アーシュラ K ル グィンのレビュー一覧

  • 所有せざる人々
    アナレス:荒れ果てた惑星、原始的な共産主義。
    ウラス:豊かな惑星、資本主義。

     単純な物質だけでなく、人間関係の「所有」も排した共産主義の惑星、アナレス。そこの天才物理学者、シェベックが主人公。
     あからさまな権力機構がなくとも、慣習に縛られ、息苦しくなった彼は、自らの研究成果をより必要としている...続きを読む
  • 闇の左手
    ジェンダー問題が氾濫する現代に、さらに一石を投じるような設定のSF小説。ディストピア、友情、恋愛などの要素が上手く噛み合って、映画を観ているかのように情景が浮かぶ描写にページをめくってしまう。世界観や時代背景、極寒の惑星の人類がどんな文明を気付いていくのかという考察が光る一冊。
  • 闇の左手
    一読では抱えきれない。良かった。

    前半は固有名詞や前提となる社会規範などが分からないまま読んでいくので忍耐が必要になったが、冬が訪れたところからぐっと面白くなる。

    ホワイトアウトした世界で光の在り処は分からない。影がなければ。それが、鮮烈に伝わる。
  • 闇の左手
    寓話や象徴的な描写が細かく散りばめられ、異世界の描写も(かなり地球に近いとは思うが)地球との異質さが強調されていてよかった。
    この話の一番の見所は山岸真氏の解説にもある通り、後半の脱出行。同じテントの中で陰陽について、友情について、愛についての思索を深めるシーンが素晴らしい。
    違うからこそ、その間に...続きを読む
  • 内海の漁師
    ル・グィンの短編集 彼女の考えが書かれた入門書
    表紙   6点安田 隆治
    展開   7点1994年著作
    文章   7点
    内容 650点
    合計 670点
  • 幻影の都市
    これは栗本薫グインサーガーの原作ではないか・・・
    表紙   6点まつざき あけみ
    展開   7点1967年著作
    文章   6点
    内容 725点
    合計 744点
  • 世界の合言葉は森
    グィンの中編2つ 表紙がいい
    表紙   8点上原 徹
    展開   6点1972年著作
    文章   6点
    内容 740点
    合計 760点
  • 辺境の惑星
    ル・グィンの若さを感じられる作品
    表紙   5点岡野 玲子
    展開   7点1966年著作
    文章   7点
    内容 700点
    合計 719点
  • ロカノンの世界
    初々しさはあるが基本的な作風は既に確立している
    表紙   6点萩尾 望都
    展開   6点1966年著作
    文章   7点
    内容 760点
    合計 779点
  • オルシニア国物語
    いきなり読んでも分からない グィン好き向けの作品
    表紙   4点辰巳 四郎
    展開   6点1976年著作
    文章   7点
    内容 644点
    合計 661点
  • 闇の左手
    20151106
    まるで読みながら自分自身が異星の異文化の中へ入り込んで行くような感覚。序盤はとっつきにくいが、舞台となる惑星ゲセンの説話や、調査報告書、伝説などを挟みながら、複眼的・重層的に語られる語り口は圧巻。地球人である主人公ゲンリー・アイとゲセン人エストラーベンが文化や生態の違いをこえて、ま...続きを読む
  • 闇の左手
    惑星「冬」にたったひとりで降り立つ主人公。“国としてのこだわりを捨て、ひとつの星として開国して欲しい”と粘り強く交渉するが、陰謀や政変に巻き込まれ追われる身となる。
    「冬」で進化した人類は両性を持つ種族で、いわゆる「女性的」「男性的」という感覚がないのが面白い。
  • 言の葉の樹
    「闇の左手」と同じく<ハイニッシュ・ユニバース>シリーズのこの作品。
    今度の主人公はテラ(地球)出身の女性、サティ。宗教を初めとした文化を一元化しようとした「ユニシス」が支配していたテラでは、キリスト教以外の宗教・考え・芸術全てが弾圧の対象になっていた時代があった。そんな時代に生まれたサティが、エク...続きを読む
  • 所有せざる人々
    誰もが何も所有しない社会を築く星アナレスと、地球に良く似た物質社会の星ウラス。アナレスに生まれたシェヴェックという物理学者が成長していく過程と、ウラスに何らかの理由で辿りついてからの様子が交互に語られる。派手さはないけれど、じわじわとした面白さがあった。アナレスの成り立ちが非常に興味深かった。
    『闇...続きを読む
  • 所有せざる人々
    SFを舞台にした政治と権力の物語。科学者である主人公が魅力的。哲学的なやりとりが多く示唆に富んでいて非常に面白かった。
  • 所有せざる人々
    40年近く前に描かれたユートピア。SF界の女王、ル・グィンの古びない傑作。


    物語は、主人公シェヴェックが自らの画期的な物理理論を発展、完成させるために、故郷の星アナレスを離れ、惑星ウラスに向かうところから始まる。

    物語の舞台は、アナレスとウラスという二重惑星。アナレスは、乾燥し、あまり人が住む...続きを読む
  • 所有せざる人々
    リバタリアンとコミュニタリアンについて、
    マイケル・サンデルの授業のような思考を試される。
    ユートピアとディストピアの境界、狭間で二律背反に陥る。
    深いところにズシンとくる。

    1974 年 ネビュラ賞長篇小説部門受賞作品。
    1975 年 ヒューゴー賞長編小説部門受賞作品。
    1975 年 ローカス賞...続きを読む
  • 所有せざる人々
     惑星ウラスの空に浮かぶ大きな月・アナレス。それはウラスよりは小さく貧しいけれど、大気をもったひとつの惑星。
     かつてウラスでは、オドーというひとりの人物が提唱した主義にしたがい、やがてオドー主義者たちがあつまり、革命を起こした。ものを所有することをやめ、権力というものを廃し、貨幣による経済を捨てて...続きを読む
  • 言の葉の樹
    極端に抑制を効かせた文章が、最後の3行で恐ろしく詩的になって、言いようのない高揚感に包まれたところでストンと終わるという、半ば途絶したような印象さえ与える結末も、このドラマが「ハイニッシュ・ユニバース」という大きな枠組み、その中でおそらくは無数に形成されている社会の、ごく一端でしかないことを示唆して...続きを読む
  • ロカノンの世界
    有名なル・グウィン女史の作品です。最後の方があっさりし過ぎているような気もしましが、それでも面白かったです。この方の書く話は、必ずしもハッピーエンドではなく、幸福の中にも悲しみが(あるいは悲しみの中にも幸福が)あるところがいいです。