アーシュラ K ル グィンのレビュー一覧
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ハヤカワ文庫SF 252
使節として送られた主人公ゲンリ―・アイ(=私)とエストラーベン(=予)が代わる代わる語り部となる惑星<冬>ゲセンでの冒険物語。
開国を迫るアイの波乱万丈な行状記。惑星の風土やそこに暮らす両性具有者の生活や感情、思考方法、神話が語られる。国名、地名、人命のほか様々な名称が造語されてサラッとは読めない。単語を覚えていかないとちんぷんかんぷんになってしまう。
極寒地帯が星の大半を占め、動物が少なく鳥の飛ばない世界。カタカナ頻出でなおかつ作者の思いが溢れていることもあって読みづらいが内容はとても面白い。人物描写に長けていて地に足の着いた躍動感がある。世界の構築も細部まで神経が行き届いていて穴が無い。ヌスス。
巻末の月の呼び名などは登場人物、主な地名とともに巻頭へ置いても良かったのでは。地図もあれば更に良い。作者が拘った名称や言葉たちとともに読書中まどろっこしさが付きまとう。 -
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読書備忘録985号。
★★★★★。
敬意を表して★5つ。
作者の偉大さはヒマ師匠さまがレビューに記されているので割愛です。すなわち偉大ということです。
ただ、決して読みやすい小説ではない。なぜか?作者の作品群における共通的異世界の固有名詞がとっつきにく過ぎる!
じゃあなぜ読まねばならなかったか?
「新章 神様のカルテ」で一止が所属する研究室の後輩双葉さんが読んでいた作品だったので読まない選択は無かったということです!
さてこの作品。1960年代後半に出版されたSF小説です(古っ!)。そしてこれはSFなのか?内容が非常に文学的なんですよ。
軸は人間ドラマなんです。生物が生きられない究極の世界で育まれる信頼と友情。そして禁断の愛情。そう!やはり文学です!
じゃあ何がSFか?
世界観です。繰り返しますが作者はこの世界観で何作も小説を書いている。
はるかな過去、超高度な文明を持つ惑星ハインの人々(人類という種の祖)が数多くの居住可能な惑星に人間型生命の種をまいたことに始まる世界観。
そこから、幾多の文明の衰亡、戦争、分裂を経て、エクーメンという星間連合体が組織されている。
本作の舞台となる極寒の惑星ゲセンは星間連合体に属さない最後の星系。そして古の昔、ハイン人による遺伝子実験の結果、住人は両性具有!
そして、この星の人々には生理サイクルがあり、ケメルと呼ばれる短期の発情期が唯一雌雄に分かれるタイミング。一方は出っ張り、一方は窪み・・・。
人々は何度かのケメルで複数の子を産むが、父であったり母であったりするというもの。
物語はエクーメンから、ゲセンを星間連合体に加盟させるために使節として派遣されたゲンリー・アイとゲセン国家の首相たるハルス・エストラーベンとの物語。
ゲセンには大きく2大国家があり、アイはどちらの国家においても政略・策略に利用され収監され、使命を果たすどころか命の危機に晒され続ける。そんなアイを唯一信じ、エクーメンへの加盟がゲセンが発展するために必須だと信じ続けたエストラーベン。
囚われの身であったアイをエストラーベンは脱獄させ、極寒の氷原・凍土を僅かな食料のみで100日に渡る脱出行を決行!旅の中で微妙に変化していく二人の関係が、本作の最大の読みどころ。物語の後半1/3からの圧倒的なクライマックスで★5つです。
そうそう。何かしら意味があると思われるタイトルの「闇の左手」。決して怪しいものではございませぬ。
光は暗闇の左手・・・。暗闇は光の右手・・・。
作者の根底には二元論があるようです。光と闇、太陽と影、男と女、生と死、恐怖と勇気、背徳と忠誠、左手と右手・・・。対立するんだけどバランスの取れたふたつのもののイマージュ。
これは主人公2人の友情と信頼。2人は左手でもあり右手でもある。光であって闇でもあると解釈した。ふむふむ。
さて。あともう一作双葉さんが読んでいたSF、スタニスワフ・レムの「完全な真空」を読まねばなるまい。これはハードルが高そうだ。だからそのうち。
ソラリスの作者ですよ。あのオールタイムベストSFのソラリスですよ、みなさま。 -
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「西の良い魔女」との呼び名もあるSFの女王アーシュラ・K・ル・グィンの『闇の左手』です
ル・グィンはSF界で双璧をなす文学賞ヒューゴー賞を5度、ネビュラ賞を6度受賞というまさに女王なんです
そしてあのファンタジーの傑作『ゲド戦記』もル・グィンの作でもあるんです
とにかくすごい人!
本書『闇の左手』もヒューゴー賞とネビュラ賞をW受賞している傑作です
もうね
SFやわ〜って感じですな
ル・グィンの思考実験の場にお邪魔させてもらったみたいな感じなんよね
色々あるんだが、まず究極の男女平等社会を異星の中で描いてるんよね
それは「両性具有」
性差がないので全員平等w
そしてこの世界は戦争がないのよ
男と女があるから戦争があるってことなの?ル・グィンさん!
でもなんかちょっと納得
でその星に他の星から友好関係を結ぶために使節(ほぼ我々地球人で男性)が降り立ってしばらくたったところから始まるんだが、この文化の違いが誤解を産んで…みたいな
あー、あるね
現実世界でもあるわ
といった風に極端な世界を構築することで、現実世界にある様々問題を見えやすくして、どうすりゃいいんだろう?を考える
これぞSFなのよ
両性具有の星の物語を読んで「性差」って何?そこを乗り越えるには何が必要?を考える
まずは相互理解だよね〜
なかなか難しいけど
奥さんの考えてることぜんぜん分からんちんだもんw(笑ってる場合か!)
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ネタバレすごく良かった…
はるか未来の話、打ち捨てられた植民星にいる人々は両性具有なのだけど、それがかつての生物実験の果てだったりして、とてもSF。
世界の説明や人々の風習や思考、交渉するアイの姿は、ガリバー旅行記みたいだなと思いながら読んだ。
後半のアイとエストラーベンの氷河の厳しい旅路を通してのお互いの理解を深めるところとか、異種族間の(向こうは両性具有だし)愛なのか、友情なのかをお互いが考えるところが、とても良かった。
世界観がきちっと説明されているにも関わらず、表現する言葉がなかったり、正しく理解することが無理そうなことを、感じる読書ができた。 -
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ネタバレなぜ一人きりでこの惑星へ送られてきたのか、と言う問いに対してゲンリーの言った台詞、「一人ではあなた方の世界を変えることはできない。しかしぼくはあなた方の世界によって変えられることができる。」が印象に残った。
あくまで同盟は各々に主体的に決めてもらうと言うスタンスだったはずのゲンリーが、エストラーベンの愛国心を超えた人類への忠誠心に突き動かされ、彼に報いるため、星船を呼ぶ。さらにその過程で同郷のはずの仲間よりも、ゲセン人に愛着を持つようになる。
文化も価値観も身体構造すら異なる相手と、理解しきれぬまま友情が芽生え、その地に愛着がわき、変わってしまう様子が面白かった。
帰属意識や性、性のない社会での愛とは?色々考えさせられる小説だった。
序盤は見慣れない固有名詞が多く、とっつきづらいが、慣れれば合間に挿入される神話や民話は面白いし、後半の過酷な旅パートも読む手が止まらなくなるほど物語に引き込まれた。長いこと積んでいたが、読み始めればあっという間に読んでしまった。
あとは細かいところではエストラーベンの朝が弱そうな描写が2回くらいあって面白かった。 -
Posted by ブクログ
両性具有の人類が出てくるSF小説、としか覚えていなかったこの作品を、30年以上ぶりに手に取った。大学のゼミで取り上げられた作品で、怠惰な学生だった私は日本語訳の文庫本を読んだのだった…。
宇宙に点在する星々を訪ねてくるエクーメンの使節の想い、その行動を可能にするエクーメンという組織の大きさと盤石さに、物語を読み進めるうちに圧倒される。
空を飛べるなどと考えたこともない国の住人が、異星人の使節に自らの命を賭して行動を共にするにはどれほどの頭脳と勇気が必要だろう?
作者は著名であるものの、2018年に亡くなっていたことを知らなかった。
長く読まれる作品にはそれだけの理由がある。
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Posted by ブクログ
ネタバレほかの惑星を侵略するのでなく同盟を結ぼうとする話だが、その骨の折れること。たったひとりの使節が相手国の説得にあたることの危険性よりも、降り立つ地の文化と選択を尊重することを重視した姿勢が、新鮮でよかった。
前半は政治的な話が続き掴みどころのない物語だったが、不思議ともう一度読みたくなる。遺伝子実験により両性具有となった人類についても興味深い点がたくさんあった。
登場人物の誰の話にも、常に問いがあった。そのどれにも明確な答えはなく、あれこれと浮かんでは消え、最後に残ったのは友への深い友情だった。
生まれた星、育った国、言語、文化、習慣、体のつくりも何もかもまったく違う者同士が、互いを理解し合うことの難しさを思った。なにか共通項があるからこそ分かるものがあるのだろう。
どこかで誤解し合っていたアイとエストラーベンが、旅を通して時間を共有し語らうことで理解を深め、真の友情が育っていくのが一番の見どころだった。
エストラーベン視点の語りが冷静でニュートラルでとても好ましかった。どことなく古い言い回しをするのも、感情の起伏がなく落ち着いている様子が伝わってきてよかった。生きていてほしかったなと思わずにはいられない。いずれ語り継がれる存在となるのだろう。 -
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喉も、肺すらも凍りつくほどの真っ白な世界での逃避行。じわりじわりと迫り来るような闇への恐怖と根源的な生への執着、そこで育まれる信頼、友情(友愛)、とまどいと信頼。そして訪れる唐突な別れ。回想。
人生ベストブックです…。
ハマりすぎて本当にショックで、わんわん泣きながら調べ物をしたりデリダの赦しを読んだりしていたら、著者自身が闇の左手をセルフパロディしたというFour Ways to ForgivenessのForgiveness Dayについての叙述を発見しました。(確か、世界の合言葉は森?か世界の誕生日の訳者あとがきで)でも英語読めないしなあ…でもでも頑張って読むか…ebook買って…なんて思っていたら、買ってそのまま積読していたSFマガジンのルグイン追悼号にまさにその短編(赦しの日)が掲載されて…いました…。奇跡…?しかも…しかも小尾芙佐氏の訳で…ありがとう…ありがとう早川書房…
当方ルグイン超絶初心者ゆえ赦しの日を闇の左手のアンサー、ととるのはいささか早計やもしれませんが、ああ、こういう物語にもなったんだなと、温かいなみだを流し読後を迎えることができました。
""『』省略 -
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SFが苦手でル・グウィンさんの本はファンタジーしか読んだことがなかったが、彼女はSF界での評価も抜群なのは知っていた。
アニメ作品でいくつかSFに触れる機会があり、チャレンジしてみようという気になりようやく手にとった。
子供向けファンタジーに比べて生々しく、衝動や緊迫に息を飲む機会も多くあったが、ジャンルは違えど彼女の文化人類学的な視座や思想から紡がれる小説はやはり秀逸。神話や古代壁画を見ながら、ヒトや文化の起こりを見つめ直す感覚。4人の婚姻制度や神々の掟、宇宙旅行など、前提のない世界である時はヒトらしく、ある時は理解しがたい場面にも感情移入させる筆致には唸らされる。短編集で、もう少し続きを見届けたいと願うところで呆気なく途切れるものも多かった印象。読者の心に引っかかり、ついつい頭で続きを描いてしまう尾の引き方が、どの作品にも愛着を沸かせる。
エクーメンとか何の何年とかは正直よくわからなかったのだが、ハードSFは見切りをつける姿勢を身につけなければ笑。不思議な文字列に遥かさと、果てない宇宙の文化史に思いを馳せる素敵な時間だった。 -
Posted by ブクログ
読み終わってしばし呆然。ずっしりと重い課題と、ひとかけらの希望を飲み込んだような気分。SFという括りを超えた名作だと思う。
ウラスとアナレスの双子星が舞台。ウラスは自然豊かで長い人類の歴史を持つけれど、競争主義社会で貧富の差がどうしようもなく広がっている。対するアナレスは荒涼とした植民星で、人々は協力し合い、飢えと闘いながら必死で生きている。一見すると共産主義礼賛のように捉えられてしまうのか、発表当時は作者の政治的思想に対して様々な批判があったらしい。私には、現代の政治的イデオロギーなどを超えた、普遍的な問題提起だと感じた。もっとも作者は、問題提起など全く意図していなかったらしいけれど。
主人公が述べた、「誰かが飢えている一方で、他の誰かが腹一杯食べているということはあり得ない」というアナレス星を表した言葉が心に残る。今、世界は「ウラス的」な方向に向かいつつあるのではないか。人類にとってのユートピアとは?それを実現するために、人間の「所有する」欲望をどのように扱っていくのか?作者の意図を超えて読み手に様々な課題を突きつける、希有な本だと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ性や性別、人種、宗教、文化を巡って、幾つもの星々の物語を描く短編集。
各星の習俗や歴史を丸々造り上げているから、短編ひとつひとつの情報量が凄まじい。結婚のあり方、孤独のあり方、流浪のあり方…緻密かつ大胆に語られる未知の生活様式。読むごとに気力を使い、読み終えるごとに呆然とさせられるのは、まるで異文化を理解しようとして、し切れなかった感覚のよう。
最後の短編『失われた楽園』のみが、異星の物語でなく、地球を出発し、植民星を目指す宇宙船の物語。本書全体の3分の1ほどを占める長い作品だけれど、読んでみたら、この作品が一番読みやすかった。
地球と違った宇宙船内の生活様式や、そこで生まれた新興宗教の興隆など、細部が面白いのも理由のひとつだけれど、おそらく登場人物たちが(宇宙船生まれの世代であるとはいえ)地球の文化や言葉を背景に持っていることが理由なのだろうと思う。
裏を返すと、そこまでの7つの短編が、地球の文化と隔絶した異質なものとして、いかに完成度が高いかということでもある。
ル=グウィンが序文で、短編『古い音楽と女奴隷たち』について「ある批評家は、奴隷制度をわざわざ書くに値する問題としているわたしを嘲笑した。彼が住んでいるのは、いったいどこの惑星かとわたしは不思議でならない。」と述べているように、きっとこれらの話は異星の話でありながら、また、地球の話であるのだろうと思う。
異なる文化を理解することの困難を突きつけはするけれど、豊潤な物語を読むよろこびの後ろに、他者を理解しようとする試みの面白さもまた垣間見せるような、奇特な作品だと感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレル・グィンの作品って好きです。
さらにいえば、ル・グィンのSFをよんで、SFがもっと好きになったし、興味を持つようになりました。知人に言わせれば、「高尚なSF」らしいル・グィンのSFですが、ロマンティックでなんだかキラキラしていて、甘くもほろ苦いこの頃のル・グィンの作品は、巡り合えてよかったと思えるような素敵なものです。
「ロカノンの世界」に続く長編第二段で、ロカノン~とゆるくゆるくつながっています。
5000日もの間冬が続く竜座の第三惑星で暮らすヒルフという種族と、異種族である(彼らからしてみれば)人間であるファーボーンという種族が同盟を組み、共通の敵に立ち向かう、みたいなお話ですが、あらすじを書くと仰々しいですが、実際はもっと静かで、非常にロマンティックな一冊です。
私はル・グィンの描く恋愛描写が好き! という多分少数派な人間ですが、この作品に出てくるヒルフの族長の娘ロルリーと、ファーボーンの頭の一人、アガト(二人はいとこにあたる)のロマンスは、彼女の作品の中でもかなり糖度が高く、愛によって、従順と献身をみせるようになったロルリーに心寄せてしまいます。
異種族間で起こる様々な価値観の違いなどの相克はもちろん、男女間の相克、世代間の相克、季節や自然と人間との相克、様々な物を描き、問題提起しているように思えます。
冬のお話なのですが、読後感は夏の様に爽やかなように思えます。
非常に静かでありながら、瑞々しいSF小説で、ますますル・グィンが好きになってしまいました。
主役の二人のほかに、ヒルフの族長ウォルトがいい味出していたのが善いですね。
年代の違いにおけるディスコミュニケーション、というかディスコミュニケーションというのは、SF小説の永遠のテーマかもしれないな、などと思いました。
岡野玲子さんの描く表紙のロルリーが素敵です。
ル・グィンの描くSFの世界に、まだまだしばらくの間は、おぼれてしまいそうです。