トニモリスンのレビュー一覧
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オハイオ州の小さな町、メダリオンが舞台の物語、二部構成、主人公のスーラピース、ネルライトの友情を描く。第一部はネルが結婚する1927年まで、第二部はスーラがメダリオンに戻ってくる1937年から始まる。社会常識的な生き方をするネルと、自由奔放に生きるスーラの対照的な性格のもととなる母、祖母の背景を含め話は展開される。ネルの夫を寝取って、棄ててしまうことからスーラと疎遠になってしまうが、スーラが亡くなる間際ネルは最期に会いに行くが、お互いが理解し合えないまま家を出る。スーラの埋葬式の後、仲のよい友達だったことに気づき号泣する。登場人物が何をもたらしてるのか、また一読するだけでは解読できない深い後味
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ネタバレ重いかもしれない。のっけからキツい展開が続く。けれど、物語の牽引力がものすごく強くて、ほとんど一気読みのようにして読み切った。
奴隷制の下では、愛することすら特権になってしまうというメッセージが突き刺さる。
自分の子どもも、伴侶も、友人も、自分の過去も、自分自身の体も、自分の置かれた世界の風景さえも、何もかも愛しすぎないことでしか生き延びられない世界。それが、人間としての尊厳を奪われ、奴隷という動物に堕とされた過去をもつ人々が生きる世界なのだ、ということなんだろうか。
白人の魔の手から子どもを守るには、子どもを殺すしかない世界って……しかも、実話に基づいて構成されているって……(けど、近いこと -
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ネタバレ既に形成された価値観を覆すことは難しい……
だけど、2020年を迎え、今まさにアメリカを中心に、黒人達が立ち上がろうとしている
日本人達は対岸の火事の様相。外国の著名人が声を上げてもシラーっとしてる。だけど、日本に住む外国人に対する排他的な視線や感情を、彼等は敏感に感じ取っているはず……。
日本人も、自分の価値観を今一度確かめてみる必要があると思う。
しかし、この本の素晴らしいところは、ピコーラを破滅に追いやっていった人物達をも鬼畜な敵として描くのではなく、『人間』として描いているところだと思う。どんな想いを抱いて生き、価値観が形成されていったのか、その足跡を丁寧に描いている。
自分 -
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これはすごかった。一文一文が読み流せない濃密さで、読むのに時間と体力が必要だった。私にとってこれまでで今年一番の作品かもしれない。なんかもう下手な感想書けません。母親の愛の裏表が濃密に刻まれていて、重く苦しいのに素晴らしすぎる。人種差別は、極端に聞こえるかもしれないけれど、これまで読んだ人種差別の物語のいくつかが、甘やかなロマンに仕立て直されていたのかと思わされるほど苛烈な物語だった。命の帰るところと生まれ来るところの闇。
あとがきにあるように、「見つめたくない、知りたくない、伝えたくない」と、「見つめなければならない、知らなければならない、伝えなければならない」のリフレイン。フラナガン「奥の -
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長らく積んでいたが、モリスンを悼んで読んだ。もっと早く読めばよかった。肉体の生死とはべつの「生きること」とは何かを問うている物語のように読んだ。
父を崇めて父親が失ったものを埋めるために必死で金やステイタスを求めるメイコン、おなじく父親からうまく離れられなかった母ルースの元に生まれたミルクマンは黒人でありながら裕福であるために属するところがあやふやな主人公だ。叔母であるパイロット、友人のギター、愛人のヘイガーなど、周囲の人たちとの関わり方、遅かりし自立の旅。成長物語という事もできるかもしれない。
ミルクマンの青臭さや至らなさは、誰もが心の中に持っているもので、差別や社会的な不公正を扱いながら -
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黒人女性初のノーベル文学賞を受賞し、ピュリッツァー賞も受賞しているトニ・モリスン氏の代表作。
ここに描かれるのは奴隷制度時代の黒人たちの過酷な環境とそれを端とした母娘の壮絶な過去の出来事。表題「beloved(最愛の)」は逆説的であり、視点や時制を目まぐるしく切り替えながら語る物語は敢えて読者を混乱させ、その混乱は奴隷たちの記憶錯誤であり、自己の存在意義への投げかけにも通じる。本作品の根底には愛とアイデンティティがあり、モノや動物と同等の扱いを受けた彼彼女らの尊厳と平等の再生の物語である。
本書の訳者吉田氏のあとがきが大変よく、作品の理解を深めるため、モリスン氏への的確なインタビューを積極的に -
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万人にはお薦めできないが、人間と人生のネガティブな側面に正面から向き合えるような、真の意味で勇敢な方々に強くお薦めしたい書籍である。
登場人物が皆、何らかの(主に人種的な意味で)シビアな闇を抱えている。その闇が詳らかに描写され、そして息つく間もなく事件が続く。
最も凄惨な目に遭う人物は、間違いなく主人公のピコーラという黒人の少女だ。本人にはほとんど落ち度はない(ように見える)のに、行く先々で様々な悲劇に見舞われる。
一見悪くないのに不遇な扱いを受ける人物は様々な作家の様々な作品で出てくるが、ピコーラはその極致と呼べそうだ。
個人的に特に共感したのは、終盤に出てくるあるエセ呪術師だ。彼の歪 -
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都甲先生が訳していたので。
ブロティーガンやブコウスキーを読んだ時からの何となくの直感だけど、アメリカ人の抱える悲しみは絶対日本人のそれに通底するところがある。
被差別階級を非人間的な存在として苦しみから逃れるとか、いやもっと言語的なレベルで…
本編もよかったけど、先生の解説だけでもかなり読む価値がある。今まで白人が差別してきた人々が自由を獲得し、境界線を侵犯してくるのではないかという不安を描く上でゴシックロマンスという形式が最適であったとか、「中立的」「科学的」言説と人種主義の強い力だとか。
ヘミングウェイと看護師もフェミニズム的に読むと面白そう。白人が白人ぽさを出すために髪を染めるとか、す