霜島ケイのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
“「おい、兄さん」
手を放したら壊れる、と太一は思った。
何だって、壊れるのだ。誰かとの絆とか、関係だとか。そんなものはある日突然、簡単に狂って壊れて、失くしてしまえばもう戻らない。
確かなものなんて、何ひとつない。
どうせ失うのなら最初から、他者との関わりなんてなくていい。誰も何も自分には関係ないし、どうでもいい。誰かの気持ちなんてわからなくていい。わかりたくない。
――そう、思っていた。ずっと。
母親との絆すらあんなに呆気なく消えてしまうのなら、他の人間との関係なんてもっと脆いに違いない。だから、いつも心のどこかで信じてなんかいなかった。誰かが、自分のことを想ってくれるなどとは。
やっとわかった。
彼の中の傷は、誰の想いももう、信じられなくなっていたことだ。”
思わず、少し泣いてしまった。
良い話……なのは間違いないけれど。
ただ、もう少しシリーズ続けても良かったんじゃないかなぁと。
終わりをもう少し深くしても良かったんじゃないかなぁと。
思ってしまう。
けど、まぁ。
最後の太一の笑顔が素敵すぎた。
彼が笑えて本当良かった。
“「あ、阿川君、今……笑った?」
「え」
「笑った?笑ったよねえ。うそ、阿川君が笑った!」
采奈は歓声のような声をあげる。
「もっぺん!ね、もっぺん見たい!笑って!」
もう一度と言われましても。
でも、采奈の顔を見ているとまた、くすぐったくてたまらなくなった。
「ふ、ははは……、和泉の顔ったら」
「え、顔?ヘン?」
「ヘンじゃないけど……」
くるくる、くるくると、采奈の表情はなんてよく変わるんだろう。大きな目が動いて、唇を尖らせたり、笑ったり、泣いたり、真っ赤になったり。素直で、わかりやすくて。まるで、子供みたいだ。
――今までだって彼女は、ずっとそうだったのに。
ずっと、彼にありったけの想いをくれていたのに。
何も気づいていなかった。気づいていないふりで、逃げていた。――怖かったから。
想いを受け取って、でもそれが壊れてしまうことが、とても怖かったから。
太一の心を覆っていた不透明な薄い殻がゆっくりと剥がれて、世界が急に鮮明になっていく。
これまで受け取ることを拒んでいた想いが、胸に沁みていった。
大丈夫。もう、怖くない。” -
Posted by ブクログ
“―――君は他の人のことなんか、何も見てないよ。
自分が何を見ていなかったのか、もう一度考えたらわかるだろうか。
ずっと先延ばしにしていた、その答を見つけられるだろうか。
(家に……)
太一は唇を噛んだ。
(家に帰ろうか)
父とその再婚相手に、家に帰ってもう一度会ってみよう。
空栗荘に来てから初めて、太一はそう思った。”
溶けた雪女にとりつかれた太一が色々なことに気付き初めている話。
雪女は、あれかな、今はやりのツンデレかな(多分違)
健気に頑張る采奈も好き。
この物語はあと一冊で完結だと。
采奈には幸せになってほしい。
でも鈍い太一が好きだ。
“「あ、編み目とかとんでるしっ」
太一は手袋をはめた自分の手を、ぐっと握りしめた。
思い切って、言った。
「……でもこれ、暖かいから」
「え?」
采奈は驚いたように彼を見た。”
空栗荘の人は皆好きだ。
だって、面白い。
鈴子さんも意外だったけど好きだ。
可愛い。
“「大丈夫、太一君?」
まだ畳の上で潰れている太一の傍らに、心配そうに古都子が屈み込む。
「は、はい。なんとか」
そうか覚悟ってこういうことか。でもそれだったら先に言っておいてほしかったと、太一は思った。
「やれやれ。どこまでいっても力業な男じゃのぅ」
「まったく乱暴だねぇ。女にはもうちょっと優しくすることを覚えないと、あれは先々苦労するよ」
「オイラ、何があってもあいつだけは祓われたくねえ」
ひそひそ。妖怪たちは聞こえよがしに囁きあっていたが、
「―――うるさいで、おまえら!」
ミヨシに剣呑に睨まれて、素知らぬ顔で口をつぐんだ。”