ヴァージニア・ウルフのレビュー一覧

  • 灯台へ

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    「明日、灯台へいく」その約束をした家族が崩壊し、その約束で再度集まるような物語。
    3部構成の1冊。同じ感情を持たずとも一緒にいる家族。そこからの崩壊と最後の描きが強烈。すべてを理解できてはいないけれど、ラストの風景、ヤヴァイ、泣く。

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    2023年01月28日
  • 波〔新訳版〕

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    全体を通して詩的、抽象的、暗示的な言葉が溢れているので、一度読んだだけでは細部までは到底理解できない。
    まずは「6人のうち誰に一番共感出来るだろう」などと考えながら最後まで筋を追ってみた。
    寄せては返す波のように、6人の感情の揺れ動きが非常に印象深い。羨望と軽蔑、愛情と憎しみ、一体感と疎外感。
    親しい人物に抱く、相反するが並立する感情が、難解だが美しい表現で綴られている。
    訳者の解説にもある通り、6人にはウルフの多面的な部分が投影されているようだ。

    また、バーナードが自分に言い聞かせるように繰り返す、「月曜日のあとには火曜日が来て、また水曜日が続くのです」という言葉。仕事を持ち、家族を持ち、家を持ち、一見すると豊かで楽しい人生を送っていても、どうしても埋められない虚しさと物足りなさがある。しかし、次の瞬間には、折り合いをつけてやっぱり楽しく人生を謳歌しようではないかと、前を向く。
    このバーナードの気持ちが一番共感出来たかもしれない。人間の本質的な感情をよく表していると思った。

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    2022年02月06日
  • 自分ひとりの部屋

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    この先の人生で何度も読み返すことになると思う

    「文学の中で男性が女性の恋人としてしか表象されず、他の男性の友人ということもなければ、兵士でも、思想家や夢想家でもないとしたらどうでしょう?……文学は甚大な損害を受けることになります」
    こんな簡単な理屈でさえ信じ続けることは難しい、部屋でひとり、自分は誰かの席を奪ったのではなく奪われていた席を取り返したのだと初めて思えた

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    2021年12月28日
  • 波〔新訳版〕

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    台詞がト書きのような具合で延々続き、台詞だけで物語が展開していく。劇=詩《プレイ・ポエム》の極地ここに極まれり。

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    2021年11月11日
  • 自分ひとりの部屋

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    女性であることの意味、男性と女性が同じフィールドで戦っているという意識はいらないのではないか。
    セクハラなどと短くして軽く扱うな。
    余裕があれば女性は上手く生きていけるのか、それとも最低限の余裕にプラスする必要があるのではないか。
    性別よりもその人が何をでき、何を乗り越えてきたのか。能力主義からの脱却に最後は陥ってしまう?
    アナザードリンクはやはり、女性からのあらゆる押さえつけを受ける男性性の優勢感の爆発だったのではないか。
    女性の劣等性ではなく、男性の優勢性の維持が原因。
    美味しく食べていなければ、うまく考えることも、上手く愛することも、うまく眠ることもできない。
    ある人になりきった視点はおもしよかった。

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    2021年09月05日
  • 自分ひとりの部屋

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    面白かった。
    過去の女性たちがいかに創作の世界から、貧困と社会の圧を理由に排除されてきたかのかの話。
    自分ひとりで金を稼げないと家からは抜け出せないし、そうしないと自分の執筆や思索に集中するための邪魔されない部屋も持てないから、お金は大事なのだろう。
    成功している男性作家が基本裕福で学びに触れる機会がある。でもその一部の人しか創作の機会にありつけないのは、国や世界にとって大きな損失だ。という主張だった。
    この本を読んで、J・K・ローリングが生活保護を受けてそのお金で生活しながら物語を執筆していたという話を思い出した。それを許す環境があったからこそハリポタが生まれたのであって、だから、福祉というのは長期的には投資なのだなと思ったし、それが出来るのが豊かさだと感じた。

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    2021年09月04日
  • 灯台へ

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    小説はやっぱり素敵だなと思う。
    焦点をあてているのが、何か大きな出来事ではなく、折り重なり揺れ動く人の感情であるところが好きだった。誰もが人との関わりの中で、意識と記憶を織り交ぜて生きてる。その絶妙なバランスが表現できる方なのだと思う。

    また、リリーが真に自立を得る様子の描写が素晴らしかった。

    私は、こういう作品に小説の醍醐味が詰まっていると思う。

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    2021年03月12日
  • 自分ひとりの部屋

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    「女性が小説を書くだって」
    「ナンセンス、書けるわけがない」
    という会話が普通だった時代がある。そんな時代の中でも先人を切る方々がいたおかげで、徐々に女性が創作活動にも携われることが可能になってきた。
    本書が出版されたのが1929年、著者であるヴァージニア・ウルフさんがケンブリッジ大学で行った2回の講演をもとにした作品。当時、男女平等の参政権が認められて、しばらくたったころ。現代社会から見つめると、男女の収入格差が明確にあり、社会的地位も男女で差がある時代といえる。
    女性が小説や詩を書くことが、まだ常識とは言えない時代に創作された古典的作品があるということを認識できたこと。そして、それらの作品を読むときには、その時代背景も考察することも大事なことだと感じた。
    本書は、ユニークな語りで、子育てや家事で時間をとられ、もちろん個室があるわけでもなく、経済的な自由もない時代に、書物を創作してきた女性たちの心境を浮き彫りにしていく。脈々とつないできたバトンを聴衆である女学生たちに託すかのごとく、先人たちの力を引き継ぐことが可能であり、未来は開けていくという願いもあったのでしょう。
    読んでよかった一冊。

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    2021年01月10日
  • 船出(下)

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    繰り返し読むことに飽きないというか、そうしないと入ってこない箇所があるというか。しみじみ考え感じ思い出しそうな気配を感じ。
    ダロウェイ夫人より知られていいのではと思う本だった。テレンスのセリフは、ウルフの生涯を思うと、これが彼女の亡くなる数十年前に書かれたのだと思うと、彼女の思考の日々に驚愕する。

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    2019年10月14日
  • 自分ひとりの部屋

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    なんか気難しそうで(失礼)敬遠していたウルフだけど、ユーモア精神のある素晴らしい講演だと思う。小説の「誠実さ」についてということが心に残った。しかし私はシャーロット・ブロンテのことは少し擁護したくなった。「私が私であること」のなかには、憤懣も、責任感もあって、それがシャーロット自身であったのなら、それはそれで受け入れられる。(これは読む側の私自身にはめられた枷もあるのだろうか?)
    押し付けられた価値観や役割を取り除いて、あるがままの私、でものを書くということ。あるがままの自分ってなんだろうな。

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    2019年10月03日
  • 自分ひとりの部屋

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    読みながらたくさんメモをとった。女性として生きる上でも、文章を書く上でも、心に刻んでおきたい言葉であふれていたから。シェイクスピアの妹は今でもわたしたちのなかにいる。〈現実〉を見据えて生きたい。暮らしていけるだけの自分のお金を得て、鍵のかかる自分ひとりの部屋で。

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    2019年05月22日
  • 三ギニー――戦争と女性

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    【三つの役割、一つの目的】戦争を防ぐためという目的で、とある「教養ある男性」から「私」に対して手助けが要請された。手持ちの三ギニー(注:かつてイギリスで使われていた貨幣単位の一つ)をどのように平和のために用いようかと考えた「私」は、寄付を三つの異なる相手に対して申し出るのだが......。著者は、『夜と昼』や『波』などで知られるヴァージニア・ウルフ。訳者は、本作以外にも複数のヴァージニア・ウルフの作品を訳出されている出淵敬子。本題は、『Three Guineas』。


    月並な言い方になってしまいますが、いろいろと考えさせられることの多い作品でした。書簡による返答という形式をとっていることからも明らかなように、戦争を防ぐということに対して理路整然とした考え方が打ち出されている一冊というわけではないのですが、著者の並々ならぬ熱意と情念は読み手にはっきりと読み取れる作品です。

    〜アウトサイダーは続けて言うでしょう、「なぜかと言えば、実際のところ、女性として私には祖国がないのです。女性として、私は祖国が欲しくはないのです。女性としては、全世界が私の祖国なのです。」〜

    次は著者の小説を読んでみようかな☆5つ

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    2018年03月21日
  • 灯台へ

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    第一部ではたった1日の出来事を意識の浮遊と比喩の連鎖にたくして語りが進んでゆく。第二部になると嵐のなかで急速に時間がながれ、第一部でも絶えずちらついた灯台の影が妙な主体性を帯びるように感じる。個人的にはこの章が最も好きだった。そうして10年の月日がながれると、第三部では幻想と現実がおおいに入り乱れる。静かながらも重みのある小説だった。

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    2018年01月26日
  • 自分ひとりの部屋

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    フェミニズム古典。非常に読みやすく示唆に富んでいる。
    「私が簡単に飾らずに申し上げたいのは、何よりも自分自身でいることの方がはるかに大事だということです。他のひとたちに影響を与えようなどと夢見るのは止めてください。」人生の箴言

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    2017年11月24日
  • 灯台へ

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    小説であるが小説ではない。言葉も展開も見事。さまざまなところに意識がいきわたりそれを言葉にすることをどこまでも追求しているのがわかる。本当に面白かった。

    作中言葉の無力さを嘆く場面、ラストの場面などから筆者の葛藤や決意が見て取れる。芸術に対する態度についてしっかりと作中で言及し表明していることは、彼女の人生を写しとった作品だからこそ顕在化した父の影響なのであろうか。

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    2017年02月21日
  • 自分ひとりの部屋

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    女性論、文学論として忘れたくない一冊。
    5章までは意識の流れ的に思索の過程がつづられ、6章でまとめての見解が述べられる。

    著者はすぐれた精神は両性具有であること、そして人の心に伝わり、人の色々な想念を生み出し、色々な能力を呼び覚ます文学(精神の系譜?)には、精神の男性的部分と女性部分の共同作業がかかせない、と述べる。

    作家とは〈現実〉を見据え、収集して読者に提示する方法を主にとるので、女性も収入を持ち、自分の部屋を持って〈現実〉を見据えるように。作家でなくても〈現実〉は人生を活力あるものにする、と述べる。ウルフ自身は親戚からの遺産収入があった。

    個々人の生でなく女性全体の生を考えるなら、現在の女性のがんばりにより、将来の女性の未來は明るい、と著者は希望を持ち、具体的アドバイスもしている。
    跳躍することだけを考えてね。
    何より自分自身でいることが大切。自分のヴィジョンを少しでも変更してはいけない。
    子供はたくさん持たなくていい。

    この本が書かれて一世紀近いが、事態は驚くほど変わっていない、特に日本では。妊娠、出産、育児をどのように個々人の生活、社会制度の中に組み入れていくのか。
    自分だけの経験に終わらず、現在の女性たちが連帯して未来の女性たちのために取り組まないと、女性の未来を変えることはできないのではないだろうか!

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    2016年02月02日
  • 灯台へ

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    わずか400ページに凝縮された10年の歳月、でもその遠隔が確かな重みをもってこちらに伝わるのは構成の妙ゆえか。時の流れの描写が展示品のように端正だった

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    2015年11月22日
  • 灯台へ

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    非日常を書く作家は数多くいるが、なんでもない日常を書く作家は少ない。
    事実を書いた作品は山ほどあるが、心を書いた作品は少ない。
    これはなんでもない日常、その場にいた心を書いた作品。ウルフさんまじ半端ねぇ。

    いつもと違う物語を読みたいという方へ。

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    2015年08月14日
  • 灯台へ

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    なんて美しい小説なのだろう。波の満ち引きの様に押しては返す内面の機微、それを優れた知性と洞察力によって掬い取り、繊細に言葉を紡ぐ事によって日常に寄り添う幸福や憂鬱を情景豊かに描き出す。家族と友人たちの一日の風景と瞬く間に過ぎる10年という歳月、そして再び描かれる一日の風景。内面描写の主体を次々と移しながら表象には出てこない感情のひだまで丁寧に描き出すその文章は、雪の結晶の微細な美しさに触れた時の感覚に似ている。だからこそそれはどこか儚く、触れてしまえば粉々になってしまいそうな危うさも感じさせてしまうのだ。

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    2013年06月06日
  • 灯台へ

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    読み終わった後、自分がなにを読んだのかよくわからなくなってまた繰り返し読んでしまうような本。
    文章の力のせいかどんどん読めてしまう。書いている内容はある意味ほんとうに生々しいのに、どことなく清潔ですらすらと読める。

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    2011年12月10日