アーシュラ K ル グィンのレビュー一覧

  • 闇の左手

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    両性具有の人々の惑星<冬>。この星と外交関係を結ぶため、人類の同盟から派遣された使節ゲンリー・アイと、カルハイド王国の宰相だったエストラーベンの旅路の中で、芽生えたものは、友情でも愛情でもないと言えるし、且つ両方を兼ね備えたものとも言える。。。きっと名付けられたことのない、けどとても尊いもの。二人の旅の終わりを見届ける時、私たちも「性差」というものに違和感を覚えるはず。少なくとも私は覚えた。新鮮な体験だった。とにか世界観が緻密で圧倒される。

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    2021年06月12日
  • 闇の左手

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    いわゆる"ソフトSF"の代表作。
    執拗なまでの情景描写により、"冬"と呼ばれる惑星ゲセンの風景をありありと写し出している。
    それに加えて、途中途中にゲセンの伝承を挟むことで、世界観を完璧に構築。
    前半は掴み所のないエストラーベンに、後半どんどん惹き込まれてしまう人物描写も素晴らしかった。
    紛れもない傑作。

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    2021年05月16日
  • 闇の左手

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    人類がかつて植民地化した星ゲセンは遺伝子実験の末に男女の性別のない不思議な社会に進化していた。外交を結ぶために赴いた地球人ゲンリー・アイによるこの人類と社会の風俗、思考などの考察が1つの話。政治的陰謀により元首相エストラーベンと一緒に極寒の氷原を逃亡する話がもうひとつ。男女の区別はないが生殖という面ではタイミングでどちらかが男にどちらかが女に自然に変わる。手を触れるといわゆる恋に堕ちる。男女という概念がないから我々には理解できない世界観を持つ。話はゲンリーの一人称だけでなく複数の人間が事実を語る。視点の違いがストーリーを変え、違う話に見えていく。陰謀は話を複雑にする。これは友情か信頼か、恋愛な

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    2022年09月14日
  • 所有せざる人々

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     人間にとっての理想郷はどこにあるのか? この小説の主人公であるシュヴェックとともに、読者である自分もそんなことを考えていました。

     経済の繁栄した自由主義・資本主義的な惑星のウラス、自由や平等をモットーに荒廃した惑星を切り開いてきた、共産主義的な惑星のアナレス。

     歴史、政治、文化、言語……、回想と現在を行ったり来たりし、二つの惑星の違いを丹念に浮かび上がらせていく、その詳細さは、本当に二つの世界があるように思わされます。

     シュヴェックは共産主義的な惑星のアナレス出身。そんな彼は、経済や文明が繁栄しているウラスの光、そして闇も先入観なく見つめます。時間や仕事に囚われ、芸術にすら価値を

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    2019年09月22日
  • 所有せざる人々

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    ネタバレ

    ウラスと植民星アナレス、それぞれがそれぞれを月とする双子星を舞台にした、ル=グィンのSF小説。アナレスに住む孤高の物理学者が、自らの理論を分かち合ってくれる者たちを求め、かつて先祖たちが暮らしていた星・ウラスへと、植民以来はじめての訪問者として向かう。
    資本主義と共産主義、政府と無政府、権力と学問、緑と荒野、男性と女性…様々な二項対立が現れ、語られるが、それらのすべてが多面的に描かれていて説得力がある。
    主人公・シェベックは常に孤独を抱えて生きているけれど、その孤独の底に誠実さを以って行動する姿が美しい。

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    2019年02月28日
  • 所有せざる人々

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    アナレス:荒れ果てた惑星、原始的な共産主義。
    ウラス:豊かな惑星、資本主義。

     単純な物質だけでなく、人間関係の「所有」も排した共産主義の惑星、アナレス。そこの天才物理学者、シェベックが主人公。
     あからさまな権力機構がなくとも、慣習に縛られ、息苦しくなった彼は、自らの研究成果をより必要としているであろうウラスに亡命するが、そこで彼はゼイタクを満喫する研究者やハイソサイエティに接する。しかし、そこでも彼はやはり孤独なのであった。

     「共産主義」を題材にした小説というと、「1984」や「われら」のような冷徹な独裁者が君臨するディストピアものしかなかったので、今回の「飢饉や、戦争はあるがそこそ

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    2018年12月22日
  • 内海の漁師

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    ル・グィンの短編集 彼女の考えが書かれた入門書
    表紙   6点安田 隆治
    展開   7点1994年著作
    文章   7点
    内容 650点
    合計 670点

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    2017年03月15日
  • 世界の合言葉は森

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    グィンの中編2つ 表紙がいい
    表紙   8点上原 徹
    展開   6点1972年著作
    文章   6点
    内容 740点
    合計 760点

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    2016年07月21日
  • 幻影の都市

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    これは栗本薫グインサーガーの原作ではないか・・・
    表紙   6点まつざき あけみ
    展開   7点1967年著作
    文章   6点
    内容 725点
    合計 744点

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    2016年07月21日
  • 辺境の惑星

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    ル・グィンの若さを感じられる作品
    表紙   5点岡野 玲子
    展開   7点1966年著作
    文章   7点
    内容 700点
    合計 719点

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    2016年07月02日
  • ロカノンの世界

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    初々しさはあるが基本的な作風は既に確立している
    表紙   6点萩尾 望都
    展開   6点1966年著作
    文章   7点
    内容 760点
    合計 779点

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    2016年06月27日
  • オルシニア国物語

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    いきなり読んでも分からない グィン好き向けの作品
    表紙   4点辰巳 四郎
    展開   6点1976年著作
    文章   7点
    内容 644点
    合計 661点

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    2016年03月25日
  • 言の葉の樹

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    「闇の左手」と同じく<ハイニッシュ・ユニバース>シリーズのこの作品。
    今度の主人公はテラ(地球)出身の女性、サティ。宗教を初めとした文化を一元化しようとした「ユニシス」が支配していたテラでは、キリスト教以外の宗教・考え・芸術全てが弾圧の対象になっていた時代があった。そんな時代に生まれたサティが、エクーメンの観察者として同じようなことが行われているアカという惑星にいるところから始まる。

    ル・グインはその舞台となる惑星を見てきたかのように、風景や人物や文化を鮮やかに描き出す。
    今回のテーマは「異文化との接触」。どうやってその異文化を受け入れ、拒否し、解釈するか。そんなことが丁寧な文体で書かれてい

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    2015年07月13日
  • 所有せざる人々

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    誰もが何も所有しない社会を築く星アナレスと、地球に良く似た物質社会の星ウラス。アナレスに生まれたシェヴェックという物理学者が成長していく過程と、ウラスに何らかの理由で辿りついてからの様子が交互に語られる。派手さはないけれど、じわじわとした面白さがあった。アナレスの成り立ちが非常に興味深かった。
    『闇の左手』を読んだ時にも思った、異文化コミュニケーションのあり方について考えさせられた。
    所有することは何かに固執すること。何も所有しないことは自由なのか。何にも執着せずに生きることは出来るのか…等々色々なことを考えさせられた。

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    2014年12月29日
  • 所有せざる人々

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    ネタバレ

    SFを舞台にした政治と権力の物語。科学者である主人公が魅力的。哲学的なやりとりが多く示唆に富んでいて非常に面白かった。

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    2014年05月12日
  • 所有せざる人々

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    40年近く前に描かれたユートピア。SF界の女王、ル・グィンの古びない傑作。


    物語は、主人公シェヴェックが自らの画期的な物理理論を発展、完成させるために、故郷の星アナレスを離れ、惑星ウラスに向かうところから始まる。

    物語の舞台は、アナレスとウラスという二重惑星。アナレスは、乾燥し、あまり人が住むには適さない環境の星。ウラスは緑と水が豊富な地球に似た星。

    荒涼としたアナレスには、元々は人が住んでいなかった。アナレスに住む人々は、オドー主義者と呼ばれる政治的亡命者、革命主義者たちの子孫だ。

    およそ2世紀前。ウラスの資本主義、自由主義経済国ア=イオから、オドー主義者たちが、自らが理想とする共

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    2012年11月26日
  • 所有せざる人々

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    リバタリアンとコミュニタリアンについて、
    マイケル・サンデルの授業のような思考を試される。
    ユートピアとディストピアの境界、狭間で二律背反に陥る。
    深いところにズシンとくる。

    1974 年 ネビュラ賞長篇小説部門受賞作品。
    1975 年 ヒューゴー賞長編小説部門受賞作品。
    1975 年 ローカス賞長篇部門受賞作品。

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    2012年02月25日
  • 所有せざる人々

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     惑星ウラスの空に浮かぶ大きな月・アナレス。それはウラスよりは小さく貧しいけれど、大気をもったひとつの惑星。
     かつてウラスでは、オドーというひとりの人物が提唱した主義にしたがい、やがてオドー主義者たちがあつまり、革命を起こした。ものを所有することをやめ、権力というものを廃し、貨幣による経済を捨てて、すべてのものを分け合う、完全なる共産主義の理想郷。彼らを危険視した当時の政府は、彼らに新たな大地――空に浮かぶ月・アナレスを与え、彼らをそこに隔離することで、ウラスの平和を保とうとした。
     以来、交易船に載せられた積荷と、わずかばかりの乗員が、宙港同士を行き来する以外、完全にアナレスは閉ざされてき

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    2010年10月05日
  • 言の葉の樹

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    極端に抑制を効かせた文章が、最後の3行で恐ろしく詩的になって、言いようのない高揚感に包まれたところでストンと終わるという、半ば途絶したような印象さえ与える結末も、このドラマが「ハイニッシュ・ユニバース」という大きな枠組み、その中でおそらくは無数に形成されている社会の、ごく一端でしかないことを示唆していて、他の社会で生み出されるドラマへの興味をそそられずにはいられない。

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    2010年06月25日
  • ロカノンの世界

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    有名なル・グウィン女史の作品です。最後の方があっさりし過ぎているような気もしましが、それでも面白かったです。この方の書く話は、必ずしもハッピーエンドではなく、幸福の中にも悲しみが(あるいは悲しみの中にも幸福が)あるところがいいです。

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    2009年10月04日