小隊の仲間たちとの出会いによって、彼の心は少しずつ溶かされていく。
さらに、小競り合いだった戦いはやがて大規模な戦線へと発展し、その中でゼクスは功績を重ね、「大魔導師」とまで呼ばれる存在になる。
しかし、彼の心には常に暗い影が差していた。
そんな彼に、あるセルディア人がこう語る。
「怒りや憎しみから、人は他者を害したいという欲を持つようになる。道義を忘れ、捨て、その欲に屈する。それが膨らみに膨らむと、波となって大勢を飲み込む。それが魔物だ。」
この言葉を読んだ時、私の中にも“魔物”がいるのかもしれないと思った。
かつての私は、物事を優劣で捉え、常に優っていたいと思っていた。
優るために努力もしていたし、自分を下に見た人たちや、傷付けてきた人たちを見返したいとも思っていた。
力を誇示したいという気持ちもあった。
それはまさに、怒りや憎しみから生まれた感情だったのだと思う。
今は比較的落ち着いていて、その“魔物”が暴走することは少ない。
それでも、人との摩擦の中で、心の奥で蠢くのを感じることがある。
作中では、魔導が暴走しないように「躁魔」の技術を磨いていた。
それと同じように、人にも感情を制御する技術が必要なのだろうと思った。
けれど実際には、どれだけの人が感情をコントロールできているのだろう。
どれだけの人が、自分の中の“魔物”を抑えられているのだろうか。
感情の荒波を相手にぶつけることは、目には見えなくても、大きな影響を与える。
けれど心は見えないからこそ、自分が誰かを傷付けていることに気付けない場合も多いのだと思う。
作中には、「魔導を使うということは、あらゆる生命、死、狂気、恐怖と繋がるということだ」という言葉があった。
それは、人の感情にも通じるのではないだろうか。
感情と向き合うことは、自分自身と向き合うこと。
だからこそ、人は学び、経験を積みながら、自分の中の“魔物”と共に生きていくのかもしれない。
暴れさせないために、少しずつ制御の術を覚えながら。 -
Posted by ブクログ
ネタバレアニエスは、同性愛者であることから「他の人とは違う」と気付き、自分の気持ちを押し殺して生きてきた人物だ。しかし、自分だけではないと知り、さまざまな経験を経て、少しずつ自分を表現するようになっていく。
そんな彼女の言葉の中で、特に心に残ったのが、
「存在をなかったことにしないでほしい」
というものだった。
人は、自分と違うものを受け入れられないことがある。それはある意味、とても人間らしいことなのかもしれない。似た者同士で集まることは、自分を守ることにも繋がるからだ。
けれど、「存在を無視されること」「なかったことにされること」は、当事者にとって深い苦痛になる。この作品では、その痛みが複数の立場から丁寧に描かれていた。
私自身も、「自分は他の人と違う」と感じることがある。
人の立場になりすぎて心を痛めてしまうこと。環境の変化に敏感で、疲れやすいこと。普通の人のように生きようとしても、うまくできない苦しさを抱えていること。
だからといって、誰かに完全に理解してほしいわけではない。受け入れてほしいとも思わない。ただ、「なかったこと」にだけはされたくない。
アニエスの言葉を読みながら、そんな気持ちを静かに思い出していた。
世の中は、「大多数」と「理解されにくい人たち」で成り立っているように感じる。大多数の意見は、数も勢いもある。一方で、少数の意見は、「言っても無駄だ」と感じてしまい、声にすらならないことがある。
だからこそ、少数の意見を知ることには意味があると思う。それは、少数側のためだけではなく、多数側の人にとっても、新しい視点や学びになるはずだ。
私も、自分の関わる場所では、少数の声を安心して出せるような、「存在をなかったことにしない場所」を作っていきたいと感じた。 -
無料版購入済み
作中の魔導士が恐れられているとかじゃなく、下賤なものとして虐げられているのはなぜなんだろう。
力を振るえば理不尽な差別をしてくる連中を一捻りに出来そうな力を持っているはずなのに魔導士側が卑屈になっている描写に少し疑問。
この先そこに関して深堀がされることを期待してます。 -
無料版購入済み
これは…よさげ
個人的に嫌いな、マイナー雑誌の、分冊版マンガ。
多くが適当に書かれた作品と言うのが嫌いな理由だが、中には秀作も眠っている。
今作は、佐藤さくらの小説「魔導の系譜」のコミカライズ版。
原作もそれほど有名ではないと思えるが、話はしっかりしており、立場の違いや夢破れた者の気持ちなど、現代社会にも通じるものがある。
マンガとしては、まず絵がキレイ。
主人公は浦沢直樹風で、「MONSTER」の主人公テンマに似ている。
女性キャラも美しく、子供もかわいい。
そして、作品自体も丁寧に書かれている事が感じられ、非常に好感が持てる。
ストーリー的に「先が気になって仕方ない」というタイプではないが、「世界観にどっぷり浸れる」というタイプの作品ではないだろうか?
この先も読んでみたいと思わせる、秀作。
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みんな格好いいです
登場人物が皆格好良くて好きです。主人公の子ども時代が短かったのが残念。成長していく様子をもっと見ていたかったです。
原作も面白そうで気になります。 -
Posted by ブクログ
新人の方。
ファンタジーで差別について描こうというのは好印象。
欲を言えばその描き方。
これだけ魔導が穢れたモノという概念が浸透している世界で、魔導士がみな一様に「これは差別だ」と気付けるかどうか疑問。
むしろ魔脈を持って生まれた自分を罪に感じるほど、自己否定的に洗脳されていそうなものだ。
そんな世界では、「どうして俺たちは差別されなきゃいけないんだ」という疑問にすぐ至るとは思えないし、「差別する連中はくだらない」などという逆転の発想を被差別側が持つに至るのは、相当苦労するはずだ。
ところが主人公たちがさも当然のように上記の如く語ってしまうので、せっかくの重いテーマが軽く浅く感じられる。
ひいては魔導が卑しいとする世界観の説得力のなさにも繋がってくる気がする。
もったいない。
だがデビュー作でそこまで求める方が酷かな?
というわけで今後に期待。