トニモリスンのレビュー一覧

  • 青い眼がほしい
    なぜかフォークナーを思い出す。貧困、人種、人間関係。ああ、20世紀のアメリカ文学よ。読み終わった後、もう一度最初を読み直すと合点がいく、こういう構成だったのかと。さいごに分かるわけですよ、あのひらがなの見出しの意味が。
    なあ日本人よ、青い目がほしいと望む黒人を、果たしてわたしたちは笑えるか? 髪の毛...続きを読む
  • ラヴ
    「スーラ」とよく似ている、女同士の友情を綴った物語。それは、爽やかな心ではない。憎しみの上に、苦しみの果てに、悲しみの中に。
    深い傷が膿まなくなった頃、その傷跡をいとしく指でなぞることができるだろうか。
  • ビラヴド
     語りたいと思いながらも同時に思い出したくない出来事。そのような経験をした者の右往左往する心情がとても丁寧に描かれていた。いざ語りを始めるとあるところまでは語ることができる。その場では語ることができた満足感を得るが、いざ夜に1人になってみた時、得体の知れない化け物が人々を襲う。  

     本作では回想...続きを読む
  • 青い眼がほしい
    筆者に初めて触れたのは「ホーム」を読んだ時。朝鮮戦争から戻った兄妹の無残な、救いのない話。あたかも御須メルを文でなぞるような癒しと救いの魂を感じた。

    先日フォークナーを久しぶりに読み、難解で捉えようのなかった偉大なノーベル賞作家に再度くらいついてみる気になったから。
    読むという行為は「単に頁を捲り...続きを読む
  • 暗闇に戯れて 白さと文学的想像力
    大学の講義を元にしたもの。なので専門的で分かりにくい。だが言わんとするところは今となっては当然と思われること、アメリカの移住者の自由のために黒人は作られたのだ。
    訳者の解説が丁寧でかなり理解の助けになった。
  • スーラ
     トニ・モリスンは非常に読みにくい。主語と述語がかみ合っていなかったり、目的語がなかったりで意味がとれないところも少なくない。ストーリーも追いづらい。それなのに、読む者の胸に何かを残すことができる。一流の作家だと思う。読後感はジブリ映画を見た後に近いものがある。

     スーラは常人の社会規範とはズレた...続きを読む
  • 青い眼がほしい
    白人思想に覆われた日常に、白い肌や青い眼であれば自分も自分として愛されるのか?という黒人少女の純粋で真っ当で身を切るような願い。
    自分たちが劣っているとされる、値打ちがないとされるとしても、同じ黒人のモーリーンは「かわいい」。彼女を美しくしているものを憎むべきだ、という観察眼の鮮やかな切れ味が随所に...続きを読む
  • タール・ベイビー
    そもそも恋愛とは、異文化のすり合わせとも言える。
    生まれた場所も価値観も、培ってきたものも異なる2人が出会い、それをすり合わせる。互いの文化を受け入れてより良い関係になっていくか、それとも受け入れられずに別の道を行くことになるか。それは国や肌の色が同じだろうが違っていようが、必ず起こってくる。
    しか...続きを読む
  • 青い眼がほしい
    西加奈子がどこかで激推ししていた本作。
    冒頭の「秘密にしていたけれど、1941年の秋、マリゴールドはぜんぜん咲かなかった。」の文を読んで稲妻が走ったと話していたが本当に吸い込まれるような冒頭。
    黒人の被差別、黒人間の差別については描き方や起きている現象は全く違うが映画グリーンブックと似たテーマだなと...続きを読む
  • ビラヴド
    アフリカ系アメリカ人作者による小説。
    幽霊屋敷に住む母娘のもとに、昔の農場で同僚だった男、次いでビラヴドという娘が訪ねてきて、各人の過去の事情が徐々に明らかになっていく。
    面白いけど、エピソードが重たい。
  • 青い眼がほしい
    文体は比喩が長く、読みにくさがあるが、わたしたちの固定観念を見事に払いのける強さがある。
    淡々と語られる日常は、祖先から受け継ぐ圧倒的な強さに基づく諦念を浮き彫りにする。
  • 青い眼がほしい
    「秘密にしていたけれど、一九四一年の秋、マリーゴールドはぜんぜん咲かなかった。あのとき、わたしたちは、マリーゴールドが育たないのはピコーラが父親の赤ん坊を宿していたからだと考えていた。」

    最初の章のこの冒頭からもう心を鷲づかみ。トニ・モリスンの文章は歌うような美しさがあります。

    青い眼がほし...続きを読む
  • 青い眼がほしい
    著者の作品はこれで2冊目。
    これYAにあったけどYAは不相応。
    なぜならば性的表現がきついのと
    ライトに収めているけれども近親相●がでてきます。

    ただし、そこまで重いわけではないです。
    なぜならばあからさまに登場する人物を
    批判するわけではないから。

    主人公の子は黒人の子だったもの、
    ピコーラの...続きを読む
  • 青い眼がほしい
    変わった構成を持つ小説。

    1941年、オハイオ。
    太平洋戦争に参戦し、アメリカ社会も高揚する頃。
    恵まれない家庭環境で育つピコーラが、父に犯された上、心が壊れてしまうという悲劇を描く。

    黒人社会の中で、ピコーラのように、より「醜い」とされる者と、そうでない者とに分かれる。
    人種への蔑視が内面化さ...続きを読む
  • 青い眼がほしい
    アメリカにおける白人から虐げられる黒人の生活及び黒人同士のヒエラルキーによる差別も書かれていて、物語の多くの部分の語り手は、まだ未熟な少女なので余計に人間の生々しさが際立つ。
    ピコーラがなぜ青い目を欲しがったのかはよくわからなかった。
  • 青い眼がほしい
     ノンジャンルと言える長寿本の一つに珍しく手を出してみた。ノーベル賞作家トニ・モリスンのデビュー作であり、1970年に生み出されたものの、広く世界で読まれるようになったのは四半世紀という時間を要したそうである。

     この作品は、あらゆる意味で人間を比べてみることの愚かさと、その中で犠牲になってゆく心...続きを読む
  • 青い眼がほしい
    ピコーラの少女時代は痛ましい。やりきれない気持ちになるが、周りの人間も皆やりきれない何かを持ってる。人種に関係なくこういう環境はあると想像できる分、他人事ではない気持ちになる。それでも時代は1962年。63年がキング牧師のワシントン大行進という大変革の真っただ中に書かれた作品。刷り込まれた価値観とひ...続きを読む
  • 青い眼がほしい
    読書会課題本。救いのない話で読後感はあまり良くない。しかし「人種差別」だけでなく広い意味での「差別」に目を向けさせてくれる内容で非常に興味深い一冊だった。これがノーベル賞作家のデビュー作という事実に驚愕する。
  • 青い眼がほしい
    これまた南米、最終日のボリビアの空港で。不思議な味わいの小説だった。美の意識すら外に決められてしまう黒人。周辺を丁寧に描いていて興味深い。まあまあ悲惨な話だけどでも不思議と後味悪くなくて不思議。
  • ソロモンの歌
    読み応えのある、そして奥行きの深い作品。初読なので近いうちに再読したいとおもわせる。
    単純な差別的な構図ではなく、淡々と当時の黒人が置かれた状況を述べている。主人公の祖父がどのようにして名前を決められたかが描いてあるところは、リアリティを感じる。ただ自分の理解が及ばない箇所があるのでもう一度読みたい...続きを読む