森沢晴行のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ・あらすじ
舞台は2つの大国、神聖レヴァーム帝国と帝政天ツ上が戦火を交える架空の世界。海に隔たれた両国の戦いでは戦闘機とそれを操る飛空士と呼ばれるパイロットが戦場の主役となる。
主人公のシャルルはレヴァーム帝国の属領自治軍のエースパイロット。
抜群の操縦技術を持ちながらも、レヴァーム人と天ツ上人との混血である”ベスタド”である彼は、生まれながらにして両者から理不尽な差別を受ける身分である。
そんな彼は敵軍に侵略されつつある戦線から、皇子の婚約者であり次期皇妃であるファナ公女を偵察機に同乗させ、一万二千キロを単機で突破すべし、との無謀な指令を受ける。
はたして二人は敵機がひしめき合う空域を切り抜け、皇国にたどり着くことができるのか・・・!?
・感想
このあらすじからも想像できるように、物語の読みどころは敵中を単機で突破する空戦の緊張感と、二人の恋模様がメインです。
シャルルとファナは命懸けの脱出行を続けるうちに徐々に惹かれあうものの、そこには絶対に超えることのできない”身分”の壁が・・・。
ともすると安易すぎる展開になってしまうところを、いわゆる「吊り橋理論」を利用して、しっかりと読者が感情移入できるようなストーリー仕立てになっています。
そして、二人の結末を見事に描き切った、切なくも清々しいエンディングがすごくいい。
理不尽でどうしようもない現実と抗いながらも、そこから目をそむけずに生きていこうとする二人の姿は、やっぱり理不尽でどうしようもない現実と折り合いをつけながら生きていく僕らにとっても感じ入るものがあります。
かつての宮崎アニメが持っていたような、ハラハラドキドキと甘酸っぱい切なさの同居する物語。1年に何冊もないくらい面白い。 -
Posted by ブクログ
戦場は非情なものであること戦場のロマンティシズムを見事に融合させていて、あっという間に引き込まれました。
太平洋戦争の戦史をよく研究しており、戦略・戦術的に不可解な展開がない物語を構築しているのも素晴らしかった。
飛空士シリーズは全て読んでいますが、この感動は第1作の「とある飛空士への追憶」以来です。(もちろん「とある飛空士への恋歌」も良かったですが)
本作をこれから読もうという方へ。
本作を読む前に第1作の「とある飛空士への追憶」を読むと、より物語の深さを感じることができると思います。
人を愛することのすばらしさと強さが分かるような気にさせてくれる作品です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの物語のエクスタシーは、ファナが旋回機銃をぶっ放すシーンだと思う。
「メンフィス・ベル」ではそれなりに活躍した旋回機銃であるが、
「紅の豚」では空賊の旋回機銃はポルコ・ロッソのサボイアS21を捉えることはできず、
「風の谷のナウシカ」では大型船が旋回機銃で弾幕を張るも空しくペジテのガンシップの餌食になってしまったし、
「天空の城ラピュタ」のゴリアテの旋回機銃はドーラ一家の艦載機(?)の煙幕展開を阻止できなかった。
旋回機銃というガジェットは不遇を囲ってきたのである。
おそらく生涯最初で最後になるであろう旋回機銃での射撃。
それによってファナは、自らが生き延び、初恋の人を助け、運命を切り開き、そしてシャルルとサンタ・クルスの戦友になる(飛空士になる、と言い換えてもいい)という四つのことを成し遂げたのである。
生き延びたということは、皇妃としての戦いが始まったということであり、飛空士としての戦いが終わったということでもあり、でもおそらく熾烈を極めるであろう彼女の戦いの始まりとしてまことふさわしい名シーンだったと思う。