逢坂冬馬のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ誰しもが心の中で思っている「都合のいいことだけ信じたい」「自分は何も見てない聞いてない」という"見て見ぬふり"こそが、戦争やいじめの根幹にあるのだと感じた。今までは忠実にナチスに従っている大人が都合よく敗戦後のことを見越して"おとぎ話"を作っている場面に震えた。こういう八方美人が大多数で得するんだろうな。
レオンハルトお前…手紙で大泣きした。
戦争小説であり、青春小説であるけど、多様性だと言って他人を理解した気になってる現代社会への風刺でもあると思った。
「歌われなかった海賊たちへ」たしかにあの時のエーデルヴァイス海賊団の子たちは、見て見ぬふりをさ -
Posted by ブクログ
ネタバレ一気読みでした。途中で投げ出すなんて考えられず家事をしながら早くこの世界に戻りたいと時には苦しくなりながら、終わりが見えないで欲しいと思いながら読んだ。人は断片的にしか見えないのにどうして決めつけられるであろうか、自分を守ろうとするあまりにここまで人は滑稽になれるのだろうか。ハッとすることが度々あった。
歌わなかった市民たちが憎いと思ったが完全に責められる訳でもなく、私も同時代にいれば共犯者なのでは無いかと考えさせられた。
決して昔の話ではなく、現在も形を変えて問いが存在しているのだろう。
大きな問題に圧倒されながらも未来志向の姿勢に自分も鼓舞されているようだった。
-
Posted by ブクログ
結局、戦争において犠牲になるのは女性と子供ということを再認識する作品でした。
当時のナチ党の支持率は95%を越えていたそうですが、それはあくまで一党独裁の恐怖政治下での数字、ということで実は本作でも描かれているようなレジスタントもいた、というのが事実なんでしょうね。
でも、レジスタントは一般にはあまり知られていない存在のように思います。
そういう点で、本作は斬新な視点で描かれていたと思います。
ヨーロッパにおいてはナチスの悪名があまりにも轟き過ぎているせいか、イタリアのファシストを題材にした小説を見たことがないのですが、そういう小説はないんでしょうか? -
Posted by ブクログ
ネタバレ経済格差、非正規雇用、LGBTQ、少年兵、特殊詐欺と、様々なテーマについて魅力的なキャラクターたちが悩み苦しみながらも前に進んでいく様子が気になって、読み進めるページが止まらなかった。身近なことから遠い国の想像も及ばない出来事まで全部繋がっていて、これだけ幅広いテーマを扱いながら、一つ一つが非常に濃く語られているのがすごい。
同作者の『同志少女よ、敵を撃て』でも思った通り、魅力的なキャラクターを描くのが圧倒的に上手だと思った。
インターネットやSNSで世界が繋がるということはどういうことなのか。世界中が繋がりすぎた現代社会のメタファーとしての車やビリヤードの描かれ方が素晴らしい。
「台の上 -
Posted by ブクログ
ネタバレよかった!この2人が姉弟という事への興味で読み始めたが、成人してだいぶ経ってからこんなに深い話をする機会はふつうの家ではあまりないのではないか。長い時間をかけて何回も対談をしたものを編集の人がまとめたとの事。
3つのパートに分かれていて、特にパート3ではまさに今、ロシアやウクライナの人々がどんな状況に置かれているのか、他人事ではない、関心を持ち続けて、考えることを手放してはいけないと、2人ともが話している。国民が賢くなるのを嫌がるのはどこの国でも同じなんだと。翻訳家としてロシアの学者の言葉を伝えたいとか、作家が政治的な発言をしてもいいんだ。自分の作品を誤読されたくない、など切実な話も出てきて、 -
Posted by ブクログ
たいへん面白かったです。注目のロシア文学者の姉と「同志少女よ、敵を撃て」の作家の弟。まさかの姉弟ですが、この本の対談で必然的な関係性も分かります。普段からこんな知的な会話をしているのでしょうか。
翻訳するときに「これを読むことが平和につながるかどうか」と考える姉。読書するときに「自分はこれを好きでもいいんだって思えるのはすごく大事」と考える弟。その2人を育てた放任主義のジブリ映画「耳をすませば」のような家庭。
今、話題の三宅香帆さんの新書「なぜ働いていると〜」の元ネタもありました。映画「花束みたいな恋をした」のくだり。三宅さんも奈倉有里さん大好きと言っていたので、ここから大ヒットのヒント -
Posted by ブクログ
ネタバレ2022年に本屋大賞を受賞した一冊。この本を読破したとき私は興奮が治まらなかった。とんでもない超大作を読んでしまったと思った。
舞台は第二次世界大戦中のソ連。猟師の娘だったセラフィマは牧歌的な村で母と狩りを平和な暮らしを営んでいた。
しかし突如その平和は奪われ、彼女は狙撃手となる―
戦争ものの小説はその場面での戦況、武器や銃の解説、自分の知らない土地の攻防が事細かに描かれているため、多少は読みづらさがある。その上あまり戦争の知識が無い私は戦術の読みあいや説明のシーンでもしっかり理解することができず、そこを読み飛ばしてしまうが故に途中から状況が分からなくなり、何度も同じページ間を読み直す.. -
Posted by ブクログ
逢坂冬馬は「同志少女よ…」と「歌われなかった…」
の2つの小説を、姉さんの奈倉有里のはエッセー「夕暮れに…」と「世界」臨時増刊のシュリマンの講演を翻訳したものの2つしか読んでない。が、注目しているキョーダイである。
二人が縦横に語る本作は読めば読むほど素晴らしいと思えた。期待の1000倍以上の内容だった。なるほど育てたこの親にして育ったこの子。そうそうありそうな家族ではない。それにしても二人それぞれに見事な自立ぶりである。
高校生や大学生にぜひ読んでほしい。自分が何者かになろうとすることをきっと支えてくれるぞと思った。
子どもを育てる親にも必読だ。
窮屈な世の中に倦んでいる大人にも今一度元気を -
Posted by ブクログ
本を読むことを全力で全肯定してくれて、胸がいっぱいになった。
饒舌な逢坂さんと、穏やかな語り口で本質を突く奈倉さん。姉弟だけに、共通の価値観(素晴らしいご両親と祖父!)が根底にあり、難しい話もかなーりわかりやすく話してくれてる。
知識量や解像度がすごいし、難しい本ばかり読んでるんだろうな、と思いきや、角田光代を絶賛したり(サイン会に並んだそうだ)、りぼんやジブリやショッカー(⁉︎)などなど、わかりやすい比喩をあげて説明してくれて親近感をもった。
私は同志少女の戦争のゲーム性みたいな書き方が少し嫌だったのだが、そのあたりの作者の意図もわかってよかった。
2人ともニュートラルで、自分の軸がしっ -
Posted by ブクログ
奈倉有里と逢坂冬馬による対談集、『文学キョーダイ』。
逢坂冬馬は『同士少女よ敵を撃て』で鮮烈なデビューを果たし、アガサクリスティー賞、本屋大賞を受賞。迫力ある、フェミニズム小説とも言えるとても力のある作品。今年3月には、2作となる『歌われなかった海賊へ』を出版している。
一方、奈倉有里はラジオに出演しているのを聞いて初めて知り、その際紹介されていた著書『夕暮れに夜明けの歌を』を読んでみると、文学への愛と情熱があふれており、感動したのと同時に同い年ということもあり刺激を受けた。
その二人が姉弟であることは、それぞれが文壇に登場後に発覚したことらしく、ずいぶん驚かれたとか。もちろん私もびっくりした -
Posted by ブクログ
『ことばの白地図を歩く』。若者向けにゲーム仕立てでおもしろく読みやすいけれど、内容は驚くほど専門的。書いたのはどんな人なんだろう?と気になって経歴をみると紫式部文学賞を受賞した『夕暮れに夜明けの歌を』の著者であり、あの『同志少女』『歌われなかった海賊へ』の逢坂冬馬さんと姉弟だと知り驚いたり納得したり。
「有里先生」と「逢坂さん」。3歳ちがいのおふたりは対談の中でお互いをこのように呼び合い、「文学」「作家という職業」、「戦争や武器」について、専門家同士としてリスペクトしつつ、存分に語り合う。ご両親のエピソードも紹介されるがこれがまた
言葉かけと言い距離感といい、「親の背を見て子は育つ」の諺どおり