青木純子のレビュー一覧
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今まで出会った中で一番美しい本だった。
きらきらとした粒子のように溢れてくる言葉が、
脳内で麗しい躍動感を湛えた映画のようにうつり、
また光あふれる絵画のように映り込んでくる。
そこかしこに張り巡らされた布線を
一つ一つ丁寧に絡め取っていく心地よさはミステリーとしての読み応え充分。
それに加え、登場人物の細やかな心理描写は読み手の心に切に訴えかける。読者を物語に引き摺り込み、活字の中で踊る人物たちと共に風を感じさせ、光悦とさせ、悩ませる。
それとなんと言っても、ただただ文字を追うだけで、作品の映像が脳に入り込み心臓が苦しくなる程の緻密で美しい情景描写。
目の前にある言葉を目で追うだけで、 -
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Posted by ブクログ
母親が見知らぬ男を刺殺する場面を目撃した少女が大人になり、余命わずかとなった母親の過去をたどりながら事件の真相を探る。母親の青春期であった第二次世界大戦中のロンドンを舞台とした「秘密」が、少しずつ解き明かされていく。
過去と現在を往き来しながらゆったりと紡がれる物語には、毎度のことながら魅了された。早く真相を知りたいと急く思いと、古めいたロンドンで繰り広げられる独特な空気にいつまでも浸っていたい気持ちとが交錯する。
時代の流れに翻弄されながらも、空想癖のある少女たちの弾けるような瑞々しさ、哀しい運命と切ない余韻。秘密の内容は想像できたし、そんなに都合よく進むのかと思う場面もあるものの、古い時 -
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ネタバレネラ・オールトマンはアッセンドルフトの古い屋敷からアムステルダムに出てきた。裕福な商人の妻となるために。しかし迎え入れられたのは冷たい屋敷。義姉であるマーリンは冷たく、夫たるブラントは家に帰ってこない。ようやく帰ってきた夫は彼女と夜を共にしようとしない。そんな花嫁にと夫は豪華なドール・ハウスを贈り物とした。そしてそこには精巧な家具だけでなく自分たちと同じような小さな人形が送られてくる。それも細分もたがわずに似せられた人形が。このドール・ハウスの作者は自分たちの生活を覗き見しているのかとも疑われるほどに。そして作者の作ったものが自分たちの運命を暗示しだしたとき、ネラは若い何も知らない花嫁から、一
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いやあ、楽しい読書でした。
子どものころ読んだイギリスのお話みたいな部分と、ハーレクインみたいな部分。
「秘密の花園」の作者、バーネット夫人もちゃんと出てきます。
推理小説として考えると物足りない。
ネルの正体は、割と簡単に想像がつきます。
けれどイライザの悲しいまでに切ないローズへの友情。或いは愛情。
本当の自分を知りたいというネルの強い欲求。
過去の後悔から自分を解き放つことのできないカサンドラ。
この3人の人生が年代を超えて複雑に織りなしていく物語なのですが、この巻ではもっぱらイライザの人生について。
自分の力で生きてきた少女時代のイライザが、母の実家であるマウントラチェット家に引 -
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購入済み
長く楽しめる庭づくりの実用書
少ない手間で美しい庭を維持したい人に最適な一冊。京都の園芸家が30年の経験から編み出したローメンテナンスガーデニングのコツを季節ごとに紹介。セルフリフォーム術や手のかからない植物カタログも実用的。写真が豊富で初心者にも分かりやすく、シニアにもおすすめ。ただし、デザイン重視の庭を目指す人には物足りないかも。
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ネタバレ何人かの語り手が異なった時代を行ったり来たりしながらストーリーを進めるのが、ケイト・モートンスタイル。
今回はまず、1961年のサフォークでの出来事をローレルが、第二次大戦中の主にロンドンでの出来事を若かりし頃のローレルの母・ドリーが、そして現代である2011年にローレルが視点となって語る。
一番最初に一ばんショッキングなシーンが来るのも、ケイト・モートンスタイル。
16歳の少女ローレルが、ツリーハウスの中から見たのは、母が見知らぬ男に包丁を振り上げた場面。
刺殺された男は最近近隣に出没していた不審者ということになったが、ローレルはその男が母の名を呼ぶのを聞いていて、それは誰にも言えない彼女 -
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ネタバレ『忘れられた花園』を読んで以来の作者の本ですが、またもや違う時代に生きる女性二人が主人公です。
現代パートの主人公は、ネグレクト事件でのミスで有休消化という名の謹慎処分中の刑事、セイディ。
どうも彼女が過去にプライベートで起こした事件がきっかけで、そのミスが誘発されたらしいということは薄々わかります。
過去の事件に向き合いたくないがために、早く職場復帰したいセイディは時間をもてあまし、たまたま祖父が買っている犬の散歩中に見つけた荒れ果てた屋敷が、未解決の誘拐事件の舞台となった場所であることを知り、興味に駆られてその事件を調べ始めます。
過去パートの主人公は、誘拐事件のときにその屋敷に住ん