トニモリスンのレビュー一覧

  • 青い眼がほしい

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    筆者に初めて触れたのは「ホーム」を読んだ時。朝鮮戦争から戻った兄妹の無残な、救いのない話。あたかも御須メルを文でなぞるような癒しと救いの魂を感じた。

    先日フォークナーを久しぶりに読み、難解で捉えようのなかった偉大なノーベル賞作家に再度くらいついてみる気になったから。
    読むという行為は「単に頁を捲り、その世界に触れる」だけでは無謀で、入念な下調べとプロット研究、筆者の成育、生活歴、家柄を知って・・成って行くと私には初めての足踏みをしつつかかる。
    そこに浮き上がってきた、トニ・モリスン・・フォークナーと同じ、ノーベル賞作家、しかも扱うテーマが人種差別。

    何も知識がなかったら、やはり食いつき辛か

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    2024年01月22日
  • 暗闇に戯れて 白さと文学的想像力

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    ネタバレ

    大学の講義を元にしたもの。なので専門的で分かりにくい。だが言わんとするところは今となっては当然と思われること、アメリカの移住者の自由のために黒人は作られたのだ。
    訳者の解説が丁寧でかなり理解の助けになった。

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    2023年11月28日
  • スーラ

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     トニ・モリスンは非常に読みにくい。主語と述語がかみ合っていなかったり、目的語がなかったりで意味がとれないところも少なくない。ストーリーも追いづらい。それなのに、読む者の胸に何かを残すことができる。一流の作家だと思う。読後感はジブリ映画を見た後に近いものがある。

     スーラは常人の社会規範とはズレた感覚の持ち主である。友人を守るため、自分の指を切り落とすことも辞さない一方、友人の夫を寝取ることも厭わない。スーラが老いた祖母を追い出し、奔放に振舞うのを見ると、町の住人は急に自分の不道徳を顧みて良識を持つようになる。自分はスーラ的ではないと証明するように。

     スーラは自分の思い通りに振舞っている

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    2023年08月06日
  • 青い眼がほしい

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    白人思想に覆われた日常に、白い肌や青い眼であれば自分も自分として愛されるのか?という黒人少女の純粋で真っ当で身を切るような願い。
    自分たちが劣っているとされる、値打ちがないとされるとしても、同じ黒人のモーリーンは「かわいい」。彼女を美しくしているものを憎むべきだ、という観察眼の鮮やかな切れ味が随所に描かれ、堪能した。現実の根深さに心をえぐるような小説だけど、決して読むのを諦めたくなるようなものではなかった。
    日を跨いで読むよりも一気に読むのがおすすめです。

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    2022年12月09日
  • タール・ベイビー

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    ネタバレ

    そもそも恋愛とは、異文化のすり合わせとも言える。
    生まれた場所も価値観も、培ってきたものも異なる2人が出会い、それをすり合わせる。互いの文化を受け入れてより良い関係になっていくか、それとも受け入れられずに別の道を行くことになるか。それは国や肌の色が同じだろうが違っていようが、必ず起こってくる。
    しかし、白人の富豪の庇護のもとソルボンヌ大を卒業してモデルをしている娘ジャディーンと、黒人だけの小さな町で育ったサンとの文化の違いは、乗り越えることが出来るのだろうか。

    帯の「別世界で育った男女の、激しい恋のゆくえ」というフレーズに誘われて読むと、手痛いしっぺ返しをくらう。激しく燃える甘々の恋愛小説を

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    2022年11月19日
  • 青い眼がほしい

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    西加奈子がどこかで激推ししていた本作。
    冒頭の「秘密にしていたけれど、1941年の秋、マリゴールドはぜんぜん咲かなかった。」の文を読んで稲妻が走ったと話していたが本当に吸い込まれるような冒頭。
    黒人の被差別、黒人間の差別については描き方や起きている現象は全く違うが映画グリーンブックと似たテーマだなと感じた。黒人だからと言って、一枚岩なわけではなくむしろ、黒人にも白人にも除け者にされる人生。原題のthe bluest eyesを「青い眼がほしい」と訳したセンスには脱帽。
    個人的には色や温度の感覚を伝える描写が美しくて好きだ。
    「だから、チョリーがやってきて、わたしの足をくすぐったとき、それはちょ

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    2022年07月29日
  • ビラヴド

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    アフリカ系アメリカ人作者による小説。
    幽霊屋敷に住む母娘のもとに、昔の農場で同僚だった男、次いでビラヴドという娘が訪ねてきて、各人の過去の事情が徐々に明らかになっていく。
    面白いけど、エピソードが重たい。

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    2022年04月09日
  • 青い眼がほしい

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    文体は比喩が長く、読みにくさがあるが、わたしたちの固定観念を見事に払いのける強さがある。
    淡々と語られる日常は、祖先から受け継ぐ圧倒的な強さに基づく諦念を浮き彫りにする。

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    2022年04月07日
  • 青い眼がほしい

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    「秘密にしていたけれど、一九四一年の秋、マリーゴールドはぜんぜん咲かなかった。あのとき、わたしたちは、マリーゴールドが育たないのはピコーラが父親の赤ん坊を宿していたからだと考えていた。」

    最初の章のこの冒頭からもう心を鷲づかみ。トニ・モリスンの文章は歌うような美しさがあります。

    青い眼がほしいと祈る黒人の少女ピコーラ。黒い肌に青い眼、それが美しいと思ってしまうピコーラ。彼女がかわいいと思うのはシャーリー・テンプルのような少女。

    たいして語り手であるクローディアは、大人たちがくれた白い肌、金髪で青い眼のベビードールをばらばらにこわす。
    (黒人の女の子に金髪で青い眼の人形をあげるってよ

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    2022年03月09日
  • 青い眼がほしい

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    ネタバレ

    著者の作品はこれで2冊目。
    これYAにあったけどYAは不相応。
    なぜならば性的表現がきついのと
    ライトに収めているけれども近親相●がでてきます。

    ただし、そこまで重いわけではないです。
    なぜならばあからさまに登場する人物を
    批判するわけではないから。

    主人公の子は黒人の子だったもの、
    ピコーラのようにはなりませんでした。
    それは不条理なことをする白人に怒り
    マウンティングする子たちにくみしないことから
    理解できることでしょう。

    でも、ピコーラはこれらの人種差別の
    犠牲者ともいえるのです。
    肌の色が批判対象でなければ…
    そしてその目すら…
    考えさせられることは多いはずです。

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    2020年12月19日
  • 青い眼がほしい

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    変わった構成を持つ小説。

    1941年、オハイオ。
    太平洋戦争に参戦し、アメリカ社会も高揚する頃。
    恵まれない家庭環境で育つピコーラが、父に犯された上、心が壊れてしまうという悲劇を描く。

    黒人社会の中で、ピコーラのように、より「醜い」とされる者と、そうでない者とに分かれる。
    人種への蔑視が内面化されている。
    (そして、それは私たちにも身に覚えのある感覚だ。)
    追い詰められていく中、「青い眼が欲しい」と願い続けるピコーラの姿は痛ましい。

    最初、近所の少女、クローディアを通して、ピコーラたち、ブリードラヴ家のことが語られる。
    しかし、視点はやがて母ポーリーン、父チョリーに移り、彼らがどんな関係

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    2020年12月02日
  • 青い眼がほしい

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    アメリカにおける白人から虐げられる黒人の生活及び黒人同士のヒエラルキーによる差別も書かれていて、物語の多くの部分の語り手は、まだ未熟な少女なので余計に人間の生々しさが際立つ。
    ピコーラがなぜ青い目を欲しがったのかはよくわからなかった。

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    2020年11月07日
  • 青い眼がほしい

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     ノンジャンルと言える長寿本の一つに珍しく手を出してみた。ノーベル賞作家トニ・モリスンのデビュー作であり、1970年に生み出されたものの、広く世界で読まれるようになったのは四半世紀という時間を要したそうである。

     この作品は、あらゆる意味で人間を比べてみることの愚かさと、その中で犠牲になってゆく心の痛みへの深い理解を、地道に、日常の言葉で綴ったものである。主たる視点は少女のものだが、時に他の三人称視点を使って挿入される作中作のような物語が、かしこに散りばめられている。

     世界の歪みを、多角的な視点で捉えつつ、様々な区別や差別が人間に対してなされてゆく行為や、無意識という水底に沈殿してきた最

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    2020年11月02日
  • 青い眼がほしい

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    ネタバレ

    ピコーラの少女時代は痛ましい。やりきれない気持ちになるが、周りの人間も皆やりきれない何かを持ってる。人種に関係なくこういう環境はあると想像できる分、他人事ではない気持ちになる。それでも時代は1962年。63年がキング牧師のワシントン大行進という大変革の真っただ中に書かれた作品。刷り込まれた価値観とひとりの少女。簡単に感想を持ってはいけないような気がするほど考えさせられる。多くの人に読み継がれていってほしい。

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    2020年10月12日
  • 青い眼がほしい

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    読書会課題本。救いのない話で読後感はあまり良くない。しかし「人種差別」だけでなく広い意味での「差別」に目を向けさせてくれる内容で非常に興味深い一冊だった。これがノーベル賞作家のデビュー作という事実に驚愕する。

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    2020年08月13日
  • ソロモンの歌

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    読み応えのある、そして奥行きの深い作品。初読なので近いうちに再読したいとおもわせる。
    単純な差別的な構図ではなく、淡々と当時の黒人が置かれた状況を述べている。主人公の祖父がどのようにして名前を決められたかが描いてあるところは、リアリティを感じる。ただ自分の理解が及ばない箇所があるのでもう一度読みたい作品。

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    2019年09月04日
  • ソロモンの歌

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    とある事情から‘ミルクマン’と呼ばれるメイコンデッドjr。
    父、母、叔母、いとこ・・・
    さまざまな人間関係のもつれをたどるべく旅に出る・・・

    ブラックアメリカン、北部と南部。さまざまな要素が絡み合う物語。
    その中でも名前は重要な要素として触れられる。
    両親から授けられた名前、白人につけられた名前、他人から呼ばれるあだ名、正式の名前ではない地名・・・
    すべてに意味があり、その意味の裏にはアイデンティティやルーツにかかわる忘れてはならないものがあるということ。

    600ページを越える大作ですが、ひとたびページを開けばブラックアメリカンの世界をめぐる素晴らしい読書体験が待っています。

    ちなみにラ

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    2013年03月06日
  • スーラ

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    土埃舞う黒人の少女たちの友情。
    大人になることでのそれぞれの歩みと生まれる軋轢。

    力強くも最後に感じる寂しさと人間の優しさ。

    フォークナーの香り。

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    2013年01月16日
  • ビラヴド

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    突発的に米国や欧州の文芸作品を読みたくなります。選択を誤ると途中放棄しちゃうことが多いんですが(苦笑)

    非常に重厚な物語でした。
    読み進めるのは 独特の修辞法や暗喩があって、正直ちょっとつらいところもあったですが、耐えながら進めて行くうちに様々な想念とかイメージが出来上がっていき、読み終わる頃には、筆者の作り上げた世界/メッセージが染み入る、そんな小説でした。

    読み終わってから知りましたが、ノーベル文学賞を受賞していますね。他の作品も時々読んでみよう、、

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    2012年11月25日
  • スーラ

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    トニ・モリスンを読むといつも凄い、と圧倒されるんだけれど、どうしてもしっくりこない。
    内容がではなくて、書き方が。
    「ビラヴド」「青い眼がほしい」も読んだのだけど、そのときもそう思ってしまった。
    アメリカ黒人の社会、歴史人間をこれほど描ける人は他にいないと思うのだが、感心はするが夢中にはなれない。
    相性が悪いのかな。

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    2012年07月09日