逢坂冬馬のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
自分は戦争の知識がほとんどなく、この本のページ数に読み切れる自信がなかった。
ところが読み始めてみると、戦争背景がわかりやすく説明された内容で、とても読みやすかった。
主人公セラフィマは、故郷をナチ・ドイツに襲撃され家族や仲間を亡くし、絶望する。
その仇敵となる狙撃兵イェーガーを殺すため、狙撃兵となる物語。
戦争下での女性の立場に考えさせられた。
捕虜として捕まれば死ぬよりも屈辱的な辱めを受ける。
それは、敵味方に限らず許される行為ではないが、そういう行為を仲間と一緒にすることで、連帯感が生まれる。
性欲のためではない…。
戦争下では何をしたって正当化される。
これには衝撃を受けた…。
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Posted by ブクログ
2022年本屋大賞作品「同士少女よ、敵を撃て」の著者による次の作品です。
今回は第二次世界大戦最中のドイツが舞台です。
その頃のドイツと言えばヒトラー率いるナチスが国全体を統治していた時代です。
しかし時は戦争末期でもあり、ナチスに反旗を
翻し、密かに抵抗を試みる若者たちもいたよう
です。
自分たちの街に敷設されている鉄道レールの
行き先には何か秘密があるらしい、と
その正体を突き止めるために旅に出た若者たちに待ち受ける「真実」とは。
日本もそうだと思いますが、敗戦によって目覚めて
民主化へ舵を切ったかのように思われがちですが、
ドイツは戦争中からすでに「このままでいいはずが
ない」 -
Posted by ブクログ
ネタバレ自らの誇りを胸に罪のない人々の命を守ったエーデルヴァイス海賊団の活躍に胸を打たれたし、反対にそういったものから目を背け続けた大人たちの振る舞いには憤りを覚えましたが、果たして自分が同じ立場に立った時どちらの行動を取るのか考えたらやはり自らが生き延びることを最優先にしてしまうと思いました。そういった意味でもこのような悲劇は繰り返されるべきではないし、クリスティアンとムスタファのように次の世代まで引き継いでいくことが大切だと思いました。
あとレオンハルトからの手紙であり得ないほど泣いた。
ドクトルも疑ってごめん、1人だけ本名明かされないしなんかどんでん返しあるのかと思って読み進めてたけど結局めち -
Posted by ブクログ
ネタバレ物語の至る所に伏線が散りばめられていたり、動きのある場面には迫力があったり、まずエンタメ小説として面白かった。
それだけでなく、深く考えさせられる小説だった。人種や信条で人々を恣意的に区画し、差別を行なったナチだけでなく、自分の知る枠組みの中で勝手に相手を理解した気でいる人々の傲慢さも、当時のマイノリティを苦しめていたのだと感じた。後者は特に現代を生きる私たちにも通ずるものがあり、理解しないでそっとしておく優しさを見習いたいと思えた。
また、大人たちが自己防衛の為に口をつぐんで目を背けた事実が語られず、歴史から消えていく様が鮮明に描かれていた。しかし、それでもフランツはヴェルナーたちがナ -
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素晴らしかった。ナチスドイツの支配下にあり、強制収容所が近くにあった街に生きた少年少女の抵抗と、その記録。主題は、ナチスへの抵抗ではなく、人としての誇り、そして見て見ぬふりをする大人の態度についての話。見事に現代と繋げていて、ラストははらはらと泣いてしまった。
日本の植民地支配もしかり、原発や沖縄の米軍基地問題もしかり、そしてウクライナとロシア、イスラエルとガザ地区の戦争も、環境問題も、うっすら気がついていて、でもできることはなくて、何となく受け入れてしまう態度が加害なのだと突きつけらる。平和な日常が何より大事だが、それが何かの犠牲の上に成り立っていないのか、せめて見て見ぬ振りをしている自分 -
Posted by ブクログ
ネタバレ誰しもが心の中で思っている「都合のいいことだけ信じたい」「自分は何も見てない聞いてない」という"見て見ぬふり"こそが、戦争やいじめの根幹にあるのだと感じた。今までは忠実にナチスに従っている大人が都合よく敗戦後のことを見越して"おとぎ話"を作っている場面に震えた。こういう八方美人が大多数で得するんだろうな。
レオンハルトお前…手紙で大泣きした。
戦争小説であり、青春小説であるけど、多様性だと言って他人を理解した気になってる現代社会への風刺でもあると思った。
「歌われなかった海賊たちへ」たしかにあの時のエーデルヴァイス海賊団の子たちは、見て見ぬふりをさ