トニモリスンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読みながら不安定な気持ちになる。
トワイラとロバータ、どっちが白人? 黒人?
それは最後まで明かされない。
もちろんそれが著者の狙い。偏見を招く構造への疑問。
そして施設での彼女らより「下」の位置にいる、施設で働くマギーはたぶん障がい者。これもまた二項対立。
全編示唆的なストーリーで、メタファーかなと思わせる会話や表現が山盛りもり。
作品自体は短く、大きめの字で56ページ。
それとほぼ同量(以上?)のゼイディー・スミスによる序文「実はあの中にちゃんとした人間がいた」があって、内容的にネタバレになるので、作品の後に移されている。
これがまた深い考察で素晴らしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み応え抜群の小説。一行一行をじっくり味わいながら読み進めるにふさわしい作品である。
主人公は、奴隷として働かされていた農場から逃げ出してきた黒人たち。登場人物たちはそれぞれ、思い出したくない過去を抱えている。基本的には時系列で進むが、過去の出来事は彼らの回想の中で少しずつ明かされていく。
主な登場人物は、4人の子を産んだセサ、その末子デンヴァー、セサと同じ農場で働いていたポールD、すでに亡くなっているセサの義母ベビー・サッグス、そしてデンヴァーの姉であり幼くして命を落としたビラヴドである。ほかにも、セサの夫ハーレ、奴隷仲間のシックソウ、逃亡を助けたスタンプ・ペイドとエラといった印象的な人物が登場し、それぞれのエピソードが重く心に残る。
タイトルにもなっているビラヴドの死は、セサの過去に深く関わるある行動の結果であった。その過去の過酷さを物語るには十分すぎるほどの説得力がある。名付けたわけではなく墓石にそれしか彫れなかっただけなのだが、その子はちゃんと「愛されし者」と呼ばれるようになった。
物語の終盤、ビラヴドは再び姿を消す。しかし残されたデンヴァー、セサ、ポールDそれぞれに未来への希望が見え、救いのある結末を迎える。特にデンヴァーの成長が印象的だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ誰にも話せない(話したくない)過去を持つセサとポールD、母親への気持ちが絶えず変化するデンヴァー、謎の存在のビラヴド、全ての登場人物の心理描写がとても丁寧だった。
また、徐々に過去が明らかになっていく構成が見事で、とことん引き込まれてしまった。
奴隷制度を扱う作品はたくさんあるけど、本作を唯一無二にしているのは、やはりビラヴドの存在だろう。幽霊なのか、何者なのか?最後の最後まで読み応え抜群だった。
結局、誰しも過去を忘れることはできないけど、前を向いて生きていくしかない。そのためにも、まわりの人々と助け合っていく必要がある。
まだまだ黒人差別が残るアメリカにおいて、もっと多くの人が本作を読んで、あらためて自国の歴史について再考すべきだ。
セサがどんどんビラヴドに沼っていき、生活がめちゃくちゃになっていく様の描き方もとてもリアルだった。その後の、デンヴァーが母親への愛を取り戻して、地域社会との連帯を強めていく描写にとても感動した。そして、最後のセサとポールDのやりとりは、本当に泣きそうになった。
最後はあえて、「これは人から人へ伝える物語ではないのだ。」と訳されており、物語の凄惨さを際立たせている。もちろん、僕たちはこの歴史を語り継いでいかないといけないのだが。
アメリカの奴隷制度を題材にした様々な作品を読んできたが、ここまで文学的な美しさを備えている作品は初めてかも。個人的には最高傑作。
随所にトニ・モリスンの思いやメッセージが散りばめられており、胸を打たれた。
作品全体の構成・文体・情景描写・翻訳も非の打ち所がなく、文句なしに黒人文学の最高到達点といえるだろう。 -
Posted by ブクログ
そうか、わたしはアフリカ系の人が書いた本を読んだことがないんだ。
いままで意識していなかったけど、本書を読み進めるうちに気がついた。
「奴隷たちの心や想像力や振る舞いに目を向ける学問には価値がある。けれども、主人たちの心や想像力や振る舞いに人種のイデオロギーがどんな影響を与えたかを見ようとする本気の知的努力にも、同様に価値がある。」
モリスンは「白人男性至上主義」「進歩史観による人種主義」これらで構築された、普遍的な価値が評価する、アメリカ文学を「黒人奴隷が白人アイデンティティに与えた影響」として、ヘミングウェイやハックルベリーフィンの冒険を例に具体的に考察している。
黒人たちは、強制的にアフリカから連れてこられたにもかかわらず、白人の自己保身のために動物的な階級へ格下げされ、人間的な意思疎通の可能性を閉ざされ、呪物化されて恐れられ、白人たちの醜さを投影され、貶められた。
当事者側からなされたこうした指摘や考察は、今後あらゆる分野で必要になってくることだろう。
ジェンダー、フェミニズム、貧困格差。
当事者の視点を受け入れなければ、それはいつまでも前時代的な何かのまま、止まってしまう。
本書を読んでいる最中、偶然、日本の音楽グループがMVでコロンブスとナポレオンとベートーヴェンに扮して、新大陸発見と類人猿との踊りを演出し、炎上したというニュースがあった。
知らないということがどういうことなのか。
それを改めて知る良い機会となった。 -
Posted by ブクログ
女性ノーベル賞作家の四作目。
白人の庇護を受けて育った娘と、黒人だけに囲まれて育った青年。男女の心の葛藤が良く表現されている恋物語…などという単純なものではなかったです。
文化的に異なる環境で育ったが故に、娘は相手を辛辣な言葉で非難したり蔑んだりしてしまいます。相手にも育ってきた環境や世界観があるなかで、白人世界で育ってきた価値観を振りかざし、ただ自分に迎合させようとするのは、いかがなものかと考えてしまう。そういった相手を尊重しない文化的な軋轢を男女関係を使ってよく表していると思います。しかも、それを白人と黒人ではなく、黒人同士で描き切っているのですから。
ただ、この小説は読書初心者や海外文学に不慣れな人は、読まない方がいいでしょう。いきなり人名が出てきて「この人誰?」となったり、延々と名前のわからない誰のことを言っているのだろうと思っていると、100ページ近くも読み進めてから、やっとその人の人名が書かれていたりします。集中して読書に没頭する時間が確保できないと、頭が浦島さんになってしまうかもしれません。エンディングもはっきりしないので、その辺りが気になる人には向かないかもしれないですね。
自分は、ハッとするような言葉もあり、読んで良かったと思っていますが、540ページもある本なので、注意点として書き記して置きます。