ユーザーレビュー ソロモンの歌 トニモリスン / 金田眞澄 長らく積んでいたが、モリスンを悼んで読んだ。もっと早く読めばよかった。肉体の生死とはべつの「生きること」とは何かを問うている物語のように読んだ。 父を崇めて父親が失ったものを埋めるために必死で金やステイタスを求めるメイコン、おなじく父親からうまく離れられなかった母ルースの元に生まれたミルクマンは黒...続きを読む人でありながら裕福であるために属するところがあやふやな主人公だ。叔母であるパイロット、友人のギター、愛人のヘイガーなど、周囲の人たちとの関わり方、遅かりし自立の旅。成長物語という事もできるかもしれない。 ミルクマンの青臭さや至らなさは、誰もが心の中に持っているもので、差別や社会的な不公正を扱いながらも、黒人の文学というよりは、人間の文学のように感じた。生きるために必要なのは、お金か、愛か、真の名前か。 パイロットがとにかく魅力的で、歌うことや飛べることの意味を考えた。正解や答えはないけど、そんな曖昧さもぎゅっと塊にしたような凄み。身体感覚。 とはいいつつ。普遍的な小説、だけども、差別や不公正のなかにある黒人にとっては、ミルクマンやパイロットの得た「飛ぶ感覚」って、もっと切実なものなのかもな、とも思う… Posted by ブクログ ソロモンの歌 トニモリスン / 金田眞澄 最近読んだ「青い眼がほしい」が良かったので、同じトニモリスン著のこの本を読むのも楽しみだった。とても読み応えのある本でした。ミルクマンと呼ばれる少年が成長し、ひょんなきっかけから自分のルーツを知っていく。当時のアメリカでアフリカンアメリカンたちがどんな生活をおくっていたのかも伝わってきて、その場にい...続きを読むる気分になるくらいストーリーに入り込めます。 この本オバマ前大統領が人生最高の書に挙げたそう。 Posted by ブクログ ソロモンの歌 トニモリスン / 金田眞澄 読み応えのある、そして奥行きの深い作品。初読なので近いうちに再読したいとおもわせる。 単純な差別的な構図ではなく、淡々と当時の黒人が置かれた状況を述べている。主人公の祖父がどのようにして名前を決められたかが描いてあるところは、リアリティを感じる。ただ自分の理解が及ばない箇所があるのでもう一度読みたい...続きを読む作品。 Posted by ブクログ ソロモンの歌 トニモリスン / 金田眞澄 とある事情から‘ミルクマン’と呼ばれるメイコンデッドjr。 父、母、叔母、いとこ・・・ さまざまな人間関係のもつれをたどるべく旅に出る・・・ ブラックアメリカン、北部と南部。さまざまな要素が絡み合う物語。 その中でも名前は重要な要素として触れられる。 両親から授けられた名前、白人につけられた名前、...続きを読む他人から呼ばれるあだ名、正式の名前ではない地名・・・ すべてに意味があり、その意味の裏にはアイデンティティやルーツにかかわる忘れてはならないものがあるということ。 600ページを越える大作ですが、ひとたびページを開けばブラックアメリカンの世界をめぐる素晴らしい読書体験が待っています。 ちなみにラスト、私はギター派。 でもたぶんパイロットも満足していたゆえにそういう運命に行きついたのだと思う。 Posted by ブクログ ソロモンの歌 トニモリスン / 金田眞澄 ノーベル賞作家のトニ・モリソン女史の作品で、オバマ大統領の愛読書。さらに、小説家西加奈子さんが多大な影響を受けた作品である(帯に書かれていた)。 黒人がまだ虐げられた存在であった頃のアメリカでの、「ミルクマン」という奇妙な(でもその渾名のルーツは、ちょっとグロテスクで、かなり切ない)ニックネームの...続きを読む男性が主人公。 守銭奴の父、無力な母、奇妙な叔母、社会的に危険な友人・・・様々な登場人物が物語に彩りを添える。 ストーリーの流れは決してスムーズではないのだが、この作家(あるいはこの作品)の持っているパワーでもってグイグイと読ませてくれる。 登場人物の中で、ミルクマンに恋い焦がれる女性、ヘイガーの言動がとても切なくて、哀しくて、そして美しいと思った。 この作家の他の作品、読んでみたいと思わせてくれる小説だった。 Posted by ブクログ 金田眞澄のレビューをもっと見る