ヴァージニア・ウルフのレビュー一覧
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とにかく夢想と回想がたくさん描写され、一人の人間が様々な思いを巡らしているかと思っていたら、いつのまにか別の人物へと視点が変わりその人の心に入り込んでいるのだが、訳文がとても読み易くて「今、誰が語っているんだっけ?」と見失うことはなかった。読むのに時間かかちゃったけど。
一人の人間には多くの感情や考えが入り混じっており、そんな多くを抱えた複雑な人間同士がコミュニケーションするのだから、そう易々とうまくいくわけがない。こうしてほしい、褒めて欲しい、あの人と仲良くしてほしい等、様々な思惑があり、誰かの言葉や態度が憎くて許せなくて長年恨むようなこともある。あの人のあそこが許せないにおける“あの人”と -
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最初は退屈な物語かも、と思った。
登場人物がお互いに心に思ってることをひたすらモノローグで繋いでいって、一向に何か起きる気配がないから。
悪人も完璧な人もいない。
美しい母親と、ちょっとエキセントリックなお父さん。尊敬もされてるけど面倒くさい。
子供たち、書生、家庭教師。
登場人物同士の愛憎入り混じる感情、自己愛と愛。
モノローグでお互いの気持ちをふわふわと漂っているうちに、いつの間にか登場人物とともに歳をとって、彼らをお屋敷の物陰から覗いている、そんな感じ。
三部の美しさ、悲哀はちょっと筆舌に尽くしがたい。
あと、めちゃくちゃ共感したフレーズ。
「どうやら本というのはひとりでに増殖するも -
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読んでいる途中だけど、忘れないうちに書きたいことを書いておく
P72
それに、百年も経てばーーと、わたしは思いました。ちょうど自分の家の玄関に着こうとしていました。もはや女性は保護してもらう性別ではなくなっているでしょう。論理的に考えれば、かつては阻まれていた活動と労苦のすべてに参加している、ということになりそうです。
1929年、今からちょうど100年くらい前にウルフが考えていたことと、私の生きる今の世界(2024年)を比べてみる。
女性は「保護してもらう」性別では無くなってきているし、
ウルフの頃に阻まれていたであろう、活動や労苦の多くに参加できるようになったことは間違いない
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当時の方にしては先進的な考えだとは思うんだけど、結局男女二元論の中で生きた人のご意見だなあと斜に構えてしまった。
でも経済格差の低い方は教育格差を乗り越えられないし、教育格差の低い方から詩人は生まれない、というのは目を背けちゃいけない、なおかつ変えてかなければならない事実だよな、とも思う。
それに、女性が筆を執ることが「乱心」「狂人」の兆しと取られた時代のことを考えれば、私達は小説を書いても(業界的に下に見られることはあったとしても)、奇人変人には当たらないこと、そうしたあり方を勝ち取ってきた女性たち、犠牲になった女性たちへの感謝を禁じ得ない。 -
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「どうしたら戦争を阻止できるか?」という男性からの質問の手紙に対し、いち女性として返信するという体裁で綴られた、戦争と女性をめぐるエッセイ。
戦争は男性が引き起こすもの、そして戦争を防ぐには女性の教育と自立が必要だと説くウルフの筆致からは、男性社会において貶められてきた女性たちの歴史と、戦火が迫りつつあった当時(1938年)の状況への、冷静な怒りを感じた。
人生を束縛されないためには他人に依存せず、みずから働いて生活費を稼ぐことが大切。あたかも現代を生きる私たちに宛てて投函されたメッセージかのように、響いた。
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私的世界/公的世界 教育のある男性の娘たち・姉妹たち アーサ -
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まずは、ヴァージニア・ウルフを読んだ私に大満足。タイトルにも魅かれた。
多様性が叫ばれる今。
1928年に書かれたこの本。
100年近くが経過しているのにもかかわらず、年500ポンドと自分ひとりの部屋を持てない女性は多い。そんな中で、とにもかくにも少なくとも自分ひとりの部屋でワインを飲むことができていることに自信を持つことができた。誇れる自分なのだ、と1928年のヴァージニア・ウルフに背中を押された気がした。
仕事を持つことの意味、大切さ。自分ひとりの部屋の意義。経済的にも精神的にも自立していくことの大切さ。
今の自分の手にしているものの本当の意味、歴史を考え、感謝する気持ちになれた。正直、フ -
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1928年にケンブリッジ大学の女子カレッジで行なわれた講演をベースにした、フェミニズム批評の古典的作品。「意識の流れ」による叙述のため、読み取りにくい部分もあるが、訳注と解説が充実していてとても助かる。
「自分ひとりの部屋」というタイトルは、女性が小説を書こうと思うなら、生活にゆとりのあるだけのお金(年収500ポンド、訳者によると500万円程度のイメージ)と一人になれる部屋を確保しなければならない、というウルフの主張に依る。そして、女性の経済的基盤のなさが、いかにその作家としての自立を困難にしてきたのかが、具体的に語られる。
とはいえ読み進めると、お金と部屋だけですべてを語ってはいないこと -
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本書の内容を簡潔に紹介するならば、女性の文学との関わりの歴史を辿りながら、女性の地位向上のために、ウルフがその考えるところを、特に同性である女性に向けて、あるときは率直に、あるところでは文学的な虚構を混じえて、語りかけたものである。
女性が小説や詩を書こうとするならば、〈年収500ポンド〉と、〈ドアに鍵のかかる自分ひとりの部屋〉が要ると、ウルフは主張する。
オックスブリッジで、女性であるが故に立入りを断られたことや、女性の組織が金銭的な収入を得ることが難しいことを導入的に説明した後、どうして女性が貧乏なのか答えを得ようとして、いわゆる男性識者の著作等を調べるが、それらは女性に対する偏見 -
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家族でも結局、一人一人の人間なのだから
分かりあうってことは、ごく珍しいかもしれない。
この本は第三者から見た景色や語り手から見た景色が進む話ではない。
出てくる登場人物たちが、お互いにどう思っているか、どんな感情を持っているかが延々と書いてある。
誰かのたった一言に対して、過去の記憶や複雑な感情が数ページにわたって書かれていたり、何も起こらない静かな情景の中で、人との孤独や繋がりが繊細に描かれている。
セリフだって無いようなもので、
読んでいて本でしか表現できないとは
こういうことかと思った。
映画ではどうしても台詞や行動で表現する必要があるから、ここまで深く、複雑な感情を伝えるの