アーシュラ K ル グィンのレビュー一覧

  • 所有せざる人々
    小説とは人間を描くものである、というル・グィンの言葉通りの本。
    主人公シュヴェックを語るためにアナレスとウラスという二つの世界があり、本書が存在する。
    個人的には彼の親友であるベダップが凄く印象的でした。終始一貫してシュヴェックの視点で語られる物語において、例外的にべダップが語る場面が存在するからで...続きを読む
  • 世界の合言葉は森
    中編です。
    ル・ググィンならでは…
    想像された世界の確かな手触り。
    皮肉の効いた描写と、それでも息づいている生命力。
  • ロカノンの世界
    神話とSFが混ざった独特の雰囲気が好き。『風の十二方位』でプロローグの部分を読んだ時はロカノンがここまで動くとは思わなかった。
  • 幻影の都市
    詳細はもう覚えていないのですが、もう二度と逢えないと解っていて、ほんの一時しか一緒にいられないと解っていて契りを交わしたその証の結婚指輪を失ったその描写に、泣いた記憶があります。
  • 所有せざる人々
    理想の社会構造ものって言っていいのか
    貨幣なし世界だとどうなんだろうと思うけど、その1つのあり様が描かれた作品
    お金のことを考えないとどこまでできるのかと言うのは考えたことはあるけど、この作品はソ連みたいな社会主義の顛末を念頭に置いたものっぽい。
    プロジェクトヘイルメアリーや機本伸司さんの僕たちの終...続きを読む
  • 赦しへの四つの道
     本書は「闇の左手」や「所有せざる人々」等と同じく〈ハイニッシュ・ユニバース〉シリーズに属し、四つの短編からなる。それぞれの短篇はゆるやかに関連をもって描かれている。

     〈ハイニッシュ・ユニバース〉に世界は以下の通り。
     惑星ハインに住む古代ハイン人は高度な文明を持ち、居住可能な多くの惑星に人間型...続きを読む
  • 言の葉の樹
    ゲド戦記から入った私はこれがル=グウィンの初SF体験でした。
    SFはほとんど読まないので、ストーリーに入るのに少し時間がかかりましたが、読み進めていくとやはりル=グウィンらしさがあり、だんだんとのめり込みました。言葉を大切にするところやフェミニズムをしっかり入れてくるところなどゲド戦記に通じるものが...続きを読む
  • 闇の左手
    はるか遠い未来の話。人類の末裔たちの物語。星間を行き来できる世界で、外交関係を結ぶために、人類が極寒の星に使節を送り込む。その使節ゲイリー・アイが語る数奇な物語。

    重厚な物語で、読み慣れない言葉もあり、読み進めるのに時間がかかった。
    17章 オルゴレインの創世伝説
    この辺りから、一気に読むスピード...続きを読む
  • 所有せざる人々
    なんだろうこれは。すごいものを読んでしまったのに、この本の世界は、私たちのいる現実であってまったくの異世界でもある。
    この本の「人間」というものが、わたしたちと同じ形をしているかもわからないのに、悩んだりそして(まやかしであっても)解決策を見つけようとしたり、他を上と見たり下と見たり、またはそういう...続きを読む
  • 闇の左手
    この不思議なタイトルの意味が回収された瞬間が個人的に最も興奮した気がする(?)後半は文句なく面白く、主人公ふたりの関係のこまやかな描かれ方がとってもよかった。
    序盤はこの作品独特の設定や世界観についていくのに必死でなかなかストーリーに追いつけなかったので、また読み返したいと思う。2回目の方がいろいろ...続きを読む
  • 所有せざる人々
    最初はなかなか慣れず、アナレスとウラスのセクションの時間軸が今ひとつわからなかった。最後まで到達してようやく理解でき、読み終わった直後にもう一度読み直した。

    『闇の左手』にも記載したが、そもそもル=グィンのハイニッシュシリーズはSFというジャンルなのだろうか。
    確かに異星の物語で近未来という意味で...続きを読む
  • 闇の左手
    もぐりと言われることを覚悟で告白するが、実はアーシュラ・K・ル=グィンという作家を知ったのはつい最近だ。
    『ゲド戦記』はもちろんタイトルは知っていたが、ジュブナイルというイメージがあったため食指は伸びず。
    今回手にとった理由は、『Dune』の解説で、12年おきに発表されるローカス紙でのオールタイム・...続きを読む
  • 闇の左手
    ゲド戦記で著名なアーシュラ・K・ル・グィンのヒューゴー賞・ネビュラ賞受賞作品。両性具有の人類という特異な社会を描いているのが最大の注目点であり、セックスとジェンダーをめぐる思考実験として考えさせられるものがある。後半の大部分をしめる真冬の氷原を越える旅が圧巻で、異星人との心の交流とその結末が深く心に...続きを読む
  • 闇の左手
    わからないなりに食いついて読んだ。
    まったく違うものたちが、当然ゆえに見過ごされる誤解を通って隣りあい近づきあう、そのわずかだが貴重な時間と。繋がりが「絶えた」ときからみえてくる相手の拡がり。
    主人公(?)はきっとこの後も長いこと、おのれの住む星と文明のために動いたひとりのゲセン人を思い出すのだろう...続きを読む
  • 闇の左手
    両性具有の人々の惑星<冬>。この星と外交関係を結ぶため、人類の同盟から派遣された使節ゲンリー・アイと、カルハイド王国の宰相だったエストラーベンの旅路の中で、芽生えたものは、友情でも愛情でもないと言えるし、且つ両方を兼ね備えたものとも言える。。。きっと名付けられたことのない、けどとても尊いもの。二人の...続きを読む
  • 闇の左手
    人類がかつて植民地化した星ゲセンは遺伝子実験の末に男女の性別のない不思議な社会に進化していた。外交を結ぶために赴いた地球人ゲンリー・アイによるこの人類と社会の風俗、思考などの考察が1つの話。政治的陰謀により元首相エストラーベンと一緒に極寒の氷原を逃亡する話がもうひとつ。男女の区別はないが生殖という面...続きを読む
  • 闇の左手
    銀河に同盟ができた時代、ある異星に加盟を求め降り立った地球人と、異星の廷臣の旅。
    闇の左手は、太極図で光のこと?
    両性具有で、繁殖期のケメル以外の時には性を持たず、ケメル期にどちらの性になるかは決まっておらず、誰でも妊娠する可能性があるから、地球人のように女性は妊娠出産育児、家に縛られ、男性は強さ男...続きを読む
  • 所有せざる人々
     人間にとっての理想郷はどこにあるのか? この小説の主人公であるシュヴェックとともに、読者である自分もそんなことを考えていました。

     経済の繁栄した自由主義・資本主義的な惑星のウラス、自由や平等をモットーに荒廃した惑星を切り開いてきた、共産主義的な惑星のアナレス。

     歴史、政治、文化、言語……、...続きを読む
  • 闇の左手
    難解で理解できたとは言えないが、過酷な旅路、登場人物の不可解な突然の行動、地球とはかけ離れた文化と生態が、読んだ後も残る。
    楽しい読書ではないけど、印象的。
  • 所有せざる人々
    ウラスと植民星アナレス、それぞれがそれぞれを月とする双子星を舞台にした、ル=グィンのSF小説。アナレスに住む孤高の物理学者が、自らの理論を分かち合ってくれる者たちを求め、かつて先祖たちが暮らしていた星・ウラスへと、植民以来はじめての訪問者として向かう。
    資本主義と共産主義、政府と無政府、権力と学問、...続きを読む