アーシュラ K ル グィンのレビュー一覧
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ネタバレなぜ一人きりでこの惑星へ送られてきたのか、と言う問いに対してゲンリーの言った台詞、「一人ではあなた方の世界を変えることはできない。しかしぼくはあなた方の世界によって変えられることができる。」が印象に残った。
あくまで同盟は各々に主体的に決めてもらうと言うスタンスだったはずのゲンリーが、エストラーベンの愛国心を超えた人類への忠誠心に突き動かされ、彼に報いるため、星船を呼ぶ。さらにその過程で同郷のはずの仲間よりも、ゲセン人に愛着を持つようになる。
文化も価値観も身体構造すら異なる相手と、理解しきれぬまま友情が芽生え、その地に愛着がわき、変わってしまう様子が面白かった。
帰属意識や性、性のない社会で -
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両性具有の人類が出てくるSF小説、としか覚えていなかったこの作品を、30年以上ぶりに手に取った。大学のゼミで取り上げられた作品で、怠惰な学生だった私は日本語訳の文庫本を読んだのだった…。
宇宙に点在する星々を訪ねてくるエクーメンの使節の想い、その行動を可能にするエクーメンという組織の大きさと盤石さに、物語を読み進めるうちに圧倒される。
空を飛べるなどと考えたこともない国の住人が、異星人の使節に自らの命を賭して行動を共にするにはどれほどの頭脳と勇気が必要だろう?
作者は著名であるものの、2018年に亡くなっていたことを知らなかった。
長く読まれる作品にはそれだけの理由がある。
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ネタバレほかの惑星を侵略するのでなく同盟を結ぼうとする話だが、その骨の折れること。たったひとりの使節が相手国の説得にあたることの危険性よりも、降り立つ地の文化と選択を尊重することを重視した姿勢が、新鮮でよかった。
前半は政治的な話が続き掴みどころのない物語だったが、不思議ともう一度読みたくなる。遺伝子実験により両性具有となった人類についても興味深い点がたくさんあった。
登場人物の誰の話にも、常に問いがあった。そのどれにも明確な答えはなく、あれこれと浮かんでは消え、最後に残ったのは友への深い友情だった。
生まれた星、育った国、言語、文化、習慣、体のつくりも何もかもまったく違う者同士が、互いを理解し合うこ -
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喉も、肺すらも凍りつくほどの真っ白な世界での逃避行。じわりじわりと迫り来るような闇への恐怖と根源的な生への執着、そこで育まれる信頼、友情(友愛)、とまどいと信頼。そして訪れる唐突な別れ。回想。
人生ベストブックです…。
ハマりすぎて本当にショックで、わんわん泣きながら調べ物をしたりデリダの赦しを読んだりしていたら、著者自身が闇の左手をセルフパロディしたというFour Ways to ForgivenessのForgiveness Dayについての叙述を発見しました。(確か、世界の合言葉は森?か世界の誕生日の訳者あとがきで)でも英語読めないしなあ…でもでも頑張って読むか…ebook買って…なん -
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SFが苦手でル・グウィンさんの本はファンタジーしか読んだことがなかったが、彼女はSF界での評価も抜群なのは知っていた。
アニメ作品でいくつかSFに触れる機会があり、チャレンジしてみようという気になりようやく手にとった。
子供向けファンタジーに比べて生々しく、衝動や緊迫に息を飲む機会も多くあったが、ジャンルは違えど彼女の文化人類学的な視座や思想から紡がれる小説はやはり秀逸。神話や古代壁画を見ながら、ヒトや文化の起こりを見つめ直す感覚。4人の婚姻制度や神々の掟、宇宙旅行など、前提のない世界である時はヒトらしく、ある時は理解しがたい場面にも感情移入させる筆致には唸らされる。短編集で、もう少し続きを -
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ネタバレ人類の同盟エクーメンより異星ゲセンに使節として訪れたゲンリー・アイが同盟を結ぶためにゲセンのカルハイド王国宰相セレム・ハルス・レム・エストラーベンの力を借り同盟を結ぶ為の物語を繰り広げていくという内容でしたが、ゲンリー・アイの報告書からの視点では度々ゲセンの表現をこちら側の言語に落とし込んでいる為、読者として想像の余地を残す箇所があり大変興味深かったです。
また、作中光と闇、陰と陽、右と左、男と女、われと汝…これらの二元論についてもしばしば描かれておりこの作品の主題の一つだと感じます。
物語を読み終えた後、表紙をみて様々な感情や思考が駆け巡りました。
タイトル、表紙デザイン、翻訳どれも素晴らし -
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読み終わってしばし呆然。ずっしりと重い課題と、ひとかけらの希望を飲み込んだような気分。SFという括りを超えた名作だと思う。
ウラスとアナレスの双子星が舞台。ウラスは自然豊かで長い人類の歴史を持つけれど、競争主義社会で貧富の差がどうしようもなく広がっている。対するアナレスは荒涼とした植民星で、人々は協力し合い、飢えと闘いながら必死で生きている。一見すると共産主義礼賛のように捉えられてしまうのか、発表当時は作者の政治的思想に対して様々な批判があったらしい。私には、現代の政治的イデオロギーなどを超えた、普遍的な問題提起だと感じた。もっとも作者は、問題提起など全く意図していなかったらしいけれど。
主人 -
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ネタバレ性や性別、人種、宗教、文化を巡って、幾つもの星々の物語を描く短編集。
各星の習俗や歴史を丸々造り上げているから、短編ひとつひとつの情報量が凄まじい。結婚のあり方、孤独のあり方、流浪のあり方…緻密かつ大胆に語られる未知の生活様式。読むごとに気力を使い、読み終えるごとに呆然とさせられるのは、まるで異文化を理解しようとして、し切れなかった感覚のよう。
最後の短編『失われた楽園』のみが、異星の物語でなく、地球を出発し、植民星を目指す宇宙船の物語。本書全体の3分の1ほどを占める長い作品だけれど、読んでみたら、この作品が一番読みやすかった。
地球と違った宇宙船内の生活様式や、そこで生まれた新興宗教の興 -
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ネタバレル・グィンの作品って好きです。
さらにいえば、ル・グィンのSFをよんで、SFがもっと好きになったし、興味を持つようになりました。知人に言わせれば、「高尚なSF」らしいル・グィンのSFですが、ロマンティックでなんだかキラキラしていて、甘くもほろ苦いこの頃のル・グィンの作品は、巡り合えてよかったと思えるような素敵なものです。
「ロカノンの世界」に続く長編第二段で、ロカノン~とゆるくゆるくつながっています。
5000日もの間冬が続く竜座の第三惑星で暮らすヒルフという種族と、異種族である(彼らからしてみれば)人間であるファーボーンという種族が同盟を組み、共通の敵に立ち向かう、みたいなお話ですが、あら -
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共産主義社会を思わせる世界の荒涼とした惑星アナレスと、現代の資本主義社会や地球環境をほとんど写したかのような惑星ウラス。
この二つの惑星を舞台に、アナレス出身の科学者、主人公シェヴェックという個人の人生と社会、人々との関わりを重厚なスケールで描いた一冊。この本そのものが膨大な思考実験であり、なおかつ一人の男の物語としても一級品で読みごたえ抜群。
所有せざる人々の住むアナレスと、所有主義者(プロバタリアン)の住むウラス。
アナレスに生まれたシェヴェックがウラスに出発するに至るまでと、ウラスに到着後の人生が交互に描かれていくが、どちらの惑星でも個人というよりも社会そのものがシェヴェックに苦難の道 -
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ネタバレジョン・レノンが『イマジン』の歌詞の三番で「少し難しいかもしれないが想像してほしい」と歌った"所有のない世界”を実現した惑星アナレスから、資本主義と社会主義が対立しながらも美しい繁栄を謳歌する惑星ウラスに降り立った孤独な物理学者の物語。
無政府主義を現実のものとしたアナレスでも、最後の障害は「人々の慣習にすがる態度」だった、というのが衝撃的だった。
しかし、ほんの小さな希望が、長い、長い旅を終えて、アナレスに帰還する宇宙船の中、遠く離れた、古い歴史を持つ恒星系セインから来たひとりの下士官によってもたらされる。
彼は命の危険があり、二度と戻ることができないかもしれないアナレスへの同行を