青木純子のレビュー一覧

  • 忘れられた花園 下

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    今まで出会った中で一番美しい本だった。

    きらきらとした粒子のように溢れてくる言葉が、
    脳内で麗しい躍動感を湛えた映画のようにうつり、
    また光あふれる絵画のように映り込んでくる。

    そこかしこに張り巡らされた布線を
    一つ一つ丁寧に絡め取っていく心地よさはミステリーとしての読み応え充分。
    それに加え、登場人物の細やかな心理描写は読み手の心に切に訴えかける。読者を物語に引き摺り込み、活字の中で踊る人物たちと共に風を感じさせ、光悦とさせ、悩ませる。

    それとなんと言っても、ただただ文字を追うだけで、作品の映像が脳に入り込み心臓が苦しくなる程の緻密で美しい情景描写。
    目の前にある言葉を目で追うだけで、

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    2021年01月27日
  • ホテル・ネヴァーシンク

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    ある一家が始めたホテルが大きくなり堕ちていくまでの約70年を描いた連作。ミステリー要素は少なめではあるけれど子供が行方不明になる事件が起きてからはそれぞれの語りの中にも不気味な空気が少しずつ入ってくる。ホテルに関わる人たちの生活や人となりがとても味わい深くそれだけでも楽しめる。次第に明かされてくる長年隠されてきたもの。たくさんの人物によって展開される物語はとても贅沢に思える作品になっている。

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    2021年01月22日
  • ライフ・アフター・ライフ

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    引用メモ
    私たちは1度しか生まれない。前の生活から得た経験を携えてもう一つの生活を始める事は決してできないだろう。私たちは若さの何たるかを知ることもなく少年時代を去り、結婚の意味を知らずに結婚し、老境に入る時ですら、自分が何に向かって歩んでいるのかを知らない。
    ミラン・クンデラ「小説の精神」より

    ライフアフターライフは、そうした人間の未熟を踏まえつつ、今生きている人生をいかに実りあるものにできるか、その可能性と限界に超絶技巧で挑んだ転生の物語と言うことができるだろう。
    訳者あとがきより

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    2020年08月14日
  • 秘密 下

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    母親が見知らぬ男を刺殺する場面を目撃した少女が大人になり、余命わずかとなった母親の過去をたどりながら事件の真相を探る。母親の青春期であった第二次世界大戦中のロンドンを舞台とした「秘密」が、少しずつ解き明かされていく。

    過去と現在を往き来しながらゆったりと紡がれる物語には、毎度のことながら魅了された。早く真相を知りたいと急く思いと、古めいたロンドンで繰り広げられる独特な空気にいつまでも浸っていたい気持ちとが交錯する。
    時代の流れに翻弄されながらも、空想癖のある少女たちの弾けるような瑞々しさ、哀しい運命と切ない余韻。秘密の内容は想像できたし、そんなに都合よく進むのかと思う場面もあるものの、古い時

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    2019年11月26日
  • ミニチュア作家

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    ネタバレ

    ネラ・オールトマンはアッセンドルフトの古い屋敷からアムステルダムに出てきた。裕福な商人の妻となるために。しかし迎え入れられたのは冷たい屋敷。義姉であるマーリンは冷たく、夫たるブラントは家に帰ってこない。ようやく帰ってきた夫は彼女と夜を共にしようとしない。そんな花嫁にと夫は豪華なドール・ハウスを贈り物とした。そしてそこには精巧な家具だけでなく自分たちと同じような小さな人形が送られてくる。それも細分もたがわずに似せられた人形が。このドール・ハウスの作者は自分たちの生活を覗き見しているのかとも疑われるほどに。そして作者の作ったものが自分たちの運命を暗示しだしたとき、ネラは若い何も知らない花嫁から、一

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    2018年10月20日
  • 忘れられた花園 下

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    いやあ、楽しい読書でした。
    子どものころ読んだイギリスのお話みたいな部分と、ハーレクインみたいな部分。
    「秘密の花園」の作者、バーネット夫人もちゃんと出てきます。

    推理小説として考えると物足りない。
    ネルの正体は、割と簡単に想像がつきます。

    けれどイライザの悲しいまでに切ないローズへの友情。或いは愛情。
    本当の自分を知りたいというネルの強い欲求。
    過去の後悔から自分を解き放つことのできないカサンドラ。

    この3人の人生が年代を超えて複雑に織りなしていく物語なのですが、この巻ではもっぱらイライザの人生について。
    自分の力で生きてきた少女時代のイライザが、母の実家であるマウントラチェット家に引

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    2017年10月28日
  • 忘れられた花園 上

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    ネタバレ

    たった一人、イギリスからオーストラリアについた船に残された4歳の少女ネル。
    大人になったネルが過去をたどるための唯一の手がかり『お話のおばさま』ことイライザ。
    ネルの過去をたどる孫娘の(といってもちゃんとした大人)カサンドラ。

    時代を越えて3人の女性の人生が交差する時に見えてくる真実。

    という話なんだと思うんだけど、まだ上巻なので真実はまだ見えてこない。

    だけど、私の好きなイギリス文学の匂いが濃厚なこの作品。
    読みながらどんどん世界に溺れていく。

    ああ、下巻を読むのがものすごく楽しみ。
    こんなトキメキ、学生時代みたい。

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    2017年10月12日
  • 忘れられた花園 下

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    ネタバレ

    後半に入ってからの「花園」の象徴的存在感、イライザとローズの歪んだ友情、過去を辿る者と真実との微妙なずれ、謎の解きほぐされ方の物語としてのバランスが絶妙すぎる。

    正直、結末は予想できたが、そこに至るまでの語りにのめり込んでしまい一気読み。

    個人的には「半身」のキーワードが懐かしさと切なさを生み印象的だった。解説にも触れられていなかったと思うのだが、オマージュ的要素はあるような気がするのだが。

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    2017年08月15日
  • 世界が終わるわけではなく

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    皮肉の混じった現実の世界に、神話的な、あるいはSF的な非日常が入り込む。
    関係のないようなそれぞれの短編は少しずつクロスしている。
    一冊の本として巧みな構成となっていて、面白かった。

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    2015年02月08日
  • 世界が終わるわけではなく

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    可愛がっていた飼い猫が大きくなっていき、気がつくと、ソファの隣で背もたれに寄りかかって足を組んでテレビを見ている!そして…という「猫の愛人」、真面目な青年と、悪さをしながら面白おかしく暮らす彼のドッペルゲンガーの物語「ドッペルゲンガー」、事故で死んだ女性が、死後もこの世にとどまって残された家族たちを見守ることになる「時空の亀裂」等々、十二篇のゆるやかに連関した物語。千夜一夜物語のような、それでいて現実世界の不確実性を垣間見せてくれる、ウィットブレッド賞受賞作家によるきわめて現代的で味わい深い短篇集。

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    2013年06月01日
  • 世界が終わるわけではなく

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    かなり好きな世界。

    千夜一夜物語のような現実と幻想がまじりあった世界は、そのブレンド加減の好みが人によって違うと思うのだけれど、ワタシにはこの小説の世界は絶妙。

    最初の「シャーリーンとトゥルーディのお買い物」がシュールで笑える。

    かといって、この作者の長編は読めないだろうなとも思う。ぷっつりと結末が切れることの面白さを感じるから。

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    2013年03月15日
  • 世界が終わるわけではなく

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    短編集といっても、ただ短編を集めたのではなく、かなり巧みに構成されている。どれもシニカルでブラックだけれど、胸をうつところもあり、素晴らしかった!幼い子どものいじらしさから思春期の子の手に負えない様子、独り立ちした子の勝手さなど、すごくよく書けていて、母親の気持も子供の気持ちも痛いほど伝わってきた。好き嫌いが分かれそうで誰にでもお勧めってわけにはいかないが、ジュディ・バドニッツなんかが好きな人には合っていると思う。
    表紙の絵にもなっている「猫の愛人」、「魚のトンネル」「大いなる無駄」など、繰り返し読みたくなる。

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    2013年02月03日
  • 湖畔荘 下

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    派手さはないし、トリックという類のものが出てくる作品ではなかったが、それぞれの秘密が徐々に明らかになっていった結果上からの謎が綺麗な形で終わったので満足感はあった。

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    2025年09月12日
  • 湖畔荘 上

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    読み始めてすぐらへんは、「え、また戻るの?!」と混乱もあったが、上巻全体を通して謎は「セオ・エダヴェインはどこにいったのか?」と一貫しているので一見複雑な構成自体には普段から読書をしている人にはすぐ慣れるだろう。とはいえ、この時点でこの作品の魅力はまだ発揮されていないと思うので、下巻が楽しみである。

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    2025年09月09日
  • 長く続けられる美しい庭づくり

    sun

    購入済み

    長く楽しめる庭づくりの実用書

    少ない手間で美しい庭を維持したい人に最適な一冊。京都の園芸家が30年の経験から編み出したローメンテナンスガーデニングのコツを季節ごとに紹介。セルフリフォーム術や手のかからない植物カタログも実用的。写真が豊富で初心者にも分かりやすく、シニアにもおすすめ。ただし、デザイン重視の庭を目指す人には物足りないかも。

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    2025年06月30日
  • 秘密 下

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    上巻のあらすじには
    「少女ローレルは庭のツリーハウスから、見知らぬ男が現われ母ドロシーに「やあ、ドロシー、久しぶりだね」と話しかけるのを見た。そして母はナイフで男を刺したのだ」
    と書かれているけれど、真相がアレなら「やあ、ドロシー」とは話しかけないんじゃないかなあ…と、いまいち納得できないので五つ星評価にはしかねるが、心温まるハッピーエンドで読後感は良いです。

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    2025年05月31日
  • 湖畔荘 下

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    「湖畔荘〈下〉」(ケイト・モートン : 青木純子 訳)を読んだ。
    
〈下〉に入った途端に一気に加速した。
    
《おお!そこまでいくか!》という感じ。
    
こうであったらなという妄想が答えになっていくのを見るにつけ、ケイト・モートンが人気作家であるのも宜なるかな。
    
『あまりにも多すぎるパズルのピース、しかも各人がまちまちのピースを握りしめていた。』(本文より)
まさにこの物語を端的にあらわした一文だな。

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    2024年10月09日
  • 秘密 上

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    ネタバレ

    何人かの語り手が異なった時代を行ったり来たりしながらストーリーを進めるのが、ケイト・モートンスタイル。
    今回はまず、1961年のサフォークでの出来事をローレルが、第二次大戦中の主にロンドンでの出来事を若かりし頃のローレルの母・ドリーが、そして現代である2011年にローレルが視点となって語る。

    一番最初に一ばんショッキングなシーンが来るのも、ケイト・モートンスタイル。
    16歳の少女ローレルが、ツリーハウスの中から見たのは、母が見知らぬ男に包丁を振り上げた場面。
    刺殺された男は最近近隣に出没していた不審者ということになったが、ローレルはその男が母の名を呼ぶのを聞いていて、それは誰にも言えない彼女

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    2024年07月03日
  • 湖畔荘 上

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    ネタバレ

    『忘れられた花園』を読んで以来の作者の本ですが、またもや違う時代に生きる女性二人が主人公です。

    現代パートの主人公は、ネグレクト事件でのミスで有休消化という名の謹慎処分中の刑事、セイディ。
    どうも彼女が過去にプライベートで起こした事件がきっかけで、そのミスが誘発されたらしいということは薄々わかります。

    過去の事件に向き合いたくないがために、早く職場復帰したいセイディは時間をもてあまし、たまたま祖父が買っている犬の散歩中に見つけた荒れ果てた屋敷が、未解決の誘拐事件の舞台となった場所であることを知り、興味に駆られてその事件を調べ始めます。

    過去パートの主人公は、誘拐事件のときにその屋敷に住ん

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    2024年05月30日
  • 秘密 上

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    母の秘密は叙述トリック的な何かなのか、本当に秘密にしておくべき出来事なのか、どっちだろうか。続きが気になる。
    それにしても、母の恋人が普通に良い人そうな分、上巻での扱いが可哀想。彼も下巻ではどうなってしまうのだろうか。

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    2024年03月10日