逢坂冬馬のレビュー一覧
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舞台は第二次世界大戦、終戦間際のドイツ。
とある町に鉄道のレールを敷いている主人公たちだが、何か違和感を覚えて、そのレールの行先に何があるのか探る。そこで見つけたものは何だったのか。
前作「同志少女よ、敵を撃て」では独ソ戦における女性兵士という、あまり一般的には知られていなかった存在を主人公にしていたが、今作もそのような知られざるグループが主人公となっている。
エーデルヴァイス海賊団。
ナチス政権下における、青少年による反ナチグループである。この本を読んで初めてこのグループの存在を知った。
あの時代に流されずに自分で物事の本質を考えられるのはどれほどいただろうか。考えられたとしても、 -
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ネタバレ該当作がなかった直木賞候補の中でイチバン面白い作品だった。
(「乱歩と千畝 RAMPOとSEMPO」と「嘘と隣人」は途中で挫折してるので、「Nの逸脱」「逃亡者は北へ向かう」「踊りつかれて」の3作品と比べてだが)
先入観無しに読み始めたが、プロローグの時点で、馳星周さんの直木賞受賞作「少年と犬」を思い出した。
今作では、車(ブレイクショット)を狂言回しにして、所有者が困難に見舞われることで現代社会の様々な共同体ーサッカー、町工場、IT企業、不動産業界、投資系Youtuberとセミナービジネス、アフリカの少年兵での闇の部分や絶望が描かれている。
「取り柄は善良さ」の章で描かれていた家族のエピソ -
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プレイクショットという架空の国産SUV車。自動車工場で生産されて新車に。持ち主の事情で手放されて中古車に。さらに営業車になり、やがて紛争地で改造されて想定外の役割を担っていく。
この1台の車に関わった人たちの膨大な物語。
経済や紛争地の問題あたりはニュースでは取っ付きにくく、作者の書いてくれた『物語の力』によってどうにか読み通すことが出来た。今後はこの分野にもう少し関心を持てそう。
特殊詐欺のあたりはさらにわかりやすくて、頭のいい人が悪いことに能力を使ったら恐ろしくてかなわないなと思う。
最後に一連のストーリーが繋がり読後感が良かった。
これだけ長大な一冊を読んだので、やっぱりこのように物語を -
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ある日、ドイツの中学校で、生徒の1人が提出した課題の中に町では偏狭で有名な老人のことが書いてあった。
興味を持った教師はその老人に会いに行く。
エーデルヴァイス海賊団。
ナチス政権下のドイツで実在した若者グループ。
第二次世界大戦下でのドイツでは(でも)
ざっくり言ってしまえは
ヒトラー万歳
偉大なるナチス
のような洗脳と言っていい教育を、ヒトラーユーゲントという組織の中で14歳以上の子どもに(当初、参加は自由だった)大戦末期ではほぼ強制的に行なっていた。
そこに反発をしていたのがエーデルヴァイス海賊団。
しっかりした政治的思想や目標がある訳ではなく、ただただ強制されることがな -
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ネタバレ本当にナチスの支持者でない人たちが反体制的な活動をしていたかはわかりませんが、今もある複数企業が間接的にナチスを支援していたってことは覚えておくべきだし、多くの人が見てみぬふりをしていたってのは自分も振り返るべき話だなと思いました。戦時下で、勇気ある行動をとった主役3人はもちろんですが、ドクトルもフランツもカッコよかったです。
フランツについて、ずいぶん自分を卑下するような書き方をするなと思っていたら、フランツが書いたという設定だったからなんですね。しかし、フランツが死んで、役所の人にこれまでの活躍が評価されてて、あれから並々ならない努力があったんだろうと思うと、人は変われるんだなをいう希望を -
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父親が殺され1人で暮らすケンカの強い労働者の息子、ヴェルナー。ナチス親衛隊将校の娘、エルフリーデ。町の名士良い育ちの、レオンハルト。爆弾好きの、ドクトル。
4人のエーデルヴァイス海賊団が、周りを巻き込みつつ、収容所への鉄道を止めるため、トンネルを爆破することをひとつの目的とする。
連合軍がドイツを破るまでのストーリーと、その数十年後孫の世代のストーリーが繋がる。
初めから息をつかせぬ展開の速さと、主要登場人物の魅力。民族、歴史、家族、愛、戦争、全てが絡み合う。
レオンハルトのヴェルナーへ宛てた手紙では涙が止まらない。
いつの時代にも、国や体制に正直に戦い反抗する青年達が存在する。