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ユーザーレビュー ホテル・ネヴァーシンク アダムオファロンプライス / 青木純子 ★5 決して沈まない豪華絢爛な〈ホテル・ネバーシンク〉世代を重ねた未来には #ホテル・ネバーシンク ■あらすじ 1930年代から現代まで、三代にわたって家族経営を続ける〈ホテル・ネバーシンク〉。絢爛豪華で巨大なそのホテルは、街のシンボルとなっていた。 しかしある時、ホテルで宿泊していた子どもが行...続きを読む方不明になってしまう。その後も周囲では子どもが消えてしまう事件が発生するようになり、徐々に経営の斜陽化が進み始める。決して沈まないという意味の名前をもつホテルの行方はどうなるのか、そして事件の真相は… ■きっと読みたくなるレビュー 面白い★5 舞台設定、話の構成が超絶素晴らしい! 1930年代から2010年代まで、豪華で煌びやかなホテルを中心に話が展開されていきます。各章、年代ごとに少しずつ物語が進行しますが、語り手が毎回変わっていき、様々な目線と価値観で描かれていく群像劇。 もちろん年代が進んでいくので、登場人物たちも年齢を重ねていく。ある年代の語り手は少年時代でも、次の語り手になったときにはホテルで働いていたりする。 そう、登場人物の一生が描写されると同時に、〈ホテル・ネバーシンク〉の一生も見届けていくことになるのです。 まるで建物であるホテル自体が生き物のように時には笑い、泣き、苦しんでいることが伝わってくる。こんな刺激的なミステリーは他にないよ。 そして様々な立場の登場人物たちが魅力的すぎるんです。 ホテルの経営者、経営者を継ぐ者、離れていく者、嫌う者、バーテンダー、掃除係、ホテル付き探偵などなど。 それぞれの立場、価値観、向き合い方でホテルについて語られていく。まるで短編集を読んでいるかの如く小気味よく綴られ、時には楽しく、時には切なく、どんどん読み進められます。 特にホテルの後継者レンと妻のレイチェルの二人のやり取りは、読み応えたっぷり。熱い出会いから結婚、そして経年による関係性や価値観の変化が半端なくエグい。 そして子どもたちが行方不明になった真相… 最終盤の展開は、これまで読んできた経営者とホテルの嘆きを聞かされたようで、私は涙が止まりませんでした。 ■推しポイント 母が他界、父が高齢になったため、施設に入居をすることになりました。 そのため築45年の一戸建ての実家はもう不要となり、経済合理性を鑑みて、処分をすることになったのです。先日、片付け業者に依頼して家財道具をすべて搬出、家の中はすっかり空っぽになりました。 私が幼児の頃から育った、思い出がいっぱいの家。 家財も、日用品も、衣服も、本も、ゴミすらも何もなくなった家。 家が一生を終えていく… 決して沈まない家や、老いを重ねない人間なんて存在しません。残酷だけど時間は平等に経過していくのです。 願わくば、この住まいと家族の魂を解き放って、次に建てられる家、新しい家族に、明るい未来と溢れる希望を与えて欲しい。 いままで楽しい時間と住まいを与えてくれたことに、ありがとうと伝えました。 Posted by ブクログ ホテル・ネヴァーシンク アダムオファロンプライス / 青木純子 日本初上陸の作家、アダム・オファロン・プライス。訳がケイト・モートン「湖畔荘」等の青木純子さんということもあって手に取りました。 ニューヨーク近郊の山中に建つホテル・ネヴァーシンク。ホテルの関係者の視点で1950年から2010年代まで、ネヴァーシンク(不沈)の興隆から荒廃までを描いた作品。 195...続きを読む0年台に子供が行方不明となり、どうやらその後もホテル周辺で度々子供が行方不明になる、みたいなのだが、その辺りは深く描かれない。ミステリ色は弱め。 ある章の中心だったホテル関係者のことが、別の人物の視点の章でも描かれており、あの後、こういう人生を歩んだんだなぁとわかる仕掛け。何人か繰り返し中心となるため総勢10名ほどの視点か。 最後に犯人はわかるのだが、おまけというか、メインはそこではなく。ホテルの凋落、お祭りの後やパーティーの後のような侘しさが描かれた作品。 良かった。 ちょっと久しぶりにポケミスに手を出してしまいました笑(待ってても文庫落ちしない作品も多いので。。。) Posted by ブクログ ホテル・ネヴァーシンク アダムオファロンプライス / 青木純子 ある一家が始めたホテルが大きくなり堕ちていくまでの約70年を描いた連作。ミステリー要素は少なめではあるけれど子供が行方不明になる事件が起きてからはそれぞれの語りの中にも不気味な空気が少しずつ入ってくる。ホテルに関わる人たちの生活や人となりがとても味わい深くそれだけでも楽しめる。次第に明かされてくる長...続きを読む年隠されてきたもの。たくさんの人物によって展開される物語はとても贅沢に思える作品になっている。 Posted by ブクログ ホテル・ネヴァーシンク アダムオファロンプライス / 青木純子 とある実業家の道楽的思い入れにより改築に次ぐ改築が繰り返された広大な屋敷、フォーリーハウス。 財政難により競売にかけられた屋敷はユダヤ人シコルスキー一族に買い取られ『ホテルネヴァーシンク』として一時代の輝きを放つ。 半世紀に渡る隆興と凋落の裏にはシコルスキー一族の決して美しいばかりではない営みが息づ...続きを読むいている。 ホテルとしての絶頂期に起きたネヴァーシンクでの男児失踪事件の真相究明を細い軸にしながら、歴代の関係者の物語で各年代の場面を構成する形式。 必ずしも失踪事件の謎が前面にあるわけではなく、あくまでもネヴァーシンクを取り巻く歴史絵巻。 本筋とは関係のなさそうな挿話が、伏線かと思いきや本当に全く回収されないまま進んでいくことも。 多数の登場人物がゆる~く繋がりながらひとつの流れ作り出すまさに人生のような物語。 Posted by ブクログ ホテル・ネヴァーシンク アダムオファロンプライス / 青木純子 ロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズの初期作品の一つである『キャッツキルの鷲』というタイトルはなぜか忘れがたいものがある。さてそのキャッツキルという地名だが、「キル」は古いオランダ語で「川」の意味なのだそうだ。古いオランダ語。うーむ。 ハドソン川に沿ったいくつかの土地の名には「キル」が...続きを読む付いてるらしい。この作品の直後にぼくが読むことになるアリソン・ゲイリン著『もし今夜ぼくが死んだら、』の舞台が、実はニューヨークに注ぐハドソン川流域の架空の町ヘヴンキルなのである。「キル」の意味を教えてくれたのはそちらの翻訳を担当している奥村章子さんで、彼女が巻末解説でそのことを教えてくれたのだ。これもまた読書の順番という偶然。 ハドソン川流域キャッツキルには、実際に1986年まで、この小説のモデルとなる巨大リゾートホテルが存在していたらしい。本書の作者は、この巨大施設を舞台に、何人も少年が消えているというミステリーを構築する。それも様々なスパイスを加えた連作短編集という表現形式で、半世紀を越えるスケールの大きな物語を作り出した。 本書は、章ごとに主人公を変え、一人称あり、三人称あり、でそれぞれの異なる物語を語らせる。1950年に始まり、2012年にすべてにけりをつけて閉じる壮大なる物語。意外なのは、この作品が2020年度エドガー賞最優秀ペーパーバック賞受賞作品であること。賞の受賞そのものが意外なのではなく、こんなに壮大なスケールの物語なのにペーパーバック賞であるというところが意外なのだ。 蛇足かもしれないが、「キル」を教えてくれた前述の『もし今夜ぼくが死んだら、』も前年の2019年に同じペーパーバック賞を受賞。これも我が読書順のある意味偶然。何か、運命というようなものがあるのだろうか? 壮大とは言ったが、誰にとっても親しみやすい短めの物語の蓄積によって織り成されるがゆえに、読者を選ばない親しみやすい作品と言えるのかもしれない。ペーパーバックというフレンドリーな賞の対象となったのはそこなのかもしれない。 ポーランド出身のユダヤ人一族が、ナチスドイツの迫害下、飢餓に苦しむ生活から逃れ、アメリカ大陸へ移住し、彼らなりの新世界を切り拓いてゆく家族史を主軸に、ホテル経営に関わる多種多様な登場人物のストーリーで時代と人々を積み重ねてゆく。 不気味に少年を襲う黒い影、というミステリーを縫い込みつつ、ページは進む。次々と語り手が変わり、色合いを変えるゴシック模様のような斬新な物語。個性いっぱいのこの世界・この時代を、現代から振り返り、俯瞰し直すような楽しみが、本書の最大の魅力であろう。そんな個性的で新しみに満ちた本書の感触を是非味わって頂きたいと思う。 Posted by ブクログ アダムオファロンプライスのレビューをもっと見る