【感想・ネタバレ】ホテル・ネヴァーシンクのレビュー

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Posted by ブクログ 2023年02月24日

★5 決して沈まない豪華絢爛な〈ホテル・ネバーシンク〉世代を重ねた未来には #ホテル・ネバーシンク

■あらすじ
1930年代から現代まで、三代にわたって家族経営を続ける〈ホテル・ネバーシンク〉。絢爛豪華で巨大なそのホテルは、街のシンボルとなっていた。

しかしある時、ホテルで宿泊していた子どもが行...続きを読む方不明になってしまう。その後も周囲では子どもが消えてしまう事件が発生するようになり、徐々に経営の斜陽化が進み始める。決して沈まないという意味の名前をもつホテルの行方はどうなるのか、そして事件の真相は…

■きっと読みたくなるレビュー
面白い★5
舞台設定、話の構成が超絶素晴らしい!

1930年代から2010年代まで、豪華で煌びやかなホテルを中心に話が展開されていきます。各章、年代ごとに少しずつ物語が進行しますが、語り手が毎回変わっていき、様々な目線と価値観で描かれていく群像劇。

もちろん年代が進んでいくので、登場人物たちも年齢を重ねていく。ある年代の語り手は少年時代でも、次の語り手になったときにはホテルで働いていたりする。

そう、登場人物の一生が描写されると同時に、〈ホテル・ネバーシンク〉の一生も見届けていくことになるのです。

まるで建物であるホテル自体が生き物のように時には笑い、泣き、苦しんでいることが伝わってくる。こんな刺激的なミステリーは他にないよ。

そして様々な立場の登場人物たちが魅力的すぎるんです。
ホテルの経営者、経営者を継ぐ者、離れていく者、嫌う者、バーテンダー、掃除係、ホテル付き探偵などなど。

それぞれの立場、価値観、向き合い方でホテルについて語られていく。まるで短編集を読んでいるかの如く小気味よく綴られ、時には楽しく、時には切なく、どんどん読み進められます。

特にホテルの後継者レンと妻のレイチェルの二人のやり取りは、読み応えたっぷり。熱い出会いから結婚、そして経年による関係性や価値観の変化が半端なくエグい。

そして子どもたちが行方不明になった真相…
最終盤の展開は、これまで読んできた経営者とホテルの嘆きを聞かされたようで、私は涙が止まりませんでした。

■推しポイント
母が他界、父が高齢になったため、施設に入居をすることになりました。
そのため築45年の一戸建ての実家はもう不要となり、経済合理性を鑑みて、処分をすることになったのです。先日、片付け業者に依頼して家財道具をすべて搬出、家の中はすっかり空っぽになりました。

私が幼児の頃から育った、思い出がいっぱいの家。
家財も、日用品も、衣服も、本も、ゴミすらも何もなくなった家。
家が一生を終えていく…

決して沈まない家や、老いを重ねない人間なんて存在しません。残酷だけど時間は平等に経過していくのです。

願わくば、この住まいと家族の魂を解き放って、次に建てられる家、新しい家族に、明るい未来と溢れる希望を与えて欲しい。
いままで楽しい時間と住まいを与えてくれたことに、ありがとうと伝えました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年02月12日

日本初上陸の作家、アダム・オファロン・プライス。訳がケイト・モートン「湖畔荘」等の青木純子さんということもあって手に取りました。

ニューヨーク近郊の山中に建つホテル・ネヴァーシンク。ホテルの関係者の視点で1950年から2010年代まで、ネヴァーシンク(不沈)の興隆から荒廃までを描いた作品。
195...続きを読む0年台に子供が行方不明となり、どうやらその後もホテル周辺で度々子供が行方不明になる、みたいなのだが、その辺りは深く描かれない。ミステリ色は弱め。

ある章の中心だったホテル関係者のことが、別の人物の視点の章でも描かれており、あの後、こういう人生を歩んだんだなぁとわかる仕掛け。何人か繰り返し中心となるため総勢10名ほどの視点か。

最後に犯人はわかるのだが、おまけというか、メインはそこではなく。ホテルの凋落、お祭りの後やパーティーの後のような侘しさが描かれた作品。
良かった。

ちょっと久しぶりにポケミスに手を出してしまいました笑(待ってても文庫落ちしない作品も多いので。。。)

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Posted by ブクログ 2021年01月22日

ある一家が始めたホテルが大きくなり堕ちていくまでの約70年を描いた連作。ミステリー要素は少なめではあるけれど子供が行方不明になる事件が起きてからはそれぞれの語りの中にも不気味な空気が少しずつ入ってくる。ホテルに関わる人たちの生活や人となりがとても味わい深くそれだけでも楽しめる。次第に明かされてくる長...続きを読む年隠されてきたもの。たくさんの人物によって展開される物語はとても贅沢に思える作品になっている。

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Posted by ブクログ 2021年05月07日

とある実業家の道楽的思い入れにより改築に次ぐ改築が繰り返された広大な屋敷、フォーリーハウス。
財政難により競売にかけられた屋敷はユダヤ人シコルスキー一族に買い取られ『ホテルネヴァーシンク』として一時代の輝きを放つ。
半世紀に渡る隆興と凋落の裏にはシコルスキー一族の決して美しいばかりではない営みが息づ...続きを読むいている。

ホテルとしての絶頂期に起きたネヴァーシンクでの男児失踪事件の真相究明を細い軸にしながら、歴代の関係者の物語で各年代の場面を構成する形式。
必ずしも失踪事件の謎が前面にあるわけではなく、あくまでもネヴァーシンクを取り巻く歴史絵巻。
本筋とは関係のなさそうな挿話が、伏線かと思いきや本当に全く回収されないまま進んでいくことも。

多数の登場人物がゆる~く繋がりながらひとつの流れ作り出すまさに人生のような物語。

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Posted by ブクログ 2021年04月15日

 ロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズの初期作品の一つである『キャッツキルの鷲』というタイトルはなぜか忘れがたいものがある。さてそのキャッツキルという地名だが、「キル」は古いオランダ語で「川」の意味なのだそうだ。古いオランダ語。うーむ。

 ハドソン川に沿ったいくつかの土地の名には「キル」が...続きを読む付いてるらしい。この作品の直後にぼくが読むことになるアリソン・ゲイリン著『もし今夜ぼくが死んだら、』の舞台が、実はニューヨークに注ぐハドソン川流域の架空の町ヘヴンキルなのである。「キル」の意味を教えてくれたのはそちらの翻訳を担当している奥村章子さんで、彼女が巻末解説でそのことを教えてくれたのだ。これもまた読書の順番という偶然。

 ハドソン川流域キャッツキルには、実際に1986年まで、この小説のモデルとなる巨大リゾートホテルが存在していたらしい。本書の作者は、この巨大施設を舞台に、何人も少年が消えているというミステリーを構築する。それも様々なスパイスを加えた連作短編集という表現形式で、半世紀を越えるスケールの大きな物語を作り出した。

 本書は、章ごとに主人公を変え、一人称あり、三人称あり、でそれぞれの異なる物語を語らせる。1950年に始まり、2012年にすべてにけりをつけて閉じる壮大なる物語。意外なのは、この作品が2020年度エドガー賞最優秀ペーパーバック賞受賞作品であること。賞の受賞そのものが意外なのではなく、こんなに壮大なスケールの物語なのにペーパーバック賞であるというところが意外なのだ。

 蛇足かもしれないが、「キル」を教えてくれた前述の『もし今夜ぼくが死んだら、』も前年の2019年に同じペーパーバック賞を受賞。これも我が読書順のある意味偶然。何か、運命というようなものがあるのだろうか?

 壮大とは言ったが、誰にとっても親しみやすい短めの物語の蓄積によって織り成されるがゆえに、読者を選ばない親しみやすい作品と言えるのかもしれない。ペーパーバックというフレンドリーな賞の対象となったのはそこなのかもしれない。

 ポーランド出身のユダヤ人一族が、ナチスドイツの迫害下、飢餓に苦しむ生活から逃れ、アメリカ大陸へ移住し、彼らなりの新世界を切り拓いてゆく家族史を主軸に、ホテル経営に関わる多種多様な登場人物のストーリーで時代と人々を積み重ねてゆく。

 不気味に少年を襲う黒い影、というミステリーを縫い込みつつ、ページは進む。次々と語り手が変わり、色合いを変えるゴシック模様のような斬新な物語。個性いっぱいのこの世界・この時代を、現代から振り返り、俯瞰し直すような楽しみが、本書の最大の魅力であろう。そんな個性的で新しみに満ちた本書の感触を是非味わって頂きたいと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年01月16日

キャッツキルが舞台と聞けば、スペンサーシリーズの『キャッツキルの鷲』のオールスター銃撃戦をすぐに思い出すがそれは置いといて…

青木純子さん訳ということで、ケイト・モートン作品ぽいものを予想していたが、少し軽い感じでとても読みやすい。

それほど長くはないのだが、時間を積み上げ、重要な登場人物も多く...続きを読む、視点も変わるので物語の厚みを感じた。特に最初の移民時代はわずか70年前。現代とこんなに近いのにこんなことがと驚く。


某所でたくさんオススメされていて面白いのは確かですが、ラストの曖昧さ、犯人の目星のつきやすさなど、文芸寄りかと。
結末をぼかすのは好きではないなぁ。

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Posted by ブクログ 2022年07月22日

20世紀前半、アメリカ。ポーランドから移住してきたユダヤ人一家が営むホテル〈ネヴァーシンク〉には、キャッツキル山地へ保養に来た家族連れが数多く訪れる。だが、創業者アッシャーの跡を継いだジーニーの時代に、宿泊客の息子がホテル内で行方不明になる事件が発生。捜査も虚しく少年は見つからなかったが、十数年後、...続きを読む今度はホテルの地下室で衰弱した少女が救出された。そして同時に、かつて行方不明になった少年の白骨死体も発見されたのだった。三代続く経営者一族、従業員、事件の被害者、それぞれの人生をオムニバス形式で追いながら、リゾートホテルの興亡を見届けるゴシック・ミステリー。


ミステリーの構造的には恩田陸の『ユージニア』に似ている。が、犯人探しが主軸というわけではなく、殺人事件はあくまでネヴァーシンクに落ちた影の一つであり、ホテルがやがて崩壊するきっかけという感じ。視点人物を移しながら語られる物語には、事件と直接関係ないエピソードも多い。
主役はホテルそのものと、それに執着するシコルスキー一家。少年殺しの真犯人とされる人も、個のキャラクターというより創業者の歪みを象徴する存在として書かれていると思う。だが、意外とこの一家はみんなまともで、期待したほど怪奇方向に流れていかないんだよなぁ……。建築としてのホテルの魅力を訴える描写があまりないのも残念だった。
一番印象に残ったのは、盗癖のある従業員とそれを目撃した女性客のエピソード。縦軸には全く関わらない話だけど、それだけに気持ち悪くも侘しくもある読後感が忘れられない。アリスがラリって竜巻に呑まれそうになる話や、地下鉄でのささやかな出会いが自殺願望をギリギリのところで取り払う話も、くっきりと絵が浮かんで映像的だった。アリスの成長譚部分がしっかりしていることで、全体の印象がグッと現代的になっていると思う。
逆にレナードは最後まで腹を括れず、狂気にも陥らず、惨めに年老いていくので読後はしょんぼりしてしまった。アリスとの対比になっているんだろうけど、この人、話の中心にいるわりに魅力に欠けるし(だから妻レイチェルの嘆きにリアリティがあるとも言える)、でも善良だから酷い目にあってほしくもないんだよね。キャラ造形含め、少し惜しい感じのする作品だった。

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Posted by ブクログ 2022年02月28日

子供たちの失踪とホテルの50年。
犯人探し、ではなく、ホテルを経営する一族や関係者たちの光と闇が描かれている。

登場人物が多いので、一覧表の確認は必須。
かなり早い段階で真相に気がつくので、ちょっと拍子抜けしてしまう…。どこかで似たような話を読んだ(見た?)ような…気がするのです。

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Posted by ブクログ 2021年10月08日

ニューヨーク郊外のリゾートホテルが舞台。その地で民宿から丘の上の大邸宅をホテルに変え、成功したユダヤ人一族。創業者と子どもたち、孫、古くからの従業員たちのそれぞれのストーリーを繋いでいく。ホテル開業後のある時、宿泊していた男の子が行方不明になった。同じ頃、ホテルの周辺でも子どもが行方不明になったが、...続きを読む犯人も子どもも見つからなかった。やがて、一族の子どもも行方不明になるが、ホテルの地下室で見つかり保護されたが、一緒に最初に行方不明になった男の子の遺体も見つかる。そこからホテルは少しづつ客が離れていく。
3代に渡る一族の物語の中から、ホテルの凋落とともに犯人が明かされる。

なかなかうまく出来たストーリーだった。閑話休題的な章もあり、飽きずに読ませてくれた。

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Posted by ブクログ 2021年04月10日

 2020年アメリカ探偵作家クラブ(通称、エドガー賞)ペーパーバック部門賞受賞作品です。

 ニューヨーク近郊の田舎町で、ホテル創業から四世代に亘る一族の登場人物がそれぞれのホテルの思い出や、自身の人生を語る構成です。事件は、少年が行方不明になり一族の少女の一人が監禁される。また、近くの町でも少年が...続きを読む行方不明になる。
ストーリーの大半は、一族や使用人の回想が続いてホテルを取り巻く歴史です。それなりに面白いですが、本来の少年行方不明事件の確信は、最後の二、三章辺りで、ミステリーの味わいは大変少ないです。

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Posted by ブクログ 2021年02月28日

70年近くに及ぶ一族の物語。ミステリー要素は少なく、ひたすら一族の様々な人が一人称の語り手になりリレーの様に時を戻して行く。文章ものめり込む様だが、私の好きなミステリーとは違った。

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