【感想・ネタバレ】ビラヴドのレビュー

あらすじ

元奴隷のセサとその娘は幽霊屋敷に暮らしていた。怒れる霊に長年蹂躙されてきたが、セサはそれが彼女の死んだ赤ん坊の復讐と信じ耐え続けた。やがて、知人が幽霊を追い払い、屋敷に平穏が訪れたかに見えた。しかし、謎の若い女「ビラヴド」の到来が、再び母娘を狂気の日々に追い込む。死んだ赤ん坊の墓碑銘と同じ名を名乗るこの女は、一体何者なのか?ノーベル賞受賞の契機となった著者の代表作。ピュリッツアー賞受賞。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

シーンの切り替わりが多く、読みにくい部分はあるが、後半は流れるように読める。

過去を背負いながら、これからをどのように生きるのか。過去との繋がり、現在の繋がり、その結節点にいることを強く感じた。

アメリカの歴史に興味を持つきっかけになった

0
2025年08月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

読み応え抜群の小説。一行一行をじっくり味わいながら読み進めるにふさわしい作品である。
主人公は、奴隷として働かされていた農場から逃げ出してきた黒人たち。登場人物たちはそれぞれ、思い出したくない過去を抱えている。基本的には時系列で進むが、過去の出来事は彼らの回想の中で少しずつ明かされていく。

主な登場人物は、4人の子を産んだセサ、その末子デンヴァー、セサと同じ農場で働いていたポールD、すでに亡くなっているセサの義母ベビー・サッグス、そしてデンヴァーの姉であり幼くして命を落としたビラヴドである。ほかにも、セサの夫ハーレ、奴隷仲間のシックソウ、逃亡を助けたスタンプ・ペイドとエラといった印象的な人物が登場し、それぞれのエピソードが重く心に残る。

タイトルにもなっているビラヴドの死は、セサの過去に深く関わるある行動の結果であった。その過去の過酷さを物語るには十分すぎるほどの説得力がある。名付けたわけではなく墓石にそれしか彫れなかっただけなのだが、その子はちゃんと「愛されし者」と呼ばれるようになった。

物語の終盤、ビラヴドは再び姿を消す。しかし残されたデンヴァー、セサ、ポールDそれぞれに未来への希望が見え、救いのある結末を迎える。特にデンヴァーの成長が印象的だった。

0
2025年08月16日

Posted by ブクログ

白人にとって、奴隷は人じゃない。資産であり、労働力であり、獣だったんだな。本当に怖いな。
読むのに時間がかかった。構成やキャラ設定の緻密さにびっくりする。小説として面白い。奴隷制やアメリカ文化に親しみがあればさらに面白いと思う。

0
2025年07月26日

Posted by ブクログ

読むのきっついなぁと思いながら読んでいると、後半にかけてバーっと視界がひらける。そりゃノーベル賞取るわ。ものすごい才能だね。

0
2025年07月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

誰にも話せない(話したくない)過去を持つセサとポールD、母親への気持ちが絶えず変化するデンヴァー、謎の存在のビラヴド、全ての登場人物の心理描写がとても丁寧だった。
また、徐々に過去が明らかになっていく構成が見事で、とことん引き込まれてしまった。
奴隷制度を扱う作品はたくさんあるけど、本作を唯一無二にしているのは、やはりビラヴドの存在だろう。幽霊なのか、何者なのか?最後の最後まで読み応え抜群だった。

結局、誰しも過去を忘れることはできないけど、前を向いて生きていくしかない。そのためにも、まわりの人々と助け合っていく必要がある。
まだまだ黒人差別が残るアメリカにおいて、もっと多くの人が本作を読んで、あらためて自国の歴史について再考すべきだ。

セサがどんどんビラヴドに沼っていき、生活がめちゃくちゃになっていく様の描き方もとてもリアルだった。その後の、デンヴァーが母親への愛を取り戻して、地域社会との連帯を強めていく描写にとても感動した。そして、最後のセサとポールDのやりとりは、本当に泣きそうになった。

最後はあえて、「これは人から人へ伝える物語ではないのだ。」と訳されており、物語の凄惨さを際立たせている。もちろん、僕たちはこの歴史を語り継いでいかないといけないのだが。

アメリカの奴隷制度を題材にした様々な作品を読んできたが、ここまで文学的な美しさを備えている作品は初めてかも。個人的には最高傑作。
随所にトニ・モリスンの思いやメッセージが散りばめられており、胸を打たれた。
作品全体の構成・文体・情景描写・翻訳も非の打ち所がなく、文句なしに黒人文学の最高到達点といえるだろう。

0
2025年05月01日

Posted by ブクログ

奴隷制と云う忌まわしき差別を背景に描く愛と再生の物語。これはモリスンでなければ書けずまた彼女が書かなければならなかった小説。現在と過去が断片的に交錯する構成は見事だ。サブキャラに至るまで登場人物たちの個性が豊か。特に恋人との短い逢瀬のために往復34時間!の道程を歩き、自分の子を宿した彼女が奴隷主のもとから逃亡したことを思い笑いながら火炙りに処されるシックソウは少ない出番にも拘らず鮮烈な印象を残す。フォークナー「八月の光」と並び私の生涯ベストに挙げたい

0
2024年12月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

奴隷としての厳しい生活の過去、亡霊ビーラブドととの毎日、最後は社会へのつながりを持とうとする
デンヴァーを描く。とても長い物語だが読み切った。一回読んだだけではこれまた解読できない。

■第一部(〜P.336)
セサの母、ベビーサッグズの死、セサの息子二人は既に家出、かつて一緒に奴隷として働いていたポールDがある日18年ぶりに現れ同居することになる。
■第二部(〜P.477)
幼児の亡霊ビラブドととの絡み
■第三部
空腹の為、日々の暮らしが苦しくなる中、デンヴァーは、共同体に助けを求める。

0
2022年05月01日

Posted by ブクログ

読後しばらく放心。
マジックリアリズムをはらんだ世界観で描きあげる。
これは、この方法だったからこその迫力。奥行き。
アメリカという白人が跋扈する土地に染み込む名もなき黒人達の怨念、怨嗟。
その中で生をつなぐある家族の物語。
『地下鉄道』ともつながった。

0
2022年02月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

重いかもしれない。のっけからキツい展開が続く。けれど、物語の牽引力がものすごく強くて、ほとんど一気読みのようにして読み切った。
奴隷制の下では、愛することすら特権になってしまうというメッセージが突き刺さる。
自分の子どもも、伴侶も、友人も、自分の過去も、自分自身の体も、自分の置かれた世界の風景さえも、何もかも愛しすぎないことでしか生き延びられない世界。それが、人間としての尊厳を奪われ、奴隷という動物に堕とされた過去をもつ人々が生きる世界なのだ、ということなんだろうか。
白人の魔の手から子どもを守るには、子どもを殺すしかない世界って……しかも、実話に基づいて構成されているって……(けど、近いことが第二次世界大戦中にもきっと起こってるはず。中国大陸とか南方戦線とか)

「ビラヴド」は最後、また姿を消してしまうけれど、解説によればあれは奴隷船の船底で名前も知られず死んでいった何万人もの黒人たちの怨念なのだという。とするならば、何度でも「ビラヴド」は現世に姿を現し続けなければならないのかもしれない。正視したら正気を保てないかもしれないけれど、忘れてしまうことの許されない記憶なのだから。
その意味で、「ビラヴド」は単に「愛された者」というよりは、「たしかにかつて愛された者ではあるが、今、そうであるとは限らない者」「人間として愛し、愛される存在であったにも関わらず、それを暴力的に奪われた者」、つまり、奴隷制によって人間性を徹底的に踏み躙られた人々と、その過去を引き継ぐ人たちのことなのだと思った。

「BLACK LIVES MATTER 」の流れで読み進めてしまったけれど、それが正解なのか分からない。ただ、物語の締めくくりに「これは人から人へ伝える物語ではないのだ。」とあることに、忘れたいけど忘れてはいけない、けれど思い出したくもない記憶なのだ、という切実な思いを感じる。それを知らずにこの運動に加担しても上滑りになるのだろうな、とは思った。
そして、アメリカにおける奴隷制の悲惨、という特殊な文脈に嵌め込まずに、母娘の物語として見返してみると、ゾッとするほどのリアリティを感じた。「あなたは私のもの」「おまえは私のもの」という母娘の互いへの執着が、エコーチェンバー現象を起こして互いを狂わせて社会との断絶を招く様子は、日本の親子関係では見慣れた風景かも……

0
2021年12月01日

Posted by ブクログ

これはすごかった。一文一文が読み流せない濃密さで、読むのに時間と体力が必要だった。私にとってこれまでで今年一番の作品かもしれない。なんかもう下手な感想書けません。母親の愛の裏表が濃密に刻まれていて、重く苦しいのに素晴らしすぎる。人種差別は、極端に聞こえるかもしれないけれど、これまで読んだ人種差別の物語のいくつかが、甘やかなロマンに仕立て直されていたのかと思わされるほど苛烈な物語だった。命の帰るところと生まれ来るところの闇。
あとがきにあるように、「見つめたくない、知りたくない、伝えたくない」と、「見つめなければならない、知らなければならない、伝えなければならない」のリフレイン。フラナガン「奥のほそ道」を読んだ時を思い出した。
母乳も血から作られるんだよな、と思ったり。

これ絶版になっているけど、モリスンを悼んでぜひとも重版をお願いしたい。

0
2019年08月24日

Posted by ブクログ

黒人女性初のノーベル文学賞を受賞し、ピュリッツァー賞も受賞しているトニ・モリスン氏の代表作。
ここに描かれるのは奴隷制度時代の黒人たちの過酷な環境とそれを端とした母娘の壮絶な過去の出来事。表題「beloved(最愛の)」は逆説的であり、視点や時制を目まぐるしく切り替えながら語る物語は敢えて読者を混乱させ、その混乱は奴隷たちの記憶錯誤であり、自己の存在意義への投げかけにも通じる。本作品の根底には愛とアイデンティティがあり、モノや動物と同等の扱いを受けた彼彼女らの尊厳と平等の再生の物語である。
本書の訳者吉田氏のあとがきが大変よく、作品の理解を深めるため、モリスン氏への的確なインタビューを積極的に試みている。そのなかで、作中レフレインする「pass on」という言葉には「伝える」と「無視する/忘れる」の相反する意味が取り上げてれている。奴隷制度という失策に対して黒人の立場で、当事者としての忘れたい過去、継承者としての伝えるべき過去、両面の矛盾する、しかし両生する複雑な想いを言い表している言葉だと感じる。

0
2025年08月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

黒人奴隷の物語と聞いて想像したよりもずっと濃い生命と感情が渦巻き、押し寄せ、翻弄されるような読み心地。知識として知っている悲惨さを、そういうことじゃないんだと思い知らされる。
波動が激しすぎてクライマックス?は精読できなかった。作者の意図を完全に理解できたわけではないと思う。それにしても、情念に圧倒されるような物語であった。
全編がスピリチュアル設定を前提にしているけれども、事実とそこから沸き立つ心情をリアルに描き、この人々にはスピリチュアルも一体の現実なのだと思う。

0
2025年03月10日

Posted by ブクログ

 語りたいと思いながらも同時に思い出したくない出来事。そのような経験をした者の右往左往する心情がとても丁寧に描かれていた。いざ語りを始めるとあるところまでは語ることができる。その場では語ることができた満足感を得るが、いざ夜に1人になってみた時、得体の知れない化け物が人々を襲う。  

 本作では回想が多く挿入されているが(それが大部分であり重要であるのだが)、その回想は積極的に語ろうとするものと、ふと嫌な記憶を思い出してしまう2点があるように思われた。

 形式が断片的な語りであるため、ストーリーを追うのが割と大変だった。

0
2024年03月16日

Posted by ブクログ

アフリカ系アメリカ人作者による小説。
幽霊屋敷に住む母娘のもとに、昔の農場で同僚だった男、次いでビラヴドという娘が訪ねてきて、各人の過去の事情が徐々に明らかになっていく。
面白いけど、エピソードが重たい。

0
2022年04月09日

Posted by ブクログ

突発的に米国や欧州の文芸作品を読みたくなります。選択を誤ると途中放棄しちゃうことが多いんですが(苦笑)

非常に重厚な物語でした。
読み進めるのは 独特の修辞法や暗喩があって、正直ちょっとつらいところもあったですが、耐えながら進めて行くうちに様々な想念とかイメージが出来上がっていき、読み終わる頃には、筆者の作り上げた世界/メッセージが染み入る、そんな小説でした。

読み終わってから知りましたが、ノーベル文学賞を受賞していますね。他の作品も時々読んでみよう、、

0
2012年11月25日

Posted by ブクログ

自我を殺して生きるしかなかった人々の、心の葛藤や荒廃のすさまじさ、
辛うじて再生することができた人々の、苦悩の深さ。
人間性を育むのも壊すのも人であり、自由と権利がいかに大切かということ。
一方で、どんなに過酷な時代にも、かすかな希望は芽生え
その種もまた人であるということ。

0
2011年12月23日

Posted by ブクログ

自分を所有することを諦め、愛し感じ考えることを手放し、人間性を放棄した男性。自我を殺され、愛する子を護るため世界を抹消しようとした女性。
それぞれが誰かに助けられ、思い出すだけで胸が潰れてしまうほど忌まわしい過去を話せる相手、自分の身体がバラバラにならないよう繋ぎ止めてくれる誰かと、また生きる希望をみいだす。
それでも、過去は消えない。どうにもならない人生への慟哭や助けられなかったことへの懺悔。もっと愛したかった、もっと愛されたかった、もっと人生を愛したかった熱望は、時空をもこえて響いてくる。とても苦しい話だった。
語れない、語りたくないなかで、過去と現在を視覚的にも行き来しながら少しずつ全貌がみえてくる。行間の表現や隠喩もあり、とてもリアルな中にファンタジー要素もあり、読み進めるのが難しい箇所もあった。作者が意図することをしっかり受け止められたか、不安は残る。

0
2024年02月27日

「小説」ランキング