逢坂冬馬のレビュー一覧
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車の製造過程で、車内に転がり落ちた余分なボルトが一個。そのまるで些末なように見えるミスを見逃すか、見逃さないか。ちいさなその問題提起から始まるこの長編作品は、現代日本のさまざまな社会問題を浮き彫りにした物語となって大きく展開します。
雇用問題、投資詐欺、貧富と貧困、LGBTQ。扱われるテーマはどれも深い根を持ち明快な回答を持てないでいます。けれど、それらそのものを解決できなくとも、自らが向かい合ったときに、自分なりのできるかぎちの「善良さ」でもって対峙すること、そんな些細な勇気が必要なのではないか、と作中で奮闘する若者たちの姿を通して感じました。
物語の構成としては、どれもテーマをしっかり -
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一見関わりのない異なる国、異なる環境の人達の話が、徐々に繋がっていくというなんとも壮大なお話だった。
キーとなるのがブレイクショットという日本産のSUV。
中古として違う人の手に渡ったり、海外に
売られて改造されたり。
どんどんパズルのピースがハマっていく感じが気持ちよかった。
逢坂冬馬の本は全て読んでるけど、この本も他の著書と同様に、背景知識の充実さに圧巻。
投資や反社の話が出てくるけど、どれも背景がすごく丁寧に分かりやすく詳細に描かれていて、内容は難しいながら門外漢の私でもついていけた。
すごい勉強されて書かれてるんやろうなあと毎回思います。すごいです。。 -
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ある日、ドイツの中学校で、生徒の1人が提出した課題の中に町では偏狭で有名な老人のことが書いてあった。
興味を持った教師はその老人に会いに行く。
エーデルヴァイス海賊団。
ナチス政権下のドイツで実在した若者グループ。
第二次世界大戦下でのドイツでは(でも)
ざっくり言ってしまえは
ヒトラー万歳
偉大なるナチス
のような洗脳と言っていい教育を、ヒトラーユーゲントという組織の中で14歳以上の子どもに(当初、参加は自由だった)大戦末期ではほぼ強制的に行なっていた。
そこに反発をしていたのがエーデルヴァイス海賊団。
しっかりした政治的思想や目標がある訳ではなく、ただただ強制されることがな -
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ネタバレ本当にナチスの支持者でない人たちが反体制的な活動をしていたかはわかりませんが、今もある複数企業が間接的にナチスを支援していたってことは覚えておくべきだし、多くの人が見てみぬふりをしていたってのは自分も振り返るべき話だなと思いました。戦時下で、勇気ある行動をとった主役3人はもちろんですが、ドクトルもフランツもカッコよかったです。
フランツについて、ずいぶん自分を卑下するような書き方をするなと思っていたら、フランツが書いたという設定だったからなんですね。しかし、フランツが死んで、役所の人にこれまでの活躍が評価されてて、あれから並々ならない努力があったんだろうと思うと、人は変われるんだなをいう希望を -
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父親が殺され1人で暮らすケンカの強い労働者の息子、ヴェルナー。ナチス親衛隊将校の娘、エルフリーデ。町の名士良い育ちの、レオンハルト。爆弾好きの、ドクトル。
4人のエーデルヴァイス海賊団が、周りを巻き込みつつ、収容所への鉄道を止めるため、トンネルを爆破することをひとつの目的とする。
連合軍がドイツを破るまでのストーリーと、その数十年後孫の世代のストーリーが繋がる。
初めから息をつかせぬ展開の速さと、主要登場人物の魅力。民族、歴史、家族、愛、戦争、全てが絡み合う。
レオンハルトのヴェルナーへ宛てた手紙では涙が止まらない。
いつの時代にも、国や体制に正直に戦い反抗する青年達が存在する。
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ネタバレ文学研究家・翻訳家の姉、小説家の弟。
この2人が姉弟だったなんて、そりゃ高橋源一郎さんも椅子から転げ落ちるだろう。そんな偶然の一致が起きることは滅多にない。しかしこうやって対談を読むと自分も姉妹だからわかるという雰囲気がある。同じような文化を享受しつつ、ほんの数年の差や本人の受け取り方で異なる視点。別の方向に目を向けているのに、共通する意識。面白く読んだ。
本を読むことの強さを感じる。友だちがいなくたって、いろいろなものに縛られていたって、本を読むことで世界は広がり、自分は変わる。自分もそう思っている。だから本を読めるように生きていきたい。大学はある意味計算ずくで卒業してしまったけど、ひた -
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ネタバレなんと表現すればよいのか、読み終えて体の力が抜けてしまいました。
ナチス体制下のドイツを舞台に、反ナチスの象徴的存在として描かれるエーデルヴァイス海賊団の物語。
一面を切り取れば、少年少女の冒険活劇とも思えるし、そんな感じの疾走感と爽やかさと儚さでサクサクと読んでいけるのだけど、その背景にはファシズムやユダヤ民の強制収容と虐殺といった暗い影が覆っていて、とにかく心を揺さぶられっぱなしの読書時間でした。
同性愛、反体制、戦時下の反戦、様々なマイノリティたちが描かれていて、マイノリティの立場で正義や信条を貫けるかという問いかけをずっとされている感覚でした。 -
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ネタバレ逢坂さんのちょっと前の作品。疑問なのは、なぜ逢坂さんは外国を舞台にした作品を書くことができるのかってことです。海外旅行すらしたことがない自分には、現地の人が読んだらどう思うのかとても知りたいです。
エーデルワイス海賊団というのは実在したらしいです。日本なら中学生ぐらいでしょうか。ナチスのやり方に疑問をもち、抵抗した若者たちがいたのですね。もしこれがほぼ史実なら、ドイツでさえ日本ほど徹底した管理社会ではなかったって思いますね。食べ物に不自由している様子もないし。
逢坂さんの文章はとても読みやすく、小学生でも高学年なら読めそうです。これからもどんどん戦争などの題材を扱ってほしいですね。