トニモリスンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ノンジャンルと言える長寿本の一つに珍しく手を出してみた。ノーベル賞作家トニ・モリスンのデビュー作であり、1970年に生み出されたものの、広く世界で読まれるようになったのは四半世紀という時間を要したそうである。
この作品は、あらゆる意味で人間を比べてみることの愚かさと、その中で犠牲になってゆく心の痛みへの深い理解を、地道に、日常の言葉で綴ったものである。主たる視点は少女のものだが、時に他の三人称視点を使って挿入される作中作のような物語が、かしこに散りばめられている。
世界の歪みを、多角的な視点で捉えつつ、様々な区別や差別が人間に対してなされてゆく行為や、無意識という水底に沈殿してきた最大の罪のあり様を、作者は文章によって水面に浮上させてゆく。見た目の形としての差別。
人種差別、性差別、知的差別、肉体的差別。そのすべてを象徴するもののように、黒人少女ピコーラは周囲から捉えられており、その生を、語り手のクローディアは世界の歪みとして気づきつつ、なおかつ安全圏にいる自分の立場に揺れる。
恐ろしい時代。1941年の秋から翌年の夏への一年の季節。マリーゴールドが咲かなかったことから物語は始まる。大戦前の不穏なアメリカ。その時代の小さな村で、小さな女の子の身に何が起こったのか? 誰も耳を貸さなかったこの本は、1993年に作者がノーベル賞を手にした途端、日の目を見ることになる。1994年にトニ・モリスン・コレクションとして再版され、2000年にはこの文庫本のかたちとなった。
それを2020年に読んでいる自分がいる。TVではトランプとバイデンによる選挙の予想が報じられ、人種差別問題は、現代の南北戦争とまで呼ばれている今、本書は決して古い物語ではなく、連綿と続くアメリカという国、また遠い国の話というだけではなく、日本国内、身のまわりでも、当時同様の偏った精神性に身を委ねようという無思考な姿勢が問われてはいないだろうか。
今、この時代に、社会問題としてよりも、人間の在り方というような日常の視点からこの問題を抱え込んで頂きたいと、本書は万人に語りかけているように思う。 -
Posted by ブクログ
とある事情から‘ミルクマン’と呼ばれるメイコンデッドjr。
父、母、叔母、いとこ・・・
さまざまな人間関係のもつれをたどるべく旅に出る・・・
ブラックアメリカン、北部と南部。さまざまな要素が絡み合う物語。
その中でも名前は重要な要素として触れられる。
両親から授けられた名前、白人につけられた名前、他人から呼ばれるあだ名、正式の名前ではない地名・・・
すべてに意味があり、その意味の裏にはアイデンティティやルーツにかかわる忘れてはならないものがあるということ。
600ページを越える大作ですが、ひとたびページを開けばブラックアメリカンの世界をめぐる素晴らしい読書体験が待っています。
ちなみにラスト、私はギター派。
でもたぶんパイロットも満足していたゆえにそういう運命に行きついたのだと思う。 -
Posted by ブクログ
ノーベル賞作家のトニ・モリソン女史の作品で、オバマ大統領の愛読書。さらに、小説家西加奈子さんが多大な影響を受けた作品である(帯に書かれていた)。
黒人がまだ虐げられた存在であった頃のアメリカでの、「ミルクマン」という奇妙な(でもその渾名のルーツは、ちょっとグロテスクで、かなり切ない)ニックネームの男性が主人公。
守銭奴の父、無力な母、奇妙な叔母、社会的に危険な友人・・・様々な登場人物が物語に彩りを添える。
ストーリーの流れは決してスムーズではないのだが、この作家(あるいはこの作品)の持っているパワーでもってグイグイと読ませてくれる。
登場人物の中で、ミルクマンに恋い焦がれる女性、ヘイガーの言動がとても切なくて、哀しくて、そして美しいと思った。
この作家の他の作品、読んでみたいと思わせてくれる小説だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ何が書いてあるのかさっぱり分からんけど面白い!
でも時々、これは私も考えたことあるけどそのことやろかって分かる所もある
女たちは職を失うのを恐れているだけ
ほんそれ
沈黙が降りた。だが、ネルはその沈黙をみたす義務は感じなかった。
こうなりたいんよ
結局1人で生きてくことはできないんだよね
病気になった時は自分以外の連絡先を書かないといけない
それがなければ他人の手を借りないといけない
今までだって、自分1人で生きてきたと思ってるのよね
返さなければ、自分も1人で死ぬことになるよ、と自分に言い聞かせたい
訳者後書き読んでやっと話の意味が分かった!
こんな難しい話英語で読んで理解してなおかつそれを日本語で翻訳して日本人が理解できるようにするってえぐいな -
Posted by ブクログ
自分を所有することを諦め、愛し感じ考えることを手放し、人間性を放棄した男性。自我を殺され、愛する子を護るため世界を抹消しようとした女性。
それぞれが誰かに助けられ、思い出すだけで胸が潰れてしまうほど忌まわしい過去を話せる相手、自分の身体がバラバラにならないよう繋ぎ止めてくれる誰かと、また生きる希望をみいだす。
それでも、過去は消えない。どうにもならない人生への慟哭や助けられなかったことへの懺悔。もっと愛したかった、もっと愛されたかった、もっと人生を愛したかった熱望は、時空をもこえて響いてくる。とても苦しい話だった。
語れない、語りたくないなかで、過去と現在を視覚的にも行き来しながら少しずつ全貌がみえてくる。行間の表現や隠喩もあり、とてもリアルな中にファンタジー要素もあり、読み進めるのが難しい箇所もあった。作者が意図することをしっかり受け止められたか、不安は残る。 -
Posted by ブクログ
ノーベル賞作家ということもあり最後まで読んだが、よくわからない本だった。20世紀前半のミシガンに住むミルクマンと呼ばれる男は、家族にも友人にも恋人にも心が通わない。ある事件がきっかけで、自分の解放を求めて家族のルーツを探ってゆく。ペンシルヴェニア州ダンベルまで旅する。祖先を知る人々に接し、祖先について話を聞く。最後に、叔母のパイロットと一緒に、祖先であるソロモンが自分で飛んでアフリカに帰っていったという伝説の飛び場に出かける。そこで結末を迎える。20世紀前半のアメリカ黒人の生き方がリアルに描かれている。黒人のルーツを知らないと本の内容を理解できない本なのかもしれない。一方、死ぬことと生きることをテーマにしているようで、普遍的な面も感じられた。本の中に解答は明示されず、各人の思いに任せられた感が強い。