秋谷りんこのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「ナースの卯月に視えるもの」3冊目。
前巻で通っていた大学院での専門看護師になるための勉強も修了し、常勤に戻って勤務する卯月。相変わらず「思い残し」は視えるが、過剰に語られることがないのは前巻に引き続き。
患者との交流、新人の育成、ペイハラへの対応、噂話や恋バナで盛り上がる同僚とのささやかな息抜きなどなど、看護師たちの日常が描かれる。
いちどきに突発的なことが重なる夜勤の描写や、放置されたあげく転院してきた1か月以上も排便がなかった患者、脳を損傷し植物状態で1年以上眠り続ける患者など結構強烈な症例もあったりするが、あまり深刻ならず淡々と描かれることに救われる。
加納さん夫婦の「タイタニック」のエピソードにほのぼの。眠り姫が1年ぶりに意識を取り戻したのは出来過ぎだが、その間もずっと見舞い続けた婚約者や家族を思えば、本の中だけでもこういう奇跡があってもいいよね。
これらに卯月自身の健診再検査や二人の男性の間で揺れる恋愛も織り交ぜて進められるお話は、今回も良い心持ちで読むことができた。
ラストでは、卯月に新しく出来るホスピスへの異動内示。これまでとは異なる、延命治療を受けない患者さんたちとの話がどうなるのか、次巻が出ればまた読みたい。 -
Posted by ブクログ
こころの中にダイブ!
えー!そんなことできるの?ってファンタジー感を匂わせているが、中身はしっかり医療ヒューマンドラマ。
主人公の月野ゆん(ちょっと変わった可愛いらしい名前)は、潜入心理士といって心の中の核に潜入し絡みをほどくことにより希死念慮を軽減することを目的とした自殺を予防する専門職。
ゆんは先輩、医師達と協力して患者の絡みをほぐしていく、その過程と成長、心の葛藤が描かれている。
希死念慮という重いテーマを「こころの中にダイブする!」現実離れしたファンタジー感を出すことで暗くて重いイメージが払拭され読み易く、蓮さんの気さくさが、ゆんや本城を際立たせている感じがした。
こころの中に入るには患者とシンクロしないとダメとか時間制限があったり、ちょっとエバァンゲリオンが頭をよぎってしまった(笑)
ただ、人の心の中に入る技術が悪用されたらと思うとちょっと怖いなぁ。核を壊されたり、愛情や大切な思い出とか、死にたい気持ちだけでなく好きとか嫌いとか、いろいろ操作できるようになったりすると大変だ。
潜入心理士の良いところは、死にたい気持ちが可視化できることかな。希死念慮を持っていないと言っていても実際思っていることが違う時や、相手の心が傷ついているのも分かるから、あっ今この人に手を差しのべれば力になれるって行動できる。
九章の「希望」で蓮さんが言った言葉「誰の役にも立たたないで生きていても全然いいと思う。意外と気付いていないだけで、皆だれかの支えになっていると思うよ。」自分が気付けていないだけで誰かを支えていると思うと少し気が楽になるよね。
あと、表画が綺麗で良かったな。透き通った水の上に白衣を着た女性が立って、手のひらの光の玉の廻りに無数の光の糸が繋がっている。希望の光のようで。(結構、表画につられて買ってしまう)
著者の秋谷りんこさんはこの本のことを、卯月が「ささやき」だとしたら月野は「叫び」です。と言っていた。少しでも多くの人が本書を読んで「月野の叫び」が心に響けばば良いなと思った。
余談ですが、心の場所って何処にあると思う?
アリストテラスは胸(心臓)、医術の祖ヒポクテラスは頭(脳)、と考えていたそうです。私も頭かな? -
Posted by ブクログ
初めましての作家さん。
長年、精神科の看護師をされていたそうで、その当時に感じていた事を作品にされたとのことです。
作品の舞台は横浜の大学病院の精神科。
主人公は潜入心理士の月野ゆん。
「潜入心理士」
初めて聞く言葉でした。物語の中だけの架空の専門職でした。
患者の心に潜入して心の「核」を探し、絡み固まった「核」を緩め解して自死をふせぐ。
それが「潜入心理士」の仕事。
自死する人を看護師として看てきた作者の願望の職業なのだろうと思いました。
潜入心理士を主に描かれていた作品なので仕方ないのかもしれませんが、潜入をされて「核」を解かれた後の患者の様子も知りたかったな、と思いました。