ヴァージニア・ウルフのレビュー一覧

  • 灯台へ(新潮文庫)

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    小説の技法?が斬新すぎて少しだけ難解に感じた。
    たった2日間の出来事に細かすぎる情景描写、心理描写、人間関係が詰め込まれていた。

    たいてい小説を読むと、ここが印象に残った!っていうシーンがあるんだけど、本作品にはそういうのがなくて作品全体を通じてぼんやりと印象深く、なんとなく古臭く、自分の子供時代をふわっと思い出すような、なんとも言えない読後感があった。

    小説の翻訳本っていのも初めてだったし、これからも少しずつ色んな作品を手に取って、その良さに触れられるといいな〜

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    2025年10月06日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    ジョイスやプルーストと並び称されるモダニズム作家の珠玉の名作。
    第1部と10年後の第3部はラムジー家の夏の別荘でのそれぞれの1日。それを結ぶ第2部は10年という2つの時間を家人が不在の中で語られる個人的な出来事や第一次大戦を交えた短いエピソードの中で深い悲しみとともに濃密に結びつける。
    主人公一家とその知人たちの移り変わる心模様を木々や風、海や芝などと時間の流れに合わせて淡々としながらも豊かに表現された言葉の数々に心が揺り動かされ、いつのまにか心の片隅にじんわりと残る不思議な作品。
    舞台となったスカイ島のスコッチウイスキー、タリスカーとともに愉しんだ一冊。

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    2025年09月20日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    本当に凄い、人生ベストブックの一つ
    なんで凄いのかは言語化するのが難しいけど、結局自分は個人的・私的・内省的な作品が好きなんだなと
    あと「瞬間を永遠にする」という芸術観がめちゃ刺さる
    まだ何回も読み返すだろうな

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    2025年09月09日
  • 自分ひとりの部屋

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    ヴァージニア・ウルフは、わたしの母校で英文科を選択すると、避けて通れない。彼女のエッセンスは、すべての学びのベースになる。
    文学とフェミニズムの変わり目に位置し、当時の試みや思想の体現者ではないかと。
    フェミニズムの台頭と言っても 決して 男女同権のために男性を叩いたということではなく どうやって社会に向き合って自分がどの位置にいるのか 自分は何なのか、どのように生きていくのかということを常に考えて動いて発信した人そのものだと思います
    文学表現においては非常に感覚的で センシティブで難しくてよく分からない部分もありますが このエッセイに関しては非常に冷静でシンプルに書かれていてとても表現が分

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    2025年08月23日
  • 自分ひとりの部屋

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    この内容がほぼ100年前に書かれていた事に驚いていると、ヴァージニアウルフの語る主人公が自室に入る前に立ち止まり、100年後の世界を想像する場面が出てきて、こちらを覗く著者を想像する事ができた。

    また、女性の作家が作品を書く上で、差別に対する怒りを表現する事を、作品を捻じ曲げてしまうとして良しとしない内容の記載については、最近の映画や小説において社会問題を扱うものが多くあるが、それらの表現は捻じ曲げられてしまっているのだろうか?一概にそうは思えないが、今後は作品の内容や表現と根差している問題意識のバランスのようなものを考えながら読んでみたいと思った。

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    2025年05月24日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    衝撃。初めは一体なにを見せられているんだと思ったが、一挙手一投足への正確な心の機微の描写が癖になり、皆で食事をする場面なんかはなんて面白いんだ!
    ひとつの出来事に対する意識の流れはどこか納得感があり(自分もぼんやりとこんな流れで意識が進むことがあるなあと思う場面が多々ある)、それが各々の人物で精度を落とすことなく描かれており、一体どれだけの時間や思考を費やしたのだろうと感嘆する。
    本書の趣旨とは違うだろうが、人はたとえ家族だろうと、最愛の人だろうと、完全にわかりあうことはできないのだなと改めて思った。

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    2025年05月17日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    初V・ウルフ。流石に文学史に燦然と輝く名作。思考や会話の視点が次々と入れ替わり、境界や主体をあえて曖昧にしつつ心理の描写はあくまでも細かく淡々と進む。登場人物たちはお互いのことをあれこれと考えながら話し行動しているが、わかり合えているのかというとそんなことはなくて、それでも人間関係は続いていくし、そんなものなんだろうとも思う。話の筋自体がめちゃくちゃ面白いという類の話ではないし、細かい心理描写に共感できるものが多いわけでもなかったのだけど、この先本を読み続けていっていよいよ死ぬなってなったら読み返したくなるのはこういう小説なのかもなと思った。

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    2025年04月16日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    ネタバレ

    一言で言うと、圧巻の構成力と心理描写!

    三部構成のうち、一部と三部はたった数時間の出来事と人間関係がめちゃくちゃ丁寧、詳細、重厚に書かれている。対して二部は、一部と三部の間にある10年の時間をつなぐ部分だけど、家主のいない家の荒廃にフォーカスし、「○○が死んだ」など衝撃の事実は非常にさらっとあっさりと述べられていく。紙の本で読むと、一部と三部の長さ(分厚さ)、二部の短さ(薄さ)に驚かされる。実際の時間の長さと、文章量が逆転しているのである。
    裏主人公とも言えるリリーが、絵の構図をどう描くか悩む姿は、この物語そのものをどう捉えるか、家族の歴史をどう切り取るべきか、という作者と読者の疑問の反映だ

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    2025年04月12日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    文字を目で追うことでしか感じ取れない作品。登場人物ではない全知の超越的な存在が、全てを記録しているかのようだった。それでいて、心情と動作が、川のせせらぎがいかにして織りなされているかがわかるほど緻密な解像度で流れていくので、その心情と動作が生み出されることに共感しながら読むことができる。

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    2025年04月07日
  • 自分ひとりの部屋

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    名著であり、100年前に書かれた驚き。あげられた理想は現代でも同じく課題になっているため、今読むにじゅうぶん値する。
    「自分の人生を生きよう」とウルフは女性に呼びかけ、あらゆることに阻まれることなく自由な経験を女性たちができるようになれば、世の中にどれだけ素晴らしい小説が女性の手によって生み出されるだろうか、と述べている。
    そのために必要なのはお金(ある種の余裕)と、1人になれる自分の部屋を持つこと。
    小説家を目指さなくても、そんな、女性が真に自由に生きられる世の中が来れば、社会も変わっていくだろうという、未来への期待が込められた批評。メアリー・ビートンという架空の人物に語らせた、物語風なのが

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    2025年03月02日
  • 波〔新訳版〕

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    これこそ私が目指していた既存の支配的な言語体系を解体したものでは。波のごとく、寄せては打ち返す人生の悲哀を、敢えて6人のアイデンティティーを融和させることにより、美しく描き出す。

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    2025年02月24日
  • 自分ひとりの部屋

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    さすがの名著。女性と文学の歴史を主軸に、女性が教育や社会経験、そして経済的独立から遠ざけられてきたことが何を意味するのか。そして世に多くの書物はあれおよそ男性の目を通した「女性」しかほとんど描かれないことがどんなに歪んでいるか…などなど、フェミニズムについて明快に語っている。すごいと思うのは、その的確な着眼点と分析もさることながら、そうした諸問題への怒りや恨みを諌め、皮肉まじりだろうが同時代の男性識者の女性蔑視発言まで貴重なご意見として朗々と紹介するその余裕とちゃめっ気だ。まあ、言い換えれば、そのような「中立さ」を示しておかないと男性社会に受け入れられるのも難しかったのだろう。

    読んでいて思

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    2025年01月05日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    イギリスの1920年代の"現代小説"。タイトルは知っていたけど、今回文庫化したのを機に初めて手を伸ばせた作品。充実の読後感。何の話を読まさせられてるの?という気持ちから、だんだん小説の全貌が分かるにつれ、心にくるものがあった。読み終わったあと、もう一度最初から読み直したくなる。生きている間の一日一日、人との関係性はすべて一期一会の奇跡の邂逅。人は決して理解し合えないけど愛に満ちている。そういう気持ちになる。

    今まで読んだことがないような文体。最初はしばらく読みづらい。セリフも思考もカギ括弧なしで入り交じっている。たまに、誰かと誰かの思考の継ぎ目すらなく、読み進めていたらい

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    2024年12月01日
  • 自分ひとりの部屋

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    ここに書かれている内容がどうこうというのではなく、架空の物語を通して自分の考えを伝える文章の手法と、注記と本文を行ったり来たりしながら当時の温度感、歴史を感じるという読書体験がただただ楽しかった。読書好きの読書好きを更に加速させるような本。

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    2024年08月29日
  • 青と緑 ヴァージニア・ウルフ短篇集

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    代表作「キュー植物園」など20篇を収録した短篇集。


    以前から唱えている〈ヴァージニア・ウルフ=少女漫画説〉が、この短篇集を読んでより自分のなかで強固なものになった。小動物や植物、世間的には取るに足らないとされる小さなものたちにシンパシーを感じ、そこに個人的な象徴や啓示を見いだしていくモチーフの使い方。ディテールに注ぐ偏執的な凝視。言葉になる前の不定形な感情をとらえようとしてあふれだす、言いさしのような未然の文体。
    これらはみな、萩尾望都や大島弓子などの作品にある謎めいたほのめかしや、わかりきれないけど「わかる」と思わされてしまうモノローグの魅力にとても近いのではないか。漫画家が絵と言葉を組

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    2024年03月24日
  • 自分ひとりの部屋

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    女性と小説というテーマを掘り下げ、数世紀にわたる小説を読み解きながら女性と貧困、女性と家事・育児などの目線を交えて語られるフェミニズム批評。

    女性は男性を2倍に写す鏡の役割を務めてきたため、男性たちが優越感を与えてくれる女性を手放さないという第二章には笑ってしまった。ほんとそう。いまでさえ。

    この本で語られる100年後まであと5年。あと5年でなにが変わるというのかと憂うことは簡単だけど、それよりもなにかを書いていきたいね。年収と自分ひとりの部屋があるうちに。

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    2024年01月21日
  • 自分ひとりの部屋

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    女性が小説を書くためには、「年収500ポンドと自分ひとりの部屋」を持たねばならない、という主張をどう受け止めたらよいか、終始迷いながら読み終えました。
    訳者の解説によれば、年収500ポンドはおよそ年収500万円と読みかえて差し支えないらしい。

    年収500万円相当の労働とは、どんな仕事であれかなりの時間を必要とするだろうし、時間を必要としないなら、何かしらの運の良さか才能に恵まれていなくてはならないのでは、と2023年の日本にいる私は、1929年のイギリスにいるウルフに言いたくなってしまう。(ちなみに、この作品の架空の語り手であるメアリーは、年収500ポンドを親戚の遺産から得ている設定になって

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    2023年06月13日
  • 波〔新訳版〕

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    全体を通して詩的、抽象的、暗示的な言葉が溢れているので、一度読んだだけでは細部までは到底理解できない。
    まずは「6人のうち誰に一番共感出来るだろう」などと考えながら最後まで筋を追ってみた。
    寄せては返す波のように、6人の感情の揺れ動きが非常に印象深い。羨望と軽蔑、愛情と憎しみ、一体感と疎外感。
    親しい人物に抱く、相反するが並立する感情が、難解だが美しい表現で綴られている。
    訳者の解説にもある通り、6人にはウルフの多面的な部分が投影されているようだ。

    また、バーナードが自分に言い聞かせるように繰り返す、「月曜日のあとには火曜日が来て、また水曜日が続くのです」という言葉。仕事を持ち、家族を持ち、

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    2022年02月06日
  • 自分ひとりの部屋

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    この先の人生で何度も読み返すことになると思う

    「文学の中で男性が女性の恋人としてしか表象されず、他の男性の友人ということもなければ、兵士でも、思想家や夢想家でもないとしたらどうでしょう?……文学は甚大な損害を受けることになります」
    こんな簡単な理屈でさえ信じ続けることは難しい、部屋でひとり、自分は誰かの席を奪ったのではなく奪われていた席を取り返したのだと初めて思えた

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    2021年12月28日
  • 波〔新訳版〕

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    台詞がト書きのような具合で延々続き、台詞だけで物語が展開していく。劇=詩《プレイ・ポエム》の極地ここに極まれり。

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    2021年11月11日