トニモリスンのレビュー一覧

  • ビラヴド

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    読後しばらく放心。
    マジックリアリズムをはらんだ世界観で描きあげる。
    これは、この方法だったからこその迫力。奥行き。
    アメリカという白人が跋扈する土地に染み込む名もなき黒人達の怨念、怨嗟。
    その中で生をつなぐある家族の物語。
    『地下鉄道』ともつながった。

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    2022年02月14日
  • ジャズ

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    ネタバレ

    作品紹介にもあるが、化粧品のセールスマンをやっているジョートレイスが、恋に落ちたドーカスを射殺してしまう。ドーカスの葬式の日にトレイスの妻ヴァイオレットがナイフで切りつける。トレイスは親が赤ん坊を捨てた孤児、ドーカスは暴動で両親が殺されている、ヴァイオレットは、母親のローズディアが井戸に自殺している過去をもつ。登場人物のつらい過去を背景に、お互いの愛を正常に育むことができない。読めば読むほど味わい深い、何度も読み返したい一冊。

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    2022年01月15日
  • スーラ

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    オハイオ州の小さな町、メダリオンが舞台の物語、二部構成、主人公のスーラピース、ネルライトの友情を描く。第一部はネルが結婚する1927年まで、第二部はスーラがメダリオンに戻ってくる1937年から始まる。社会常識的な生き方をするネルと、自由奔放に生きるスーラの対照的な性格のもととなる母、祖母の背景を含め話は展開される。ネルの夫を寝取って、棄ててしまうことからスーラと疎遠になってしまうが、スーラが亡くなる間際ネルは最期に会いに行くが、お互いが理解し合えないまま家を出る。スーラの埋葬式の後、仲のよい友達だったことに気づき号泣する。登場人物が何をもたらしてるのか、また一読するだけでは解読できない深い後味

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    2022年01月03日
  • ビラヴド

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    ネタバレ

    重いかもしれない。のっけからキツい展開が続く。けれど、物語の牽引力がものすごく強くて、ほとんど一気読みのようにして読み切った。
    奴隷制の下では、愛することすら特権になってしまうというメッセージが突き刺さる。
    自分の子どもも、伴侶も、友人も、自分の過去も、自分自身の体も、自分の置かれた世界の風景さえも、何もかも愛しすぎないことでしか生き延びられない世界。それが、人間としての尊厳を奪われ、奴隷という動物に堕とされた過去をもつ人々が生きる世界なのだ、ということなんだろうか。
    白人の魔の手から子どもを守るには、子どもを殺すしかない世界って……しかも、実話に基づいて構成されているって……(けど、近いこと

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    2021年12月01日
  • 青い眼がほしい

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    自分の容姿を醜いと思い込み美しい青い眼に変われるよう祈る少女ピコーラ。いつか自身の持つ美しさを見つけ人生を変えて行く物語かと期待していたが…更に厳しい苦難が。

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    2021年09月17日
  • 青い眼がほしい

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    ネタバレ

    既に形成された価値観を覆すことは難しい……
    だけど、2020年を迎え、今まさにアメリカを中心に、黒人達が立ち上がろうとしている

    日本人達は対岸の火事の様相。外国の著名人が声を上げてもシラーっとしてる。だけど、日本に住む外国人に対する排他的な視線や感情を、彼等は敏感に感じ取っているはず……。

    日本人も、自分の価値観を今一度確かめてみる必要があると思う。


    しかし、この本の素晴らしいところは、ピコーラを破滅に追いやっていった人物達をも鬼畜な敵として描くのではなく、『人間』として描いているところだと思う。どんな想いを抱いて生き、価値観が形成されていったのか、その足跡を丁寧に描いている。

    自分

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    2021年02月21日
  • ビラヴド

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    これはすごかった。一文一文が読み流せない濃密さで、読むのに時間と体力が必要だった。私にとってこれまでで今年一番の作品かもしれない。なんかもう下手な感想書けません。母親の愛の裏表が濃密に刻まれていて、重く苦しいのに素晴らしすぎる。人種差別は、極端に聞こえるかもしれないけれど、これまで読んだ人種差別の物語のいくつかが、甘やかなロマンに仕立て直されていたのかと思わされるほど苛烈な物語だった。命の帰るところと生まれ来るところの闇。
    あとがきにあるように、「見つめたくない、知りたくない、伝えたくない」と、「見つめなければならない、知らなければならない、伝えなければならない」のリフレイン。フラナガン「奥の

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    2019年08月24日
  • ソロモンの歌

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    長らく積んでいたが、モリスンを悼んで読んだ。もっと早く読めばよかった。肉体の生死とはべつの「生きること」とは何かを問うている物語のように読んだ。

    父を崇めて父親が失ったものを埋めるために必死で金やステイタスを求めるメイコン、おなじく父親からうまく離れられなかった母ルースの元に生まれたミルクマンは黒人でありながら裕福であるために属するところがあやふやな主人公だ。叔母であるパイロット、友人のギター、愛人のヘイガーなど、周囲の人たちとの関わり方、遅かりし自立の旅。成長物語という事もできるかもしれない。
    ミルクマンの青臭さや至らなさは、誰もが心の中に持っているもので、差別や社会的な不公正を扱いながら

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    2019年08月17日
  • ソロモンの歌

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    最近読んだ「青い眼がほしい」が良かったので、同じトニモリスン著のこの本を読むのも楽しみだった。とても読み応えのある本でした。ミルクマンと呼ばれる少年が成長し、ひょんなきっかけから自分のルーツを知っていく。当時のアメリカでアフリカンアメリカンたちがどんな生活をおくっていたのかも伝わってきて、その場にいる気分になるくらいストーリーに入り込めます。
    この本オバマ前大統領が人生最高の書に挙げたそう。

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    2019年07月11日
  • ラヴ

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    「スーラ」とよく似ている、女同士の友情を綴った物語。それは、爽やかな心ではない。憎しみの上に、苦しみの果てに、悲しみの中に。
    深い傷が膿まなくなった頃、その傷跡をいとしく指でなぞることができるだろうか。

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    2009年10月04日
  • ビラヴド

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    黒人女性初のノーベル文学賞を受賞し、ピュリッツァー賞も受賞しているトニ・モリスン氏の代表作。
    ここに描かれるのは奴隷制度時代の黒人たちの過酷な環境とそれを端とした母娘の壮絶な過去の出来事。表題「beloved(最愛の)」は逆説的であり、視点や時制を目まぐるしく切り替えながら語る物語は敢えて読者を混乱させ、その混乱は奴隷たちの記憶錯誤であり、自己の存在意義への投げかけにも通じる。本作品の根底には愛とアイデンティティがあり、モノや動物と同等の扱いを受けた彼彼女らの尊厳と平等の再生の物語である。
    本書の訳者吉田氏のあとがきが大変よく、作品の理解を深めるため、モリスン氏への的確なインタビューを積極的に

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    2025年08月06日
  • 青い眼がほしい

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    万人にはお薦めできないが、人間と人生のネガティブな側面に正面から向き合えるような、真の意味で勇敢な方々に強くお薦めしたい書籍である。

    登場人物が皆、何らかの(主に人種的な意味で)シビアな闇を抱えている。その闇が詳らかに描写され、そして息つく間もなく事件が続く。

    最も凄惨な目に遭う人物は、間違いなく主人公のピコーラという黒人の少女だ。本人にはほとんど落ち度はない(ように見える)のに、行く先々で様々な悲劇に見舞われる。
    一見悪くないのに不遇な扱いを受ける人物は様々な作家の様々な作品で出てくるが、ピコーラはその極致と呼べそうだ。

    個人的に特に共感したのは、終盤に出てくるあるエセ呪術師だ。彼の歪

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    2025年06月07日
  • 青い眼がほしい

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    比喩が秀逸 母親たちの井戸端会議を、「少しだけ意地悪なダンスみたいだ」とするのハッとした

    「どうやって」をいろんな人の視点から描くことで、「どうして」を考えさせる、お手本のような作り方だと感じました

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    2025年03月16日
  • 青い眼がほしい

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    醜いと思っている黒人の少女ピコーラとその周りにいる2人の姉妹。秋から次の夏までの少女たちを取り巻く変化と何かの象徴の物語。ピコーラの妊娠やその父母の悲惨な生い立ち、ネグレクトや近親相姦などの虐待どんどん暗い方向に進む物語の青い眼への希求と変身。妄想?精神の崩壊?全てが悲しい。

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    2025年03月11日
  • ビラヴド

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    ネタバレ

    黒人奴隷の物語と聞いて想像したよりもずっと濃い生命と感情が渦巻き、押し寄せ、翻弄されるような読み心地。知識として知っている悲惨さを、そういうことじゃないんだと思い知らされる。
    波動が激しすぎてクライマックス?は精読できなかった。作者の意図を完全に理解できたわけではないと思う。それにしても、情念に圧倒されるような物語であった。
    全編がスピリチュアル設定を前提にしているけれども、事実とそこから沸き立つ心情をリアルに描き、この人々にはスピリチュアルも一体の現実なのだと思う。

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    2025年03月10日
  • 青い眼がほしい

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    終始重苦しい気持ちで読んだ一冊です。
    ただ、今この瞬間にも人種差別であったり、本人の力だけではどうにもならないところで生きている人たちがいる、ということから目を背けてはならないという戒めのような作品だと感じました。
    風景描写や家具のソファについて細かく繊細な記載があり、翻訳の関係もあるのか外国の小説はこういったタッチで描かれるものなのかな、と新鮮でした。
    みんな一生懸命に生きている。その姿は無条件に美しい。

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    2025年01月21日
  • 青い眼がほしい

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    弱者の中にある、さらなる弱者への差別。不幸の連鎖(親の貧しさ、親に育児放棄された親など)。
    すごく読みづらい、世界観に入り込むのに苦労はしたものの、ピコーラの身に起こった悲劇が今も続いていることを思うと切なくなる。青い眼、眼というよりも「青」の象徴するもの、聖母マリアの色、白色人種の瞳などいろいろあるかもしれないが個人的には聖母の象徴のように思えた。苦しみの中で縋る存在、生きる寄す処、それが「青」い眼なのかもしれない。

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    2024年11月27日
  • 暗闇に戯れて 白さと文学的想像力

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    都甲先生が訳していたので。
    ブロティーガンやブコウスキーを読んだ時からの何となくの直感だけど、アメリカ人の抱える悲しみは絶対日本人のそれに通底するところがある。
    被差別階級を非人間的な存在として苦しみから逃れるとか、いやもっと言語的なレベルで…
    本編もよかったけど、先生の解説だけでもかなり読む価値がある。今まで白人が差別してきた人々が自由を獲得し、境界線を侵犯してくるのではないかという不安を描く上でゴシックロマンスという形式が最適であったとか、「中立的」「科学的」言説と人種主義の強い力だとか。
    ヘミングウェイと看護師もフェミニズム的に読むと面白そう。白人が白人ぽさを出すために髪を染めるとか、す

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    2024年10月01日
  • 青い眼がほしい

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    土地に、暮らしに染みつき終生その生を縛り続ける差別。悲しみの果てにこぼれ落ちたその願い。つらい。
    黒人差別が“当たり前“に横行していた時代の暮らしが悲しい。

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    2024年08月15日
  • ビラヴド

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     語りたいと思いながらも同時に思い出したくない出来事。そのような経験をした者の右往左往する心情がとても丁寧に描かれていた。いざ語りを始めるとあるところまでは語ることができる。その場では語ることができた満足感を得るが、いざ夜に1人になってみた時、得体の知れない化け物が人々を襲う。  

     本作では回想が多く挿入されているが(それが大部分であり重要であるのだが)、その回想は積極的に語ろうとするものと、ふと嫌な記憶を思い出してしまう2点があるように思われた。

     形式が断片的な語りであるため、ストーリーを追うのが割と大変だった。

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    2024年03月16日