トニモリスンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ読み応え抜群の小説。一行一行をじっくり味わいながら読み進めるにふさわしい作品である。
主人公は、奴隷として働かされていた農場から逃げ出してきた黒人たち。登場人物たちはそれぞれ、思い出したくない過去を抱えている。基本的には時系列で進むが、過去の出来事は彼らの回想の中で少しずつ明かされていく。
主な登場人物は、4人の子を産んだセサ、その末子デンヴァー、セサと同じ農場で働いていたポールD、すでに亡くなっているセサの義母ベビー・サッグス、そしてデンヴァーの姉であり幼くして命を落としたビラヴドである。ほかにも、セサの夫ハーレ、奴隷仲間のシックソウ、逃亡を助けたスタンプ・ペイドとエラといった印象的な人物 -
Posted by ブクログ
ネタバレ誰にも話せない(話したくない)過去を持つセサとポールD、母親への気持ちが絶えず変化するデンヴァー、謎の存在のビラヴド、全ての登場人物の心理描写がとても丁寧だった。
また、徐々に過去が明らかになっていく構成が見事で、とことん引き込まれてしまった。
奴隷制度を扱う作品はたくさんあるけど、本作を唯一無二にしているのは、やはりビラヴドの存在だろう。幽霊なのか、何者なのか?最後の最後まで読み応え抜群だった。
結局、誰しも過去を忘れることはできないけど、前を向いて生きていくしかない。そのためにも、まわりの人々と助け合っていく必要がある。
まだまだ黒人差別が残るアメリカにおいて、もっと多くの人が本作を読ん -
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母に従うがまま少年期までその乳を吸っていたことからミルクマンと渾名された男が辿る自らのルーツ。著者の持ち味たる物語の豊かさと抜群の構成力が静かな感動を呼ぶ。個性的な登場人物も魅力。今後何度となく目を通すであろう一篇
些か残念に思えたのは、メイコンとルース夫婦の確執やコリンシアンズとポーターの身分違いの恋愛、それにギターたち七人組による白人処刑などのサイドストーリーが何れも消化不良気味で終わった点か
本作中で言及された白人女性に口笛を吹いたために惨殺されたエメット・ティルに関する件はウーピー・ゴールドバーグ製作で映画化されており機会があればぜひ鑑賞したい(余談ながら私個人のパイロットのイメー -
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そうか、わたしはアフリカ系の人が書いた本を読んだことがないんだ。
いままで意識していなかったけど、本書を読み進めるうちに気がついた。
「奴隷たちの心や想像力や振る舞いに目を向ける学問には価値がある。けれども、主人たちの心や想像力や振る舞いに人種のイデオロギーがどんな影響を与えたかを見ようとする本気の知的努力にも、同様に価値がある。」
モリスンは「白人男性至上主義」「進歩史観による人種主義」これらで構築された、普遍的な価値が評価する、アメリカ文学を「黒人奴隷が白人アイデンティティに与えた影響」として、ヘミングウェイやハックルベリーフィンの冒険を例に具体的に考察している。
黒人たちは、強制的 -
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フォークナーの「アブサロム アブサロム!」を読み、彼を敬愛し、習った作家群にいるトニ、モリスンを久しぶりに手に取りたくなった。
そこで「ビラヴド」「青い眼が欲しい」を立て続けに・・たまたま 返却に行った際、返却棚にあったこれをチョイス。
薄いと思った私を小ばかにされそうなほどの難解さ。
読み下すのに呻吟・・まさにそういった大学の講義を聴いている感覚に浸った。
皆さんが書いてあるように、解説で目から鱗。
真っ暗悩みを手探りで歩いた後、フットライトを受け取り、周囲の景色が見渡せた想い。
モリスンの聡明さは、思っていた以上で素晴らしい。
100年経ても生き残る存在に挙げられると思える。
無知 -
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女性ノーベル賞作家の四作目。
白人の庇護を受けて育った娘と、黒人だけに囲まれて育った青年。男女の心の葛藤が良く表現されている恋物語…などという単純なものではなかったです。
文化的に異なる環境で育ったが故に、娘は相手を辛辣な言葉で非難したり蔑んだりしてしまいます。相手にも育ってきた環境や世界観があるなかで、白人世界で育ってきた価値観を振りかざし、ただ自分に迎合させようとするのは、いかがなものかと考えてしまう。そういった相手を尊重しない文化的な軋轢を男女関係を使ってよく表していると思います。しかも、それを白人と黒人ではなく、黒人同士で描き切っているのですから。
ただ、この小説は読書初心者や海外 -
Posted by ブクログ
1941年のオハイオで、黒人の少女ピコーラは「青い眼にしてください」と熱心に祈っていた。黒い肌で縮れ毛の自分は醜い。美しかったら、不幸な人生は違っていたに違いないのだ。ピコーラは貧しく、学校ではいじめられ、父親の子どもを宿すことになる。
語り部を担当する少女がいるにはいるが、物語はあちこちに飛び、何の話だか分からなくなる。これには著者の狙いがあり、読者が「責任を顧みることをせず、彼女を憐れんでしまうというという気楽な解決のほうへ」流されないよう、読者自身が語りを再構成するようにしむけたかららしい。
この手法のせいかは分からないが、確かに「ピコーラがかわいそう」「父親や白人が悪い」で済ませ