あらすじ
内乱以来、魔導士への迫害がさらに悪化したラバルタ。デュナンはミオ師の私塾で学ぶ魔導士の卵だが、落ちこぼれだ。ある日、私塾が魔導士を逆恨みする村人に襲われ、師や兄弟子たちが殺されてしまう。生き残った弟弟子と妹弟子を連れ、必死で逃げるデュナン。だが、所詮は子どもの足、魔導士狩りの人々に追われ、力尽きた彼女らを救ったのは、貴族の庶子ノエと元騎士のガンドだった。四人が魔導士とは気づかず助けてくれたのだ。デュナンは、自分たちは魔導士に追われていると嘘をつくが……。『魔導の系譜』『魔導の福音』に続く、シリーズ第3弾。
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Posted by ブクログ
シリーズ通して登場人物たちの成長を描く物語だけど、2作め以降は社会の中の差別の有り様を描いた物語だなと思う。
1作めは差別を受ける当事者、2作めは被差別社の身内でありながら直視を避けていた人物、3作めにして差別意識をしっかり抱え差別する側として生きてきた人物の視点と成長が描かれる。それから1作めで権利を得ようと力を用いて戦った世界のその後の様子も。
社会を取り巻く差別の構造は、現実社会と重なる部分が多い。
1作めの師弟が変わらず仲睦まじいのはもちろんのこと、元エヴァン小隊の面々の絆が描かれるのも嬉しい。というかゼクスがこのタイミングまでなんの報せも出していないことに驚いた。
内乱で目覚ましい成長を見せたダーニャはもはやアスターのパートナーを通り越してお母さんで、頼もしさったらない。アスターに対する「今頃気づいたの?」のシーンと、デュナンに語った「なんだかんだ言いながら生きていくしかない」の台詞は作中特に印象深く好きなところ。
アスターとゼクス、かつての親友同士はお互い悩みや相手の力になれない不甲斐なさを感じていたりしつつ、今はそれぞれ別の道を歩んでいて、身近に支えてくれる存在もあって、直接的に道は交わらないながらも互いに己には出来ないことを託し合ってまたそれぞれの道を歩んでいく。そうして別々の位置から世界の潮流を生み出していく。という展開。この先この世界がどう変わっていくのか見守りたい。
ところで話の主題だった幼い魔導師見習いたちを守り安全なところまで送り届ける流れに関しては、ひととしてそうせざるを得ない、そうするべきだろうとは理解しつつ正直目の前の子供たちだけ救ったところでなにも変わらないよなあと思いながら読んでいた。なのでノエとガンドの決意には驚いた。この世界にはそういった役割の人間が必要だよなとは感じつつ、この二人が自らその道を選ぶとは。
また、2巻でもちらりとその前兆があったけれど、今作ではリーンベルやサイが魔導の力を持ちつつ魔導師の訓練は受けず別の生き方を選んだこととか、デュナンの力の使い方とか、これまで魔導はあくまで戦う技術であったという世界の固定観念を崩してきているのが面白い。ゆっくりとだけど着実にこの世界は変わりつつある。ひとの成長だけでなく社会の成長も描く物語になっている。最終巻でどんな道に進んでいくのかこの先も見守りたい。
ところでアニエスは相変わらず格好良いし女王カンネは一層チャーミングだし前作でじわじわきたシュゼとイングヴェイの信頼関係はスパイスのように効いてくるしで今作のメインではない登場人物たちも大変魅力的に描かれているのもとても良かった。好き。
Posted by ブクログ
デュナンたちの変化が嬉しい。ただ追っ手から逃れるだけの日々が目的を持ち始め、希望さえ感じられるようになる。手助けしてくれる人たちの一言一言が力になる。
自分と違うものを受け入れられるようになるのだろうか、いつの日か……
Posted by ブクログ
魔導師を下賤な者として扱うラバルタで、デュナンはエステルから託された3人の子どもたちを連れて逃亡することになります。道中では、アースの暴走によって追手を殺してしまう場面もあり、「自分は何もしていないのになぜ追われなければならないのか」という理不尽さや恐怖が描かれていました。
そんな彼らを助けたのは、廃嫡されたノエと元騎士のガンドでした。魔導師に対する偏見や恐怖を抱えながらも、子どもたちを守る旅を続ける中で、2人の心も少しずつ変わっていきます。最終的に、行き場のない子どもたちを助ける活動をしていこうと決める流れがとても印象的でした。
今作を読んで特に強く感じたのは、「理解できないもの」をどう扱うかということです。
作中では、デュナンの“魔”の感じ方について描かれていますが、周囲の人々はそれを「変わっている」の一言で片づけてしまいます。そんな彼女を「面白い考え方をしているのね」と受け止めてくれたのはエステルだけでした。
しかし、エルミーヌでレオンと出会ったデュナンは、自分の感じ方を認められた上で、「その考えを深めるために学びなさい」と言われます。そして、「変わっている」と言われていたアースと自分が似ていたのだと気づいていきます。
この流れを読んで、私は「理解できないもの」を一括りにして、「変わっている」と切り捨ててしまうことの怖さを感じました。
私自身にも理解できないと感じる人はいます。でも、その背景に何があるのか、どんな感覚や苦しさがあるのかを知ろうともせず距離を置くのは違うのではないかと思いました。
レオンのように、よく観察し、気づき、寄り添いながら、それでも「完全には理解できない」と誠実に向き合う姿勢は、とても大切なのだと感じます。
「分かろうとしてくれること」「知ろうとしてくれること」そのものが、人を救うのかもしれません。
また、ガンドの
「おれ自身が1番もがいて苦しみながら生き抜いてきたことを知っているから」
という言葉が、とても心に刺さりました。
私は体調を崩しやすく、「なんでこんなことで」と思うような場面で動けなくなってしまうことがあります。そんな自分を弱いと思いますし、嫌になることもあります。
だからこそ、自己嫌悪を抱えながらも生きているガンドの姿に、自分を重ねていたのだと思います。
けれど、この言葉を読んだ時、自分の苦しみを1番知っているのもまた自分なのだと気づかされました。
自己嫌悪に陥るだけではなく、自分自身を少しずつ受け入れていくことの大切さを感じさせられる作品でした。
Posted by ブクログ
落ちこぼれの魔導士デュナン、廃嫡された貴族ノエ、戦争のトラウマを持つガンド、物語が進むに連れてそれぞれが成長していく姿に目を離せなかった。
理想論だけど、ノエとガンドが魔導士であるデュナンを信じ、助けようとしたように固定概念にとらわれず1人1人を見つめられたら戦争は起きないと思う。
まだ物語は続くみたいなので最後に彼らが決断したことがどのように影響を与えるのか見てみたい。